栄養繁殖栄養繁殖(えいようはんしょく、英語:vegetative propagation)とは、植物の生殖の様式の1つ。栄養生殖(vegetative reproduction)とも呼ぶ。胚・種子を経由せずに根・茎・葉などの栄養器官から、次の世代の植物が繁殖する無性生殖である。 植物の繁殖様式の1つとして観察され、特に種子繁殖力が低い高次倍数体では一般的な繁殖様式である。農業でも作物の種苗生産に広く用いられており、イモ類や球根の例がある。以下は主に農業(園芸)の観点から、栄養繁殖について記述する。 栄養繁殖器官とその例茎(地下茎)に由来
根に由来
その他
園芸で用いる栄養繁殖野菜(蔬菜)・果樹・花(花卉)の園芸各分野や、ガーデニング(家庭園芸・造園)で栄養繁殖による増殖が広く行われている。前記の栄養繁殖器官を種苗として用いるほかにも、挿し木(葉挿しを含む)、取り木、茎伏せ(圧条法)、株分け、接ぎ木などの手法がある。また、1980年代から、組織培養によって作成されたクローン苗も一部では利用されている。 接ぎ木は、果樹など種子での増殖が難しい木本植物の増殖にも用いられる。このような木本植物の接ぎ木は、一種の人為的な栄養繁殖と捉えることができる。 種苗管理上の問題栄養繁殖は短い期間に同じ遺伝子型の作物を増殖させることができるが、一度ウイルスに感染すると、そのウイルスを保持したまま増殖することになる。ウイルスに感染した作物は収量や品質が劣るので、対策が必要になる。多くの作物ではその特性に変化がおきないように公的機関が大元になる種苗(原々種・原種)を生産し、それをさらに増殖した後に一般に配布する。一度ウイルス感染が起きてしまったものに対して、組織培養によるウイルスの除去(ウイルスフリー化)が行われることもある。 栄養繁殖ではない植物の無性生殖植物では、体細胞から不定胚発生をするアポミクシス(無性胚発生)がギニアグラスなどで、珠心細胞が胚発生する多胚現象(珠心胚実生)が柑橘類やマンゴーで観察されている。 注釈・出典関連項目 |