サイヴァリア
『サイヴァリア』 (Psyvariar) は2000年にサクセス製作、タイトーが発売したアーケードゲーム。ゲームのジャンルは縦スクロールのシューティングゲームで、弾幕系シューティングの一つ。使用基板はPlayStation上位互換基板、タイトー・G-NET。 3月に初作、9月にマイナーチェンジした『サイヴァリア リビジョン』が発売されている。初代はサブタイトル「Medium Unit」より「μ」(Medium Unit→MU→ミュー)、リビジョンは「R」と略され、この文字は各タイトル画面の背景にも大きく表示されている。2018年には双方を収録かつ追加要素を取り入れた『サイヴァリア デルタ』が発売。 ここでは両作品、続編の『サイヴァリア2 THE WILL TO FABRICATE』『サイヴァリア・リアセンブル』を並列的に紹介する。 概要自機(アクシオン)の操作は縦スクロールシューティングゲームとしてはオーソドックスで、8方向レバーと2ボタン(ショット、ボム)。敵の攻撃を反撃のチャンスとするBUZZシステムが特徴。 ステージの進行には『ダライアス』のように分岐選択肢が設けられている。プレイヤーの腕前に対応して選べるステージが変わる。 BUZZシステムこのゲームの最大の特徴は、敵弾もしくは敵キャラクターに自機をかすらせることによりパワーアップができる[1]というものである。この行為を「BUZZ(バズ)」と呼び、しばしば動詞形の「BUZZる(バズる-ラ行五段活用)」と言う表現も用いられる。本来の「BUZZ」は、英語の「火花」、転じて曲技飛行用語で「地面スレスレを飛ぶ」ことを意味する。 「μ」では1発の敵弾でBUZZれる回数は1回のみだが、「R」ではBUZZ済の敵弾も一定時間後にBUZZれるようになった。これにより、弾幕の中に滞在するプレイスタイルが誘発される。 BUZZシステムは本来回避すべきである敵や敵弾にあえて近づくことでパワーアップができるという発想の転換である。旧来の感覚では「危ないから逃げよう」と反射的に回避行動を取るべき場面で「危ないから突撃してみよう」となる。 なお、他に「敵弾を利用する」システムを持ったシューティングゲームとしては1999年の『ギガウイング』(カプコン)・『爆裂無敵 バンガイオー 』(トレジャー))、2001年の『斑鳩』(トレジャー)などがある。 サクセスの開発者によると、BUZZシステムの元となったのは『ライデンファイターズ』の、敵弾にかすることにより点数が入るというフィーチャーだった。 レベルアップ敵機を倒す、もしくはBUZZることで、自機は経験値を獲得できる。獲得した経験値の量によって「経験値ゲージ」と呼ばれるゲージが満たされてゆき、最大値になると自機が「レベルアップ」する。レベルアップをすると自機ショットの威力が上がり、レベルが不足していると後半ステージの敵を撃破することは困難になる。一定のレベルで自機の形状も変化するが、当たり判定やBUZZ性能には変化は無い。 レベルアップの際には自機が雷のような光に包まれ、約1.5秒無敵になる。無敵中にもBUZZは可能であり、「BUZZ→レベルアップ無敵→無敵時間にさらにBUZZ→レベルアップ無敵」というように連続して無敵時間を保つことも可能である。またレベルアップ時の光には高い攻撃力があるため、レベルアップだけで敵を倒しながら進むことが可能である場面も多い。後半に出現する高難易度のステージでは、レベルアップ無敵を利用しないと敵弾の回避が困難な場面も多くなる。 経験値ゲージの上昇量は場面ごとに変わり、ボス戦中やデンジャーステージ(後述)ではゲージ上昇量が低下する。しかしこのような場面では多量の敵弾が飛び交いBUZZの機会が増える。壊滅的な量の敵弾の発射源に飛び込むチャンスさえ見つければ、敵弾のど真ん中で無敵状態を持続させ、そこにとどまることも可能である。一瞬の駆け引きと覚悟を決めた突撃が成功した時の征服感は他のゲームでは決して味わえない感覚であり本作の中毒性を増している。 自機の操作ローリング操作上下もしくは左右交互にレバーを素早く入力する事で自機はY軸方向に高速回転(ロール)する。旧来のシューティングゲームから視覚的要素として取り入れられて来た挙動だが、本作はここに極めて重要な意味を持たせた。 ローリング状態になる事で目に見える2つの変化と、目に見えない2つの変化が起きる。
4がやや特殊な概念なので補足で説明する。 BUZZの判定は、敵弾が自機を中心とする円状の判定領域に「入って、出た」際に成功とみなされる。判定領域から弾が出る前に自機に被弾したりボムを使われたりした場合はその弾はBUZZ対象とはならない。 ローリング時にはこの判定領域が「弾が入った」判定にのみ大きくなる。このため、判定領域から「出た」ことになる弾の数が多くなり、単位時間内により多くのBUZZができる。また、より自機と弾の距離を離した状態でBUZZを成功させることができる。 つまり、大量の弾が自機に接近した時、通常時はBUZZ成功とみなされるより前に自機が被弾する恐れがあるが、ローリング時は被弾するより前にBUZZ成功になる可能性が非常に高い。 よって被弾する前に上記のレベルアップによる1.5秒の無敵時間を獲得できる可能性が強くなる。 ショットショットボタンを押すことで自機前方に通常弾が発射される。自機の形状により発射される弾の内容、方向、威力が異なる。 ローリング時は前方集中の強力なショットとなる。幅が広く命中しやすい(厳密に言えば通常ショットを全弾命中させた方が威力は大きい)。 ボム本作のボムは初作では従来のシューティングゲームに準じ、「敵に対して広範囲で大きなダメージを与え、敵弾を消し去る、一定時間無敵」という性能を持つ。「R」ではこの通常のボムの他に、ボタンを長く押す(1秒程度)事により「ショートボム」と呼ばれる防御手段を発動できるようになった。 ショートボムは敵への攻撃力はおろか、敵弾を消す事も無い。主にBUZZを拡張する事を目的とした武器となっており「一定時間無敵」「極めて広い範囲にBUZZを成功させる」という性能を持っている。上述のBUZZシステムをより重視した「R」の戦略的な要素の一つで、たとえば敵弾幕の多い場面でショートボムを使用し弾幕の真っ只中に突入すれば、容易に連続レベルアップを引き起こすことができる。 ステージ選択ステージ終了後には次のステージを大雑把な難易度を参考に選択することができる。レベルアップの度合いによって「イージー」「ノーマル」成績が良い場合は「ハード」が選択できる。 各ステージデンジャーステージ(「R」のみ)ステージクリア時に規定のレベルを超えている場合と最終ステージでは、デンジャーステージが始まる。それぞれの出現条件は「X-A」レベル56以上、「X-B」レベル118以上、「X-C」レベル163以上、「X-D」レベル218以上。X-AやX-Bと名づけられたこのステージは格段に難しい内容なのはもちろん、BUZZによるゲージ上昇が少なく(ボス戦中の上昇倍率に等しい)レベルアップの無敵時間中に敵弾塊へ突入しても、通常ステージのように次のレベルアップまで経験値を上昇させることは困難である。連続的な無敵循環など望むべくも無い。 その代わりにBUZZによって獲得できる点数が大きく、ハイスコアを目指すのであればデンジャーステージの適確な攻略が不可欠である。 意図的に過度のレベルアップを行なわない限り不本意にデンジャーステージが現れることは無く、イージーステージのみを選択していくことで最終面がX-A(最も簡単なデンジャーステージ)になり、思いのほか容易にエンディングを迎えることができる。 逆に言えば常に良い成績でハードばかり選択、全てのXステージを潜り抜ける事によりベテランプレイヤーにとっても非常に歯応えのある内容になる。 用語(2も含む)
リプレイモード(「R」のみ)「R」では特定ステージのみでスコアアタックを行なう(もしくは練習目的で使用する)リプレイモードが盛り込まれた。ゲーム開始前に通常のゲーム内容とリプレイモードのどちらかを選択。リプレイモードの場合は選択したステージのみを複数回プレイ可能。リプレイモードでのプレイ前にはゲーム基板に記憶されたトップスコア時のリプレイ再生が行なわれ、その後にプレイヤーが試技を行なう。ゲームセンターに訪れたスーパープレイヤーの最も優れたプレイ内容を参考にできる画期的なものになるはずだったが模倣は行なわれていない様子(通常の1面から最後までの通しプレイと異なり、特定ステージのみに特化したプレイ内容の方が限定的なハイスコアを作れてしまうという事情、つまり実際の通しプレイでは参考にならないからという不可避な問題を抱えている)。このリプレイ機能はアマチュアゲームの作品では頻繁に見られる仕様がアーケードゲームの世界に逆輸入されたものと見ることができる。 なお、リプレイモードのみX-Dをクリアすることにより、更にデンジャーなXX-ステージにトライする事が可能になる。 美術、音楽弾幕系シューティングの中でもひときわシャープな印象でまとめられた弾幕で知られる。弾は直線的な移動しかせず、その移動方向を明確にするために棒状の形の弾が多用されている。これにより大量の弾が発射される場面では弾によって独特の幾何学模様が画面に描かれるように見え、本作の弾幕の傾向を特徴付けている。弾には極彩色が用いられ、黒を基調としたトーンの低い背景色に極めて映え視認性が良い。 BGMはWASi303を含む4名による作曲。ピアノアンビエントを主軸にトランスブレイクビーツ等を変拍子で扱い、ゲームミュージックの範疇においては極めてモダン指向がある。 WASi303と接点のある作曲家の細井聡司は、ゲームのテンポが非常に速いため、このような曲調が取り入れられたのだろうと推測している[2] 独特の曲調で極めて高い評価を持つが、長らくサウンドトラックとしては同人盤としての発売と、PS2限定版の同梱盤の2種類しかなかった。再版を求める声が非常に多かったのものの、マスターデータを破損してしまったため、長らく絶版のままとなり、下記のPS2限定版の中古品価格が、DVD付属よりCD付属版の方が3~4倍高い値段で流通していたほどである。 サウンドテストモードを用いてアナログでデータを引き出した物が2007年よりEGG MUSIC、2012年にiTunes Storeにてダウンロード版が販売されている。 その後『サイヴァリア・リアセンブル』の発表と前後し、ROMから収録データを引き抜けるG-NET開発用基板が見つかり、デジタルマスターデータが確保された。2017年満を持して『ミディアムユニット』・『リビジョン』・『リアセンブル』の3枚組デジタルリマスターサントラがクラリスディスクより発売されている。 オリジナル以外では14名のクリエイターによるリミックスバージョン「PSYVARIAR "THE MIX"」が2008年8月に発売された。 ゲーム中に多く挿入される短い英語音声は上記のテクノミュージックで使用されるヴォコーダーのそれとは違い抑揚の極めて薄い、冷たく鮮明な機械然としたもので、BGMやグラフィックとあいまって無機質な世界観を作り出している。 登場人物(サイヴァリア ミディアムユニット)本作のキャラクターは真の最終ボス「グルーオン」を倒してクリアすることでその存在を確認できる。
移植
サイヴァリア2
『サイヴァリア2 THE WILL TO FABRICATE』(サイヴァリアツー ザ・ウィル・トゥ・ファブリケイト)は、2003年11月に発売されたアーケードゲーム。プラットフォーム基板が前作までのG-NETからNAOMI GD-ROMシステムに変更された。設定に関しても変更が加えられ、特に自機が人型兵器である点は珍しい。開発はスコーネックが担当。 概要(サイヴァリア2)サイヴァリアRevisionのシステムを踏襲した続編で、大きな変更点は「自機選択」、「ニュートリノゲージ」である。 プレイヤー機体は「シューティング重視タイプ」と「BUZZ重視タイプ」の二種類が用意されている。前者はショットの威力が高い代わりにBUZZで得られるニュートリノ量が極端に少ない。後者は前作と同様の性能。 BUZZゲージがニュートリノゲージと名称が変わり、得られる経験値の量はニュートリノ量と呼ばれる。前作はステージ道中で得られる経験値量の変動が特定ステージ、およびボスぐらいしかなかったが、本作では得られるニュートリノ量は多くの要素によって変動し、ニュートリノゲージの色で示される。通常は緑、青のときが最高で逆に赤のときは最低となる。 他の変更点としては以下のようなものがある。
また、主に以下のような理由から、作品としての評価は前作ほど高くない。
作中用語や一部の機体名には素粒子や霊科学などが用いられている。前作で使われた素粒子名はそのままボスの名称として使われている。 登場人物(サイヴァリア2)
登場機体(サイヴァリア2)
家庭用移植(サイヴァリア2)
サイヴァリア・リアセンブル
『サイヴァリア・リアセンブル』は、2016年7月8日にサービス開始したiOS用ゲームアプリ。開発はAweg、キャラクターデザインは西貴千哩が担当。売上不振に伴い、サービス開始からわずか半年後の2017年1月31日にサービスが終了した。 概要(サイヴァリア・リアセンブル)シリーズの基本的なシステムである、敵弾をかすらせることで経験値を取得しレベルアップする「BUZZシステム」やローリングといった要素は受け継がれている。自機が「μ」「R」と同様の戦闘機に戻った。今作ではステージを選択し、クリア時のスコアを他のプレイヤーと競うこともできるようになっている。また、システムメンテナンス時はグルーオンと対戦できるというモードもあった。 登場人物(サイヴァリア・リアセンブル)本作ではプレイヤーは新たに入隊したパイロット訓練生という設定となっており、登場キャラクターはプレイヤーを指導する先輩となっている。パイロットスーツは男性は黒を基調とした全身を覆うタイプの服、女性は黒と白を基調とし、胸と腹部の辺りを開けたレオタードという露出度の高い服装となっており、『2』に準拠している。
関連項目
脚注
外部リンク
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