鉄鋼業鉄鋼業(てっこうぎょう)とは、粗鋼等を生産する産業のこと。製造業の一つ。 概要産業の米と呼ばれ、土木・建築・自動車・鉄道・電気機械・造船などに欠かせない鋼材を生産する産業として、重工業を代表する基幹産業の一つとして発展してきた。 技術的には、大量に消費される銑鉄を生産する製鉄業と、高性能な工具鋼などを作る製鋼業とに分類される。 第二次産業に分類される。 歴史製鉄そのものは人類史と共に長い歴史を持つ。例えば日本では、千年以上の歴史を持つたたら製鉄が、明治時代まで中国地方を中心に栄え、特に中心地であった島根県に雲伯鉄鋼合資会社(1899年設立、現;日立金属安来工場)が設立され、日本における「鉄鋼」の概念が成立した。 近代鉄鋼業は、18世紀末のイギリスにおける産業革命期に発祥した。その後第二次世界大戦(1939年〜1945年)までは、イギリス・ドイツ・フランス・アメリカの4カ国が世界の鉄鋼生産の中心であった。日本における近代鉄鋼業は、その技術をドイツから導入し、官営八幡製鉄所の操業(1901年)により始まった。 第二次世界大戦後、日本・ソ連の鉄鋼生産量が急増した。原料に乏しい日本では、原料や製品の輸送に便利な臨海地域に製鉄所を建設し、巨額の設備投資を実行して高い技術水準を達成、国際競争力を確立した。 2000年以降は、中国・台湾・韓国・インドなど新興工業国が設備を拡張し、増産が著しい。 規模世界全体では、18.1億トンの粗鋼が生産されている(2018年)。 世界の国別粗鋼生産量ベスト10(2018年)…1位中国9億トン、2位インド1億トン、3位日本1億トン、4位アメリカ0.9億トン、5位韓国0.7億トン、6位ロシア0.7億トン、7位ドイツ0.4億トン、8位トルコ0.4億トン、9位ブラジル0.3億トン、10位イタリア0.2億トン。 日本の鉄鋼業における従業者数は19.6万人であり、日本全体では1.04億トンの粗鋼が生産されている(2018年)。 日本の鉄鋼業は、主原料の鉄鉱石・原料炭を100%海外から輸入している。また、鉄鋼製品の国内物流(一時輸送量)としては、船による海上輸送が4,200万トン、トラック及び鉄道による陸上輸送が2,200万トンとなっている(2018年)。 人材育成日本の鉄鋼業における人材育成は、主に一般社団法人日本鉄鋼連盟 が1962年兵庫県尼崎市に設立した産業技術短期大学を活用して行われてきた。 日本の鉄鋼業界には、「鉄鋼業自らが大学を設立して業界の技術者を養成するとともに、一般社会の優秀な青年の教育にも貢献していくことで、社会とともに鉄鋼業の繁栄を目指す」という壮大な理念がある。 産業技術短期大学は、鉄鋼業が一丸となって開設した「世界でも類例を見ない特色ある大学」であり、2年間で4年制大学レベルの技術者教育を行うことを目標に、4年制大学水準のカリキュラムが設定された。また、そのモデルとなるような施設設備と人材が用意された。 日本鉄鋼連盟は、産業技術短期大学で日本製鉄・JFEスチール・神戸製鋼所・日立金属・大同特殊鋼・日本製鋼所・愛知製鋼・東洋鋼鈑・トピー工業・中山製鋼所・三菱製鋼・新日本電工・中部鋼鈑をはじめとする鉄鋼各社の従業員を再教育して、将来を担う優秀な技術者を育成してきた。具体的には、「製造現場における知識創造と人材の多機能育成政策・綿密な能力開発策のひとつとして、企業内選抜を経て中堅技術者への昇進に結びつく産業技術短期大学への派遣を行う政策の実行」であり、このような人材育成形態(教育訓練形態)を「オフ・ザ・ジョブ・トレーニング・OFF-JT」という。 日本において、人材の確保・育成は鉄鋼業発展のための大きな課題であり、今後も産業技術短期大学を活用するなど、積極的に人材獲得・育成に取り組むものと見られる。 参考文献
ほか 関連項目外部リンク |