北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会
北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(きたちょうせんにらちされたにほんじんをきゅうしゅつするためのぜんこくきょうぎかい、The National Association for the Rescue of Japanese Kidnapped by North Korea. 略称:NARKN)は、日本の市民団体。北朝鮮による日本人の拉致被害者を救出する目的で結成された。通称は「救う会(すくうかい)」[2]。会長は西岡力。 概要沿革1997年(平成9年)1月21日、脱北した北朝鮮元工作員(安明進)の証言により、北朝鮮が国家として1977年当時中学生だった横田めぐみを拉致した事実が発覚、1997年段階で彼女が平壌で生きていることが明らかになり、家族は実名を公表して救出運動を行なうことを決断、同年3月、「家族会」(北朝鮮による拉致被害者家族連絡会)が結成された[3][1]。その「家族会」を支援するために、各地で救出組織が生まれた。「救う会」は、北朝鮮に拉致されたすべての人々を救出するための日本国内の救出運動団体の総称である[1]。 「救う会」は1998年(平成10年)4月より活動を開始した[1]。法人格は取得しておらず、任意団体として活動している。大学教授などの有識者や朝鮮半島関連の研究者も参加している。また、与野党の国会議員で結成された「北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟」(拉致議連)とも連携して活動を行っている[1][注釈 1]。 初代会長であった佐藤勝巳は、「思想や立場の如何を問わず北朝鮮に拉致された日本人を救出することに同意する人なら誰でも参加できる」と述べている[注釈 2]。 2008年(平成20年)7月3日、「体力の限界」を理由に佐藤勝巳が会長を退任し、名誉会長職就任の要請も断った。役員会議は、当面の人事案として、藤野義昭会長、西岡力会長代行という体制でいくことを決定した[5]。 2010年(平成22年)3月28日、会長代行西岡力が「救う会」会長に選任された[6]。 「救う会」では、政府認定の拉致被害者17人(久米裕、横田めぐみ、田口八重子、浜本富貴恵、地村保志、蓮池薫、奥土祐木子、市川修一、増元るみ子、曽我ひとみ、曽我ミヨシ、松木薫、石岡亨、有本恵子、原敕晁、田中実、松本京子)のほかに、寺越昭二、寺越外雄、寺越武志、小住健蔵、福留貴美子、加藤久美子、古川了子の7人を加えた24人を拉致認定している[1]。また、北朝鮮による拉致被害者は100人にせまるものと想定している[1]。 役員と組織現在、34都道府県に、以下の36加盟組織を有する。北海道・青森・岩手・秋田・福島・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨・岐阜・新潟・柏崎・富山・石川・福井・愛知・三重・滋賀・京都・兵庫・奈良・鳥取・広島・山口・徳島・愛媛・高知・福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・青年の会[7]。 「特定失踪者問題調査会」の設立→詳細は「特定失踪者問題調査会」を参照
2002年(平成14年)9月の小泉純一郎首相の北朝鮮訪問、同年10月の日本国政府認定拉致被害者5名の帰国を受け、「救う会」に対し、失踪者のいる家族から、自身の家族の失踪と北朝鮮による拉致との関連を疑う問い合わせが、多く寄せられるようになった[8]。とりわけ、それまで北朝鮮による拉致被害者として全く把握されていなかった行方不明者曽我ひとみ(失踪前は佐渡で看護師をしていた)の生存と帰国は、失踪者のいる家族に強い衝撃と微かな希望を与え、自身の家族もあるいは北朝鮮に拉致され、かの国で生きているのではないかという思いをいだかせることになった[8]。 一方、「救う会」が失踪者のデータベース化を進める過程で、
などのきわだった傾向を示していることが確認できた[8]。これにより、失踪者問題の深刻さと拉致問題とのかかわりがあらためて浮き彫りになったが、それだけに、失踪者を公表するだけして、あとは知らないという姿勢は許されない[8]として、「救う会」ではこうした家族や関係者から問い合わせのあった「北朝鮮による拉致の可能性を完全には排除できない失踪者」の調査を行うこととした[8]。2002年12月30日、失踪者に関するこのような調査活動を「救う会」から分離し、翌年1月10日、「特定失踪者問題調査会」(代表:荒木和博、専務理事:真鍋貞樹)を正式に発足させた[8][注釈 3]。 活動重点項目→「ブルーリボン運動 (北朝鮮拉致問題)」も参照
「家族会」と「救う会」が2019年(平成31年)2月17日に東京都の友愛会館で開いた全国幹事会(家族会・救う会合同会議)で採択した「今後の運動方針」の重点項目は、以下の4点である[10]。 3、については、具体的には、 の頒布や紹介であり、また、被害者の「思い出パネル」を作成し、各地で展示もおこなっている[10]。 運動方針2019年2月の全国幹事会(家族会・救う会合同会議)で採択された運動方針は以下のようなものであった[10]。 (1) 日本政府および世論への訴え
(2) 国際連携の強化
(3) 北朝鮮内部への働きかけと情報収集活動
(4) 政府未認定拉致被害者についての取り組みなど
問題点右翼の活動家、時には暴力団員や新宗教団体関係者などが活動に参加するケースもある。国民運動団体を目指して活動する為、特に運動を始めた初期からの会員は元共産党員などの転向者が多いことと、右翼団体の構成員が同居しており、これが原因で内部分裂に陥った地方組織も存在する[注釈 6]。元会長佐藤勝己によれば、西岡力(現会長)、島田洋一(副会長。福井県立大学教授)、増元照明らがカンパ費で飲食しており、「救う会」「家族会」で問題になっている[12]。元会長佐藤勝巳は2008年6月16日に電子メールで平田隆太郎事務局長に、西岡力が外国に行くとき、「ビジネスを使っていると活動家から聞いたが本当か」と問い合わせたがその返事はいまだに来ていない。元会長佐藤勝巳の会長解任劇はその2週間後に起きた。家族会の増元が「救う会」の、平田隆太郎は家族会の会計監査であり、両名が意を通じれば、会長が知らない間に国内はグリーン車、航空機はビジネスクラスを使用(国会議員から偶然聞いた)できる仕組みになっていた[13]。 元会長佐藤勝巳によれば、「救う会」の中で三重、奈良、島根、徳島、秋田が反主流に属する。反主流勢力と西岡力(現会長。東京基督教大学教授)、増元照明が連合して佐藤排除に動いた。佐藤を排除しなければ、彼らが「救う会」というブランドを使用できなくなる[12]。また「救う会」は、主流・反主流とも家族会の人気に依存し、運動を進めている集団である[14]。 元会長佐藤勝巳によれば、西岡力現会長は平田隆太郎事務局長とともに、横田滋元「家族会」代表、増元照明事務局長に身を寄せ、組織内部で佐藤勝巳の意見を抑えてきた[15]。 元会長佐藤勝巳によれば、横田滋はNGOレインボーブリッヂの小坂浩彰としばしば飲食をし、運動の内部情報を小坂を通じて北に流している。佐藤は激怒し、横田滋を家族会代表から更迭すべきと主張したが、西岡力現会長と平田隆太郎事務局長は「そんなことはできない」と頑強に反対した[16]。佐藤勝巳は西岡力現会長と平田隆太郎事務局長が横田滋を辞めさせられないから、北に甘く見られるのは当然だと述べている[16]。 元北朝鮮工作員安明進は、自分がマスコミに出る際のギャラはほとんど救う会が受け取っていたこと、救う会側に頼まれて白紙の領収書にサインしたことも何度もあったと述べている。救う会はこれを全面否定している[17]。 佐藤勝巳元会長と西岡力現会長は、ある篤志家から佐藤勝巳に渡った1000万円の使途をめぐる疑惑発覚当時、情報収集のために使ったと主張していた。そのうち970万円は北朝鮮元工作員安明進に渡ったと説明し、領収書も明らかにしていた。しかし、週刊新潮2006年10月12日記事「『救う会』を特捜部に告発する『告発テープ』」によれば、安明進は次のように述べている。「1000万円は間違い。1000万円というのはウソです」。領収書について、安明進は次のように述べている。「内容もわからないものにサインするのは絶対に嫌だと言ったが、結局、金額も何も記していない紙にサインをして渡してしまった。西岡さんは"このことは言わないほうがいい"と言っていた」。「救う会」はこの記事を全面否定している。 同会のホームページには、平成14年から24年までの「決算報告」が掲載されているが、勘定科目の中にいくつかの支出が合算されて計上されており、それぞれがいくらなのか不明である。例えば、平成24年決算報告には「国際活動費」が969万8360円と出ている。備考欄を見るとこれは「外国派遣・招聘」「通訳・翻訳費」「情報収集費」から成るようだが、それぞれがいくらなのかわからない。「外国派遣」「情報収集」とは何を意味するのか不明である。 平成19、20年「決算報告」には「雑支出」としてそれぞれ106万3100円、212万2772円と記載されているが、「雑支出」の意味が記載されていないので中身は不明である。「雑支出」という項目の備考が、再び「雑支出」となっている。「備品費」「消耗品費」「手数料」「旅費交通費」「通信発送費」「印刷費」「手数料」という勘定科目は別に記載されているので、これらに相当しない雑な支出をしたことになる。平成14年「決算報告」では「雑支出」は備考欄で「振込手数料」と記載されていた。平成15年「決算報告」では「手数料」という勘定科目が新設され、そこに「振込手数料」が入っている。平成15年「決算報告」以降、平成20年「決算報告」まで「雑支出」という勘定科目の備考欄は「雑支出」と記載されているだけなので、中身は不明である。平成21年の「雑支出」の備考欄には「弁護士費用」「慶弔費」「雑支出」とある。平成22、23年「決算報告」の「雑支出」の備考欄は「慶弔費等」になっている。 同会の規約がホームページには掲載されていないので、カンパやバッジ販売で得た資金を誰がどのような権限で、どんな支出基準により配分しているのか不明である。メールニュースには米国や韓国を同会の取り組みとして訪問した役員名が明記されているが、誰がどんな権限と基準で「海外派遣」や「情報収集」を決定しているのか不明である。 「情報収集」の結果、どんな情報が得られているのかについて、ホームページやメールニュースには説明はない。メールニュースによれば、同会は拉致された可能性のある人物の写真を入手しているようだが、それが「決算報告」に記載されている「情報収集」の結果なのかどうかは不明である。「情報収集」という語の定義が「決算報告」にはない。 支出に関する規定が同会に存在するかどうか、不明である。支出規定が存在しなければ、ある支出が適正になされているかどうか判断できないから、通常の企業や法人で行われている「会計監査」は困難である。財務諸表が作成されていないなら、「会計監査」は成立しない。 佐藤勝巳がなぜ会長を解任されたのかについて、同会からの説明はない。会長など役員の解任規定が存在するのかどうか不明である。 同会に対しカンパの使途や資金配分決定権限の所在の情報開示を要求する制度については、ホームページには掲載されていない。 同会はメールニュースで平成11、12、13年の「決算報告」を配信していた。平成15年末には貸借対照表をメールニュースで配信していた。現在のホームページの「決算報告」の欄でこれらが掲載されていない理由は不明である。貸借対照表はその後発表されていない。平成14年末には財産目録をメールニュースで配信していた。財産目録はその後発表されていない。 平成14年「決算報告」まではカンパの口数が記載されていた。その後の「決算報告」ではカンパの口数は記載されなくなったが、理由は不明である。 平成15年「決算報告」以後、「国際活動」の中に「情報収集」という項目が入るようになった。それまでの「決算報告」にはこの記述はない。平成14年までの「決算報告」とそれ以後の「決算報告」は、勘定科目の内容が多少異なっているようだが、言葉の定義がどこにもないので詳細は不明である。 不祥事脚注注釈
出典
参考文献
関連項目
外部リンク
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