酸化マグネシウム (さんかマグネシウム、magnesium oxide)はマグネシウム の酸化物 で、化学式MgO の化合物 。白色または灰色の固体 。苦土 (くど)[ 3] 、カマ [ 4] 、カマグ とも呼ばれる。
天然にはペリクレース (英語版 ) として産出するが、大気中の水分と反応してブルース石 となる。
製法
金属マグネシウム を燃焼 させると生成する。
2
Mg
+
O
2
⟶
2
MgO
{\displaystyle {\ce {2Mg\ + O2 -> 2MgO}}}
水酸化マグネシウム あるいは炭酸マグネシウム を加熱分解すると生成する[ 5] 。
Mg
(
OH
)
2
⟶
MgO
+
H
2
O
{\displaystyle {\ce {Mg(OH)2 -> MgO\ + H2O}}}
MgCO
3
⟶
MgO
+
CO
2
{\displaystyle {\ce {MgCO3 -> MgO\ + CO2}}}
高温でホウ酸 塩と酸化マグネシウムを融解したものを徐冷すると立方体 の結晶 が析出する[ 6] 。
性質
融点 2800 °C (3037.15K ) 、沸点 3600 °C (3873.15K) 、密度3.65 g/cm3 、水に難溶。塩化ナトリウム型の立方晶構造(Fm3 m)を有する。その格子定数 はa = 4.203 Å である[ 6] 。
水酸化マグネシウムあるいは炭酸マグネシウムを600 °C 程度の低温で焼成してつくったものは、水 と反応して水酸化マグネシウムを生じ、二酸化炭素 および水を吸収して塩基性炭酸マグネシウム、酸 およびアンモニウム塩水溶液に容易に溶けてマグネシウム塩を生成する。しかし1000 °C 以上の高温で加熱されたものはより密度が高く、安定となり酸に容易には溶解しない[ 5] [ 7] 。
反応
二酸化炭素や水をマグネシウムと反応させると、それらが還元されてそれぞれ炭素 や水素 が生じ、マグネシウムは酸化マグネシウムとなる。
2
Mg
+
CO
2
⟶
C
+
2
MgO
{\displaystyle {\ce {2Mg\ + CO2 -> C\ + 2MgO}}}
Mg
+
H
2
O
⟶
H
2
+
MgO
{\displaystyle {\ce {Mg\ + H2O -> H2\ + MgO}}}
また、希塩酸 に溶かしたとき、マグネシウム(銀灰色)は溶けて水素を発生するが、酸化マグネシウム(白色)は水素を発生しない。
利用
医薬品
胃内における制酸作用と腸内における緩下作用を持つ[ 8] 。制酸作用の発現に際して、CO2を発生しないため刺激のない制酸剤として奨用される。酸化マグネシウム1gは0.1mol/LHClの約500mLを中和できる。水に不溶性なので、NaHCO3に比較すると制酸性は遅効性で、作用時間も長い。また、腸内では難吸収性の重炭酸塩又は炭酸塩となり、浸透圧維持のため腸壁から水分を奪い腸管内容物を軟化することにより緩下作用を現す。本剤は非吸収性であり、アルカローシスを生じない。
副作用
腎不全 患者での高マグネシウム血症 (不整脈 や呼吸 抑制が起こる)が見られ、高齢者 の死亡例が報告されている[ 9] 。また下痢を引き起こす傾向がある[ 10] 。
脚注
^ http://fscimage.fishersci.com/msds/13450.htm
^ D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982).
^ [1] 苦土とは - コトバンク
^ 日本薬剤師会, ed. (2008), 調剤指針 (第12改訂増補 ed.), 薬事日報社, p. 62, ISBN 9784840810517
^ a b 日本化学会編 『新実験化学講座 無機化合物の合成I』 丸善、1977年
^ a b 『化学大辞典』 共立出版、1993年
^ F. A. コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年
^ 小項目事典,栄養・生化学辞典,デジタル大辞泉プラス,世界大百科事典内言及, デジタル大辞泉,精選版 日本国語大辞典,日本大百科全書(ニッポニカ),改訂新版 世界大百科事典,化学辞典 第2版,百科事典マイペディア,ブリタニカ国際大百科事典. “酸化マグネシウム(サンカマグネシウム)とは? 意味や使い方 ”. コトバンク . 2024年12月21日 閲覧。
^ 厚労省・安全性情報 酸化マグネシウムの長期投与に注意喚起 ミクスonline、2008年11月27日
^ 『新しい疾患薬理学 』Katsunori Iwasaki, Shōgo Tokuyama, 岩崎克典., 徳山尚吾.、南江堂、Tōkyō、2018年、391頁。ISBN 978-4-524-40335-6 。OCLC 1030482447 。https://www.worldcat.org/oclc/1030482447 。
関連項目
出典
外部リンク