栄養的分類栄養的分類(えいようてきぶんるい)とは、生物(特に微生物)の増殖、生育条件による分類法であり、厳密な種の分類等には余り用いられないものの、網羅的な性質を簡易に理解するために用いられる。例えば、Escherichia coliという学名だけではいかなる性質の生物か示されていないが、Escherichia coliは化学合成従属栄養生物(化学エネルギーをエネルギー源として、炭素源として有機物を利用する、詳細は以下に述べる)である、と書けば直感的に理解できる。 栄養的分類のもっとも単純なものとしては、上記の例にも書いているが によって分類する。また、より複雑なものとしては生物の生育温度、pH、酸素分圧、塩濃度など様々なパラメータが組み合わされたものとなる。 栄養的分類は基本的に、微生物でしか有用でない。なぜなら多細胞生物体である動物(と菌類)はその全てが化学合成従属栄養(共生微生物を持つものをのぞく)、植物ではその全てが光合成独立栄養(寄生性のものを除く)を示すからである。多様な環境に生息し、多様な栄養要求性を示す微生物の分類にこそ栄養的分類は有意に用いられている。以下に主な栄養的分類パラメータとその名称を述べる。 エネルギー源および炭素源エネルギー源と炭素源を用いる栄養的分類は最も良く用いられている栄養的分類法である。その有用性は極めて厳密に生物を分類できる点にある。エネルギー源による分類法は以下の二つに分かれる。 光合成生物の例としては植物、化学合成生物の例としては動物があげられる。この両者は特に明確な区別が可能だが光合成生物の藻類の中には、暗所で化学合成生物として生育できるものが知られている。 炭素源による分類法は以下の分類がなされる。 炭素源による分類も明確な区別が可能だが、混合栄養は二酸化炭素と有機物の両方を炭素源とするという特異な分類もなされる。ただし、二酸化炭素か有機物か、どちらに多く依存するか、によっては両者利用できる生物(最近、同位体を用いた研究によってカイコが混合栄養であることが明らかになった)であっても、独立あるいは従属の分類がなされることもある。 上記の分類群を組み合わせることによって、以下4種の有用な栄養的分類法が確立される。
光合成従属栄養生物や化学合成独立栄養生物は多くの場合、化学合成従属栄養的に生育することが可能であるが、その場合、そのもっとも単純な栄養要求性がこれらの分類基準となる。すなわち、二酸化炭素を利用できることは有機物に炭素を依存するよりも単純であり、光エネルギーは化学エネルギーよりも単純であると考える。 栄養的ではない、その他生育因子による分類法微生物は多様な生育条件を示し、動植物など高等生物にできない特殊な環境における生育が可能である。そうした生育条件パラメータは以下、酸素分圧(空気中に酸素がどれだけ存在するか)、温度、pH、塩濃度、圧力など実に多様である。 →詳細は「極限環境微生物」を参照
栄養的分類の用法以上、栄養的分類の主なものをあげたが、生物の性質による分類は以上の分類法が複雑に組み合わさったものである。大腸菌であれば、
となり、メタン菌であれば
となる。しかしながらこのような分類はあくまでその生物の一側面であるとともに、いまだ厳格な定義の存在しない比較的曖昧な分類である。微生物の分離という研究がマニュアル化されておらず実験者個々の手腕が反映されるからであろう。 Table
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