羅臼町(らうすちょう)は、北海道東部(道東)の根室振興局にある町。知床半島の東南側に位置する。
町名の由来
アイヌ語に由来しているが由来は下記の諸説がある[1]。
- 江戸時代後期のアイヌ語通詞上原熊次郎による「ラウシ(腸の生ず)」説
- 江戸時代後期・明治期の探検家松浦武四郎の『知床日誌』にある「ラウシ(臓腑骨等有しとの義)」説
- 江戸時代後期・明治期のアイヌ語研究者永田方正の「ラウシ ra-ushi 低処」説
以上を踏まえたうえで、アイヌ語研究者の山田秀三はアイヌ語の「ラ(ra)」に「臓腑」と「低い所」の同音異義語があることを踏まえ、当初は永田の解釈のように「ラウシ(ra-us-i)」(低い処・にある・もの〔川〕)として命名されたものが、後年「臓腑」の意味で解釈されるようになって上原や松浦に伝えられたのではないか、としている[1]。
地理
知床半島を斜里町と二分しており、根室海峡を挟んで北方領土の国後島と対峙している。標高167メートルの高台に、「羅臼国後展望塔」が設けられている[2]。海岸線から標高差が大きいため平地が少なく、川沿いに広がる平地と、海岸沿いの平地に集落を形成している。海岸線は何箇所かの難所があるものの徒歩により知床岬へ到達することが可能となっている。
- 山:海別岳(1,419 m)、遠音別岳(1,330 m)、知西別岳(1,317 m)、天頂山(1,046 m)、英嶺山(521 m)、羅臼岳(1,661 m)、サシルイ岳(1,564 m)、知円別岳(1,544 m)、ルシャ山(849 m)、トッカリムイ岳(561 m)
- 河川:植別川、春日大川、知西別川、羅臼川、サシルイ川、ケンネベツ川、カモイウンベ川、
- 湖沼:羅臼湖
- 滝:熊越の滝、瀬石の滝、男滝、女滝
-
知床峠と羅臼岳(2005年7月)
-
羅臼川と羅臼岳(2013年7月)
-
羅臼湖(2017年6月)
-
瀬石の滝(2014年10月)
気候
知床半島の気候は稜線(尾根)を境として斜里側と羅臼側で大きく異なっており、斜里側は夏は暑く冬は寒さが厳しい。一方、羅臼側は夏は涼しく冬の寒さも斜里側ほどではないが、気候が不安定で強風が吹き、降水量が多いのが特徴となっている。
2015年(平成27年)2月に発達した低気圧が停滞した影響により豪雪に見舞われ、観測史上最多の積雪179 cmを記録した[6]。羅臼町では冬期間で町外に唯一接続している国道335号が3日間に渡って不通となり、除雪作業などのため北海道から自衛隊の災害派遣要請など大きな影響が出た[7]。
羅臼(2005年 - 2020年)の気候
|
月 |
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
年
|
最高気温記録 °C (°F)
|
8.5 (47.3)
|
11.5 (52.7)
|
13.9 (57)
|
22.5 (72.5)
|
29.4 (84.9)
|
32.6 (90.7)
|
32.7 (90.9)
|
32.4 (90.3)
|
29.8 (85.6)
|
25.3 (77.5)
|
19.2 (66.6)
|
12.7 (54.9)
|
32.7 (90.9)
|
平均最高気温 °C (°F)
|
−1.8 (28.8)
|
−1.8 (28.8)
|
2.0 (35.6)
|
6.9 (44.4)
|
12.2 (54)
|
15.2 (59.4)
|
18.9 (66)
|
21.3 (70.3)
|
19.5 (67.1)
|
14.1 (57.4)
|
7.5 (45.5)
|
1.4 (34.5)
|
9.6 (49.3)
|
日平均気温 °C (°F)
|
−4.5 (23.9)
|
−4.8 (23.4)
|
−1.1 (30)
|
2.9 (37.2)
|
7.8 (46)
|
11.5 (52.7)
|
15.4 (59.7)
|
17.8 (64)
|
15.7 (60.3)
|
10.1 (50.2)
|
4.1 (39.4)
|
−1.4 (29.5)
|
6.1 (43)
|
平均最低気温 °C (°F)
|
−7.5 (18.5)
|
−8.2 (17.2)
|
−4.3 (24.3)
|
−0.4 (31.3)
|
4.2 (39.6)
|
8.6 (47.5)
|
12.7 (54.9)
|
15.0 (59)
|
12.2 (54)
|
6.2 (43.2)
|
0.7 (33.3)
|
−4.4 (24.1)
|
2.9 (37.2)
|
最低気温記録 °C (°F)
|
−15.7 (3.7)
|
−17.3 (0.9)
|
−11.7 (10.9)
|
−10.1 (13.8)
|
−1.5 (29.3)
|
1.0 (33.8)
|
5.7 (42.3)
|
8.7 (47.7)
|
5.4 (41.7)
|
−1.9 (28.6)
|
−8.9 (16)
|
−13.4 (7.9)
|
−17.3 (0.9)
|
降水量 mm (inch)
|
89.7 (3.531)
|
66.6 (2.622)
|
93.9 (3.697)
|
111.7 (4.398)
|
144.0 (5.669)
|
119.4 (4.701)
|
125.4 (4.937)
|
200.5 (7.894)
|
204.7 (8.059)
|
214.1 (8.429)
|
150.7 (5.933)
|
133.8 (5.268)
|
1,657.1 (65.24)
|
降雪量 cm (inch)
|
149 (58.7)
|
119 (46.9)
|
95 (37.4)
|
38 (15)
|
2 (0.8)
|
0 (0)
|
0 (0)
|
0 (0)
|
0 (0)
|
1 (0.4)
|
30 (11.8)
|
114 (44.9)
|
545 (214.6)
|
平均降水日数 (≥1.0 mm)
|
13.6
|
9.0
|
8.9
|
9.3
|
11.3
|
9.7
|
10.7
|
12.8
|
13.5
|
13.8
|
14.8
|
16.1
|
143.2
|
平均月間日照時間
|
88.3
|
117.3
|
139.0
|
153.1
|
164.9
|
128.4
|
114.7
|
108.0
|
124.6
|
134.8
|
104.8
|
93.0
|
1,473.2
|
出典:気象庁[8]
|
人口
|
羅臼町と全国の年齢別人口分布(2005年)
|
羅臼町の年齢・男女別人口分布(2005年)
|
■紫色 ― 羅臼町 ■緑色 ― 日本全国
|
■青色 ― 男性 ■赤色 ― 女性
|
羅臼町(に相当する地域)の人口の推移
1970年(昭和45年)
|
8,745人
|
|
1975年(昭和50年)
|
8,249人
|
|
1980年(昭和55年)
|
8,299人
|
|
1985年(昭和60年)
|
8,065人
|
|
1990年(平成2年)
|
7,805人
|
|
1995年(平成7年)
|
7,471人
|
|
2000年(平成12年)
|
6,956人
|
|
2005年(平成17年)
|
6,540人
|
|
2010年(平成22年)
|
5,884人
|
|
2015年(平成27年)
|
5,415人
|
|
2020年(令和2年)
|
4,722人
|
|
|
総務省統計局 国勢調査より
|
歴史
行政
役場
町長
平成の大合併に伴う動き
平成の大合併(日本の市町村の廃置分合)により羅臼町も隣接する標津町、中標津町、別海町との合併を模索するも標津町と別海町が離脱し、中標津町との飛び地合併と市制施行を検討した[14]。新市名を募集したところ「知床」や「しれとこ」の名がつく名前が上位を占め、「新知床市」「東知床市」「南知床市」の中から最終的に「東知床市」を選び、新市役所を中標津町役場とすることも合意していた[14]。
こうした動きに知床を共有している斜里町は新市名に「知床」を入れることに異議を申し立てて騒動となったが[14]、当時の斜里町長による「自治体名にこだわらず、知床を守ることを全国にアピールすることが大切」という提案により斜里町の臨時議会で「知床を守り育てるまち宣言」を全会一致で可決し、「知床市」問題の決着を図った[15]。結局、中標津町の住民投票により合併に対する反対票が半数を超えたため両町による協議会は解散することになり、合併は実現しなかった[14]。
議会
- 議員定数10人
- 定例会
- 臨時会
- 委員会
- 常任委員会(総務民生、経済文教、広聴広報)
- 議会運営委員会
- 議会だより編集特別委員会
官公署
国の機関
公益財団法人
公共施設
- 羅臼町郷土資料館:日本最古の銀装飾品と国指定重要文化財が展示されている
- らうすぽ(羅臼町民体育館)
- 羅臼町老人福祉センター
- 知床らうす深層水給水施設
- 羅臼町農林漁業体験実習館
公的機関
警察
消防
- 根室北部消防事務組合消防本部
医療
教育機関
高等学校
中学校
小学校
幼稚園
経済・産業
当町は知床の海を基盤とする漁業の町で、就業人口をみると漁業の割合が突出して高く、就業者の6割以上が水産関連の仕事に就いている。魚種は秋さけ(サケ)、イカ、すけそ(スケトウダラ)、コンブ、ホッケが中心。農業は標津町に近い峯浜地区で酪農業が営まれ、工業は水産加工業が中心となっており、商業は羅臼町市街地を中心に行われている。観光は日帰り通過型の観光形態が多く、宿泊者は例年の観光客総数の1割から2割程度である。
羅臼町の海では海洋深層水の湧昇があり、1999年(平成11年)に北海道内初の陸上取水型施設を設置している[18]。2007年(平成19年)から羅臼漁港に完成した知床らうす深層水給水施設で本格取水を実施しているほか[18]、北海道内外における研究機関、企業との共同研究によって海洋深層水の可能性を探っている[18]。
組合
金融機関
郵便局
宅配便
交通
鉄道
町内を鉄道路線は走っていない。最寄り駅は、JR北海道釧網本線の知床斜里駅。
バス
路線バス
タクシー
道路
観光船
羅臼港発着沿岸航路[20]
名称 |
船舶 |
備考
|
丸は宝来水産(ゴジラ岩観光)
|
カムイワッカ号、カムイワッカ33 |
ウトロ港発着沿岸航路でも別の船舶を運航
|
知床アルラン
|
アルランIII世 |
|
知床ネイチャークルーズ
|
EverGreen38、EverGreen |
|
観光船はまなす
|
はまなす |
|
知床ユーシン観光
|
|
|
知床らうすリンクル
|
|
|
世界遺産クルーズ英人丸(ひでとまる)
|
第二十六英人丸、第五十六英人丸 |
|
世界遺産・文化財
世界自然遺産
文化財
国指定
道指定
町指定
- 文化財
- 旧植別神社跡
- 久右衛門の澗跡
- 知床いぶき樽 - 知床いぶき樽保存会
- 弘化の釣鐘
観光地・レジャー・祭事・催事
- 羅臼岳
- 知床峠
- 羅臼湖
- 熊越の滝
- 知床世界遺産・知床国立公園羅臼ビジターセンター[22]
- 知床世界遺産ルサフィールドハウス[23]
- マッカウス洞窟のヒカリゴケ(全面立入禁止)
- しおかぜ公園
- 望郷台(羅臼国後展望塔)
- 峯浜パーキング
温泉
キャンプ場
- 知床国立公園羅臼温泉野営場
- 羅臼オートキャンプ場
- 知床羅臼野遊びフィールド
祭り・催事
- 知床雪壁ウォーク(4月)
- 知床開き(6月)…2023年で終了
- 羅臼神社祭(7月)
- しれとこ羅臼こんぶフェスタ(7月から8月)
- らうす産業祭 漁火まつり(9月)…2023年で終了
羅臼町が舞台(ロケ地)となった作品
- 映画
- 『地の涯に生きるもの』
- 『アフリカの光』
- 『ひかりごけ』
- 舞台
- ドラマ
- 小説
- 歌
人物
出身人物
ゆかりの人物
宣言
- 「羅臼町非核平和の町」宣言(平成22年3月8日)[26]
脚注
参考資料
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
羅臼町に関連するカテゴリがあります。
外部リンク
行政
自然
産業
観光