モクレン目 (モクレンもく、学名 : Magnoliales )は被子植物 の目 の1つであり、モクレン やニクズク 、バンレイシ などが含まれる。全て木本 であり、精油 を含み、葉 が互生 する。花 はふつう大きく、3数性の花被片 をもつものが多い(図1)。多くの場合、雄しべ と雌しべ が多数あり、らせん状についている(図1)。
6科135属3,200種ほどが知られる。モクレン科 など古くから"原始的"と考えられていた被子植物が含まれる。系統的にも被子植物 の大系統群である単子葉類 や真正双子葉類 には含まれず、クスノキ目 、カネラ目 、コショウ目 に近縁であると考えられている。
特徴
全て木本 であり、低木 から高木 、多くは常緑性 だが、落葉性 の種もいる[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] (下図2a–d)。ふつう精油 やアルカロイド 、フラボノール を含む[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] 。節は3から多葉隙 性(ニクズク科 は単葉隙性)[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] 。師管 の色素体 はP-type(ニクズク科、モクレン科 はS-type)[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] 。
2d .
シモクレン (モクレン科)は落葉低木から小高木
葉序 は基本的に2列互生 であるが(下図2e, f)、螺生することもある(特にモクレン科 ; 下図2g)[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] 。葉 は単葉 、葉脈 は羽状、葉柄 をもつ[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] (下図2e–g)。ほとんどの種で葉縁は全縁 であるが、ユリノキ属 (モクレン科)では大きな陥入がある[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] 。ふつう托葉 を欠くが、モクレン科 では早落性の托葉が芽を包んでいる[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] 。
花 は比較的大きなものが多く、放射相称、ふつう両性で雌性先熟 、ときに単性[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] 。花被片 はふつう3数性であり、3枚ずつ1輪から多輪についている[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] (下図2h–k)。ふつう離生するが、ニクズク科 では3枚1輪の花被片が合生している[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] (下図2h)。花被片は内外で分化していない(萼片 と花弁 の分化がない)もの(下図2i)から、最外輪が萼片となっているもの(下図2j)、萼片・外花弁・内花弁の分化があるもの(下図2k)などがある[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] 。雄しべ はふつう多数、らせん状についているが、ニクズク科 では単体雄しべ を形成する[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] (下図2j, m)。ふつう花糸は太く、まれに葉状、葯隔が発達していることが多い[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] 。ときに外側または内側の雄しべが仮雄しべ であり、花弁状となることがある[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] (ヒマンタンドラ科 、エウポマティア科 )(下図2l)。葯は外向、ときに側向や内向[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] 。小胞子形成は同時型、タペート組織 は分泌型[ 1] [ 2] [ 3] [ 5] [ 6] 。花粉は単溝粒から無孔粒、2細胞性[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] 。心皮 はふつう二つ折り型だがエウポマティア科 では嚢状、ふつう多数(ニクズク科とデゲネリア科 では1個)、離生心皮 (雌しべ は多数)、らせん状についている[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] (下図2i, m)。基本的に子房上位 であるが、エウポマティア科では子房周囲から半下位[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] 。胚珠 は倒生胚珠 、2珠皮性、厚層珠心をもつ[ 1] [ 2] [ 3] [ 5] [ 6] 。
果実 は液果 (下図2n)や袋果 (下図2o)であり、ふつう集合果 を形成する[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] 。種子 はしばしば肉質の種皮や仮種皮 で包まれる[ 1] [ 2] [ 3] [ 6] 。胚乳 は油質、ときに錯道をもつ[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] (下図2p)。胚 は分化しているが小さい[ 1] [ 2] [ 3] [ 5] [ 6] 。
分布・生態
世界中の熱帯 から亜熱帯 域を中心に分布しており、一部は北米 東部や東アジア の温帯 域に自生している[ 7] 。
甲虫 によって送粉 されるものが多いが、ハエ目 やハチ目 が関わることもある[ 7] 。
人間との関わり
モクレン目の植物は精油 やアルカロイド などさまざまな二次代謝産物 をもち、それに基いて利用される例がある。ニクズク (ニクズク科 )の種子をすりつぶしたものはナツメグ 、仮種皮はメースとよばれ、香辛料として広く利用されている[ 8] [ 9] [ 10] (下図3a)。ニクズク属 の種子、モクレン属 の花芽や樹皮、バンレイシ属 の種子などは、生薬 に用いられることがある[ 8] [ 9] [ 11] [ 12] [ 13] [ 14] (下図3b)。ガルブリミマ(ヒマンタンドラ科 )や Virola (ニクズク科 )など幻覚誘発剤に用いられる例もある[ 10] [ 15] [ 16] 。
イランイランノキ(バンレイシ科 )の花から得られる精油は、香水の原料などに利用される[ 17] [ 18] (下図3c)。他にも Cymbopetalum penduliflorum [ 19] や Monodora myristica [ 15] [ 20] 、ギニアペッパーグローブ (X. aethiopica )[ 21] 、モクレン属[ 22] は香料 や香辛料 として利用されることがある。
3d . 露店で売られる
アテモヤ (バンレイシ科)の果実(香港)
バンレイシ属 やポポー 、Polyalthia 、Rolinia deliciosa (バンレイシ科 )など果実が食用とされる例もある[ 17] [ 11] [ 23] [ 24] [ 25] (上図3d)。
モクレン属 やユリノキ属 (モクレン科 )、イランイランノキ 、オウソウカ属(Artabotrys )、マストツリー(Monoon longifolium )(バンレイシ科 )などは、観賞用に植栽されることがある[ 26] [ 27] [ 18] [ 24] [ 28] (上図3e)。また木材として利用されるものもある[ 15] [ 24] [ 29] [ 30] [ 31] 。
系統と分類
モクレン目は分類群として古くから用いられていたが、そこに含まれる植物群(科)には大きな異動があった。古典的な分類体系の1つである新エングラー体系 では、現在クスノキ目 に分類される科など非常に多くの科を含んでいた(下表)。その後一般的となったクロンキスト体系 では現在の範囲に近づいたが、やがて分子系統学的研究が行われるようになり、一部の科がカネラ目 やアウストロバイレヤ目 、コショウ目 に移された(下表1)。
分子系統学的研究からは、モクレン目はクスノキ目 の姉妹群であり、さらにこの系統群(モクレン目+クスノキ目)がカネラ目 とコショウ目 からなる系統群の姉妹群であることが示されている[ 7] [ 34] 。この4目(モクレン目、クスノキ目、カネラ目、コショウ目)からなる系統群は、モクレン類 (モクレン群、モクレン目群、magnoliids)とよばれている[ 7] [ 34] 。モクレン類は、現生被子植物の中でアンボレラ目 、スイレン目 、アウストロバイレヤ目 の後に分岐した植物群の1つであると考えられており、センリョウ目 の姉妹群であるとされることが多い[ 7] [ 34] 。
2022年現在、モクレン目の中には6科が認識されている[ 7] [ 34] (下表2)。分子系統学的研究からは、この6科の中でニクズク科 が最初に分岐したこと、デゲネリア科 +ヒマンタンドラ科 とエウポマティア科 +バンレイシ科 がそれぞれ単系統群であることが示されることが多いが、モクレン科の位置についてはやや安定していない[ 7] (下図4)。
脚注
注釈
^ 2022年現在、ラクトリス科はウマノスズクサ科に含めることも提唱されている[ 34] 。
^ 2022年現在、シキミ科はふつうマツブサ科に含められる[ 34] 。
出典
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外部リンク
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モクレン目 に関する情報があります。
Kabeya, Y. & Hasebe, M.. “モクレン類/モクレン目 ”. 陸上植物の進化 . 基礎生物学研究所. 2022年8月16日 閲覧。
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