桜を見る会問題桜を見る会問題(さくらをみるかいもんだい)は、日本の内閣総理大臣が主催する桜を見る会をめぐる一連の問題。2019年5月に表面化した。この項目では、第二次安倍政権において問題視されている公職選挙法、政治資金規正法、公文書管理法等への抵触、指摘、与野党の動静等について扱う。 本問題と森友学園問題、加計学園問題、以上3つを合わせて「モリカケサクラ」と称される。 背景2019年4月13日に開催された桜を見る会について、当初の予算の三倍となる約5518万円に上っていたことが衆院決算行政監視委員会(同年5月13日)で明らかとなり、問題視された。 第二次安倍政権における2019年以前の5年間、支出は毎回設定されている予算額を超過。金額・参加者共に毎年増え続け、2019年度の参加者は約1万8000人となった。なお、予算額は毎年1766万6000円となっている(実際の支出額ではない)[1]。
内閣府担当者は「準備、設営に最低限必要」「テロ対策強化や参加者数に応じた飲食提供など」と説明。宮本徹議員は参加者の増加が主な原因であると指摘した。 一方、保守系の文化人ら(百田尚樹、有本香、ケント・ギルバート等)や自民党関係者や後援会の参加が多数確認されたことから、以前から安倍晋三らに私物化されていたのではないかとの批判が広がっている[2]。 問題点概要桜を見る会に関しては複数の問題点が指摘されている[3]。 1. 支援者・関係者の招待 「各界で功労・功績のあった方々を慰労する」という趣旨の会に政治家が支援者を招待していたという疑惑がある。首相の安倍晋三や同夫人安倍昭恵、自民党関係者、自民党議員(2019年7月参院選での改選議員)などが招待枠を持っていたとされる。野党の追及本部は支援者の買収による公職選挙法違反の疑いがあるとしている[4][5][6]。 2. 参加者・支出額の増加 招待客の数・支出額ともに第二次安倍政権下では年々増加した。2019年度に至っては予算の三倍にも費用が膨らんだことから、私物化したのではないかと野党が指摘している。 また、反社会的勢力 (反社) が来場していた可能性が指摘され、セキュリティについても問題視されている[6][7][8]。 3. 招待者名簿と公文書管理 招待客名簿データについて、野党議員が質問をすると通知した約一時間後にシュレッダーにかけられていることから、意図的に廃棄したのではないかという指摘がなされている。野党議員や識者から行政文書・公文書の管理が都合良く行われていると問題視する声が上がっている[9][10]。 支援者・関係者の招待
税金を使った支援者への接待
時系列を考えると、内閣府が招待状を参加者に発送した3月10日ごろよりも前の段階で、安倍事務所が支援者に「桜を見る会へのご参加ありがとうございます」という文書を送っている[21]。2019年11月時点で田村智子がこの点を「政府が選考していないのではないか」と追及し、菅義偉官房長官は「内閣官房と内閣府が取りまとめをしている」と繰り返した[22]。 安倍昭恵夫人の関与
都道府県議会議員の招待2018年は自民党総裁選があり、例年は幹事長等のみだが自民党所属の京都府議会議員と滋賀県議会議員全員に招待状が来た。2019年は例年通りだった[29]。 招待者名簿と公文書管理
桜を見る会前夜祭2013 - 2019年の桜を見る会の前日に、安倍晋三後援会の主催で、ホテルニューオータニおよびANAインターコンチネンタルホテル東京で夕食会を開催していた[39]。野党側は1人5000円という会費が安すぎるのではないかと指摘し、公職選挙法や政治資金規正法に違反する可能性を指摘している[40]。安倍総理は、「会場入り口の受付にて安倍事務所職員が1人5000円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受け付け終了後に集金した全ての現金をホテル側に渡すという形で支払いがなされた。」と説明している[41]。 2020年2月17日の衆議院予算委員会で、辻元清美はANAインターコンチネンタルホテル東京に質問し、以下の回答を得たと答弁した[42]。(1)見積書を主催者に発行しないケースは無い。(2)宛名は空欄のままで領収書を発行したケースは無い。(3)ホテル主催ではない数百人規模のパーティーで、代金を参加者一人一人からホテルが受け取ることは無い。(4)上記の(1)〜(3)について、主催者が政治家や関連団体であることから対応を変えたということは無い。 以上は首相の従来の答弁と矛盾すると追及した[42]。首相は同日、「ホテルに確認したところ、辻元氏への回答は一般論で、個別の案件については営業の秘密に関わるため、回答に含まれていないとのことだ」と答弁した[43][44]。しかしANAホテルは、毎日新聞や朝日新聞の取材に対して「『個別の案件については営業の秘密に関わるため、回答に含まれない』と申し上げた事実はない」と首相答弁を一部否定している[43][44]。刑事確定記録におけるホテル関係者の供述によれば、実際には見積書は主催者に対して発行され、宛名については完全に空欄ではまずいということで宛名について上様と記載されたホテル名義の領収書を安倍事務所に渡し、代金については安倍事務所の関係者が会場で受け取り、ホテルに参加者から受け取った会費を渡したという経緯であることが記載されていた。 2020年11月23日読売新聞が1面にて『安倍前首相秘書ら聴取 「桜」前夜祭 会費補填巡り 東京地検』、翌日24日には『安倍氏側800万円超補填か』、翌々日25日には『安倍氏側 領収書廃棄か』、26日には『安倍氏側、記載方法照会』とスクープした[45]。 2020年12月3日、東京地検特捜部が安倍前首相の任意事情聴取を要請した。一方、前首相は要請について国会内で記者団に「聞いていない」と述べている[46]。 2020年12月23日、安倍晋三後援会は山口県選挙管理委員会に桜の見る会前夜祭についての収支を加えた収支報告の訂正申出を行った[47]。
2020年12月25日、安倍晋三前首相は、衆議院議院運営委員会で「(前夜祭の)夕食会の開催費用の一部を後援会として支出していたにもかかわらず、それを記載しなかったとの事実」が判明したことから安倍晋三後援会の政治資金収支報告書を修正した旨を報告し、「私が知らない中で行われていたこととはいえ、道義的責任を痛感しております」として謝罪した[49]。これは、「秘書による事実とは異なる報告に基づき、補填の実態を知らないまま答弁してしまったので、これを訂正したい、道義的責任を感じているという内容」(丹羽秀樹委員)であり、「総理、この該当者(を業務上横領罪で告訴を当然するんでしょうね」(黒岩宇洋委員)との指摘もあったが、これに対し前首相は「長年私に仕えてくれたのは事実でございますので、訴えるという考え方はございません」と答弁した。なお、刑事確定記録における議員会館に勤務していた秘書の供述調書には、安倍前総理が議員会館に勤務していた秘書に管理を委ねていたいプライベートな支出や政治団体の支出に帰属させるか不分明な支出に充てるためにプール金から不足分を捻出したとされ、地元事務所を統括する配川に対し不足していたお金の出どころまで詳しくは報告していなかったという趣旨の記載がある。 実際には前夜祭の費用を後援会が補填していたが、安倍は「補填はない」などの事実に反する国会答弁を少なくとも118回繰り返していた[50]。 2022年4月25日、共同通信が配川に対する刑事確定記録について閲覧したとして配川が「収支不記載、最初から」と供述したなどと報道している[51]。 政治資金収支報告書政治資金収支報告書には少なくとも2015年以降、前夜祭に関する記載がなかった[39]。安倍晋三は最初、「後援会としての収入支出が一切ないので、政治資金収支報告書への記載は必要ない」という主張をした[39]。その後の2020年1月31日には山井和則が「後援会がホテルとの契約主体ではないか」と追及し、「契約」が議題に上がった[18]。これに対して安倍総理は、後援会主催だが収支は発生しておらず、会費は事務所職員が会場で集金しホテルに手渡しており参加者がホテルに払ったのと同じだとして「契約主体は後援会ではなく、参加者個人である」として政治資金収支報告書に記載する必要はないと主張した[52]。山井はこれに対し「800人が一人一人ホテルと契約しているわけがない」と批判した[53]。首相はその後2020年2月、安倍事務所はホテル側と会場予約などの合意はしたが契約はしていないという主張をした[54]。青山学院大学の浜辺陽一郎は「当事者同士の合意で契約が成立し、合意イコール契約だ。事務所が契約の主体なのは明らかだ」と指摘している[54]。 しかし、2020年12月23日に、最終的には桜を見る会前夜祭のの主催者は後援会であり、後援会において収支も生じているという前提で収支報告書が修正された。 不起訴不当2021年7月15日、安倍晋三後援会が「桜を見る会」の前日に開いた夕食会の費用を補填していた問題で、東京第一検察審査会は安倍を不起訴とした東京地検特捜部の処分のうち公職選挙法違反(選挙区内での寄付)容疑などについて「不起訴不当」と議決した[55]。議決を受けて地検は再捜査を行ったが、同年12月28日、再び不起訴とし、安倍についての捜査は終結した[56]。 サントリーからの酒類無償提供2022年5月29日付しんぶん赤旗日曜版は、サントリーホールディングスが2016年から2019年までの桜を見る会前夜祭に毎年約15万円分もの同社の酒類を無償提供していたことを報じた[57]。同紙発行に先駆け、同紙公式Twitterが5月25日に紙面の一部を投稿し[58]大きな反響を呼んだ[57]。 サントリーホールディングス広報は東京新聞(中日新聞)の取材に対し「安倍議員事務所から多くの方が集まると聞き、製品を知ってもらう機会と考え、夕食会に協賛した」と回答[59]。安倍晋三事務所はしんぶん赤旗、東京新聞の取材に回答していない[57][59]。 岩井奉信日本大学名誉教授は「政治的集会の認識もあったはずで、純粋な宣伝目的とは言えず、主催した後援会への違法な寄付に当たる可能性が高い」と指摘する[59]一方、高井康行弁護士・元東京地検特捜部検事は「夕食会への協賛との説明では寄付を受ける主体が明確ではない。参加者に振る舞うためなら実質的な寄付先は参加者で、違法とは言えない」と述べた[59]。 2022年6月10日、3つの市民団体が安倍晋三元首相、安倍の後援会代表、同会計責任者、サントリー社員の4人を政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いで氏名不詳で東京地検に刑事告発した[60]。12月16日、東京地検は、サントリー社員は公訴時効成立、安倍元首相は被疑者死亡、秘書らは嫌疑不十分のためいずれも不起訴処分とした[61]。 答弁内容安倍晋三内閣総理大臣
菅義偉官房長官
北村地方創生担当大臣
反社会的勢力の参加
ジャパンライフとの関連
全国福利厚生共済会との関連
統一教会との関連
全国の弁護士らが東京地検特捜部に告発2020年5月21日、全国の弁護士や学者約660人が、公職選挙法違反(寄付行為)と政治資金規正法違反の疑いで、安倍晋三首相(当時)と後援会幹部の計3人に対する告発状を東京地方検察庁特別捜査部に提出した[91][92]。特捜部は「代理人による告発を受理できない」として不受理にした[93]が、一方で11月に安倍の公設秘書など地元事務所関係者20人から事情聴取を行なった[94][95]。 参加者の反応過去に参加したことをブログなどで報告していた藤井律子や友田有など、山口県の県議会議員や首長が相次いで投稿を削除している中[96]、同年11月12日、自民党参議院幹事長の世耕弘成も参加した際の写真を自身のホームページから削除したと明らかにした[97]。 また、安倍の元秘書であり、下関市長の前田晋太郎は同年11月18日に行われた定例記者会見で次のように質問に答え、安倍首相を擁護した[98][99]。
同年12月11日、下関市は、前田の発言に対し全国から278件の意見が寄せられ、うち272件が批判的な内容であったことを明かした。前田はこの日の市議会一般質問で「選挙に貢献した方々について利益供与はあってもいいということになるか」と問われたが、「間違ったことは言っていない」「謝罪する気持ちはありません」と態度を崩さなかった[100]。 関連文献
脚注注釈出典
外部リンク
|