『レット・イット・ビー...ネイキッド 』(Let It Be... Naked ) は、2003年に発表されたビートルズ のリミックス・アルバム 。CDは2枚組、アナログ盤は30cmLPと17cmEPのセットで発売された。日本盤を含む一部の地域でビートルズ作品としては初めてコピーコントロールCD が使用された一方、イギリス盤、アメリカ盤などは通常のCD-DA で発売された。この結果、音質の劣化が分かりやすい形で出たとされCCCD版(盤)は不評を買った[ 5] 。その後、2010年に日本盤もCD-DAで再発売された。
概要
1969年1月のいわゆる「ゲット・バック・セッション 」でレコーディングされた楽曲が、フィル・スペクター のプロデュースによりアルバム『レット・イット・ビー 』としてまとめられ、1970年5月にリリースされた。しかし、アレンジがポール・マッカートニー の当初の意向とは異なった物であり、とりわけ「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード 」のアレンジには強い不満を抱いていた[ 6] [ 7] 。
彼にとって「将来発売される“映画”のサウンドトラックとして、フィルのLPが使われるのは不本意」であり、「映画で聴けるテイクが、“ありのままの音”なのではないか」と思い至ったことから、
『レット・イット・ビー』を楽器パート別に録音されているマルチトラックテープ そのものからトラック・ダウン し直し、映画の中で聴ける形に限りなく近くなるようにリミックス で再リリースするという計画に対し、リンゴ・スター とオノ・ヨーコ は同意し、ジョージ・ハリスン も2001年の死の前に同意した。
リミックス盤のリリースはメンバー総意の承認によりなされたが、ミキシングへはほとんど関与しなかった。ミキシングの方針はほとんどアビー・ロード・スタジオ のエンジニア達によって決定され、最先端のテクノロジーが駆使された。しかしながら、演奏された楽曲にさらに音をかぶせて厚みを増したりするようなことはなされておらず、本来の「自然なままの」音(=裸、すなわち「ネイキッド」)を生かすことで当時のビートルズが作ろうとしていたアルバムに近づいたことは確かであり、アルバム・タイトルの由来になっている[ 注釈 1] 。
オリジナル版との違い
オリジナル版『レット・イット・ビー 』に収録されている楽曲のうち「マギー・メイ 」と「ディグ・イット 」の2曲は、アルバムのリミックスを手がけたアラン・ラウス曰く「サウンドトラック・アルバムとしては良いが(中略)正当なアルバムのコンセプトには馴染まない」という理由からカットされた[ 8] [ 9] [ 注釈 2] 。その代わりに映画で使用されたにもかかわらず、オリジナル版には収録されていない「ドント・レット・ミー・ダウン 」が追加されたが、本作に収録されたのはシングル盤『ゲット・バック 』にB面に収録されているテイクではなく、ルーフトップ・コンサートで2回演奏された音源を融合させたもの[ 8] 。「アイヴ・ガッタ・フィーリング 」についても、同じく2回演奏されたものを新たに編集した音源で収録されている[ 8] 。「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード 」は、オリジナル版では1969年1月26日に録音されたテイクが使用されていたが、本作では1月31日に録音されたテイクが使用されている[ 8] 。
各収録曲の変更点は、以下のようになっている[ 8] 。
「ゲット・バック 」 - 1969年1月27日に録音されたテイクをリミックスしており、シングル収録テイクに含まれていたコーダや、『レット・イット・ビー』収録テイクに含まれていたスタジオやルーフトップ・コンサートでのセリフはカットされている。
「ディグ・ア・ポニー 」 - 1969年1月30日に行なわれたルーフトップ・コンサートでのライブ音源をリミックス。オリジナル版と同様に、「All I Want Is You」のイントロとアウトロはカットされている。
「フォー・ユー・ブルー 」 - オリジナル版と同じマスターが使用されているが、冒頭にあったレノンの語りはカットされている[ 10] 。
「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」 - オリジナル版では1969年1月26日に録音されたテイクを使用していたが、本作では1月31日に録音されたテイクを使用している。
「トゥ・オブ・アス 」 - オリジナル版と同じ1969年1月31日に録音されたテイクが使用されているが、冒頭にあった語りがカットされ、レノンのアコースティック・ギターの演奏ミスがデジタル修正されている。
「アイヴ・ガッタ・フィーリング」 - 1969年1月30日に行なわれたルーフトップ・コンサートでの2回の演奏を繋ぎ合わせている。
「ワン・アフター・909 」 - 1969年1月30日に行なわれたルーフトップ・コンサートでのライブ音源をリミックスしたもので、「ダニー・ボーイ 」の即興演奏がカットされている。
「ドント・レット・ミー・ダウン」 - 1969年1月30日に行なわれたルーフトップ・コンサートでの2回の演奏を繋ぎ合わせている。
「アイ・ミー・マイン 」 - 1970年1月3日に録音されたテイクを使用。オーケストラは除去されているが、スペクターが施した編集[ 注釈 3] はそのままとなっている。これについてエンジニアのガイ・マジーは「元々は無編集にするつもりだったけど、あの長さで聴くとあまりにも短すぎるんだ」と語っている。
「アクロス・ザ・ユニバース 」 - レノンのギター とボーカル 、スターのドラムス、タンブーラをフィーチャーしたアレンジとなっており、エンディング部分にはエコーが加えられている。
「レット・イット・ビー 」 - 1969年1月31日に録音されたテイク27Aをリミックスし、テイク27Bに含まれているハリスンのギターソロを繋ぎ合わせている。
収録曲
ディスク1
ディスク2:ボーナス・ディスク: "Fly on the Wall"
1969年に行なわれたゲット・バック・セッション から抜粋された歌と会話を収録したボーナス・ディスク 。再生時間は合計で21分55秒もある。
ボーナス・ディスクには、以下の楽曲が含まれる。特記がないものは、レノン=マッカートニーによる作品。
演奏
ビートルズ
外部ミュージシャン
チャート成績
認定・セールス
各国での販売形態
国
日付
レーベル
販売形態
カタログ番号
日本
2003年11月14日 (2003-11-14 )
東芝EMI
CCCD
TOCP-67300(ディスク1)
TOCP-67301(ディスク2/ボーナス・ディスク)
2004年1月21日 (2004-01-21 )
LP
TOJP-60121(ディスク1)
TOJP-60122(ディスク2/ボーナス・ディスク)
2010年11月3日 (2010-11-03 )
EMIミュージック・ジャパン
CD
TOCP-70895(ディスク1)
TOCP-70896(ディスク2/ボーナス・ディスク)
2013年11月6日 (2013-11-06 )
USMジャパン
TYCP-60029(ディスク1)
TYCP-60030(ディスク2/ボーナス・ディスク)
イギリス
2003年11月17日 (2003-11-17 )
アップル・レコード
CD
595 7132
LP
595 4380
ヨーロッパ諸国
2003年11月17日 (2003-11-17 )
パーロフォン
CCCD
595 7142
アメリカ
2003年11月18日 (2003-11-18 )
CD
CDP 7243 5 95227 2 2
脚注
注釈
^ 出来上がったテープを聴いたリンゴによる「いいね!『裸の"LET IT BE" 』って呼ぶ事にするよ!」というコメントが、ブックレットに書かれている。
^ ただし初回限定盤付属のディスク『Fly on the Wall』にセッション音源が収録されている。いずれもオリジナル版に収録テイクのものとは異なる。
^ 2コーラス目を最後にコピーして繋ぎあわせて曲の演奏時間を延長した
出典
^ Staff, Rovi. Let It Be... Naked - The Beatles | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2020年8月23日 閲覧。
^ “The Beatles: Let It Be... Naked ”. Pitchfork (2003年11月20日). 2009年3月18日時点のオリジナル よりアーカイブ。2020年8月24日 閲覧。
^ Sweeting, Adam (2003年11月14日). “The Beatles: Let It Be... Naked” . The Guardian (Guardian Media Group). https://www.theguardian.com/music/2003/nov/14/popandrock.thebeatles 2020年8月24日 閲覧。
^ “Let It Be... Naked ”. Rolling Stone . Penske Business Media (2003年11月20日). 2020年8月23日 閲覧。
^ “コピーコントロールCDを徹底的に総括する” . asahi.com (朝日新聞社 ). (2004年11月30日). https://www.asahi.com/tech/apc/041130.html 2020年8月23日 閲覧。
^ “The Beatles, Let It Be... Naked ”. Pitchfork . 2018年11月17日 閲覧。
^ “Let It Be” . Rolling Stone . https://www.rollingstone.com/music/albumreviews/let-it-be-19700611 201811-17 閲覧。
^ a b c d e Hurwitz, Matt (2004年1月1日). “The Naked Truth About The Beatles' Let It BeNaked [sic ]”. Mix magazine/ Penton Media, Inc . 2010年1月31日時点のオリジナル よりアーカイブ。2019年12月30日 閲覧。
^ “Archived copy ”. 2004年6月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年12月30日 閲覧。
^ Irvin, Jim (December 2003). “Close to the Edge”. Mojo : 86, 88.
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^ “Billboard 200 Chart ”. Billboard (2013年4月20日). 2021年8月18日 閲覧。
^ "ARIA Charts – Accreditations – 2003 Albums" (PDF) . Australian Recording Industry Association . 2020年8月23日閲覧 。
^ "Gold-/Platin-Datenbank (The Beatles; 'Let It Be... Naked')" (German). Bundesverband Musikindustrie . 2020年8月23日閲覧 。
^ 田辺攻(編)「Gold Album+...認定 2003年11月度 」『The Record』第530号、日本レコード協会 、2004年1月10日、14頁。
^ "Guld- och Platinacertifikat − År 2003" (PDF) (Swedish). IFPI Sweden . 2011年5月17日時点のオリジナル (PDF) よりアーカイブ。2020年8月23日閲覧 。
^ "British album certifications – The Beatles – Let It Be... Naked" . British Phonographic Industry . 2023年9月8日閲覧 。
^ "American album certifications – The Beatles – Let It Be...Naked" . Recording Industry Association of America . 2020年8月23日閲覧 。
^ “Week Ending April 7, 2013 ”. Yahoo! Music (10 April 2013). 17 May 2016 閲覧。
関連項目
外部リンク
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