エルキ・ルースラーティ (Erkki Ruoslahti、1940年 2月16日 - )は、ヘルシンキ大学 (フィンランド )出身のフィンランド系米国人。がん の生物学 ・生化学 の研究者。男性。米国・サンフォード‐バーナム医学研究所・教授、カリフォルニア大学サンタバーバラ校 ・教授 。専門は、細胞接着分子 [ 1] 。
概要
1973年 、フィンランドで、ヴァヘーリ(A. Vaheri)と共に、ニワトリ 線維芽細胞 の抗体 を作り、細胞 表面にある新しい抗原 ・タンパク質 を発見した[ 2] 。この時、線維芽細胞(fibroblast)の細胞表面(surface)にある抗原(antigen)に因んで、このタンパク質を「fibroblast surface antigen(SFA)」と命名した。
1976年 、SFAを、現在使用されているフィブロネクチンと改名した[ 3] 。
1976年 、すでに、フィンランド・トゥルク大学 の教授だったが、研究の拠点をフィンランド から、アメリカ合衆国 に移した。
1984年 、ポスドク のパーシュバッカー(Pierschbacher, M.D.)と共に、RGD配列 を発見した。つまり、タンパク質 ・フィブロネクチン の細胞接着 部位はたった4つのアミノ酸 Arg-Gly-Asp-Ser(RGDS)(アルギニン -グリシン -アスパラギン酸 -セリン )に担われていることを発見した[ 4] 。
このRGD配列 の発見に基づき、米国・医薬品業界が、血栓を抑制する抗血小板剤 を開発し、米国食品医薬品局 (FDA)に認可された医薬品がすでに2種類ある。世界の医薬品業界は、さらなる医薬品を開発している。
1985年 、ポスドク のパイテラ(Pytela R)と共に、フィブロネクチン ・レセプター タンパク質(インテグリン )を発見した[ 5] 。
1986年 、ポスドク の鈴木信太郎と共に、ビトロネクチン のレセプター タンパク質のcDNA 塩基配列 を解明した。フィブロネクチン・レセプター タンパク質の塩基配列とよく似ていたことから、インテグリン がインテグリン ファミリーを形成していることを発見した [ 6] 。
フィブロネクチン 、インテグリン 、がん の研究を意欲的に発展させていく。
2009年 、ポスドク の菅原一樹と共に、RGD配列 がインテグリン αv β3 に特異的に結合することを利用し、RGD配列 に別の機能的分子を結合させた新しい医薬品の研究を行なっている。その意図は、がん や動脈硬化 部位に特異的に毒物を送り込むナノ 粒子・新しいドラッグデリバリーシステム の開発である[ 7] [ 8] [ 9] 。
ニューロフィリン‐1(neuropilin-1)のR/KXXR/Kモチーフ は C末端 にアミノ酸 がないと不活性である。そこでC末端にアミノ酸をつけて体内の組織に浸透させることを考案した。この効果を「センダー(送付)」(C-end Rule (CendR)、CendRは英語で"sender"と同じ発音)効果と命名した。また、組織内に入るRGDペプチドを「iRGD」(internalizing-RGD)と命名した[ 7] 。
略歴
賞勲栄誉歴
主な著作
弟子
日本人を中心にリストする。この節は網羅的ではない。
鈴木信太郎‐関西学院大学 ・理工学部・教授
福島大吉‐小野薬品工業 ・会長、元社長
菅原一樹(Sugahara Kazuki)‐米国 ・サンフォード‐バーナム医学研究所・助教授
脚注
^ “Erkki Ruoslahti ”. Sanford Burnham Medical Research Institute. 14 March 2013 閲覧。
^ Ruoslahti E, Vaheri A, Kuusela P, Linder E (Oct 1973). “Fibroblast surface antigen: a new serum protein”. Biochim Biophys Acta 322 (2): 352-358. PMID 4203032 .
^ Kuusela P, Ruoslahti E, Engvall E, Vaheri A (Aug 1976). “Immunological interspecies cross-reactions of fibroblast surface antigen (fibronectin)”. Immunochemistry 13 (8): 639-642. PMID 61165 .
^ Pierschbacher, M.D., Ruoslahti, E. (1984). “Cell attachment activity of fibronectin can be duplicated by small synthetic fragments of the molecule”. Nature 309 : 30-33. doi :10.1038/309030a0 .
^ Pytela R, Pierschbacher MD, Ruoslahti E. (Jan 1985). “Identification and isolation of a 140 kd cell surface glycoprotein with properties expected of a fibronectin receptor”. Cell 40 (1): 191-198. PMID 3155652 .
^ Suzuki S, Argraves WS, Pytela R, Arai H, Krusius T, Pierschbacher MD, Ruoslahti E. (Nov 1986). “cDNA and amino acid sequences of the cell adhesion protein receptor recognizing vitronectin reveal a transmembrane domain and homologies with other adhesion protein receptors” . Proc Natl Acad Sci U S A 83 (22): 8614-8618. PMC 386981 . PMID 2430295 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC386981/ .
^ a b Sugahara KN, Teesalu T, Karmali PP, Kotamraju VR, Agemy L, Girard OM, Hanahan D, Mattrey RF, Ruoslahti E (Dec 2009). “Tissue-penetrating delivery of compounds and nanoparticles into tumors” . Cancer Cell 16 (6): 510-520. doi :10.1016/j.ccr.2009.10.013. . PMC 2791543 . PMID 19962669 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2791543/ .
^ Sugahara, K.N., Teesalu, T, Karmali, P.P., Kotamraju V.R., Agemy, L. Greenwald, D.R. and Ruoslahti E (2010). “Co-administration of a Tumor-Penetrating Peptide Enhances the Efficacy of Cancer Drugs” . Science 328 : 1031-1035. PMC 2881692 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2881692/ .
^ Couzin-Frankel, Jennifer (8 April 2010). “New Peptide Helps Cancer Drugs Break Into Tumors” . ScienceNOW . http://news.sciencemag.org/sciencenow/2010/04/new-peptide-helps-cancer-drugs-b.html 08 August 2013 閲覧。
^ “Erkki Ruoslahti ”. United States National Academy of Sciences. 07 August 2013 閲覧。
^ 公益財団法人 国際科学技術財団:日本国際賞/Japan Prize 2005年受賞者 エルキ・ルースラーティ(E. Ruoslahti) 2013年8月7日閲覧
参考文献
外部リンク