空空(そら、霄、英: sky)とは、地上から見上げたときに頭上に広がる空間のこと。天。 概説空の色は時間帯や天候によって変化する。日の出時には赤色やオレンジ色に、昼間は晴れていれば青くて太陽が輝き雲は白く、曇りであれば空は灰色に、夜間は黒に見える。(→#色) また、夜空は星が見える場でもあり、空気が澄んでいる場所であれば天の川の白く輝く帯が空をぐるりと横断しているのが見える。ノルウェー北部など緯度が高い地域では24時間太陽が昇らない時期(極夜)が2か月ほども続く。その寒い時期、人々はずっと夜空を見続け、再び太陽が昇る時を待つのである。そのかわり緯度が高い地域では、ときにオーロラの緑色の美しい光のカーテンが空にゆらめく。 空と空以外が作り出す境界線を英語では「skyline」(スカイライン)と言う。空と海面や湖面との境界線を水平線、空と大地との境界線を地平線という。 色と明るさ地球の空の色は時間帯によって変化する[1]。夜明け前、東の地平線には朝焼けが起こり、暗い空が赤くなる。太陽が昇り充分な高さになると空は青色に見える。そして日没が近くなると西の空は夕焼けでオレンジ色になり、太陽が沈むとまた空は暗くなる[2]。 このような空の色の変化は、太陽光が含むいわゆる"七色"の可視光線(光)の性質と、大気(空気)をつくっている成分の気体分子やちりなどの微粒子が光に作用することに関係する[2][3][4]。 青さと明るさ太陽の可視光線の波長よりも半径が数桁小さい大気中の酸素や窒素などの分子は、可視光線のレイリー散乱を起こす。散乱光の強度は、電磁波の波長の4乗に反比例する。青い光は約450ナノメートル(nm)、赤い光は約700 nmだが、同じ強さならば波長が短い青い光のほうが6倍ほど強く散乱される。太陽光には青よりも波長が短い紫の光も含まれているが、その量はやや少なく、青よりも強く散乱されるため地上に届くまでの減衰が大きい。また、紫の光は人間の目(錐体細胞)における感度があまり強くない。太陽が高い日中はこのような原理から、地上には主に青い光が届き、空は青色に見える[3][4][5][6][7][8][9][10]。 なお、可視光線のどの波長でも多かれ少なかれ散乱(散乱日射)があるため、太陽の方向以外の空も明るく見える[6][7]。実際、空からの可視光のうち人間の目が知覚する成分は、白色光に青の単色光を混ぜた構成となっている[11]。 そして青色光は、空気分子の密度が低い、高度数十キロメートル(km)以上の上層の大気のレイリー散乱に由来すると考えられる。これは、空気分子の密度が高い(分子同士の距離が近い)下層の大気では、散乱光どうしが干渉し打ち消しあって前方散乱成分のみが伝わり、結果として直進するためで、それがない上層の低密度の大気で散乱が現れる[10][12]。厳密には、空気分子の熱運動が影響する微視的な密度ゆらぎが散乱を起こすと説明される。この密度ゆらぎの理論はスモルコフスキーが1908年に、アインシュタインが1910年にそれぞれ提唱した[12]。この性質は、下層でもレイリー散乱が起こるとすれば、青色光の散乱減衰によって遠くの山などの景色が赤みを帯びて見えるはずだが、そうはならないという事実に合致する[12][13]。 また、上層のレイリー散乱は角度別では、進行方向とその正反対にあたる前方散乱と後方散乱が最も強く、直角方向が最も弱い。そのため、太陽の方向とその反対方向は比較的明るく、太陽から90°の方向や天頂部は比較的青色が濃くなる。ただし差は小さく、大気が清浄な地域でなければこれを視認することは難しい[14]。 なお、進行方向に直角な散乱光は振動の方向が規則性を示す偏光の性質をもつ。カメラに偏光フィルターを付け向きを調整すると、空の青みが増したものが撮影できる[10][14]。 飛行機や高い山などでは、空がより濃い青色や紺色に見える。青が濃くなるのは、白色光の元となるミー散乱を起こす微粒子が上空では少ないため[10][15]。 空の色を説明する理論は、1859年ジョン・ティンダルが微粒子や水蒸気による散乱とする説を提唱、レイリー卿によって理論づけられた。ただし、これは後年チンダル現象と呼ばれるもので、これにより空が色づいて見えるとすれば、微粒子の濃度や湿度によって空の色は著しく変化することになってしまう。理論の修正を行ったのがアルベルト・アインシュタインで、酸素と窒素の分子による散乱だけで説明できることを1911年に計算で確かめた[5]。 時間帯や微粒子による変化朝や夕方の太陽が低い時間帯は、光が地上に届くまでに大気中を通る距離が長い。この場合、青や緑などの光は強く散乱され減衰する一方、赤の光が最も地上まで届きやすく、朝や夕方の太陽やその周りの空は赤色や橙色(オレンジ色)に見える[2][3][4][6][8]。 また皆既日食のときには、地平線付近の低空の全方向に夕焼けのようなオレンジ色が見られる。これは太陽光が当たっている遠くからの散乱光で、普段も存在するが青い光が強いため見えない[6]。 日没後や日の出前、太陽が地平線下18°位までの薄明かりの状態を薄明と呼ぶ。太陽光の散乱がわずかに残るために生じる。ただし、都市周辺では街の明かりにより薄明を識別することが難しい[16]。 なお、雲は水滴の大きさが可視光線の波長と同程度にありミー散乱を受ける。どの色の波長も同じように散乱されるので白色に見え、厚い雲の影の部分は光が弱くなって灰色や黒色に見える[3][4][17]。 同様に大気にちりや煙霧などの微粒子が多いときも、ミー散乱により、昼間は大気が白色や灰色を呈する[3][8]。 なお、粒径が均一の比較的小さな微粒子が漂うときには散乱により特定の色が強く見えることがある。山火事や火山噴火の後に500 - 800 nm程度の微粒子が生じることがあり、空が赤みを帯びる。ただし、このとき太陽そのものを見るときは直逹光の赤みが減じて青白い太陽 (blue sun)に見える。また、朝焼け・夕焼けは直逹光ではなく散乱光が赤みを帯びる効果のため、通常よりも赤みを増し赤みを帯びる時間が長くなる[5][6][8]。 植物に由来する有機エアロゾルテルペンは200 nm程度の微粒子で、盆地で生じることがある青みを帯びた煙霧の原因と考えられる[5][8]。 地球以外の天体の空火星では大気が薄いため空は地球より暗く、塵によって赤みがかった色になる[5]。火星の塵の大きさではミー散乱が卓越するが、ごく弱い波長依存があり、青い光が散乱されやすく赤い光が散乱されにくい特性のため、地球とは逆に昼は赤系、朝夕は青系の色となる[6][12]。 月などの大気の散乱がほとんどない天体では、昼でも空が暗く黒く見える[10][15]。 言葉脚注
参考文献
関連項目外部リンク
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