ヒトツ(英:Hitotsu)は、オーストラリアで生産・調教された競走馬。主な勝ち鞍は2021年ヴィクトリアダービー、2022年オーストラリアンギニー、オーストラリアンダービー。
日本の競走馬モーリスがシャトル種牡馬としてオーストラリアで繋養されていた時に生産された産駒である。
競走馬時代
デビュー前
2020年ゴールドコーストで開催されるマジックミリオンセールので、馬主ケヴィン・ペインの代理として調教師ウェンディ・ケリーによって10万ドルで落札された[3]。
2020/2021シーズン
調教師ケリーは、モーリスの繁殖が示唆するように「3歳でおそらく中距離の方が良いだろう」とする一方、当馬の早熟と競走の準備の出来ていることが示されたとして、コーフィールド競馬場の2歳重賞ブルーダイヤモンドプレリュードの牡馬・騸馬対象レースでデビューすることを決定した[4]。「ブルーダイヤモンド」がヒトツに短すぎることは分かっていたが、これは一流競走の重圧に慣れさせ、3歳となるための準備をさせることを目的としていたとしたという[5]。
2021年2月6日、ブルーダイヤモンドプレリュード (C&G)(英語版) (G3)でデビューし、ブルーダイヤモンドプレビューから連勝した1番人気ジェネラルボウから3.2馬身差の7着に敗れた[6]。
次いで2月20日にブルーダイヤモンドS(G1)に出走し、重賞初挑戦のアルトリウスの10着に敗れた[7]。
フレミントン競馬場で開催されるサイアーズプロデュースS(英語版)(G2)にも出走したが、ライトセーバーの6着に敗れた。
2021/2022シーズン~2022/2023シーズン
馬主として、部分所有者のほか、「日本産馬の大ファン」というオジー・キールが加わり、以後ヒトツはキールの勝負服で出走することになる[8]。また、調教師が、3,635,650ドルを稼いだアウェイゲーム[9]やGⅠ2勝を挙げたエクスプローシヴジャック[10]などを手掛けたキアロン・マーハーおよびデーヴ・ユースタスへと変更された。
未勝利戦を勝って初勝利を挙げ。次いで出走したコーフィールドギニー(G1)はアナモーの5着。
10月30日のヴィクトリアダービー(G1)では1番人気に推され、後方からの追い込みで3番人気アレグロンを捉えて勝利し、G1初勝利を飾った[注 1][11]。コーフィールドギニーから直行してヴィクトリアダービーを勝ったのは1956年のモンテカルロ以来となる[12]。前の調教師ケリーは、自らは馬主ペインに対していつも「彼はダービー馬になるでしょう」と語ったと回想し、「非常に誇りに思う」とした[5]。
続いて2022年3月5日のオーストラリアンギニー(G1)に出走し、5番人気に支持される。最内枠からラチ沿いで脚を溜め、直線では粘るライトセーバーを交わし、G1競走2連勝を飾った[13]。Soft6の重馬場で行われたため、鞍上ジョン・アレン騎手は「彼は馬場に少々苦労していた」[13][注 2]としながらも、「明らかにトップ(コンディション)の馬場の方がいいと思うけど、彼のタフネスがゴールにたどりつかせたし、他の馬より最後まで余力があったよ」[13][注 3]と語った[14]。なお、2500mのヴィクトリアダービーから1600mのオーストラリアンギニーへ直行して連勝を果たしたのは史上初であった[13]。
示唆されていたオールスターマイル[13]およびローズヒルギニーを回避し[15]、4月2日、オーストラリアンダービー(G1)に出走[16]。1番人気に支持されたレースでは、中団後方から追走すると迎えた直線で3頭による叩き合いを制し、2着ベノーに0.36馬身差を付けて勝利した[17]。ヴィクトリアダービーとオーストラリアダービーの両制覇はダルシファイ(英語版)とマホガニー(英語版)に次ぐ史上3頭目[18]、ヴィクトリアダービー、オーストラリアンギニー、オーストラリアンダービーの3連勝は史上初[17]であった。鞍上アレンはレース以前にも「このコンディションにうまく対応できるかどうかが問題だ」[18]と馬場状態を不安要素に挙げていたが、レース後には「彼は(豪)ギニーを勝つために踏ん張らなければならなかったが、今日もまただった」と、ヒトツがHeavy9の不良馬場[2]に苦しんだことに触れた[17]。
次走として当面の目標はコックスプレート、その後はジャパンカップ又はメルボルンカップへの出走を検討していると表明。ジャパンカップについてはヒトツと同厩舎だったサードラゴネットが目標にしていたレースであること、日本馬であるモーリスの産駒が日本で最強を誇る馬とレースで競い合い、これに勝利すればヒトツの価値が上がるためとしている[19]。
5月23日、左前脚繋靭帯負傷によりジャパンカップ遠征を含めた出走予定は白紙となったことが発表された[20]。
その後、復帰へ向けて調整が進められていたが再び脚部不安を発症したため、2023年1月31日に現役を引退することが発表された。引退後は父モーリスの繋養先であるオーストラリアニューサウスウェールズ州のアローフィールドスタッドで種牡馬入りする[21][22]。
競走成績
以下の情報は、Racing Post[1]、RACING.COM[2]による。
競走日
|
競馬場
|
競走名
|
格
|
頭数
|
枠番
|
馬番
|
人気
|
着順
|
騎手
|
距離馬場
|
タイム
|
着差
|
1着馬(2着馬)
|
2021.
|
02.06
|
コーフィールド
|
ブルーダイヤモンドプレリュード (C&G)(英語版)
|
G3
|
11
|
5
|
11
|
10
|
07着
|
C.ニューイット(英語版)
|
芝1100m(Good4)
|
-
|
3馬身 1/4
|
General Beau
|
|
02.20
|
コーフィールド
|
ブルーダイヤモンドS
|
G1
|
14
|
11
|
11
|
13
|
10着
|
D.ストックハウス
|
芝1200m(Good3)
|
-
|
5馬身 1/4
|
Artorius
|
|
03.06
|
フレミントン
|
サイアーズプロデュースS(英語版)
|
G2
|
14
|
5
|
10
|
4
|
06着
|
C.ニューイット
|
芝1400m(Good4)
|
-
|
3馬身 1/2
|
Lightsaber
|
|
09.12
|
ドナルド
|
未勝利戦
|
|
12
|
1
|
|
1
|
01着
|
J.アレン
|
芝1350m(Good4)
|
01:20:94
|
1馬身 3/4
|
(Commander)
|
|
10.09
|
コーフィールド
|
コーフィールドギニー
|
G1
|
15
|
3
|
17
|
5
|
05着
|
B.アレン
|
芝1600m(Good3)
|
-
|
2馬身 3/4
|
Anamoe
|
|
10.30
|
フレミントン
|
ヴィクトリアダービー
|
G1
|
16
|
6
|
9
|
1
|
01着
|
J.アレン
|
芝2500m(Good4)
|
02:37:32
|
1馬身 3/4
|
(Alegron)
|
2022.
|
03.05
|
フレミントン
|
オーストラリアンギニー
|
G1
|
15
|
1
|
1
|
5
|
01着
|
J.アレン
|
芝1600m(Soft6)
|
01:36:83
|
1/2馬身
|
(Lightsaber)
|
|
04.02
|
ランドウィック
|
オーストラリアンダービー
|
G1
|
18
|
4
|
1
|
1
|
01着
|
J.アレン
|
芝2400m(Heavy9)
|
02:39.39
|
クビ
|
(Benaud)
|
血統表
脚注
注釈
- ^ モーリス産駒としてはピクシーナイト(スプリンターズS)に続くG1競走2勝目。
- ^ I thought he laboured a little bit on the ground,
- ^ I reckon he is better definitely on top of the ground but his toughness got him there and he was always going to outstay them at the finish.
出典
- ^ a b c d e f g h i j k “競走馬情報 Hitotsu”. Racing Post. 2021年10月30日閲覧。
- ^ a b c d RACING.COM. “Hitotsu - Race Horse Profile RACING.COM” (英語). RACING.COM. 2022年3月18日閲覧。
- ^ Eddy - @fastisheddy, Andrew. “Kelly's Diamond hope turning heads” (英語). RACING.COM. 2022年3月18日閲覧。
- ^ Eddy - @fastisheddy, Andrew. “Kelly's Diamond hope turning heads” (英語). RACING.COM. 2022年3月18日閲覧。
- ^ a b Sporle - @bensporle, Ben. “Kelly 'extremely proud' of Hitotsu” (英語). RACING.COM. 2022年3月18日閲覧。
- ^ “豪ブルーダイヤプレリュード、ジェネラルボウが前哨戦連勝で重賞初制覇”. JRA-VAN ver.World. 2022年3月18日閲覧。
- ^ “豪2歳G1ブルーダイヤモンドS、重賞初挑戦のアルトリウスが豪快に差し切り”. JRA-VAN ver.World. 2022年3月18日閲覧。
- ^ Eddy - @fastisheddy, Andrew. “Internationals are crucial says Kheir” (英語). RACING.COM. 2022年3月18日閲覧。
- ^ RACING.COM. “Away Game - Race Horse Profile RACING.COM” (英語). RACING.COM. 2022年3月18日閲覧。
- ^ RACING.COM. “Explosive Jack (NZ) - Race Horse Profile RACING.COM” (英語). RACING.COM. 2022年3月18日閲覧。
- ^ “【海外競馬】モーリス産駒が豪G1制覇!ヒトツが2500mのヴィクトリアダービー制す”. netkeiba.com (2021年10月30日). 2021年10月30日閲覧。
- ^ Iorio - @CDi_Iorio, Carl Di. “Donald to Derby glory for Hitotsu” (英語). RACING.COM. 2022年3月18日閲覧。
- ^ a b c d e “G1豪ギニー、モーリス産駒ヒトツが最内キープで快勝”. JRA-VAN ver.World. 2022年3月7日閲覧。
- ^ “Hitotsu joins greats as dual Flemington classic winner” (英語). www.vrc.com.au. 2022年3月18日閲覧。
- ^ “ヒトツはオールスターマイルを回避、史上初の快挙狙い豪ダービーへ”. JRA-VAN ver.World. 2022年4月3日閲覧。
- ^ “Full Result 5.55 Randwick (AUS) | 2 April 2022 | Racing Post”. www.racingpost.com. 2022年4月3日閲覧。
- ^ a b c “モーリス産駒のヒトツ、豪ダービーも制して史上初の快挙を達成”. JRA-VAN ver.World. 2022年4月3日閲覧。
- ^ a b “モーリス産駒ヒトツ、史上3頭目の偉業かけて豪ダービーへ”. JRA-VAN ver.World. 2022年4月3日閲覧。
- ^ “モーリス産駒ヒトツ、ジャパンカップ参戦の可能性浮上”. JRA-VAN Ver.World. (2022年4月5日). https://world.jra-van.jp/news/N0010676/ 2022年4月5日閲覧。
- ^ “モーリス産駒ヒトツが繋靭帯を負傷、ジャパンカップ参戦は白紙に”. JRA-VAN ver.World. 2022年5月27日閲覧。
- ^ モーリス産駒ヒトツに新たな脚部不安、引退が決まり種牡馬に転身へJRA-VAN world、2023年2月1日配信・閲覧
- ^ 豪G1・3勝のモーリス産駒ヒトツが種牡馬入りnetkeiba.com、2023年6月13日配信・閲覧
- ^ a b “血統情報:5代血統表|Hitotsu(AUS)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2022年3月31日閲覧。
- ^ a b “Hitotsuの血統表 | 競走馬データ”. netkeiba.com. 株式会社ネットドリーマーズ. 2022年3月31日閲覧。
外部リンク