プラチナデータ
幻冬舎の『パピルス』の2006年12月号から2010年4月号に連載されたミステリ作品で、2010年6月30日に幻冬舎より単行本が刊行され、2012年7月5日には幻冬舎文庫から文庫版が発売された。 概要DNA捜査によって検挙率100%、冤罪率0%を目指す近未来の日本を舞台に、DNA情報によって犯罪に巻き込まれ、容疑者を追う立場から追われる身となった警察庁特殊捜査機関の天才科学者と、それを追う刑事を描いた作品。東野は当初映画化を前提として執筆を開始したものの一旦は断念し、その後、映画化と切り離して執筆されたが、映像化にあたり、大手映画会社、テレビ局、制作会社など20社以上からオファーが殺到した[1]。なお、タイトルの「プラチナデータ」は東野による造語で、物語の核心に関わるデータの事を指している[2]。 あらすじあるラブホテルで、「電トリ(電気トリップ)」という脳に電気で刺激を与えトリップ体験ができる装置を使用中に、女子大生が殺害される事件が起こった。ホテルに残された毛髪、体毛から、犯人はあっけないほど簡単に検挙された。 DNA捜査で検挙率は格段にあがったが、事件はそれだけでは終わらなかった。若い女性が暴行を受けた上頭部を銃で撃たれて殺害されるという連続婦女暴行殺人事件が起き、残された精液によるDNAデータから、すぐに犯人は割り出されると思われていたが、DNA検索システムは「NF13」(Not Found 13)という結果を示した。これは、類似する遺伝子が登録されていない13番目のケースというものだった。 その後、新世紀大学病院の脳神経科の、厳重に警備された病室で蓼科兄妹が殺害される。驚くべきことに、彼らを殺害するのに使用された拳銃は、NF13事件で使われたものと同一のものだった。DNA解析をした神楽龍平は、現れたDNAモンタージュが自分にそっくりで驚愕する。神楽には、DNA捜査システムの作者で天才数学者・蓼科早樹たちに会った際、空白の数時間があった。というのも、神楽は二重人格者であり、“リュウ”と呼ばれる人格の時に早樹に会っていたからだ。本当に自分の人格が殺害したのか、反転剤を使って確かめようとするが、リュウに確認することはなかなかできなかった。 早樹の服に「神楽の毛髪」が付着していたため、彼らを殺害した犯人と疑われて追われる身となった神楽は、早樹たちの残した“モーグル”が事件解決の鍵になるのではないか、と早樹たちの別荘に向かう。 一方、警視庁捜査一課の浅間玲司は、これまで捜査に協力的であった特殊解析研究所の所長志賀たちが、急に捜査打ち切りのために動いていたことを知り、背景に何かがあると察して動き出していた。 登場人物警視庁捜査一課
警察庁
新世紀大学病院その他
書籍情報
映画
2013年3月16日公開。監督は大友啓史、主演は二宮和也[4]。 TOHOシネマズスカラ座他全国310スクリーンで公開され、2013年3月16、17日の初日2日間で興収4億49万6,000円、動員30万5,743人になり、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第2位となった(実写映画1位)[5]。 最終興収は26億4,000万円[6]。2013年上半期(2012年冬公開 - 2013年6月公開)邦画作品5位(実写映画1位)[7]。 香港(2013年5月2日から15スクリーン)、台湾(2013年5月3日から21スクリーン)、シンガポールでも上映された。 映画あらすじ都内で発生した児童連続誘拐殺人事件において、警察庁特殊解析研究所の若き天才科学者・神楽龍平は、自身が開発したDNA捜査システム(プロファイリング)によって遺留品の髪の毛1本を解析し、犯人の年齢、性格、顔だち等から近親者として特定の女性の名まで上げて犯人逮捕に貢献した。 警視庁捜査一課の浅間警部補は、神楽が犯人の近親者として名指しした女性に前科が無いことから、医療データのDNAを無断で使った違法捜査を疑った。そんな浅間に神楽は、1年後には国民のDNAを国が管理する「DNA法案」が施行される。全国民のDNA情報こそ「プラチナデータ」だと断言した。 新世紀大学病院の精神科で、入院患者の蓼科 兄妹が射殺された。妹の蓼科早樹は自閉症だが数学の天才で、神楽が開発したDNA捜査システムを数値的にサポートした開発者だった。だが、早樹の脇腹からは肋骨が1本抜き取られており、この手口は1ヶ月前から続いているDNA法案反対者たちの殺しと共通していた。この殺しの被疑者の遺留物であるDNAはサンプルが全く存在しないNF(Notto Found)の13例目「NF13」と呼ばれていた。 早樹の爪の間に残っていた皮膚片を自信を持って解析する神楽。だが、得られたのは神楽自身のデータだった。身に覚えがないまま逃亡する神楽。 特殊解析研究所はDNA捜査システムによる国民のデジタル・クローンと全国の監視カメラを連動させた顔認証の監視システムを完成させていた。たちどころに居場所を特定される神楽。だが、神楽は助手の白鳥里沙からの警告メールによって逃げ延びた。 新世紀大学病院で神楽が個人的に使っていた5階フロアを調べ、油絵が大量に置かれたアトリエを発見して、神楽の二重人格を確信する浅間警部補。蓼科早樹と神楽の担当医である水上利江子教授は、神楽龍平の交代人格である「リュウ」が、父親を亡くした15才頃から現れたと語った。13年前、天才陶芸家だった神楽の父親は、息子の何気ない発言に深く傷ついて自殺し、残された息子は二重人格を発症したのだ。 白鳥里沙はDNA捜査システムを狙うアメリカ政府のスパイだったが、逃亡する神楽龍平をメールで誘導し、逃走資金やプリペイド携帯を与えた。監視システムに追われながら、蓼科兄妹がたまに使っていた山梨県の別荘に向かい、PCのデータから蓼科兄妹がNF(Notto Found)の補完プログラムである「モーグル」を開発したこと。「真のプラチナデータ」を取り出せるモーグルは懺悔の証だという通信記録を発見した。 神楽に自分が乗って来たバイクを与え、モーグルを探せと指示して逃がす白鳥。だが、NF13について調べるために東京に戻った白鳥は何者かに射殺され、肋骨を1本抜かれて発見された。殺害現場から神楽との連絡用のプリペイド携帯を持ち去り、密かにコンタクトを取る浅間警部補。リュウと早樹が恋仲だったことを知った神楽は、新世紀大学病院のアトリエでリュウが描いた早樹の油絵を浅間警部補に調べさせ、裏に隠されていたモーグルを発見した。 モーグルを神楽のDNA研究室に持ち込み、職員に銃を突きつけて解析させる浅間警部補。モーグルに守られていた「真のプラチナデータ」は、政府の要人や特権階級の家族をNF(Notto Found)としてデータ化から保護するシステムだった。そして、殺人犯であるNF13は水上利江子医師だった。 水上医師の研究所に駆けつける浅間警部補と警官隊。だが、一足早く着いた神楽(リュウ)によって水上医師は射殺されていた。真にDNA捜査システムの完成を願っていたのは水上医師であり、それは優秀なDNAの子供のみを選別して生かすという偏った思想だったのだ。 実は神楽龍平はもともと「リュウ」という主人格から派生した交代人格だった。水上医師は優秀な龍平を催眠治療によって主人格とし、数学の天才の早樹と組ませてDNAシステムを完成させたのだ。水上医師を射殺した瞬間の人格はリュウだったが、自分が操り人形だったと自覚した神楽龍平は、殺人の罪を被って警察に出頭した。 キャスト
スタッフ
BD / DVD2013年9月27日発売。発売元は電通、販売元は東宝。
特番2013年3月22日にフジテレビ系〈金曜プレステージ〉枠の映画コラボ特番『実録!プラチナデータDNAミステリー事件簿 〜あなたの運命は決められている!〜』が放送[9]。科学鑑定の取材、DNAに関するビジネスなどを特集。 脚注注釈出典
外部リンク |