ロニー・コールマン(2014年)
ロニー・コールマン ことロナルド・ジーン・コールマン(Ronald Dean Coleman、1964年3月13日生まれ)は、アメリカ合衆国 の元プロ・ボディビルダー である。ミスター・オリンピア を8連覇し、ボディビルダーとして史上最高、あるいはアーノルド・シュワルツェネッガー と肩を並べる最も偉大なボディビルダーとして認識されている[ 1] [ 2] [ 3] 。またボディビル競技においてかつてステージを盛り上げたなかでも圧倒的な肉体を持つ選手ともいわれる[ 4] 。IFBBプロ のタイトルを26回獲得しており、そのサイズとコンディションの突出ぶりや[ 5] 、筋肉 の各部位ごとが圧倒的[ 6] [ 7] であることが有名であり、そのきわめて過酷なトレーニング[ 8] が史上最強のボディビルダーと呼ばれる所以の肉体をつくりあげたといわれる[ 9] [ 10] 。
略歴
ロニー・コールマンは1964年にアメリカ合衆国 ルイジアナ州 モンロー で生まれた[ 11] 。 グラムリング州立大学に入学し、会計学の学位を取得して1984年に優等な成績で卒業した[ 12] 。在学中はエディー・ロビンソン監督のもとカレッジフットボール でミドルラインバッカーとしてプレーしていた。卒業後は会計事務所で職を得ることができず、ドミノピザへの就職を余儀なくされた。当時はあまりに貧しかったため食べるものにも困り、従業員特権で無料で食べられるピザを毎日食べていた[ 13] 。その後は警察に転職して、1989年からアーリントン (テキサス州) で警察官として勤務し、2000年から2003年までは予備警察官として活動した[ 14] 。
ボディビルダーとして
自らの歩みについて語るコールマン(2009年10月)
ポージングをするコールマン(2009年10月)
アマチュア・ボディビルダーのブライアン・ドブソンが経営するジム、メトロフレックスに通うことをコールマンに提案したのは、同僚のグスタヴォ・アルロッタだった。ドブソンは、ボディビル大会のミスター・テキサスにそなえて自分のトレーナーになることを条件に、コールマンを自分のジムの永久無料会員にしている[ 15] 。ミスター・テキサスに向けてトレーニングを積んだコールマンは、大会の重量級で1位となり、オーバーオールでも優勝を果たした(その過程でドブソンも破っている)。コールマンがプロで初めて一位を獲得した大会は、1995年のカナダ・プロである。翌年、彼は同じ大会でふたたび優勝し、さらに1997年のロシア・グランプリでも優勝した。1990年代半ばにはパワーリフティング の大会にも出場している[ 16] 。
プロ・ボディビルダーの世界でトップに昇りつめたコールマンであるが、その道のりは決して平坦ではなかった。1992年にはじめてミスター・オリンピアに出場したときは入賞すらできなかった。1994年には15位、1995年には10位、1996年には5位、1997年には9位である。この年はドリアン・イエーツ が6度目のそして引退を控えながら最後のタイトルをとった年だった[ 17] 。次の年はケネス・ウィラー が、ナッサー・エル・ソンバティ やケビン・レブローニ 、ショーン・レイ らを抑えてミスター・オリンピアで10人目のタイトルホルダーとして有力視されていた。しかし、コールマンもこの年のナイト・オブ・チャンピオンズで優勝して業界での評価を大いに高めており、実際に本番ではさらに状態をよくして臨んだ結果、3ポイント差でウィラーを下して、初めてミスター・オリンピアで優勝を果たす[ 17] 。彼はそのまま2005年までこのタイトルを守り続け、ミスター・オリンピアの歴史において最も成功したボディビルダーであるリー・ヘイニー と並ぶ8連覇を達成している。2001年には、アーノルドクラシック とミスター・オリンピアのタイトルを同時に獲得するという初めての記録を成し遂げた(この記録を持っているのはコールマンと2008年のデキスター・ジャクソン だけである)。こうしてミスター・オリンピアに君臨してきたコールマンだったが、2006年にジェイ・カトラー に敗れてその時代は終わりを告げた。ジェイ・カトラーにとっては3年連続で2位に終わっており、これが初めての優勝だった。ミスター・オリンピアの歴史において、複数回にわたってチャンピオンを獲得している選手が、引退以外でそのタイトルを失ったことはわずかに2回しかない。コールマンと、アーノルド・シュワルツネッガーに敗れたセルジオ・オリバ (1970年)だけである。2007年、コールマンは自身最後となるミスター・オリンピアに臨み、4位に終わった。
プロ・ボディビルダーとして成功をおさめたことで、コールマンの名前を冠した商品がいくつも発売されるなど、仕事のチャンスが増えて、彼は世界中をプロモーションのために飛び回った[ 18] 。アメリカ中のジムで、オープンのときにはゲストに呼ばれた。トレーニングにおいては、体の柔軟性を最大限に生かして可動域をとるために、マシン よりもフリーウエイト を好んだ。彼のトレーニング動画は3つの作品になっている。The Unbelievable [ 19] とThe Cost of Redemption [ 20] とOn the Road [ 21] である。こういった動画では、オーバーワークやフォームの間違いについて注意を促す内容もありながら、より熟練したウェイトリフター に向けたアドバイスも行っている。
パワーリフターとボディビルダーとしてキャリアを積む中で、スクワット やデッドリフト で800 lbs(363kg)を挙げるなど、コールマンがトレーニングにおいて扱ってきた超高重量は、彼の身体に深刻なダメージを残し、2007年以降は数えきれないほど手術を繰り返した。たとえば2度の人工股関節置換や椎間板のダメージからくる慢性的な痛みを和らげるための試みなどある[ 22] 。身体のコンディションは悪化していたが、それでもトレーニングは継続していた。以前より軽い重量しか扱えなかったが、それでも筋肉の衰えを防ごうという努力である(2008年の時点)[ 23] 。一方で彼が受けてきた手術は(一回ごとに30万ドルから50万ドルかかっている)結果はまったくふるわないものもあり、その結果彼は補助なしではおそらく二度とまともに歩けない身体になっている[ 24] 。そのため長距離での移動がある場合は車いすを使用している[ 25] 。だが、コールマンは自分の選んだ道に後悔はしていないと語っており、 いかなる代償を支払ってでも最高のボディビルダーになることを目指したと自負している。もし悔いがあるとすれば、これ以上は自分の伝説を打ち立てることができないこと、だとも[ 22] 。
2018年、ブラット・ユーディンによるコールマンの人生をたどったドキュメンタリー作品『ロニー・コールマン: 偉大なる王者』がネットフリックスで配信された[ 13] 。作中では、彼のボディビル人生にインスパイアされたラッパーのクアンによる『Flexin' on Them (Ronnie Coleman)』という曲が流れる[ 26] [出典無効 ] 。
キャラクター
ロニー・コールマンはもともと声が高いことで有名であり、そのトレーニング風景を収録した動画で聞こえるハイピッチな声は特に動画の配信が当たり前となった昨今のトレーニング界隈ではもはやお馴染みとなった[ 27] 。とりわけ有名なのがトレーニング中に自分を奮い立たせるための叫び声で「"Light weight, baby!"」(軽いぜ、坊や!)や 「"Ain't nothin' but a peanut!"」(こんなもんピーナッツじゃねえか!)などの台詞である[ 28] 。なおこれは本人がピーナッツアレルギーによるもの。
私生活
コールマンは敬虔なクリスチャンである[ 29] 。1998年3月にはパリのスポーツエキスポでフランス系レバノン人の女性と知り合い[ 30] 、2007年12月28日にベイルートで結婚しているが、ほどなくして離婚している[ 31] 。コールマンはその後、アメリカ人のパーソナル・トレーナーであるスーザン・ウィリアムソンと2016年4月11日に再婚している[ 32] 。夫妻はテキサス州アーリントンに拠点をうつし、4人の子供をもうけている[ 13] 。
2020年6月、コールマンは手術が失敗に終わったために補助なしではまともに歩くことができないことを明らかにした[ 33] 。彼の証言によれば、3度にわたる手術費用には2百万ドルを支払っている。
身体測定
挙上重量
デッドリフト: – 800 lb (363 kg) x 2 reps (The Unbelievable, 2000)
スクワット: – 800 lb (363 kg) x 2 reps (The Cost of Redemption, 2003)
ベンチプレス: – 500 lb (227 kg) x 5 reps (The Cost of Redemption, 2003)
ダンベル・ベンチプレス: – 200 lb (91 kg) Dumbbells x 12 reps (The Unbelievable, 2000)
ミリタリープレス: – 315 lb (143 kg) x 12 reps (The Unbelievable, 2000)
ダンベル・ショルダープレス: – 160 lb (73 kg) Dumbbells x 7 reps (The Cost of Redemption, 2003)
ベントオーバーロウ: – 515 lb (234 kg) x 10 reps (Relentless, 2006)
Tバーロウイング: – 540 lb (245 kg) x 9 reps (The Unbelievable, 2000) & 505 lb (229 kg) x 12 reps (Relentless, 2006)
フロント・スクワット: – 585 lb (265 kg) x 4 reps (The Unbelievable, 2000)
ハック・スクワット: – 765 lb (347 kg) x 8 reps (The Unbelievable, 2000)
ランジ: – 185 lb (84 kg) x 20 reps per leg (The Unbelievable, 2000)
シュラッグ: – 735 lb (333 kg) x 11 reps (The Cost of Redemption, 2003)
ダンベル・シュラッグ: – 250 lb (113 kg) Dumbbells x 15 reps (Relentless, 2006)
カーフ・レイズ: – 540 lb (245 kg) x 20 reps (Relentless, 2006)
レッグ・プレス: – 2,400 lb (1,089 kg) x 8 reps (The Cost of Redemption, 2003)
フィルモグラフィー
年
タイトル
1998
Ronnie Coleman: The First Training Video
2000
Ronnie Coleman: The Unbelievable
2003
Ronnie Coleman: The Cost of Redemption
2006
Ronnie Coleman: Relentless
2008
Ronnie Coleman: Invincible
2009
Ronnie Coleman: The Last Training Video
2018
Ronnie Coleman: The King
獲得タイトル
年
タイトル
1990
Mr. Texas (Heavyweight & Overall)
1991
World Amateur Championships (Heavyweight)
1995
Canada Pro Cup
1996
Canada Pro Cup
1997
Grand Prix Russia
1998
Mr. Olympia ,[ 17] Night of Champions, Toronto Pro Invitational, Grand Prix Finland, Grand Prix Germany
1999
Mr. Olympia ,[ 17] World Pro Championships, Pride Grand Prix England
2000
Mr. Olympia ,[ 17] World Pro Championships, Mr. Brody Langley, Grand Prix England
2001
Mr. Olympia ,[ 17] Arnold Schwarzenegger Classic , New Zealand Grand Prix
2002
Mr. Olympia ,[ 17] Grand Prix Holland
2003
Mr. Olympia ,[ 17] Grand Prix Russia
2004
Mr. Olympia ,[ 17] Grand Prix England, Grand Prix Holland, Grand Prix Russia
2005
Mr. Olympia [ 17]
2006
Mr. Olympia 2nd, Grand Prix Austria, Grand Prix Holland, Grand Prix Romania
2007
Mr. Olympia 4th
脚注
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^ Robson, David (April 10, 2015). “Who Is The Greatest Mr. Olympia Winner Of All Time? A Critical Review Of Past Mr. Olympia Champions! ”. Bodybuilding.com. December 4, 2016 閲覧。
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^ “Ronnie Coleman: The Cost of Redemption: Ronnie Coleman, Mitsuru: Movies & TV ”. Amazon . December 4, 2016 閲覧。
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読書案内
ロニー・コールマン 著、山本義徳 監修・松田和也 訳『YEAH BUDDY! ロニー・コールマン自伝』国書刊行会、2021年。
外部リンク