鍛造鍛造(たんぞう、forging)とは、金属加工の塑性加工法の一種。金型を使用する「型鍛造」と、使用しない「自由鍛造」に大別される。その中で、型鍛造は、加工温度により熱間・冷間・温間鍛造の3種類に分類される[1]。 自由鍛造は金属をハンマー等で叩いて圧力を加えて変形させる手法で、古くから刃物や武具、金物などの製造技法として用いられてきた。大型鍛造品等の一品生産に適している[1]。 特徴型鍛造型鍛造は、上下1組の金型の間に材料を入れ、機械で押し潰して狙った形状に加工する方法で、同一形状の製品を大量生産することに向いており、高い寸法精度を得られ、スピーディーに成形加工を行うことが可能である。ただし、金型製作に初期費用が必要となるため、少量生産には不向きと言える。また、型鍛造は、その加工温度によって「熱間鍛造」「冷間鍛造」があるほか、それらの中間温度で両方のメリットを得る「温間鍛造」も行われている[1]。 自由鍛造自由鍛造とは、金型を用いず、ハンマーや金敷と呼ばれる表面が平面または曲面の工具を使って材料に圧力を加え、伸ばし・据込み・穴あけ・せぎり・切断等の作業を行って目的の形状に加工する方法である。分かりやすい例では、刀鍛冶が金床の上で槌を振るう日本刀の製作がこの自由鍛造に当たるが、工業製品では、船舶用クランク軸(熱間鍛造)や発電用タービンローター、原子炉圧力容器、圧延機のロールなど、大型鍛造品等の一品生産に利用されている[1]。 大型自由鍛造をするためには能力1万4千トン級の大型油圧プレスが使用されている[2] 金属を叩くことで内部の空隙をつぶし、結晶を微細化し、結晶の方向を整えて強度を高めると共に目的の形状に成形する。また、金属を叩くことで内部の不純物を除去するとともに炭素元素を外に排出して炭素量の調節を行う[3]。特に、精錬を主目的として鍛造された鉄を「鋼」(はがね、刃物に用いる金属を意味する刃金に由来)と呼ぶ。 鍛造の利点型鍛造同一形状の製品を、スピーディーに成形加工して大量生産することができ、また、高い寸法精度が得られる。自動車の車体、家電製品の筐体、金属製家具、金属容器など、社会生活に欠かせない製品が、型鍛造によって大量生産されている。 自由鍛造組織が緻密となり、鋳造に比べて鋳巣(空洞)ができにくいので引張り強度・硬さに優れた粗形材をつくることができる。粗形材も最終形状に近い形で仕上がることからやはり削り出しや鋳造、粉末金属冶金等の方法よりも後工程である切削や研磨が比較的省略・簡略化できる。また、部品形状に合わせて鍛流線 (fiber flow、metal flow) が連続するために反復曲げ応力に強い。さらに、成形型に合わせて必要素材量を事前に算出して準備する方法のため、削り出しや鋳造、粉末金属冶金等より材料が少なくて済む。このため、大量生産にも向いている[4][5]。 歴史金属を叩く加工法は古代から天然の金銀銅で行われていたほか、鉄もニッケルを多く含む隕石を素材に叩いて加工されていた[3]。鍛造は最も古い金属加工法である[3]。古代エジプトで紀元前3000年頃に製作された隕石製とみられる鉄環首飾りが発見されている[3]。紀元前15世紀頃にはヒッタイトが炭を用いた鉄の還元・加熱鍛造技術を発明し[6]、前1200年のカタストロフを経て人類史に鉄器時代が到来する。産業革命の起きる18世紀まで鋳鉄は脆いものとされていたため叩いて作る鍛造品の鉄が重宝された[3]。 今日では鍛造は銅や鉄に限らず、チタン、アルミ合金、タングステン、ニッケルなど、様々な金属や合金の加工製品化のために用いられている。 鍛造方法大きく分けて以下に大別される[1]。
鍛造の分類被加工材料の温度により、以下のように分類される[1]。
鍛造機械現代の鍛造では、次のような鍛造機械が用いられる。 鍛造プレス主に機械プレスや液圧プレスなどがある。
ハンマー主にエアハンマー(上下運動型)・スプリングハンマー(クランク式)が用いられる。
鍛接鍛接(forge welding)は、金属を接合する技術の一つで、圧力を加えて接合面を密着させ、一体化させる技法。代表例としては、刃物を製造する際に鋼と軟鉄を鍛接する技法が知られている。水道管や排水管に使われる鋼管の製造法として帯状の鋼材を丸めて接合部を鍛接する方法がある[7][8][9]。 出典
参考文献
関連項目外部リンク |