文學界新人賞(ぶんがくかいしんじんしょう)は、 文藝春秋が発行する文芸雑誌『文學界』の公募新人賞である。年に1度募集され、受賞作は『文學界』5月号に掲載される。受賞者には賞金50万円と記念品が与えられる。規定枚数が400字詰原稿用紙で70 - 150枚と、他の純文学系文芸誌が主催する新人文学賞と比べて短めであることが特徴的である。毎年9月末日が締切日。ウェブサイトでの応募も受け付けている。
純文学系の公募している新人賞には他に、群像新人文学賞、新潮新人賞、すばる文学賞、文藝賞、太宰治賞などがある。
受賞者一覧
第1回から第10回
第11回から第20回
回(年) |
応募総数 |
賞 |
受賞者 |
受賞作
|
第11回(1960年度・下) |
1109編 |
受賞 |
福田道夫 |
「バックミラーの空漠」
|
佳作 |
蔵本次郎 |
「易行門」
|
野淵敏 |
「遠い音」
|
第12回(1961年度・上) |
1009編 |
受賞作なし
|
佳作 |
野淵敏 |
「蔦蘿行」
|
古田義一 |
「間宮海峡」
|
第13回(1961年度・下) |
1008編 |
受賞作なし
|
佳作 |
楠本薩夫 |
「砂崖の下の家」
|
第14回(1962年度・上) |
906編 |
受賞作なし
|
佳作 |
久保輝巳 |
「栞の秋」[注 7]
|
第15回(1962年度・下) |
1053編 |
受賞 |
阿部昭 |
「子供部屋」[注 8]
|
佳作 |
中川裕朗 |
「一九三三年二月二十日の死」[注 9]
|
第16回(1963年度・上) |
1056編 |
受賞作なし
|
佳作 |
葉山修平 |
「現在完了」[注 10]
|
第17回(1963年度・下) |
938編 |
受賞作なし
|
佳作 |
広田国臣 |
「独楽」
|
小沼燦 |
「鍵の音」
|
第18回(1964年度・上) |
956編 |
受賞 |
長谷川敬 |
「青の儀式」[注 11]
|
五代夏夫 |
「那覇の木馬」[注 12]
|
第19回(1964年度・下) |
982編 |
受賞作なし
|
第20回(1965年度・上) |
895編 |
受賞 |
高橋光子 |
「蝶の季節」[注 13]
|
佳作 |
森万紀子 |
「単独者」[注 14]
|
第21回から第30回
第31回から第40回
第41回から第50回
第51回から第60回
第61回から第70回
第71回から第80回
回(年) |
応募総数 |
賞 |
受賞者 |
受賞作
|
第71回(1990年度・下) |
1200編 |
受賞 |
竹野昌代 |
「狂いバチ、迷いバチ」
|
佳作 |
夏川戸榮子 |
「夜を渡る音」
|
第72回(1991年度・上) |
1400編 |
受賞 |
みどりゆうこ |
「海を渡る植物群」
|
第73回(1991年度・下) |
1400編 |
受賞 |
市村薫 |
「名前のない表札」
|
第74回(1992年度・上) |
1420編 |
受賞 |
安斎あざみ |
「樹木内侵入臨床士」
|
大島真寿美 |
「春の手品師」[注 49]
|
第75回(1992年度・下) |
1200編 |
受賞 |
伏本和代 |
「ちょっとムカつくけれど、 居心地のいい場所」[注 50]
|
佳作 |
名取眞吉 |
「タクシー・ドライバー」
|
第76回(1993年度・上) |
1493編 |
受賞 |
高林杳子 |
「無人車」
|
第77回(1993年度・下) |
1444編 |
受賞 |
中村邦生 |
「冗談関係のメモリアル」[注 51]
|
篠原一 |
「壊音 KAI-ON」[注 52]
|
第78回(1994年度・上) |
1537編 |
受賞 |
松尾光治 |
「ファースト・ブルース」
|
第79回(1994年度・下) |
1971編 |
受賞 |
木崎巴 |
「マイナス因子」
|
第80回(1995年度・上) |
1490編 |
受賞 |
青来有一 |
「ジェロニモの十字架」[注 53]
|
第81回から第90回
回(年) |
応募総数 |
賞 |
受賞者 |
受賞作
|
第81回(1995年度・下) |
1422編 |
受賞 |
塩崎豪士 |
「目印はコンビニエンス」
|
清野栄一 |
「デッドエンド・スカイ」[注 54]
|
奥泉光奨励賞 山田詠美奨励賞 |
山田あかね |
「終わりのいろいろなかたち」
|
第82回(1996年度・上) |
1404編 |
受賞作なし
|
島田雅彦奨励賞 辻原登奨励賞 |
新堂令子 |
「サイレントパニック」
|
第83回(1996年度・下) |
1683編 |
受賞 |
最上煬介 |
「物語が殺されたあとで」
|
大村麻梨子 |
「ギルド」
|
第84回(1997年度・上) |
1345編 |
受賞 |
吉田修一 |
「最後の息子」[注 55]
|
第85回(1997年度・下) |
1627編 |
受賞 |
橘川有彌 |
「くろい、こうえんの」
|
島田雅彦奨励賞 山田詠美奨励賞 |
砂田ガロン |
「天麩羅車掌」
|
第86回(1998年度・上) |
1195編 |
受賞 |
若合春侑 |
「腦病院へまゐります。」[注 56]
|
奥泉光奨励賞 |
坂上康二 |
「ロッキィ ワールド」
|
第87回(1998年度・下) |
1527編 |
受賞作なし
|
奥泉光・ 島田雅彦奨励賞 |
三輪克巳 |
「働かざるもの」
|
第88回(1999年度・上) |
1225編 |
受賞 |
羽根田康美 |
「LA心中」
|
松崎美保 |
「DAY LABOUR」
|
浅田彰・ 山田詠美奨励賞 |
最向涼子 |
「ひまつぶし」
|
第89回(1999年度・下) |
1621編 |
受賞作なし
|
島田雅彦・ 辻原登奨励賞 |
水野由美 |
「ほたる座」
|
第90回(2000年度・上) |
1349編 |
受賞作なし
|
辻原登奨励賞 |
福迫光英 |
「ガリバーの死体袋」
|
第91回から第100回
第101回から第110回
第111回から第120回
回(年) |
応募総数 |
賞 |
受賞者 |
受賞作
|
第111回(2010年度・下) |
2052編 |
受賞 |
吉井磨弥 |
「ゴルディータは食べて、寝て、働くだけ」
|
第112回(2011年度・上) |
1778編 |
受賞 |
水原涼 |
「甘露」
|
山内令南 |
「癌だましい」[注 76]
|
第113回(2011年度・下) |
1985編 |
受賞 |
鈴木善徳 |
「髪魚」
|
馳平啓樹 |
「きんのじ」
|
第114回(2012年度・上) |
1650編 |
受賞 |
小祝百々子 |
「こどもの指につつかれる」
|
第115回(2012年度・下) |
2223編 |
受賞 |
守山忍 |
「隙間」
|
二瓶哲也 |
「最後のうるう年」
|
第116回(2013年度・上) |
1590編 |
受賞作なし
|
第117回(2013年度・下) |
1720編 |
受賞 |
前田隆壱 |
「アフリカ鯰」
|
守島邦明 |
「息子の逸楽」
|
吉田修一奨励賞 |
野上健 |
「走る夜」
|
第118回(2014年度・上) |
1713編 |
受賞 |
諸隈元[注 77] |
「熊の結婚」
|
第119回(2014年度・下) |
1956編 |
受賞 |
板垣真任 |
「トレイス」[注 78][1]
|
佳作 |
小笠原瀧[注 79] |
「夜の斧」
|
森井良[注 80] |
「ミックスルーム」[注 81]
|
第120回(2015年度) |
1566編 |
受賞 |
加藤秀行 |
「サバイブ」
|
杉本裕孝 |
「ヴェジトピア」
|
第121回から
回(年) |
応募総数 |
賞 |
受賞者 |
受賞作
|
第121回(2016年度) |
2095編 |
受賞 |
砂川文次 |
「市街戦」[注 82][2]
|
渡辺勝也 |
「人生のアルバム」[注 83]
|
第122回(2017年度) |
2445編 |
受賞 |
沼田真佑 |
「影裏」[3]
|
第123回(2018年度) |
2593編 |
受賞作なし[4]
|
第124回(2019年度) |
2172編 |
受賞 |
奥野紗世子 |
「逃げ水は街の血潮」
|
田村広済 |
「レンファント」
|
第125回(2020年度) |
2251編
|
受賞 |
三木三奈 |
「アキちゃん」
|
第126回(2021年度) |
2817編 |
受賞 |
青野暦 |
「穀雨のころ」
|
九段理江 |
「悪い音楽」
|
第127回(2022年度) |
2770編 |
受賞 |
年森瑛 |
「N/A」
|
第128回(2023年度) |
2229編 |
受賞 |
市川沙央 |
「ハンチバック」
|
第129回(2024年度) |
2120編 |
受賞 |
旗原理沙子 |
「私は無人島」
|
福海隆 |
「日曜日(付随する19枚のパルプ)」
|
選考委員
初期の文學界新人賞について
初期の文學界新人賞は、現在と違い年に数回募集と選考会を行って入選作を決定し、そのうち最も優れた作品を受賞作とするシステムを採っていた。第1回は1955年4月、7月、10月、1956年1月に入選作が発表されており、受賞作となった石原慎太郎「太陽の季節」は7月の入選作であった。ちなみに、1月の入選作は有吉佐和子の「地唄」である。第1回においては、入選者には適当な原稿料が、受賞者には賞金5万円が与えられた。また、規定枚数は30枚以上100枚以内とされていた。
脚注
注釈
- ^ 芥川賞受賞。『太陽の季節』所収
- ^ 『創作代表選集 第19巻 昭和三十一年後期』所収
- ^ 『硫黄島』所収
- ^ 『総会屋錦城』所収
- ^ 『経済小説名作選』所収
- ^ 『熊野』所収
- ^ 『海の屑』所収
- ^ 『未成年』所収
- ^ 『昨日と明日のエバ』所収
- ^ 『バスケットの仔猫/日本いそッぷ噺』所収
- ^ 『青の儀式』所収
- ^ 『現代鹿児島小説大系 第1巻』所収
- ^ 『蝶の季節』所収
- ^ 『密約』所収
- ^ 『海辺の広い庭』所収
- ^ 『夏の流れ』所収
- ^ 『石のニンフ達』所収
- ^ 『死の翼の下に』所収
- ^ 『犬の生活』所収
- ^ 『口髭と虱』所収
- ^ 『口髭と虱』所収
- ^ 『蟹の町』所収
- ^ 『幼き者は驢馬に乗って』所収
- ^ 「夏の華」を改題。『釣魚の迷宮 幻想小説集』所収
- ^ 『植樹祭』所収
- ^ 『新潟県文学全集 第1期第6巻 小説編現代編3』所収
- ^ 芥川賞受賞。『オキナワの少年』所収
- ^ 『田村孟全小説集』所収
- ^ 『伸予』所収
- ^ 直木賞受賞。『子育てごっこ』所収
- ^ 『遥かな森 谺する谷』所収
- ^ 『泡沫夢幻』所収
- ^ 『葬儀の日』所収
- ^ 『真夏のドライブ』所収
- ^ 『ふくしまの文学2 小説戦後篇』所収
- ^ 『裸足』所収
- ^ 『風のけはい』所収
- ^ 『風のけはい』所収
- ^ 『エチオピアからの手紙』所収
- ^ 「悠喜あづさ」から改名
- ^ 『過越しの祭』所収
- ^ 『野薔薇の道』所収
- ^ 『帰れぬ人びと』所収
- ^ 『蔵王おろし』所収
- ^ 『四百年の長い旅』所収
- ^ 『地蔵記』所収
- ^ 芥川賞受賞。『ネコババのいる町で』所収
- ^ 『渇水』所収
- ^ 『ふじこさん』所収
- ^ 『ラクになる』所収
- ^ 『チェーホフの夜』所収
- ^ 『壊音』所収
- ^ 『聖水』所収
- ^ 2001年6月 河出書房新社
- ^ 『最後の息子』所収
- ^ 『腦病院へまゐります。』所収
- ^ 『クチュクチュバーン』所収
- ^ 『猛スピードで母は』所収
- ^ 『イッツ・オンリー・トーク』所収
- ^ 芥川賞受賞。『介護入門』所収
- ^ 『うつつ・うつら』所収
- ^ 『さりぎわの歩き方』所収
- ^ 『風化する女』所収
- ^ 「澁谷ヨシユキ」から改名
- ^ 『霊降ろし』所収
- ^ 『いやしい鳥』所収
- ^ 『オブ・ザ・ベースボール』所収
- ^ 『舞い落ちる村』所収
- ^ 『ワンちゃん』所収
- ^ 「金澤太郎」から改名
- ^ 「革命」を改題。『よもぎ学園高等学校蹴球部』所収
- ^ 『白い紙/サラム』所収
- ^ 「鶴川建」から改名
- ^ 『すなまわり』所収
- ^ 2010年8月 文藝春秋
- ^ 『癌だましい』所収
- ^ 「上戸元」から改名
- ^ 「とれいす」を改題
- ^ 「十川瀧」から改名
- ^ 「本二木ちまや」から改名
- ^ 「塊」を改題
- ^ 「夢行軍」を改題
- ^ 「人生の百科事典」を改題
出典
関連項目
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