坂道発進補助装置坂道発進補助装置(さかみちはっしんほじょそうち)は、坂道発進時に運転手が犯しやすい、車両の後退を抑制するシステムである。 概説マニュアルトランスミッション(MT)車で坂道発進を行う場合は半クラッチ操作が必要だが、乗用車に比べて車両重量や積載量の重い大型車では乗用車以上に車両後退を犯し易くなる。そこで安全確保の見地から運転手の技量補完を図るべく1990年代に本装置が開発された。 基本的な構造はブレーキ配管に電磁弁を追加したもので、空気ブレーキ・油圧ブレーキを問わず容易に装備できることから、日本国内では多くのバスや最大積載量2tクラス以上のトラックに標準またはオプションで設定されている。乗用車では本田技研工業のN-BOXやN-WGNなど[1]に搭載されている。(後述) 日本国内の大型車メーカー4社ごとの商標は下記のとおり。
作動概要
車速センサーが車両の停止を感知すると、コンピューターが電磁弁を作動させブレーキ力を保持するので、ブレーキペダルから足を離しても、車両は停止したままになり、計器板には作動状態を示す表示灯が点灯する。
クラッチを踏み込み、ギアをニュートラル以外のポジションにし、クラッチを繋ぐと、クラッチが繋がる寸前に、電磁弁が作動しブレーキが緩解される。(クラッチペダル位置センサーによりブレーキが緩解されるため、クラッチが減った場合など、緩解ポイントがずれるが、緩解ポイントは電気的に微調整ができるので、問題はない) 注意点
普通車用の坂道発進補助装置従来は大型車用途の装置が多かったが、2000年代からは普通車用途でも「オートパーキング」、「ヒルスタートアシスト」などの名称を持つ坂道発進補助装置が装備されることが多くなった[いつ?]。坂道発進が難しいとされるMT車をはじめ、トルクコンバータを持たないAT車で装備が拡大している。ほとんどの場合は姿勢制御装置(例:ESP、VSC、VDC)のブレーキ圧制御を利用し、停止時のブレーキ圧を記憶する方式である。近年[いつ?]普及してきたデュアルクラッチトランスミッション(例:フォルクスワーゲンのDSG)ではクリープ現象を擬似的に再現する場合があるが、急な坂道では力が弱く後退してしまうため、その欠点を補うものとして装備されている。通常のトルクコンバータを持つAT車でも操作性を向上させるため装備されることも多くなった。プリウスなどトヨタ自動車のハイブリッドカーでは車輪直結型のモーターを制御し、モーターのトルクで後退を防止する機能を持たせている。 アフターパーツとしての坂道発進補助装置1980年代前半、まだAT車の比率が少なかった時代に曙ブレーキ工業がスライドストッパーという名称で坂道発進補助装置を発売したことがあった。 鉄道車両の坂道発進補助装置鉄道車両では、ワンハンドル車で運転台に「勾配起動」スイッチが設置されている車両が多い。鉄道車両、特に電気車においては回路保護などの観点からブレーキを緊締したままの力行ができなくなっている事が多い。さらにワンハンドル車では制動・力行のポジションが一直線上に並んでいる構造から、ブレーキを緊締しながらの起動ができない。そこで勾配起動スイッチを押すことで空気ブレーキを緊締し、マスコンハンドルを奥のブレーキ段から手前の力行(加速)段に入れてブレーキを緊締したまま力行回路を構成した状態を作り出し、勾配起動スイッチを解除する事でブレーキを緩解し加速する。 脚注
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