『大怪獣バラン 』(だいかいじゅうバラン)は、1958年 (昭和 33年)公開の東宝 が制作した怪獣映画 [ 17] [ 11] 。モノクロ 、東宝パンスコープ 作品[ 出典 5] [ 注 4] 、同時上映は『僕は三人前』[ 出典 6] [ 注 5] (脚本:井上薫、新井一 / 監督:瑞穂春海 / 主演:フランキー堺 / 東京映画 作品)。
ストーリー
ある日、東北地方 の北上川 上流の秘境にて、シベリア 地方にしかいないはずのアカボシウスバシロチョウ (英語版 ) [ 注 6] が発見される[ 15] [ 22] 。ただちに杉本生物研究所の所員2名が調査に向かうが、ともに湖の付近で原因不明の怪死を遂げる[ 15] [ 22] 。
杉本博士の助手の魚崎、犠牲になった所員の妹で記者の由利子、カメラマンの堀口の3人は真相を解明すべく現地へ向かい、外部から隔絶された集落・岩屋村の人々と出会う[ 15] [ 22] 。部落の神主は湖に眠る伝説の怪物・婆羅陀魏山神の祟りを警告して魚崎たちを追い払おうとし、湖付近にて行方不明となった部落民の子供すら見捨てようとするが、迷信に固執する彼らの言動に激怒した魚崎は、部落民たちを扇動して子供の救出に向かう。しかし、彼らの前に怪獣バランが湖から出現して部落を破壊したうえ、ただちに出動した防衛庁の砲撃をものともしない[ 22] 。逃げ遅れた由利子と魚崎が窮地に陥る中、杉本の指示で発射された照明弾によってバランは山頂へ誘導されるが、手足から被膜を広げて飛び去っていく。
その後、銚子 沖に現れたバランを東京湾 にて迎え撃った自衛隊の護衛艦隊による執拗な爆雷攻撃もその強靭な表皮には無力だったため[ 15] [ 22] 、藤村博士の開発した特殊火薬の使用が提言されるが、藤村自身は効果に懐疑的な見解を示す。やがて、バランは羽田空港 へ上陸し、その都心侵攻を阻止すべく自衛隊も空港に布陣して総攻撃に出る中、ようやく特殊火薬が到着する[ 15] [ 22] 。魚崎がトラックを利用した爆破攻撃を仕掛けるが、藤村の懸念通りバランの表皮には通用しない。しかし、杉本が部落での経験から照明弾内に時限装置付きの特殊火薬を仕込む作戦を提案する。これが功を奏し、照明弾を2発飲み込んだバランは東京湾へ逃げ込んだところで体内から爆破され、死亡する[ 15] [ 22] 。こうしてバランの脅威は去ったものの、同時に人類はその存在の謎を解明する手段を永久に失ったのだった。
むささび怪獣 バラン
飛膜を広げたバラン
中生代 の水陸両棲の動物や人間を捕食する肉食の巨大爬虫類 [ 出典 13] [ 注 9] バラノポーダの生き残りで[ 出典 15] 、岩手県北上川 上流の湖に棲み、外部から隔絶された集落にて破羅陀巍山神 (バラダギさんじん、「バラダギサマ」とも)と称されて土着信仰されていた[ 出典 16] 。頭から尻尾の先まで背中を甲羅のように厚い皮膚が覆い、スリムではあるが筋肉質な手足の指は人間と同様に5本となっている[ 44] 。顔の周りの角と頭から背中にかけて半透明の長い有毒のとげが特徴で、通常は四足歩行だが二本足で立ち上がることや、ムササビ のように体側部と腕と後ろ脚の間に薄い飛膜を広げて音速で滑空することもできる[ 出典 17] など、陸海空での活動が可能である[ 出典 18] 。また、身体は柔らかく、爆雷などの攻撃を無力化する[ 18] 。
研究員たちを襲ったことがきっかけで正体が判明し、自衛隊の攻撃で眠りを覚まされて集落を破壊して飛び去ったあと、銚子沖や浦賀水道から羽田空港に上陸して暴れるが[ 32] 、光る物を飲み込む習性を利用され、藤村博士の作った強力な特殊火薬 が仕込まれた照明弾 を飲み込み、内部から爆破されて死亡する[ 出典 19] 。
肉食恐竜のように見えて飛行能力を有することから、ゴジラ とラドン の特徴を併せ持つと評される[ 2] 。マルサン によれば、「爬虫類 ゴジラ属ラドン科バラノポーダ」[ 47] に分類 され、ポスターではゴジラやラドンをしのぐと述べられている。
体長は十数メートルから100メートルと資料によって異なる[ 注 10] が、羽田空港に出現したシーンでは、ゴジラのように巨大な生物として描かれている。
別名は表題の「大怪獣[ 48] 」のほか、「東洋の怪物[ 33] 」「東洋の大怪獣[ 49] 」「むささび怪獣」「有翼膜竜[ 51] 」など多数存在する。
準備稿では、「婆羅陀魏」の名称はなく、単に「山神」と称されていた[ 33] 。
造形
頭部は利光貞三 、胴体は八木勘寿、八木康栄、表皮や背中のとげは村瀬継蔵 による[ 出典 20] 。
背中のとげは、生物の一部らしい透明感を表現しようと村瀬が出したアイディアにより、切ったゴムホースの切り口にビニールテープを貼って作られた[ 出典 21] [ 注 11] 。両脇の被膜はビニール製[ 45] 。目には電飾が組み込まれている[ 55] 。背中のウロコは、ピーナッツ の殻を押し付けたもの[ 54] [ 注 12] 。体色は、数少ないカラースチール から茶系[ 注 13] であることが確認できるが、人工着色のスチールでは緑色となっている。手足はホック式になっており、開閉が可能となっている[ 55] 。他の怪獣のスーツよりも薄手であったため、スーツアクターは火傷を負うこともあった[ 45] [ 11] [ 注 14] 。
絵コンテでは羽田空港の管制塔を壊す描写はなかったが、長い尾を活かすために空港ビルのセットが当初の予定より2割増しで作られた[ 45] [ 53] 。美術助手の井上泰幸 は、円谷英二 から指示通りに制作しなかったことを叱責されたが、理由を説明すると理解を示し、その後は円谷が予算について意見することはなくなったという[ 45] 。
着ぐるみのほかに2尺の飛び人形、2尺の上半身のギニョールも作られた[ 出典 22] 。洋上戦では、スーツとギニョールを使い分けている[ 8] 。
飛行シーン用に作られた3分の1サイズのミニチュアは、1966年から1967年にかけて東宝倉庫での現存が確認されており、『週刊少年マガジン 』などに写真が使われている。1966年7月19日に放送された『11PM 』の大阪、よみうりスタジオで収録された「怪獣供養」では、バランの飛び人形が祭壇に飾られている[ 57] 。
『怪獣総進撃』にはこの3分の1サイズのミニチュアも使用されており、富士山麓のシーンで確認できる[ 34] 。同作品には並行して新造形の90センチモデルが使用されており、1980年代には同サイズのゴロザウルス やモスラ 成虫、『ノストラダムスの大予言 』の大コウモリなどとともに東宝特美倉庫での保存が確認されている。現在も首のみ現存し、関連イベントで展示されることがある。
撮影・演出
スーツアクターは手塚勝巳 [ 6] [ 53] 、中島春雄 [ 出典 23] 。おもに、手塚が水上、中島が陸上を担当していた[ 53] 。手塚は、海に潜るシーンで点火装置のタイミングがずれ、感電してしまったという[ 53] 。中島は、前屈みになると脚の関節が人間のようになってしまうため、ラドンと同様に足元を見せないことを心がけていた[ 45] 。
バランが漁船を転覆させるシーンでは、当時導入し始めたスクリーン・プロセス を用いている[ 53] 。
スタンダードサイズのフィルムをトリミングしたため、出現シーンでは体を上下させる際に頭が見切れてしまっている[ 8] 。
尾を振って暴れるシーンには、『ゴジラ 』(1954年版)でのゴジラ の映像を流用している。
鳴き声にはコントラバス を用いている[ 59] 。
『怪獣総進撃』に登場するバラン
『怪獣総進撃 』では、小笠原諸島の怪獣ランドで保護されている怪獣として登場する。『大怪獣バラン』の登場個体とは別個体と推測されている[ 65] [ 63] 。出現地点は青木ヶ原[ 48] 。
資料によっては名称をバラン(二代目) としている[ 出典 26] 。
『大怪獣バラン』での着ぐるみは痛みが激しかったために使われず、新造された90センチメートル(3尺)の飛び人形[ 出典 27] と『大怪獣バラン』当時のギニョールを補修したもの[ 出典 28] がエピローグのカットなどに登場するのみであった[ 出典 29] [ 注 16] 。飛行ポーズは『大怪獣バラン』ではまっすぐに手足を伸ばして広げたものであったが、本作品では少し手足を曲げた状態で製作されている[ 44] 。製作発表会のスチールでも、ほかの怪獣と並んで飛び人形が吊られているだけであった。新造された人形の頭部は、2014年時点で現存が確認されている[ 72] 。
『怪獣総進撃命令』と題された検討用脚本ではラドン とともにキングギドラ と戦う予定だったが、実際はマンダ やバラゴン と同様に戦闘には参加していない[ 66] [ 67] 。また、鳴き声はなく名前すら呼ばれていないが、DVDによる映像特典では名前は呼ばれている。
身長については、公開当時の設定ではゴジラと同程度としていた[ 出典 30] 。「身長:30メートル、体重:1万5千トン[ 48] 」「身長10メートル、体重60トン[ 出典 31] 」と設定されている書籍や初代と同じ数値を採用している書籍もある[ 出典 32] 。資料によっては、幼体とする説を記述している[ 出典 33] 。
その他の作品に登場するバラン
ゴジラシリーズ内での登場
ゴジラシリーズ内での登場(映像作品以外)
1973年『たのしい幼稚園 』(講談社)に掲載された絵物語『ゴジラ対バラン』(作・小林一邦、絵・境木康雄)に登場[ 80] 。
ファミリーコンピュータ 版ゲーム『ゴジラ』では、ボスキャラクターとして2面から最終面に登場する。本作品ではX星人 に操られる怪獣軍団の1匹という設定である。攻撃手段はパンチとキックのみ。一定以上のダメージを受けると、大きくのけぞる特徴を持つ。
アニメ映画『GODZILLA 』の前日譚を描く小説『GODZILLA 怪獣黙示録 』では、複数の個体が登場。2030年後半に確認された2体目の個体(バランII)は太平洋でゴジラに襲われ、アンギラスIVやバラゴンIIとともにロサンゼルス まで逃げ延びてくるが、飛んで逃れようとした瞬間に熱線を浴びせられ、死亡する[ 81] 。
ゴジラシリーズ内での登場案(企画段階での登場予定)
ゴジラシリーズ以外の他作品への登場
映画『アワモリ君乾杯! 』(監督:古澤憲吾 / 主演:坂本九 )では、後半で東宝砧撮影所を舞台として展開する追っかけシーンにバランの着ぐるみが登場する。
1966年に朝日ソノラマ から発売されたソノシート 『大怪獣戦 30怪獣大あばれ!!』収録の「宇宙怪獣対地球怪獣」には、宇宙怪獣と戦う地球怪獣空軍の1体として登場する[ 92] 。
1983年に発表された安永航一郎 の漫画『県立地球防衛軍 』では、ヒロインのバラダギ大佐こと原瀧龍子の回想シーンに羽田空港にて照明弾を食べて死んだ彼女の親という設定でバランが登場。愛称の「バラダギ」も、婆羅陀魏山神が元ネタとなっている。
映画『パシフィック・リム: アップライジング 』では、イェーガーが倒した怪獣のリストにバランのほか、アンギラスのような個体、バラゴン、バトラ、ガイガン、ムートー、ガメラ、ヤンガリー、ギャオス、ギロン、ジャイガー、ジグラ、クローバー が含まれている。
登場兵器
架空
特殊火薬[ 33]
藤村博士が開発中の新型火薬 。もともとはダム 工事の効率を上げるために作ろうとしていたもので、通常のダイナマイト と同じ量で使っても、その威力は20倍まで増大している。ただし、その威力を発揮するのは岩盤 などの内部に埋め込まれた状態のときのみであり、直接貼り付けて爆発させれば、通常のダイナマイトと大差ないものである。
この火薬を積み込んだトラック を乗り越えようとしたバランの真下にて爆発させるものの、効果は上がらずに終わる。しかし、光る物質を飲み込むという習性を利用し、時限装置 を付けて照明弾 内に封入して投下すると、これをバランが飲み込み、体内にて爆発させることに成功する。
準備稿では、気球から投下されるという展開であった[ 33] 。
24連装ロケット砲車[ 33]
実在
キャスト
スタッフ
参照[ 6] [ 17] [ 106]
ノンクレジット
製作
企画
この変更は強制されたものです。元々小さな画面で大きくて迫力がでるように撮影していたのに、突然同じ映像を大きな画面で同じ印象を持たせる必要が生じたのです。そんなに上手くいくものではありません。それに加えて、そもそも全3話のつもりで撮影していたのに、1本のまとまったストーリーに作り直すことになったのです。もちろん、上手くいくわけがありません。調整するのにとても苦労しました。事務方の企画者は、現場の作業を全く理解していないのです。
東宝の方針転換に対する本多猪四郎の主張[ 117]
1957年、海外資本のAB-PTピクチャーズ (英語版 ) は東宝 に対して、東洋の怪物を題材にしたテレビ放送用の新作怪獣映画の共同製作を持ちかけた[ 118] [ 38] 。打診を受けた東宝は1話30分構成の全4話[ 22] [ 38] 、CM挿入はフェードイン/アウト方式とする『大怪獣バラン』の製作を企画した。この際、田中友幸 は収益を確保するために、あえて低予算で製作する方針を決めた[ 119] 。
原作は怪奇小説家として知られ、『空の大怪獣 ラドン 』も手掛けた黒沼健 である[ 45] [ 19] 。後年、黒沼は「『空の大怪獣 ラドン』がアメリカで公開された後、アメリカから東宝に依頼があったそうです。それで、田中さんから“何でもいいから考えてくれ”と言われたんです」と語っている。脚本の執筆は関沢新一 が担当した。『大怪獣バラン』は彼が最初に手がけた怪獣映画であり、後年「ゴジラシリーズ 」の脚本に多く携わることになる[ 出典 39] 。執筆に際しては「ベーシックでシンプルなもの」を書くように指示を受けたという。また、海外輸出を意識して「東洋」の要素が強調され[ 出典 40] 、準備稿でのタイトルは『東洋の怪物 大怪獣バラン』となっており[ 117] 、この副題は公開時のキャッチコピーや怪獣バランの二つ名としても用いられている[ 33] 。一方、『ゴジラ 』以来、東宝特撮映画のテーマとなっていた核の恐怖は扱われていない[ 106] [ 22] 。黒沼は羽田空港 の地下燃料貯蔵庫となっているエプロン へ戦闘機が墜落して自爆し、その大爆発にバランが巻き込まれるというラストシーンを提案したが、映画には採用されなかったとしている[ 122] 。また、子供たちがバランの真似をして遊ぶシーンがあったが、こちらも採用されなかったという[ 123] 。
撮影
1958年7月から撮影が始まり、形式はモノクロ、フィルムはアスペクト比1.33:1のスタンダードタイプで撮影された[ 出典 41] 。当初は日米合作作品として製作が進んでいたが、途中でAB-PTピクチャーズが倒産してしまい[ 124] [ 119] 、これに伴い東宝は『大怪獣バラン』をテレビシリーズから劇場映画として公開する方針に転換した[ 125] [ 38] 。本多猪四郎 は東宝の方針転換による撮影をやり直すことができなかったため、ワイドスクリーン用に『怪獣王ゴジラ 』の日本公開時に用いた「ブローアップ」という方式を採用し、東宝は2.35:1の「東宝パンスコープ 」として売り出し、これにより本作品は東宝特撮 初のシネマスコープ 版映画(東宝パンスコープ)となった[ 出典 42] [ 注 22] 。後年のインタビューで本多は、途中で撮影方式が変わってしまったため苦労した旨を語っている[ 127] 。
プール撮影中にライトの電源ボックスが水の中に落ち、バランの着ぐるみに入っていた手塚勝巳が感電して失神したが[ 43] 、救急車が来たころには意識が戻っていた。また、トラックがバランの下で爆破するシーンでは中島春雄が腹を火傷した[ 129] 。バランが船に突っ込むシーンは、相模川で中島が入ったバランの着ぐるみをワイヤーで釣ってモーターボートで引っ張って撮影したが、水の抵抗で着ぐるみが沈み、中島は溺れかけた(当人はそのことを覚えていない)[ 129] 。羽田空港のセットは、特技監督の円谷英二 が想定していたよりも大きく作られた[ 11] [ 8] 。東宝のスタジオで撮影できない部分は、サウンド・ステージ (英語版 ) と安普請の撮影セットを借りて撮影している。人々が避難するシーンは東宝の敷地内で撮影したため、一部のシーンに東宝のオフィスやサウンド・ステージが映り込んでいる[ 131] 。撮影は28日間行われ、8月中旬に終了した[ 123] 。
自衛隊の攻撃シーンには、実際の演習映像や『ゴジラ』『ゴジラの逆襲 』からの流用映像が用いられた[ 出典 43] 。本多によれば、演習映像は既存のものではなく、実際の演習で撮影を行ったという[ 132] 。
フィルムに関して、「劇場用のオリジナル版とは別に輸出用のテレビ放送版も製作された」という資料が存在する。これによると、伊福部昭 は8月27日から29日にかけてテレビ放送用の音楽を録音し、3本のフィルムリールを含めたテストプリントがロサンゼルス の国際東宝に送られたとされる[ 117] 。また、映画史家のスチュアート・ガルブレイス4世 (英語版 ) は「東宝が英語吹替版を製作していた」と主張しているが、彼の主張を裏付ける資料は発見されていない[ 124] 。
アメリカ版
『Varan the Unbelievable 』のブラッドレー司令とシズ子
アメリカでは『Varan the Unbelievable 』[ 出典 44] のタイトルで、シネスコ版の映画として公開された[ 4] 。上映時間が70分だったため、『金星ロケット発進す 』と2本立てで上映された[ 118] 。監督・プロデューサーはジェリー・バーウィッツ、脚本はシド・ハリス。
アメリカ版は大幅な変更が行われ、主人公は日本在住のアメリカ軍 将校ブラットレー司令(演:マイロン・ハーレー (英語版 ) )、ヒロインはその秘書シズ子[ 注 23] (演:小林ツル子)にそれぞれ変更された[ 出典 45] 。また、ストーリーもバランの撃破に出動したブラットレーがバランの逆襲に遭ってシズ子とともに洞窟へ追い詰められる[ 133] 、バランがトラックの爆薬で倒される[ 1] など、かなりオリジナル要素が含まれている。また、バランが出現する原因は「バランの住処の湖で、アメリカ軍の科学者が脱塩化実験を行ったため」と設定された。オリジナル版の映像は15分間しか使用されず、東宝のスタッフは全員クレジットされていない。また、伊福部の音楽は儀式の曲以外は全て変更され[ 134] 、一部のシーンでは『戦慄!プルトニウム人間 』の音楽に差し替えられている[ 135] 。
1958年10月に六社協定 によって劇場映画のテレビ放映が禁止となり、テレビ映画として製作された作品でも劇場公開されたものはこの範疇に含まれ、輸出の際もテレビ放映権を付与しないことが決定された。これにより、前述の通り本来はアメリカからの依頼でテレビドラマとして製作された本作品も、劇場公開されることとなった[ 4] 。なお、本多は1980年代に入るまでアメリカ版の存在を知らなかった[ 127] 。
評価
『Varan the Unbelievable 』のポスター
日本版
本多は『大怪獣バラン』について、「満足できる作品ではなかった。最初から作り直すことができれば、自衛隊のシーンはもっと派手にできたかも知れない。撮影は全て小規模なセットで行い、わずかにロケーション撮影をしただけだった。もっと良い仕上がりにできたはずなんだ」と語っている[ 131] 。また、田中も「イージーな話づくりで失敗作となった」と評している[ 137] 。
ゴジラ・ストアの特別企画「第2回 あなたが選ぶ!東宝怪獣新作ソフビフィギュア」では、バランが1位を記録した[ 138] 。
アメリカ版
『バラエティ 』誌は、「『ゴジラ』『怪獣ゴルゴ 』『最後の海底巨獣 』に続く、ニッチ層を支える独創性に欠けたモンスター映画」と批評している。また、「ハリスの脚本もバーウィッツの演出も、観客の興味を維持させることができていない」とも批評している。
『トーキョー・ウィークリー』誌は、「バランは羽田空港を襲っているが、これは古いゴジラ映画の結末を思い起こさせる。目新しいものは何もない。怪獣映画では、これしかやることがないのだ」と批評している[ 131] 。
作家のデイヴィッド・カラットは、アメリカ版のブラッドレー司令が日本人を救うために努力したにもかかわらず、救おうとした人々から誤解され攻撃された人物と見なしている。彼はブラッドレー司令の姿を日本占領期のアメリカ に例え、日本映画界がこの問題をタブー視していたと指摘したうえで、「極めて政治的な内容だったことは評価に値する」と主張している[ 135] 。
映像ソフト
1980年代に東宝から発売されていたVHSビデオでは、部落に関してや「日本のチベットと呼ばれる場所」といった、差別的表現にあたる台詞のあるシーンがカットされていた[ 131] 。
1998年12月23日にニューマスターによるレーザーディスク とVHSが東宝ビデオより発売された[ 141] [ 107] 。映像・音声ともにノーカットで[ 107] 、新たに予告編などを収録している[ 141] 。
DVD
2005年1月21日発売[ 142] 。オーディオコメンタリーは村瀬継蔵(造形)[ 142] 。
2014年2月7日、期間限定プライス版として再発売された。
2015年7月15日、東宝DVD名作セレクションとして再発売された。
2018年4月17日、ゴジラ全映画DVDコレクターズBOX vol.47として発売された。
アメリカでは2005年に日本のオリジナル版を収録したDVDが発売された[ 124] 。
Blu-ray
2022年6月15日に発売された『東宝 怪獣・特撮 Blu-ray 2枚組』に収録。
漫画
『大怪獣バラン』[ 143]
作画:藤田茂 / 出版:あかしや書房(書き下ろし単行本) / 発行日:1958年10月5日[ 144]
備考
脚注
注釈
^ 書籍『ゴジラ来襲』では、「VARAN」とも表記している[ 2] 。
^ a b ノンクレジット
^ 資料によっては、「82分[ 16] 」「86分[ 2] 」と記述している。
^ 米国 のシネマスコープ とほぼ同じワイドスクリーン版だが、専用のアナモルフィック・レンズ を使用した方式ではなく、35ミリ・スタンダード版で撮影されたフィルム面の上下をブラックでマスキングしてシネマスコープ版に近い縦横比とした安価な方式。したがって、撮影時に収録されているはずの映像情報がプリント面の上下で潰され、いくつかのカットでは人物の顔アップやミニチュアセットなどの上下が見切れたような画になっている[ 19] 。また、巻頭の東宝マークも東宝パンスコープ用のものが用いられている。
^ 資料によっては、『フランキーの僕は三人前』と記述している[ 出典 7] 。
^ このチョウ自体は実在するが、実際の生息地は沿海州 から朝鮮半島 、華南 にいたる。
^ 資料によっては、「ゴジラと同程度」と記述している[ 26] 。
^ 資料によっては、「ゴジラと同程度」[ 26] 、「2万5千トン」[ 19] と記述している。
^ 劇中では単に「怪獣」としか呼ばれない。資料によっては「恐竜」と記述している[ 出典 14] 。
^ 書籍『東宝特撮映画大全集』では、不明としたうえで異説として「身長10メートル、体重60トン」のデータがあると紹介している[ 33] 。
^ 村瀬は、雑貨店を訪れた際に店長がホースで水を撒いている様子を見て、ホースを用いることを思いついたという[ 52] [ 54] 。
^ 村瀬によれば、八木兄弟が千葉の親戚から送られてきたピーナッツを食べていたことがきっかけであった[ 54] 。
^ 村瀬はチョコレート系のセピア色と述べている[ 53] 。
^ 中島は、トラックが突っ込んでくるシーンで火傷を負ったという[ 56] 。
^ 資料によっては、トビトカゲ怪獣 [ 61] 、ムササビ怪獣 [ 62] (むささび怪獣 [ 63] )、大怪獣 [ 42] と記述している。
^ 資料によっては、人形1体と記述している[ 71] 。
^ このイメージモデルは2018年時点でも現存しており、同年12月19日から2019年1月27日まで日本工学院専門学校 にて開催されたイベント「特撮のDNA -『ゴジラ』から『シン・ゴジラ』まで-」に、アンギラスやバラゴンのイメージモデルとともに展示された[ 90] 。
^ 実物大の部分セットも制作された[ 101] 。
^ 偵察窓部分のセットも制作された[ 101] 。
^ 当初は藤木悠 が候補に挙げられており、本読みが行われていた[ 112] [ 12] [ 53] 。
^ 資料によっては、源(部落の少年) [ 106] 、部落の少年・三吉 [ 114] と記述している。
^ 「東宝パンスコープ」の名称が使用されたのは本作品のみである[ 19] [ 22] 。
^ 文献によってはシズカになっている[ 133] [ 1] 。
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出典(リンク)
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外部リンク
作品
怪獣映画
ゴジラ映画
作品
昭和シリーズ 平成vsシリーズ ミレニアムシリーズ 2010年代以降 アニメ映画 アメリカ映画
テレビ・Web番組 関連作品
その他
関連人物
プロデューサー 原作者 脚本家 映画監督 特技監督 音楽家 スーツ・モーションアクター 彫刻家 その他
カテゴリ
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他のシリーズ
上記以外の映画
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関連項目