登録名登録名(とうろくめい)とは、主にスポーツにおいて、選手が統括団体に登録する際に用いる名前のこと。 概要一般には戸籍等の公的書類で用いられる名前(本名、戸籍名)がそのまま登録名として用いられるが、特定の競技大会における選手の識別や記録の一貫性を保つ目的で使用されるので、本名である必然性は特にない(例えば結婚などにより戸籍では改姓した選手の、旧姓名の使用などがある)。国際大会ではアルファベット表記に頼らざるを得ず、本名の表記や発音が難しいなどの問題に直面することがある。プロスポーツにおいては興行面でのアピールという観点から、本名とは異なる名称を冠することが有利に働くことがしばしばある。 こうしたことから、スポーツの世界においては本名以外の登録名を許可している団体も多い。 本名による登録名の場合、報道においては下の名前を省略することが多いが、表記において同姓の選手と区別が必要なときは下の名前の一文字目を、そのまま名字の後ろに付けるか括弧で括って付記する形にする場合が多い。見出しなどで大文字の場合は下の名前の一文字目に小さな文字を使用することが多い。かつて同姓同名の選手が同じプロ野球チームやプロゴルフ界に所属していたときがあり、その際には独自の区別が行われた。 団体ごとの規定日本においても、相撲の四股名という形で古くから競技における登録名が用いられていた。また、プロボクシングやプロレスリングなどでは選手の強さを誇示するような登録名(リングネーム)を用いることがしばしばある。 日本プロ野球日本プロ野球(NPB)では、日本人選手では古くから本名の、特に下の名前について改名や漢字表記の変更は良く行われてきた。とりわけ1994年、鈴木一朗と佐藤和弘(共にオリックス)がそれぞれ登録名をイチロー、パンチとしたことから、日本人選手でも本名と別の登録名を用いることが浸透していった。特に本名の下の名前のみを登録名とするケースが多い。 なお読売ジャイアンツは、長嶋茂雄監督の発案で河野博文の登録名をあだ名の「ゲンチャン」(北京原人に似ているため[1])で申請したが、1997年1月にセントラル・リーグの理事会で却下された[2]。同理事会は、「ゲン」なら受け付けるとしていた[2]が、長嶋監督のメンツを潰された形となった巨人はそれに応じず、一転して登録名自体を球団として認めない方針をとるようになった[3][4]。そのため、カツノリやサブローは巨人への移籍にあたって登録名を本名の「野村克則」、「大村三郎」に変更している。なお、認めない方針が一般的に認知されるようになってからも、日本ハム時代の「MICHEAL」が認められたマイケル中村の例もある。また、2021年ドラフト1位で巨人に入団した翁田(おうた)大勢は、太田(おおた)龍がチームに在籍しているため登録名を「大勢」にするとし、名前での登録は球団日本人初と報道された(ただし、MICHEALは日本国籍保持者なので実際には異なる)[5]。なお、改名を認めないのはあくまでも愛称を使用する場合であり、中島宏之や亀井善行など漢字表記の変更は巨人でもしばしば見られる。 ハーフ選手の場合、日本式の姓名に短縮する形でフルネームを省略して登録していることがほとんどである(例:ダルビッシュ有←ダルビッシュ・セファット・ファリード・有、加藤豪将←加藤・ジョン・豪将など)。仲尾次・オスカル・正樹はルーキーイヤーの3月28日まで「仲尾次オスカル」で登録されており、初登板の3月27日に初勝利を挙げた後、29日から「オスカル」に登録名を変更して6月26日に2勝目を挙げ、1シーズンで異なる登録名で勝利を挙げた珍しい例となった。純日本人でも、出身国や宗教の関係でミドルネームを持つ選手は同様となる(野村佑希←野村・ジェームス・佑希など)。 プロ野球選手引退後にタレント活動する場合、現役時代は本名と同じ登録名で活動しながら本名と違う芸名、あるいは本名と異なる登録名で活動した場合は本名とも登録名とも異なる芸名にする者もいる(前者が定岡徹久→テツ定岡、大久保博元→デーブ大久保、内藤尚行→ギャオス内藤、亀山努→亀山つとむ。後者がパンチ→パンチ佐藤、仲田幸司→マイク仲田、アニマル・レスリー→亜仁丸レスリー)。プロ野球OBによる野球リーグのマスターズリーグで現役時代とは別の登録名とする場合もあった(香川伸行→ドカベン)。 外国人選手外国人選手の場合、漢字文化圏の選手は日本人同様に姓名併記で登録される一方、それ以外の地域からの選手はファーストネームを頭文字一文字とされた上でピリオドで区切ってファミリーネームを表記する登録名となるのが原則である(例:アレックス・ラミレス→A.ラミレス、トレバー・バウアー→T.バウアー)。ただし、後者に当たる場合でもマットホワイト、カルロス・ロサ、アンソニー・カーターなど、呼びやすさなどからフルネームで登録された選手もいる。 発音や表記はメディアによって微妙に異なることがあるが、入団時に球団が公式な表記を発表したあとは基本的にそれに従うことになる。ルーク・ファンミルの「ファン」とリック・バンデンハークの「バン」は同じ「van」(前者はオランダ語読み、後者は英語読み)であるが球団発表の表記にばらつきがあり、2017年WBCで2人が同じオランダ代表に入った際もこの表記のばらつきに変化はなかった。また、発音や表記の面で本名とは別の登録名を用いることが多く見られる。 そのほか、ファミリーネームを登録名とすると、日本語では発音しにくく馴染まないためや、縁起の悪い意味にとられてしまうことで、ファーストネームやフルネームを登録名とすることもある。前者ではキラ・カアイフエ(カアイフエは日本語では発音しにくいためキラとした)、後者では特に中日ドラゴンズや阪神タイガースで多く、中日ではバンス・ロー(ファミリーネームが「low」→「(成績が)低い」を連想させるため、マスコミなどの揶揄を嫌いフルネームのバンスローとした)、ジョージ・ヒンショー(ファミリーネームが「貧小」「貧相」などの言葉を連想させるため、ファーストネームのジョージとした)、アレックス・オチョア(ファミリーネームが「おっちょこちょい」を連想させるため、ファーストネームのアレックスとした)、ブラッドリー・バーゲセン(ファミリーネームが「バーゲンセール」を連想させると監督の高木守道が難色を示したため、ファーストネームのブラッドリーとした[6])。阪神ではグレン・デービス(ファミリーネームが大麻取締法違反で解雇された近鉄バファローズのリチャード・デービスのイメージが強いため、ファーストネームのグレンとした)、ダーウィン・クビアン(ファミリーネームが「馘首(解雇)」を連想させるため、またファーストネームから進化論を連想させるため、ファーストネームのダーウィンとした)などがその例である。また、西武ライオンズのスティーブ・オンティベロス、テリー・ウィットフィールドのように、当時の電光掲示板では長すぎるファミリーネームを表示しきれなかったためファーストネームを登録名としていた事例もある(ただし、現在では電光掲示板の性能向上により解消されつつあり、コーリー・スパンジェンバーグなど長いファミリーネームのままでの登録名も出てきている)。 2000年に中日に在籍していたデーブ・ニルソンは、オーストラリア特有のイヌにちなんでディンゴで登録されていた。 本名表記変則的な登録名の選手の場合、原則として別に本名表記も登録されている。外国人選手の場合、先述したイニシャル表記型の登録名の選手でも省略しない形の本名が別に記載されている(概ね1970年代以前に在籍した、時代が古い選手は表記のない場合もある)。 ただし、この表記は厳密な本名でなければならないわけではなく、日本式の姓名であれば本名が記載されない選手もいる。例えば先述した中島宏之は本名である「中島 裕之」が表記されておらず、雄太は本来の本名である「川井 進」ではなく愛称の「川井 雄太」が本名として表記されている。ミドルネームを省略して登録しているハーフ選手の場合も、基本的に本名表記には反映されていない。 日本の独立リーグ四国アイランドリーグplusやベースボール・チャレンジ・リーグなどの独立リーグでも、球団によっては本名以外の登録名が認められている場合がある。 日本の高校野球東京ヤクルトスワローズの山田哲人は、高校時代、字画が良くないとして「人」の字の右払いに「ノ」を加えた漢字(存在しない漢字)をメンバー表で用いて高野連にも提出しており[7]、NHKの高校野球中継ではその漢字で紹介されていた。日本高野連への選手登録は本名が原則であるが、在日韓国・朝鮮人などは通名の使用が認められている(金村義明など)。場内アナウンス・スコアボード表記には原則として苗字が用いられるが、外国籍選手の場合は名前で表記されることがある(グエン・トラン・フォク・アン→「アン」など)。 日本のプロサッカープロサッカーのJリーグでも、ブラジル人選手を中心として外国人選手が愛称や略称を登録名とすることが多い。日本人選手については改名や表記変更[注釈 1]によるものしか認めていない。 Jリーグ規約では、2019年よりネーム表記を「氏名、氏名の一部、登録名、登録名の一部」のみとするということが定められている。過去は中澤佑二の「BOMBER(ボンバー)」などが使用できたが、中澤の引退を機に登録名に含まれていない愛称は原則として使用不可となった。ディサロ燦シルヴァーノが愛称である「LELE(レレ)」で登録しようとしたが規約違反になるため、「DISARO'」で登録した[8]。 日本のプロゴルフ日本のプロゴルフにおいて、本名とは異なるツアー参戦時の名前を日本プロゴルフ協会または日本女子プロゴルフ協会に申請して審査を通過すれば、登録名として使用することができる。 代表的なものにすし石垣が挙げられる[9]。一方、横峯さくらは「さくら」の登録名を申請したが、却下された[10]。 日本の囲碁棋士日本棋院や関西棋院では、外国出身の棋士は登録名や読み方を本人の申告としている。 過去には中国、台湾、韓国出身の棋士は、呉清源(ご せいげん)、王立誠(おう りっせい)、趙治勲(ちょう ちくん)など日本語読みで登録することが多かったが、卞聞愷(ビャン ウォンケイ)[11]、李沂修(リ イシュウ)、金秀俊(キム スジュン)など本来の発音に近い読み方で登録する棋士も多い。また韓国出身のホン・マルグンセムは、「マルグンセム(清い泉)」に相当する漢字が無いため意訳した「洪清泉(ほん せいせん)」で登録している[12]。 結婚後に姓を変更する者(杉内寿子)と、変更しない者(星合志保と孫喆)がいる。 アルファベット表記は「名字(大文字),名前」に統一されている[11]。 自動車レースフォーミュラ1においては、基本的にアルファベット表記を使用するが、本人の意向により表記の変更が可能である[13]。 本名以外の登録名の例
同姓同名での区別の例
脚注注釈出典
関連項目 |