女王エリザベス2世 の夫であるエディンバラ公爵フィリップ は英国王室史上で最長在位の君主配偶者であった。
イギリス王妃・王配一覧 (イギリスおうひ・おうはいいちらん)では、歴代のイギリス君主 (国王/女王)の配偶者(王妃 /王配 、英 :Queen/Prince consort)を列記する。イギリス の君主 の配偶者とその前任者には憲法上の地位や権力はないが、多くが大きな影響力を持っている[ 1] [ 2] [ 3] 。
フィリップ王配 は、これまでで最も長く務め、最も長寿の配偶者であり、70年近く務めて99歳で薨去した。彼の義母であるエリザベス王太后 は101歳で崩御し、他のどの王妃よりも長寿であったが、自身より50年前に夫のジョージ6世 国王が崩御したため、彼女の死の時点では王妃の地位を保持していなかった[ 4] 。
フィリップ王配の薨去 (英語版 ) 以降、2022年 9月8日 にエリザベス2世が崩御 するまでイギリス王妃・王配は空位となっていた。女王の長男であるチャールズ3世 が国王に即位したことにより、カミラ がイギリス王妃になった[ 5] 。
歴史
1707年のイギリスとスコットランドの合同 以来、在位にあったイギリスの君主の配偶者は11人になる。1727年から1814年までの歴代王妃は、夫全員がハノーファー選帝侯 の称号を所持していたため、ハノーファー 選帝侯妃でもあった。 1814年から1837年の間、夫はハノーファー国王であったため、王妃はハノーファー王妃としての称号を保持していた。 この人的同君連合は、1837年のヴィクトリア女王の即位によりに終了した。これは、ハノーファーの継承法(サリカ法)により、生き残った男性の相続人がいる場合に女性が称号を継承することが禁止されたため(英国では、男性が優先された) 男性の長子相続 を削除した2013年王位継承法 までは、姉妹のみ)。1866年の普墺戦争 で、ハノーファーはプロイセン に併合され、ハノーファー県になった。
君主(男性国王)の全ての妻が配偶者(consort)になったわけではない。彼女らは死去したか、離婚したか、夫が王位に就く前に結婚が無効であると宣言されたか、退位後に結婚したなどの例である。実例として、ゾフィー・ドロテア・フォン・ブラウンシュヴァイク=リューネブルク (ハノーファー侯子ゲオルク・ルートヴィヒ 、後の国王ジョージ1世の妻)、ウォリス・ウォーフィールド (ウィンザー公エドワード 、元国王エドワード8世の妻)、レディ・ダイアナ・スペンサー (ウェールズ公チャールズ 、現在の国王チャールズ3世の妻)がいる。
ジョージ1世 とエドワード8世 のみが、在位中に未婚であった。
1937年以来、国王の配偶者と21歳以上の継承順位 の最初の4人が国務顧問(Counsellor of State )に任命される可能性がある。 国務顧問は、国王が国外にいるか一時的に無能力状態にある間、英国において国王の任務の一部を遂行する[ 6] 。
称号
男性配偶者
ヴィクトリア女王 の夫であるアルバート・オブ・サクス=コバーグ=ゴータ公子 は、「プリンス・コンソート (Prince Consort )」の称号が与えられた唯一の男性配偶者である。
全ての女性配偶者(キングの妻)は、「王妃」すなわち「クイーン・コンソート (queen consort)」になる権利を有しそのスタイルをとった。 しかし、1707年以来在位した3人の英国の男性配偶者(クイーンの夫)のうち、「キング・コンソート(king consort)」と見なされた人物はいなかった。
戴冠式
The Coronation of King George V : King George V and Queen Mary Enthroned (ラウリツ・トゥクセン 作・1912年)
王妃は戴冠式 に参加し、君主と同じ儀式の多くを執り行う。女王は伝統的に精巧なローブを着て、天蓋の下で行列を歩く。彼女らはまた聖油を注がれ、王冠を授けられた。伝統的に、男性の配偶者は戴冠式で戴冠したり、油を注がれたりすることはない[ 7] 。
稀有なケースとしては、即位前に夫ジョージ4世 と別居していたカロリーネ・フォン・ブラウンシュヴァイク=ヴォルフェンビュッテル があり、法律により王妃となったが宮廷での地位はなく、ジョージ4世の戴冠式 への出席と戴冠を強制的に禁止された[ 8] 。
レガリア
現存する最古の君主配偶者の王冠 は、メアリー・オブ・モデナ のために1685年に制作されたものである(State Crown of Mary of Modena )。20世紀初頭以来、王妃のために新しい王冠が制作されるのが伝統となっていた。しかし、カミラ王妃 は2023年の戴冠式 に向けて新たな王冠を制作しておらず、1911年のメアリー王妃 の王冠(Crown of Queen Mary )を使用して戴冠した[ 9] 。
王妃の指輪は、1831年にアデレード王妃 の戴冠式のために初めて作成され、それ以来王妃によって使用されてきた[ 9] 。
王妃の杖と鳩は「公平と慈悲」を表し、翼を折りたたんだ鳩は聖霊を象徴している。元々は1685年のメアリー・オブ・モデナの戴冠式のために制作された王妃の十字架付き笏には、水晶が象嵌されている[ 9] 。
王妃・王配一覧
肖像
名
紋章
誕生
婚姻
在位開始
戴冠
在位終了
崩御・薨去
墓地
在位期間
配偶者
ジョージ ・オブ・デンマーク=ノルウェー
1653年 4月2日 デンマーク=ノルウェー国王フレデリク3世 とゾフィー・アマーリエ・フォン・ブラウンシュヴァイク=カレンベルク の子息
1683年 7月28日
1707年 5月1日 グレートブリテン王国の成立; 1702年3月8日の配偶者の即位に伴い、イングランドとスコットランドの君主の配偶者となる
なし
1708年 10月28日 7004202970000000000♠ 55年, 209日
ウェストミンスター寺院
7002546000000000000♠ 1年, 180日
アン
ウィルヘルミナ・シャーロット・キャロライン ・オブ・ブランデンブルク=アーンズバック
1683年 3月1日 ブランデンブルク=アンスバッハ辺境伯ヨハン・フリードリヒ とエレオノーレ・フォン・ザクセン=アイゼナハ の息女
1705年 8月22日
1727年 6月11日 配偶者の即位
1727年 10月11日
1737年 11月20日 7004198950000000000♠ 54年, 172日
7003381500000000000♠ 10年, 162日
ジョージ2世
ソフィア・シャーロット ・オブ・メクレンバーグ=ストレリッツ
1744年 5月19日 カール・ツー・メクレンブルク=シュトレーリッツ とザクセン=ヒルトブルクハウゼン公女エリーザベト・アルベルティーネ の息女
1761年 9月8日
1761年 9月8日 君主との結婚
1761年9月22日
1818年 11月17日 7004271530000000000♠ 74年, 126日
ウィンザー城聖ジョージ礼拝堂
7004208880000000000♠ 57年, 70日
ジョージ3世
キャロライン ・アメリア・エリザベス・オブ・ブランズウィック=ウォルフェンビュッテル
1768年 5月17日 ブラウンシュヴァイク=ヴォルフェンビュッテル公カール・ヴィルヘルム・フェルディナント とグレートブリテン王女オーガスタ の息女
1795年 4月8日
1820年 1月29日 配偶者の即位
なし
1821年 8月7日 7004194290000000000♠ 53年, 72日
ブランズウィック大聖堂
7002556000000000000♠ 1年, 190日
ジョージ4世
アデレード ・アメリア・ルイーズ・テリーザ・キャロライン・オブ・サクス=マイニンゲン
1792年 8月13日 ザクセン・マイニンゲン公ゲオルク1世 とホーエンローエ=ランゲンブルク侯女ルイーゼ・エレオノーレ の息女
1818年 7月13日
1830年 6月26日 配偶者の即位
1831年9月8日
1837年 6月20日 配偶者の崩御
1849年 12月2日 7004207640000000000♠ 56年, 311日
ウィンザー城聖ジョージ礼拝堂
7003255100000000000♠ 6年, 359日
ウィリアム4世
フランシス・オーガスタス・チャールズ・アルバート ・エマニュエル・オブ・サクス=コバーグ=ゴータ
1819年 8月26日 ザクセン=コーブルク=ゴータ公エルンスト1世 とルイーゼ・フォン・ザクセン=ゴータ=アルテンブルク の子息
1840年2月10日
1840年 2月10日 君主との結婚
なし
1861年 12月14日 7004154510000000000♠ 42年, 110日
ウィンザー城聖ジョージ礼拝堂 (当時:フロッグモア霊廟 )
7003797800000000000♠ 21年, 307日
ヴィクトリア
アレクサンドラ ・キャロライン・マリー・シャーロット・ルイーズ・ジュリア・オブ・デンマーク
1844年 12月1日 デンマーク王クリスチャン9世 とヘッセン=カッセル方伯女ルイーゼ の息女
1863年 3月10日
1901年 1月22日 配偶者の即位
1902年8月9日
1910年 5月6日 配偶者の崩御
1925年 11月20日 7004295730000000000♠ 80年, 354日
ウィンザー城聖ジョージ礼拝堂
7003339100000000000♠ 9年, 104日
エドワード7世
ヴィクトリア・メアリー ・ルイーズ・オルガ・ポーリン・クローディン・アグネス・オブ・テック
1867年 5月26日 テック公フランツ とメアリー・アデレード・オブ・ケンブリッジ王女 の息女
1893年7月6日
1910年 5月6日 配偶者の即位
1911年6月22日
1936年 1月20日 配偶者の崩御
1953年 3月24日 7004313480000000000♠ 85年, 302日
7003939000000000000♠ 25年, 259日
ジョージ5世
エリザベス ・アンジェラ・マルグリート・ボーズ=ライアン
1900年 8月4日 第14代ストラスモア=キングホーン伯爵クロード・ボーズ=ライアン とセシリア・キャベンディッシュ=ベンティンク の息女
1923年4月26日
1936年 12月11日 配偶者の即位
1937年5月12日
1952年 2月6日 配偶者の崩御
2002年 3月30日 7004371280000000000♠ 101年, 238日
7003553500000000000♠ 15年, 57日
ジョージ6世
フィリップ ・オブ・グリース・アンド・デンマーク
1921年 6月10日 ギリシャおよびデンマーク王子アンドレアス とバッテンベルク侯女アリス の子息
1947年11月20日
1952年 2月6日 配偶者の即位
なし
2021年 4月9日 7004364630000000000♠ 99年, 303日
7004252650000000000♠ 69年, 62日
エリザベス2世
カミラ ・ローズマリー・シャンド
1947年 7月17日 ブルース・シャンド とアシュコーム男爵令嬢ロザリンド・キュービット の息女
2005年4月9日
2022年 9月8日 配偶者の即位
2023年5月6日
在位中 年齢: 7001770000000000000♠ 77年 + 197日
存命中
7000200000000000000♠ 2年 + 144日
チャールズ3世
年表
脚注
^ Tudor and Stuart consorts : power, influence, and dynasty . Aidan Norrie. Cham, Switzerland. (2022). ISBN 978-3-030-95197-9 . OCLC 1336986822
^ Bogdanor, Vernon (1995). The monarchy and the constitution . Oxford: Clarendon Press. ISBN 978-0-19-152089-1 . OCLC 344061919
^ Queens & power in medieval and early modern England . Carole Levin, R. O. Bucholz. Lincoln: University of Nebraska Press. (2009). ISBN 978-0-8032-2278-6 . OCLC 316765760
^ Campbell, Colin, Lady (2012). The queen mother : the untold story of Elizabeth Bowes Lyon, who became Queen Elizabeth the queen mother (First ed.). New York. ISBN 978-1-250-01896-0 . OCLC 861786771
^ Holden, Michael (2022年9月8日). “From 'Rottweiler' to Queen Consort, Camilla's rise from shadow of Diana” (英語). Reuters . https://www.reuters.com/world/uk/rottweiler-queen-consort-camillas-rise-shadow-diana-2022-09-08/ 2022年9月9日 閲覧。
^ “Counsellors of State ”. The Royal Family . 13 June 2023 閲覧。
^ “What is a queen consort? ”. Royal Collection Trust . 24 May 2023 閲覧。
^ “Why Was Queen Caroline Barred From Her Husband's Coronation? ” (英語). TheCollector (17 March 2022). 2 November 2022 閲覧。
^ a b c “The Coronation Regalia ”. The Royal Family (9 April 2023). 2023年9月21日 閲覧。
関連項目
外部リンク