第75回カンヌ国際映画祭(だい75かいカンヌこくさいえいがさい、2022 Cannes Film Festival)は、2022年5月17日から12日間に渡って開催された。フランスの俳優ヴァンサン・ランドンが審査委員長を務めた。
概要
前々回や前回と新型コロナウイルス感染症の影響を受けていたが、今回はワクチン接種の証明書やPCR検査または抗原検査の陰性結果の提示などといった規制が撤回された[1]。また、今回はロシアのウクライナ軍事侵攻の影響からウクライナ国民が納得する政治的解決がなされない限り、ロシア政府に関連したいかなる公式の申請やゲストも受け入れないことを侵攻開始5日後に発表した[2]。そのため、映画祭ではロシア制作の作品は反プーチン派として国外に亡命をしていたキリル・セレブレニコフ(英語版)監督の『Жена Чайковского』がコンペティション部門で上映されるのみとなり[3]、4月にウクライナのマリウポリで撮影中にロシア軍により殺害されたマンタス・クベダラビチュス監督の撮影映像を編集者と監督の婚約者がまとめた『Mariupolis 2』やウクライナ人監督のセルゲイ・ロズニツァによる新作『Natūrali naikinimo istorija』がスペシャル・スクリーニング部門にて上映され[4][5]、開会式においてはウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がリモートにて『独裁者』や『地獄の黙示録』を引用しながら出席した映画関係者に対し「映画は沈黙してはならない」と呼びかけるスピーチを行うなど映画祭を通してウクライナ侵攻に抗議を示す形となった[6]。
日本からはある視点部門に早川千絵監督の『PLAN 75』[7][8]、カンヌ・クラシックス部門に河瀨直美監督の『東京2020オリンピック SIDE:A』が市川崑監督が参加した『時よとまれ、君は美しい/ミュンヘンの17日』とともに上映され[9][10]、ACID部門にフランスとの合作による山崎樹一郎監督の『やまぶき』がそれぞれ出品され[11][12]、『PLAN 75』がカメラ・ドールにて次点に当たるスペシャルメンション(特別賞)を受賞した[13]。また、日本関連として2017年に制作された『カメラを止めるな!』をミシェル・アザナヴィシウス監督がフランスでリメイクした『キャメラを止めるな!』がオープニング作品として[14][15]、是枝裕和監督が韓国で制作した『ベイビー・ブローカー』がコンペティション部門にてそれぞれ上映され[16][17][18]、『ベイビー・ブローカー』が男優賞(ソン・ガンホ)とエキュメニカル審査員賞を受賞した[19][20]。
注釈
*
|
長編監督デビュー作、カメラ・ドールの審査対象
|
†
|
その部門の最高賞の受賞作
|
‡
|
クィア・パルムの審査対象
|
オープニング及びクロージング作品は開会及び閉会式で上映される。
|
公式選出
コンペティション
パルム・ドールを競うメインコンペティションの上映作品のラインナップは2022年4月14日に発表された[21][22][23][24][25]。
ある視点
「ある視点」部門の上映作品は2022年4月14日に発表された[21][23][24][26][27]。
アウト・オブ・コンペティション
アウト・オブ・コンペティションでは以下の作品が上映された[21][28]。
- ミッドナイト・スクリーニング
カンヌ・プレミア
カンヌ・プレミアでは以下の作品が上映された[29]。
スペシャル・スクリーニング
スペシャル・スクリーニングでは以下の作品が上映された[30]。
短編映画
短編映画では3507作品ものエントリーがそのうち以下の作品が上映された[31]。
日本語題
|
原題
|
監督
|
製作国
|
|
Gakjil 각질 ‡ |
ムン・スジン |
韓国
|
|
Hai Bian Sheng Qi Yi Zuo Xuan Ya 海边升起一座悬崖 † |
チェン・ジエンイン |
中国
|
|
Le Feu au lac ‡ |
ピア・メナヘム |
フランス
|
|
Lori |
アビナッシュ・ビクラム・シャー |
ネパール
|
|
Luz Nocturna |
キム・トレス |
コスタリカ
|
|
Po Sui Tai Yang Zhi Xin 破碎太阳之心 |
ビー・ガン |
中国
|
|
Same Old |
ロイド・リー・チョイ |
アメリカ合衆国
|
|
Tsutsuɛ |
アマルテイ・アーマー |
フランス ガーナ
|
|
Uogos |
ヴィタウタス・カスクス |
リトアニア
|
シネフォンダシオン
映画学校の学生が製作した映画を上映する「シネフォンダシオン」部門には1528作品が応募され、16作品(うち3作はアニメーション)が選ばれた。今回新たに4校が初選出となった[32]。
カンヌ・クラシックス
カンヌ・クラシックスでは以下の作品が上映された[33][34]。
修復作品
- 修復作品
- インドの注目作
- 「雨に唄えば」70周年記念
ドキュメンタリー
- オリンピック公式映画
シネマ・デ・ラ・プラージュ
シネマ・デ・ラ・プラージュでは以下の作品が上映された[35][36]。
独立選出
国際批評家週間
監督週間
審査員
コンペティション
ある視点
カメラ・ドール
シネフォンダシオン及び短編映画
国際批評家週間
ルイユ・ドール
クィア・パルム
受賞作品
公式選出
- コンペティション
- ある視点
- ある視点賞 - 『Les Pires』(リーズ・アコカ、ロマーヌ・ゲレ監督)
- ある視点審査員賞 - 『Joyland』(サイム・サディック監督)
- ある視点監督賞 - アレクサンドル・ベルク(『Metronom』)
- ある視点演技賞
- ある視点脚本賞 - マハ・ハジ(英語版) (『Mediterranean Fever』)
- ある視点審クー・ドゥ・クール賞 - 『Rodéo』 (ローラ・キボロン監督)
- ゴールデン・シネマ
- 短編映画
- 短編映画パルム・ドール - 『海边升起一座悬崖』 (チェン・ジエンイン監督)
- 短編映画特別賞 - 『Lori』 (アビナッシュ・ビクラム・シャー監督)
- シネフォンダシオン
- 第1位 – 『Il Barbiere complottista』
- 第2位 – 『地儿』
- 第3位
- 『Glorious Revolution』
- 『Les Humains sont cons quand ils s'empilent』
独立選出
独立賞
- 国際映画批評家連盟賞
- エキュメニカル審査員
- ルイユ・ドール
- クィア・パルム
- クィア・パルム賞 – 『Joyland』(サイム・サディック監督)
- クィア・パルム短編賞 – 『Will You Look At Me』(シュリ・ホアン監督)
- パルム・ドッグ
- パルム・ドッグ賞 – ブリット (『War Pony』)
- グランプリ
- マルセル (『Marcel!』)
- 犬のキャスト (『Godland』)
- マニタリアン賞 - パトロン (ウクライナの地雷探知犬)
- フランソワ・シャレ賞
- カンヌ・サウンドトラック賞
特別賞
脚注
外部リンク