療育手帳
療育手帳(りょういくてちょう)とは、知的障害者に都道府県知事、政令指定都市にあってはその長、鳥取県鳥取市、岩美町、若桜町、智頭町、八頭町にあっては鳥取市長[1]、がそれぞれ発行する障害者手帳である。 概要この手帳は、知的障害児・者らが、一貫した指導・相談などを受け、各種の援助措置を受けやすくすること[2]を目的としている。 身体障害者手帳は身体障害者福祉法に、精神障害者保健福祉手帳は精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に、それぞれ手帳発行の条文があり法的裏付けがあるが、療育手帳に関して知的障害者福祉法に記述はなく、1973年9月27日に当時の厚生省が出した通知「療育手帳制度について」(厚生省発児第156号厚生事務次官通知。のち、1991年9月24日の厚生省発児第133号厚生事務次官通知として知的障害者に対する旅客運賃の割引制度の適用の関係で一部が改正されている)[3]、同日の児発第725号「療育手帳制度の実施について」に基づき各都道府県知事(政令指定都市の長)が知的障害と判定した者に発行している。このため、障害の程度の区分は各自治体により異なる[4]。 18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所が判定を行う[5]。1999年の地方自治法の改正(施行は2000年4月1日)により、機関委任事務が廃止され、通知・通達により国が地方自治体の事務に関与することはできなくなった。このため、改正の施行日以降、上記通知は法的効力を失っており、療育手帳制度は各自治体独自の施策となっている。 1991年に関係諸団体の運動によりJR運賃などの割引制度が設けられた[4][注釈 1]。割引を受けようとする者は、あらかじめ住民票登録をしている自治体の福祉課で、その旨を証明する印章などを、所持する療育手帳に押印してもらう必要がある。手帳の複写による代用は不可である。 100キロメートルを越える乗車券半額は、窓口で買うときに手帳を見せれば半額になる。 印章は必要ない 問題点として、都道府県や政令指定都市により障害程度区分に違いがあり、障害認定に際する規定に対象となる本人よりも家族の関与が目立つことなどが挙げられている[4]。 1種は知能指数がおおむね34以下で、2種は平均的知能指数に達している場合もある。 知的障害に該当する者は交付対象で、軽度の知的障害者でも、精神障害者保健福祉手帳の取得は可能であるが、精神保健福祉法の登録はなく、発達障害者支援センターなどを利用することはできない。従来通り知的障害者福祉法の登録になる。 援助措置対象者らが援助措置を受け易くすることも療育手帳交付のもう一つのねらいで、これら援助を受ける場合は必ず療育手帳を提示するように保護者らを指導するとともに、療育手帳が提示された時は資格などを確認してすみやかに援助することが望まれる。各自治体により対象者、サービス、割引内容などが異なる場合があるため、居住地域の福祉担当窓口に問い合わせ[2]を要する。 《援助措置の一例》
各自治体により対象者、サービスや割引内容は異なる場合があるため、居住地域の福祉担当窓口に問い合わせ[2]を要する。 総合判定について知能測定値、基本的生活習慣、問題行動など障害の程度を総合的に判断して判定される。階級分けの方法については、○A(最重度)、A(重度)、○B(中度)B(軽度)の4階級(広島県)[6]、重度「A」重度以外(中軽度)「B」に分けられたり(多くの自治体)、1度から4度(東京都)や1級から3級(最大でも5級まで)、A級からC級など、地域により異なる。
手帳の名称法で定められた制度ではなく、都道府県(政令指定都市)が独自に交付しており、「療育手帳」以外の名称を使う地方公共団体がある。 発達障害者の手帳取得発達障害者は、都道府県または政令指定都市によっては手帳の取得ができる場合がある[12]。発達障害者が療育手帳による支援を希望しても知能指数の上限値よりも高い場合は交付を受けられない場合が生じている上に、同じような知的障害を持つ発達障害者が、住んでいる地域によって取得できる場合とできない場合があるといった事態が生じている。総務省行政評価局が14道府県および2政令指定都市の状況を調査したところ、知能指数の上限値がおおむねIQ75と設定しているところと、おおむねIQ70と設定しているところに分かれた。設定している知能指数の上限値を上回った場合でも、社会適応能力、専門医の診断結果などを総合的に判定し、交付する場合があるとするものもあるなど、その取組はまちまちであった。このことを踏まえ、総務省行政評価局が厚生労働省に対し「療育手帳を交付する都道府県等の取組がまちまちとなっていることについて改善を図るべきである」と通知をした[13]。 なお、精神障害者保健福祉手帳の交付基準に該当する場合は同手帳の取得ができる[13]。 偽造問題療育手帳は障害を有する本人であることの証書だが、偽物を提示して悪用する事例が多い。療育手帳は運転免許証やパスポートなどに比べて偽造が容易で、本人確認証として認められない場合がある。発行する各自治体もシールを貼付するなど対策しているが奏効は低く厳罰化が求められている[14]。 脚注注釈出典
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