ブリュードッグは非上場企業だが主な資金調達を「Equity for Punks(パンク株)」という株式投資型クラウドファンディングから得ている。これはブリュードッグのフォロワーが同社から直接株を購入することによって事業の共有と成長の支援ができるもので、2009年の開始から2020年までに12万人から約7300万ポンド(約95億円)の資金を調達した[6]。創業当時は世界不況の只中であったにもかかわらず「Equity for Punks」の成功によってブリュードッグは急成長を遂げた。
2015年5月、ブリュードッグは4回目の資金調達「Equity for Punks(パンク株)」において、開始から僅か20日間で500万ポンドを調達する大成功を収めた。これを祝してロンドンの金融街にヘリコプターから「太った猫」の剥製を投げ捨てる「Death to the Fat Cats」パフォーマンスが行われた[9]。この猫は投資銀行やベンチャーキャピタルなどを揶揄したもので(Fat Cat=資産家)、利益優先の量産ビールが市場に蔓延したのは彼らが企業の独立性を奪ったためだと非難した。このパフォーマンスの後、ジェームズは「もはやクラウドファンディングは、変革者にとってニッチな代替手段ではなく有効な選択肢だ」「我々はロック・フェラーではない。ガイ・フォークスだ」と述べた。
2008年4月、ブリュードッグはポートマン・グループから警告を受けた。PUNK IPAのラベルに書かれた「This is an Aggressive Beer(これはアグレッシブなビールです)」というフレーズが、飲用者の「反社会的な行動を助長する」としてラベルの変更を求めるものであった。ブリュードッグは「フレーバーの特徴の表現」であると主張して要求を拒否したため、本件は有識者による第三者委員会に送られ審議されることになった。ポートマンの主張が支持されれば小売業者に対してPUNK IPAの販売禁止が要請される。
ELVIS JUICE エルビスジュース。グレープフルーツピールを使用した柑橘系IPA。米国進出に際してアメリカン・ドリームを象徴する名前が付けられた。このネーミングに対してエルビス・プレスリーの知財管理団体からライセンス料を要求されたがジェームズ達は本名をエルビスに改名して抵抗した[18]。ブリュードッグが経営するホテルにはエルビスジュース仕様のバスアメニティが備え付けられている[19]。
HAZY JANE ヘイジージェーン。ニューイングランドIPA。無濾過のため濁って(Hazy)いる。ネーミングはニック・ドレイクの曲「Hazey Jane」から。アルコールフリーバージョンのHAZY AFも存在する。
ZEPHYR そよ風。ランビックにヒントを得て造られたダブルIPA。新鮮なイチゴが詰められたグレーンウイスキーの樽で21か月かけて熟成。100本のみの限定販売で売り上げはすべてRNLI(王立救命艇協会)に寄付された。これは漁師時代のジェームズが北海で暴風雨に見舞われRNLIに救護された出来事にちなんでいる。サブタイトルは「There's a Storm Brewing(嵐の予感)」。
BORN TO DIE ボーン・トゥ・ダイ。アメリカンIPAのカリスマ、ストーン・ブリューイングへのリスペクトを込めたダブルIPA。ストーンの「Enjoy By…」シリーズのように、およそ35日の賞味期限がラベル中央に大きく記されている。
NAUGHTY LIST 悪い子リスト。チョコレートキャラメル・スタウト。2019年のクリスマスにファンジン向けにリリースされたミルクスタウト。伝説によるとサンタクロースは2冊の名簿を携えているとされ、「いい子」リストに載っている子の靴下にはプレゼントを、「いたずらっ子」リストに載っている子の靴下には石炭や玉葱を詰めていくという。
ALICE PORTER アリスポーター。ダークモルトとソラチエースのモダンツイスト。英国ウェストヨークシャー州にあるクラフトビールバー「ノースバー」のゼネラルマネージャー、マット・ゴレッキとその恋人アリス・ポーターの結婚式のために醸造された[21]。ノースバーは英国クラフトビールバーの先駆として知られる店。当初、バーのカスク(大樽)で少量販売するのみだったが好評につき商品化したため二人の結婚は世界中で祝福されることになった。
ラガー
LOST LAGER 失われたラガー。ドイツ近代種のサファイアホップと世界最古の醸造所ヴァイエンシュテファン提供のラガー酵母を使用している。缶に描かれたユニコーンはスコットランドの国獣で復活の象徴。大手ビールメーカーの乱造によって魂を奪われたラガーを復活させる。
JACK HAMMER 削岩機。新鮮なホップを大量に使用して、IBU(国際苦味単位)理論値200超えを実現したブリュードッグ史上最も苦いIPA。
Tactical Nuclear Penguin 戦術核ペンギン。摂氏マイナス20度の冷凍庫で凍結濃縮を繰り返して作られたアルコール度数32%のインペリアルスタウト。これに対抗してイタリアの醸造所レボリューションキャットは度数35%のバーレーワイン「Freeze the Penguin(ペンギンを凍らせる)」を発表した。
Sink The Bismarck!ビスマルク号を撃沈せよ! アルコール度数41%のインペリアルIPA。ドイツの醸造所ショルシュブロイが製作したボックビール「SchorschBock40%」から世界最強度ビールの座を奪取すべく造られた。
The End of History 歴史の終わり。アルコール度数55%のゴールデンエール。ネーミングはフランシス・フクヤマの著書から。交通事故で轢死した動物の剥製をボトルに加工している。12本のみの限定ボトルで、そのうち7本はオコジョ、4本はハイイロリス、1本はノウサギである。当初サメの剥製を用いる案もあったが断念した。動物愛護団体からは非難されたが多くの話題を呼び、700ポンド(約9万円)で販売され20分で完売した。うち1本はオーストラリアの性と死の美術館MONAに展示されている。
ハロー・マイネーム・イズ…
Hello My Name Is ビールは特定の国の人々に敬意を(あるいは批判を)表したダブルIPAで、その国を象徴する原料で醸造され、その国の象徴的な人物にちなんで命名される。
Hello, My Name is Vladimir 「こんにちは、ウラジミールです」2013年にロシアで制定された同性愛宣伝禁止法への抗議を示したダブルIPA。プーチン大統領の顔写真に化粧を施しポップアート風にアレンジしたラベルデザインで、「Not for Gays(ゲイお断り)」とキャッチコピーが書かれている。このビールの売り上げの50%はLGBT支援団体に寄付された。原料にロシアンベリーを使用。
Hello My Name is Mette Marit 「こんにちは、メッテ・マリットです」2001年にノルウェー王室ホーコン王太子と結婚したメッテ・マリット王太子妃に捧げるダブルIPA。スキャンダラスな過去を乗り越え現代のシンデレラストーリーを成就させた王太子妃を「史上最高の君主」とブリュードッグは讃える。原料にノルウェー産のリンゴンベリーが使用されている。ノルウェーでのみ「Hello My Name is Aune」と一般的な名前に改称して販売された。
Hello My Name is Päivi 「こんにちは、パイヴィです」フィンランドの政治家パイヴィ・ラサネンの名前が付けられたダブルIPA。フィンランドを象徴する名前を同社のブログで募集した際、アルコール規制を推進する迷惑な政治家としてその名が挙げられた。原料にフィンランドのシーベリーを使用。
スペシャル
Never Mind the Anabolicsアナボリックを気にするな。2012年のロンドンオリンピックを記念して造られたIPA。ガラナやマカなど8つの合法的な体力増強成分が含まれている。世界最大のスポーツイベントでありながら、そのスポンサー企業が添加物まみれのハンバーガーや糖分過多の炭酸飲料を売っている不条理さを皮肉っている。
Royal Virility Performance ロイヤル・ビリリティー(男性機能)パフォーマンス。2011年のイギリス王室ウィリアム王子とキャサリン妃の婚礼を記念して造られたIPA。ハーブバイアグラやイカリソウなど自然由来の精力増強成分を配合。3本飲むとバイアグラ1錠分と同じ効果を得られる。ラベルには「立ち上がれウィリアム王子」「王族に笑顔を」と書かれている。ロイヤルウェディングに便乗して安易な記念ビールが数多く造られた[22]ことに対する批判。