愛と虐殺の日々
『愛と虐殺の日々 歴代小教典大全』(あいとぎゃくさつのひび れきだいしょうきょうてんたいぜん)は、日本のヘヴィメタルバンドである聖飢魔IIの第八大教典[注釈 1]。 魔暦紀元前8年(1991年)12月13日の金曜日にソニー・ミュージックレコーズのFITZBEATレーベルから発布された2作目のベスト・アルバム。ベスト・アルバムとしては『WORST』(1989年)以来およそ2年振り、その他の大教典も含めると『有害』(1990年)以来およそ1年3か月振りのリリースとなった。 本作には魔暦紀元前13年(1986年)から魔暦紀元前8年(1991年)までに発布された小教典がB面曲も含めてすべて収録されている他、爆裂聖飢魔II名義の楽曲や未発表曲も収録されている。また、日本テレビ系バラエティ番組『全員出席!笑うんだってば』(1989年)のエンディングテーマとして使用された「BAD AGAIN 〜美しき反逆〜」(1990年)および映画『陽炎』(1991年)の主題歌として使用された「赤い玉の伝説」(1991年)、爆裂聖飢魔II名義で発布された「夏休み」は本作にて大教典初収録となった。 本作はオリコンアルバムチャートにおいて最高位第16位となった。また、後にソニー・ミュージックレコーズ所属時の全小教典を収録した『愛と虐殺の日々〜歴代小教典 ソニー時代完全盤〜』(2013年)が新たに発布されている(後述)。 背景第七大教典『有害』(1990年)発布後、聖飢魔IIは映画『陽炎』(1991年)の主題歌となった小教典「赤い玉の伝説」を発布。また、聖飢魔IIは同年に「爆裂聖飢魔II」という期間限定のコンセプト・バンドとして小教典「夏休み」を発布した[2]。しかし「爆裂聖飢魔II」のプロジェクトは構成員にとっては不本意なものであり、この時期から構成員と丸沢との間で認識のズレが顕著になってきたと湯沢は述べている他、小暮は構成員ではない丸沢が作品の内容に口出しすることを疑問視するようになっていたと述べている[3]。『有害』の後に長らく大教典を発布していなかったこともあり、3曲の仮歌を中心に広げていくという案が丸沢から出され、当時の事をSEX MACHINEGUNSの先取りであったと小暮は述懐した上で、マネージメント側とレコード会社側において打ち出していくバンドイメージに対する認識が大きく異なっていたと述べている[4]。 同年には翌年開催予定であったセビリア万国博覧会のプレ・イベントである「セビリア・フェスタ・ジャパンデー」において、着物ショーや阿波踊りなどの日本の文化を披露する目的の催事が行われることになり、日本のバンドを代表して聖飢魔IIが同イベントに参加することになった[5]。結果として聖飢魔IIはスペインのセビリアのみならずイギリスのロンドンおよびアメリカ合衆国のニューヨークにおいてもミサを行うことになり、ニューヨーク在住の音楽プロデューサーからアメリカでのデビューを持ちかけられる事になったが、同プロデューサーが担当していたバンドが商業的に失敗し資金が枯渇したことから破談となった[6]。 構成本作には1枚目の小教典「蠟人形の館」(1986年)から12枚目の小教典「赤い玉の伝説」(1991年)までの合計11作の小教典に収録されたすべての楽曲に加え、爆裂聖飢魔II名義で発布された小教典「夏休み」および未発表曲であった「GOOD NIGHT MELODIES」も収録されている[7]。小教典の中にはレコードのみで発布され既に廃盤になっていて入手困難になっていたものや、アルバム未収録となっていた楽曲も含まれている[7]。本作収録曲の内、「蠟人形の館」および「JACK THE RIPPER」は大教典『THE END OF THE CENTURY』(1986年)収録の小暮によるMC入りバージョンとなっている他、「アダムの林檎」(1986年)および「EL・DO・RA・DO」(1987年)は大教典とはボーカルおよびミックスが異なる小教典バージョンでの収録となっている[7]。また、小教典のB面としてのみ収録されていた「BURNING BLOOD」「地獄への階段(完結編)」「SCHWARZ KASTELL」「怪力熊男」「JOKER」「織田信長」「MR. GOLDEN LAND」が大教典初収録となった[7]。 爆裂聖飢魔IIとしての作品発表に関して、小暮は『有害』を受けたミサ・ツアー終了後の曲作りの合宿において構成員を笑わせようと適当な歌詞の仮歌でデモテープを制作していたところ、ディレクターの丸沢和宏がそれを気に入ったために別名義のバンドとして発布されることが決定したと述べている[8]。ルーク篁によれば『有害』の売り上げが伸びず、曲作りも以前と変わらず行き詰まっている状況の中、丸沢が「どうも聖飢魔IIはハジけ切れてない。なんか面白くないぞ。このバンドは既成のモノをぶち壊すパワーを持っていたはずなのに。でも変に自信だけは持っている」と指摘、結果として丸沢の案を受け入れた構成員は爆裂聖飢魔IIとして作品を発布したものの、篁は丸沢が自由度を高めようとして発案したと推測した上で「そういう意味では大失敗だった。“こんなことやらなくていいじゃん”って。“こういう壊し方じゃなくたって”みたいなね」と述べている[8]。エース清水は爆裂聖飢魔IIはディレクター主導のお遊びであり、自身は何の思い入れもないと述べている[8]。丸沢は爆裂聖飢魔IIとしての活動が構成員にとっては不本意なものであったと認めた上で、「伝説のチャンバー・ライダー」の歌詞中にある「土曜の夜だぜ、フライデーナイト」というノリを重視したものの理性的であった構成員によって中途半端な出来になってしまったと釈明している[4]。 リリース、批評、チャート成績
本作は魔暦紀元前9年(1991年)12月13日にソニー・ミュージックレコーズのFITZBEATレーベルから2枚組CDおよび2本組CTの2形態で発布された。本作の帯に記載されたキャッチフレーズは「地球に降りた悪魔達の血と汗と涙の結晶、愛と非道の集大成。究極のシングルス・コレクション。」であり、また帯には極悪集大成盤『WORST』(1989年)収録曲とのバージョンの重複がないことが記載されている。CD付属のブックレットには聖飢魔IIのディレクターである丸沢のコメントが掲載されている他、中央部見開き部分にはそれまでに使用していた構成員のステージ衣装である戦闘服が掲載されている。また、掲載されている歌詞は手書きとなっている。 本作以前に発布された小教典の内、魔暦紀元前9年(1990年)2月1日に発布された「BAD AGAIN 〜美しき反逆〜」および魔暦紀元前8年(1991年)1月21日に発布された「赤い玉の伝説」、魔暦紀元前8年(1991年)7月25日に爆裂聖飢魔II名義で発布された「夏休み」は本作にて大教典初収録となった。小暮は同年に発布された作品は「赤い玉の伝説」および「夏休み」と本作しかなかったために「2枚組の教典は出しているものの、小教典集だし、最も何も出さなかったと言っていい一年だったね」と述べた他、年末からは海外公演の準備に追われる形になり教典の制作が困難な状態であったために「舞台、ミサの年だったわけだよね」とも述べている[8]。 本作に対する評価として、音楽情報サイト『CDジャーナル』では本作には未発表曲が含まれるなどファン・サービスの側面があることや演奏技術が向上していることを紹介した上で、「信者でないかぎり全26曲通して聴くのはつらい」と指摘しながらも「手を変え品を変え、自分たちだけは飽きさせない努力は立派。マンネリの鑑かも」と肯定的に評価した[9]。本作はオリコンアルバムチャートにおいて最高位第16位の登場週数6回で、売り上げ枚数は6.0万枚となった[1]。本作は1994年7月1日に2枚組MDとして再リリースされた他、ソニー・ミュージックレコーズ所属時の全小教典を収録した『愛と虐殺の日々〜歴代小教典 ソニー時代完全盤〜』(2013年)として新たに3枚組CDとして再リリースされた。また、BMG JAPAN所属時の小教典を収録したシングル・コレクションに該当する大教典は発布されていない。 愛と虐殺の日々〜歴代小教典 ソニー時代完全盤〜
『愛と虐殺の日々〜歴代小教典 ソニー時代完全盤〜』(あいとぎゃくさつのひび れきだいしょうきょうてん ソニーじだいかんぜんばん)は、日本のヘヴィメタルバンドである聖飢魔IIの9作目のベスト・アルバム。CD帯に記載されたキャッチフレーズは「聖なる物に飢えている悪魔が 魔暦15年(2013年)11月27日にソニー・ミュージックダイレクトのGT Musicレーベルから発布された。第八大教典『愛と虐殺の日々』(1991年)をリニューアルし、さらに同作の後に発布されアルバム未収録となっていた「正義のために」(1992年)や「世界一のくちづけを」(1993年)などを含む6枚の小教典とそのカップリング曲、そしてボーナス・トラックにはテレビ番組用企画として録音された「BAD AGAIN 〜美しき反逆〜」(1990年)の広東語バージョンである「BAD AGAIN 〜反叛童真〜」などソニー・ミュージック在籍時代の小教典をすべて網羅したBlu-spec CD2仕様の3枚組ベスト・アルバムとなっている[10][11][12]。 ジャケットデザインはソニー・ミュージック在籍時に聖飢魔IIの小教典や大教典のデザインを数多く手がけた加藤靖隆が担当しており、旧盤からデザインが一新されている[10][11][12]。聖飢魔IIの小教典の楽曲は大教典収録時に別バージョンとしてアレンジされることが多いため、小教典バージョンが網羅されるのは本作が初となっている[10][12]。 収録曲愛と虐殺の日々
愛と虐殺の日々〜歴代小教典 ソニー時代完全盤〜
スタッフ・クレジット愛と虐殺の日々
聖飢魔II制作スタッフ
美術スタッフ
愛と虐殺の日々〜歴代小教典 ソニー時代完全盤〜
制作スタッフ
美術スタッフ
その他スタッフ
リリース日一覧
脚注注釈出典
参考文献
外部リンク |