Miss you (Mr.Childrenのアルバム)
『miss you』(ミス・ユー)は、日本のバンド・Mr.Childrenの21枚目のオリジナルアルバム。2023年10月4日にトイズファクトリーより発売された[21]。 背景2022年、Mr.Childrenはメジャー・デビュー30周年を迎え、上半期にはベスト・アルバム『Mr.Children 2011-2015』『Mr.Children 2015-2021 & NOW』のリリース[22]ならびに新曲「永遠」「生きろ」の発表[23][24]、およびドーム・スタジアムツアー『Mr.Children 30th Anniversary Tour 半世紀へのエントランス』を開催[25]。その後、2022年12月には東宝配給映画『Mr.Children「GIFT for you」』が公開された[26]ものの、バンドとしての表立った活動は数本のライブやイベントにゲスト出演する[注 1]に留まり、新たな楽曲リリースなどは行なわれていなかった。そんな中、2023年7月21日に本作の発売を突如[30]発表。前述の「永遠」「生きろ」も収録されず、バンド史上初の収録曲がすべて新曲で構成されるアルバムとなった[21]。また、収録曲すべてがノンタイアップでのリリースとなり、これはオリジナルアルバムとしては1stアルバム『EVERYTHING』以来のことである。 制作本作は、主にメンバー4人だけでプライベートスタジオに集まり制作された[31]。「ケモノミチ」では、前作『SOUNDTRACKS』およびベスト・アルバム『Mr.Children 2015-2021 & NOW』収録曲である「生きろ」に続き、スティーヴ・フィッツモーリスがレコーディング・エンジニアとして参加し、サイモン・ヘイルがストリングスのアレンジを手掛けている。そのほか、フィッツモーリスは「Are you sleeping well without me?」「LOST」でもレコーディング・エンジニアを務めている。 また、2015年に開催されたZepp対バンツアー『Mr.Children 2マンLIVE』のZepp Sapporo公演で共演した小谷美紗子[32]が本作のレコーディングに参加。「deja-vu」ではピアノ、「おはよう」ではピアノおよびコーラスを担当している[33]。レコーディング参加は田原健一が提案したといい、小谷は「メンバーの皆さんを前に緊張して堂々と弾けないかもと思ったけど、名曲を弾く喜びが勝り名曲に導かれました」とコメントしている[34]。 本作のマスタリングは、前作『SOUNDTRACKS』に引き続きニューヨークにあるスタジオ・Sterling Soundのランディ・メリルが担当[21]。 音楽性本作について、桜井和寿は「すごく特殊なアルバム」であるとコメントしている。収録曲の多くは聴き手の存在を意識せず作られており[35]、「自分に近い音楽」「自分自身が声になって、音楽になったような作品」だという[30]。桜井は「今までは期待されていることに応えるというか、こういうのを聴きたいだろうなとか、どこかそれを狙っていたり、コントロールしたりしていた」が、今回はそれが全くないアルバムであるため、「"Mr.Children"としての役割とかそういったものを全く背負っていない」「世の中に出していいのか、どうなのか悩むくらいの物だった」と語っている。一方、「批判や物足りないっていう人の意見が、大多数であっても『それでも今僕らが出したいのはこれなんだ』っていう作品をリリースするような感覚でいました」[35]「こんだけ自分たちに正直な音楽を作って届かないんだったら、なんの反省も生じないというか。あ、ここ手抜きしたな、というのもないし。ほんと後悔のないアルバムですね」[30]とも発言している。 また、本作では田原健一が中心となり引っ張ってくれたと桜井は明かしている。レコーディングでは、バンドはあまり関与せず音を過剰に足さないようにすることを田原が提案し[36][35]、「まだ何か足りないっていうぐらい、“でも足りないからこそ、歌の中にある大事なものを伝えたい、ちゃんと聞かせていこう”っていう様なプランだったんです。その音楽的武装をしていくのは、アルバムの中ではなくてライブでやろうっていう様な感じではあった」と桜井は振り返っている。そのため、「ライブをすることで、やっとバンドとしての音作品になっていっているような気がします」とも語っている[35]。 なお、本作では「音楽が持っている『あえての余白』=リスナーとの距離を、言葉で埋めたり、説明したり解説したりしないでおきたかった。たくさんの誤解や矛盾を楽しんで欲しかった」という理由から、リリースに伴う雑誌などのインタビュー取材には応じていない[37]。田原は「何も言わずに、みなさんにそっと聴いてもらいたいなと思って。それが一番このアルバムに相応しいような気がして。今回のアルバムは、弱さとか儚さ、淡さ、そういうものを多く含んでいるように思っていて。だからこそ、そういったものを壊さない形で出したかったんだろうな、と改めて思う」と振り返っている[38]。 リリース・プロモーション完全生産限定盤と通常盤の2形態で発売。完全生産限定盤はLIMITED BOX仕様(特製ペーパートレイ仕様)、通常盤は三方背スリーブケース仕様(デジパック仕様)となっており、両盤ともにPHOTOブックレットが封入されている[21]。また、先着特典としてステッカーが付属している[31]。 オリジナルアルバムとしては前作『SOUNDTRACKS』以来約2年10か月ぶりとなるリリース。 本作発売発表と同時に、ホールツアー『Mr.Children tour 2023/24 miss you』(後述)の開催も発表された[21]。 2023年11月8日より、本作のダウンロード・サブスクリプション配信が開始された[39]。 アートワーク本作のアートディレクターは森本千絵が担当。ジャケットの写真は藤井保によるもの[21]で、オリジナルアルバムとしては9th『Q』以来約23年ぶりに桜井和寿がジャケットに登場している。 ツアーMr.Children tour 2023/24 miss you本作発売前後の2023年9月16日から翌年3月8日まで、21会場39公演に渡るホールツアー『Mr.Children tour 2023/24 miss you』を開催[21][40]。Mr.Childrenとしては『Mr.Children Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ』以来約6年半ぶりのホールツアーで、最終日である2024年3月8日の奄美川商ホール公演は追加公演として開催され[40]、Mr.Childrenにとって初となる奄美大島でのライブとなった。 本ツアーでは、本作収録曲である「青いリンゴ」「Fifty's map ~おとなの地図」「Are you sleeping well without me?」「LOST」「アート=神の見えざる手」「雨の日のパレード」「Party is over」「We have no time」「ケモノミチ」「おはよう」の10曲が初披露された[41][42][43][44]。 サポートメンバーとしてSUNNY(キーボード・コーラス)、山本拓夫[注 2](サクソフォーン・フルート)が参加し、計6人編成での演奏、パフォーマンスとなった[46]。また、2024年1月13日 - 14日の東京国際フォーラム ホールA公演では、本作のレコーディングにも参加した小谷美紗子がサプライズゲストとして出演し[47]、「deja-vu」「おはよう」が披露された[44][48]。「deja-vu」はライブ初披露となり、またツアーにおいても本公演のみでの演奏となった[44]。 Mr.Children tour 2024 miss you arena tour2024年7月6日から11月3日まで、12会場26公演に渡るアリーナツアー『Mr.Children tour 2024 miss you arena tour』を開催[49][50]。ホールツアー『Mr.Children tour 2023/24 miss you』最終日である2024年3月8日に発表され[49]、『Mr.Children Tour 2018-19 重力と呼吸』以来約5年半ぶりとなるアリーナツアーとなる。10月26日 - 27日のKアリーナ横浜公演および11月2日 - 3日の大阪城ホール公演は追加公演として開催され[50]、初日のららアリーナ 東京ベイ公演は同会場のこけら落としとなった[51]。 本ツアーでは、本作収録曲である「I MISS YOU」「Fifty's map ~おとなの地図」「青いリンゴ」「Are you sleeping well without me?」「LOST」「アート=神の見えざる手」「雨の日のパレード」「Party is over」「We have no time」「ケモノミチ」の10曲が披露された[52][53][54][55]。 サポートメンバーとしてSUNNY(キーボード・コーラス)、山本拓夫[注 3](サクソフォーン・フルート)がホールツアーから引き続き参加。計6人編成での演奏、パフォーマンスとなった。 本ツアーに先立って、2024年6月23日 - 24日に東京ガーデンシアターでファンクラブ会員限定ライブ『FATHER & MOTHER Special Prelive 2024.6.23-24 TOKYO GARDEN THEATER』を開催[57]。本ライブでは「I MISS YOU」がライブ初披露された。 評価批評音楽ライターの森朋之は、本作に関して「決して派手さはないが、聴き返すたびに新たな発見がある。小さな気づきが折り重なりながら、リスナー自身の日々が少しずつ豊かになり、もうちょっとがんばってみようという気分に導かれる――このアルバムにはそんな滋味深さがたっぷりと込められていると思う」と評している[58]。また、音楽ライターの高橋智樹は、「今作の13曲からは――リバーブなど音響成分を抑えたミックスの質感も相俟って――共感や共鳴といった言葉では表現しきれない、あるがままの自分の日常の清濁とともに一音一音脈打つような、これまでのアルバム以上に密接な浸透力を感じた」とコメントしている[59]。 受賞
チャート成績初週で約16.5万枚を売り上げ、2023年10月16日付のオリコン週間アルバムチャート、および10月11日公開のBillboard JAPAN週間総合アルバムチャート「Billboard Japan Hot Albums」で共に初登場1位を獲得[1][7]。アルバム1位獲得は通算20作目となり、男性アーティストの「アルバム通算1位獲得作品数」記録をB'zに次ぎKinKi Kidsと並ぶ歴代2位タイとした[1]。 ダウンロード配信が開始した週となる2023年11月20日付のオリコン週間デジタルアルバムチャート、および11月15日公開のBillboard JAPAN週間ダウンロードアルバムチャート「Billboard Japan Download Albums」では、約0.5万ダウンロードを計上し共に初登場1位を記録した[6][11]。 収録内容
楽曲解説
参加ミュージシャン
脚注注釈
出典
参考文献
外部リンク
|