有価証券報告書
有価証券報告書(ゆうかしょうけんほうこくしょ)とは、金融商品取引法で規定されている、事業年度ごとに作成する企業内容の外部への開示資料である。略して有報(ゆうほう)と呼ばれることもある。本項では朝陽会が発行し、全国官報販売組合が発売する有価証券報告書総覧についても記述する。 根拠法令
報告書提出の義務次のような株式会社には、各事業年度終了後、3か月以内の金融庁への提出が義務づけられている。
2004年6月より、各財務局に提出される報告書は原則としてEDINETへの電子提出が義務付けられ、これまでの紙面による提出はできなくなった。 会社法施行により、有価証券報告書提出が義務付けられている会社の場合、自社ウェブサイトでの決算公告記載の代わりに、有報の提出をもって代えている会社もある。この場合はEDINETへリンクを張っている。 2013年8月9日に、東京証券取引所有価証券上場規程施行規則が改正され、同時に有価証券報告書の提出遅延による上場廃止基準が改正された[1]。有価証券報告書の提出遅延による上場廃止基準は以下の通りである。
報告書の内容主な項目は、次のようなものである(連結決算を行っている一般事業会社の場合)
同様に、事業年度を3か月毎(四半期)に区切って、前事業年度の有価証券報告書と比較して変動があった情報を開示する「四半期報告書」もある。 報告書の内容は、財務局や証券取引所で閲覧できるほか、自社のウェブサイトにPDFファイルの形で登録してあることも多い。また、報告書の提出義務のある会社は、金融庁の電子開示・提出システム「EDINET」を通じて電子提出することが義務づけられており、同庁が設置したウェブサーバ経由での縦覧が可能。 有価証券報告書総覧→「監査の歴史」も参照
有価証券報告書総覧(以下総覧という)は1961年3月期から2003年11月期まで国立印刷局(当時は大蔵省印刷局→財務省印刷局)が発行し、2003年12月期から朝陽会が発行し、全国官報販売組合が発売している。この項目では発行後の歴史について記述する。
なお、慶應義塾大学図書館に所蔵されている総覧の大半(2005年9月中間期発行分まで)はGoogle ブックスで最長5年間分を読むことができるほか、東京大学の東京大学経済学図書館・経済学部資料室では1985年3月期(一部除く)までの総覧を読むことができる。 虚偽記載有価証券報告書の虚偽記載は、金融商品取引法に違反する犯罪で、同法197条により、個人は10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又は併科、法人は7億円以下の罰金と定められている。また金融商品取引所(証券取引所)の上場廃止基準に該当してしまう。虚偽記載を行った上で金融商品取引所(証券取引所)の上場を維持し、虚偽記載を行った有価証券報告書の縦覧が開始された当日以降にその企業の株式を取得し、かつ証券取引等監視委員会による強制調査当日以降もその株式を保有していた場合は、同法第21条で、株主による損害賠償請求権が発生することになる(但し、その株式を強制調査前日までに売却したり、強制調査当日以降に取得した株式は株主による損害賠償請求権は発生しない)。このため、虚偽記載が発覚すると、上場企業やその経営陣にとっては、きわめて深刻な事態を迎えることになる[要出典]。 最近では、2004年に発覚した西武鉄道の有価証券報告書におけるコクドの持株数に関する長年の虚偽記載に対して、当時のコクド会長堤義明に懲役2年6か月、罰金500万円、執行猶予4年、法人としての西武鉄道に罰金2億円、法人としてのコクドに罰金1億5千万円を課した、2005年10月27日の東京地裁判決が確定している。また、西武鉄道株式は、それに先立つ2004年12月17日をもって、東京証券取引所第1部の上場が廃止された。 同様の株主に関する虚偽記載としては、日本テレビ放送網も、讀賣新聞社の会長渡邉恒雄の個人名義と記載していた株式が讀賣新聞社の実質所有する株式である事を公表し、2004年11月5日有価証券報告書を訂正した。これに対し、東京証券取引所は、ただちに同日深夜、日本テレビ放送網株の監理銘柄移行を発表した。しかし、投資家への影響は重大ではなく上場廃止基準に該当しないと判断し、同年11月19日に市場第1部にスピード復帰させている。 財務内容に関する虚偽記載としては、ライブドアおよびライブドアマーケティング(現 メディアイノベーション)が、架空の売上の計上などを理由に、2006年に東証のマザーズ市場において上場廃止になっている。また、当時のライブドア社長の堀江貴文などの経営陣は、この虚偽記載と偽計及び風説の流布にからむ証券取引法(現金融商品取引法)違反容疑で起訴された。第1審の東京地裁では実刑の有罪判決が下され、第2審の東京高裁では控訴が棄却されたが、禁固刑2年6か月の実刑が確定した。 一方、株式上場の維持を目的とした虚偽記載としては、インデックスが、2011年8月期と2012年8月期の2期連続で債務超過にあったにもかかわらず、資産超過とした虚偽の有価証券報告書を提出し、2013年7月28日の東証のジャスダック上場廃止までインデックス株式を上場させていた。当時のインデックス会長であった落合正美と社長であった落合善美はこの虚偽記載にからむ金融商品取引法違反容疑で起訴された。第1審の東京地裁では実刑判決が下され、第2審の東京高裁では控訴が棄却された。法人自体は2013年11月に他社へ事業譲渡していたことや、2014年4月に民事再生手続廃止を受けたことに伴い起訴猶予となった。 Form 10-Kアメリカ合衆国において、有価証券報告書に相当する書類をForm 10-K という。これは、事業年度ごとに証券取引委員会に提出される。また、四半期報告書に相当する書類はForm 10-Q という。 関連項目脚注
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