花へんろ
『花へんろ』(はなへんろ)は、早坂暁の造語であり、早坂暁作のテレビドラマシリーズの題名である。副題を『風の昭和日記』(かぜのしょうわにっき)と題し、3部作の連続ドラマとしてNHK総合テレビ「ドラマ人間模様」で1985年(昭和60年)、1986年(昭和61年)および1988年(昭和63年)に放送された。第4回(1986年〈昭和61年〉)向田邦子賞受賞作。 ドラマの冒頭で「昭和とは どんな眺めぞ 花へんろ」という句(作・早坂暁)が詠まれる 続編となる連続ドラマ『新・花へんろ』(しん はなへんろ)がNHK総合テレビ「水曜シリーズドラマ」にて1997年(平成9年)に放送された。 東宝により1988年(昭和63年)に主演・ 八千草薫で舞台化された。 早坂暁の没後にスペシャルドラマ『花へんろ特別編 春子の人形〜脚本家・早坂暁がうつくしむ人〜』がNHK BSプレミアムにて2018年(平成30年)に放送された[1][2]。が、花へんろというタイトルこそついているものの、脚本は早坂暁ではなく(脚本は冨川元文)配役も主役以下、従来の花へんろとは全く異なっている。内容は早坂の短編小説「春子の人形」を原作とし、そこに早坂の小説「ダウンタウン・ヒーローズ」のエピソードを折り込んだものとなっている。早坂暁が一切関わっていない作品であるため、従来の花へんろとは別物と捉えるべきである。 概要大正末期から昭和中期までの、四国の風早町(後の愛媛県北条市、現在の松山市北条)を舞台とした、作者自身の自伝的ドラマであり、遍路道に面した商家「富屋勧商場(とみやかんしょうば)」に嫁いだ静子を軸に、激動の時代に翻弄される庶民の生活を、遍路や俳句を交えながら叙情豊かに描いている[3]。 冒頭の「昭和とは どんな眺めぞ 花へんろ」という句について、「この眺めは地方から、庶民からの眺めである」とシナリオ本のあとがきに書かれている。そして「中央(東京)からではなく、地方から眺めた昭和を残しておきたい。中央だけに昭和の歴史が集中していると思ったら大間違いだ」とある。 あらすじ第一章(全七話)1923年(大正12年)、静子は歌手になるべく東京行を夢見て家出をするが、関東大震災が起こり、愛媛県風早町の富屋勧商場(とみやかんしょうば)に嫁いだ叔母の勧めにより、富屋の次男・勝二と結婚する。富屋は多くの従業員を抱える3階建ての大商家であり、その前を毎日何人ものお遍路さんが通っていた。結婚した二人は、富屋の分家と大正座という劇場を任される。 ある日、静子が助けた女遍路が、娘を富屋に残して姿を消す。静子はその子を“巡子”と名付けて育てる。富屋の長男・本家の照一は、自分の子を宿した芸者の蝶子を分家の静子の家に預ける。半年後、巡子の母が現れたが、娘に会わずに帰ろうとする。静子は巡子をわが子として育てる決心をする。その時、静子は勝二の子を妊娠していた。 富屋の三男・幸三は、かつて身を売っていたおこうと駆け落ちをする。静子は蝶子の出産と幸三・おこうの駆け落ち騒ぎに巻き込まれ、自分の子を流産してしまう。 第二章(全六話)1929年(昭和4年)、静子は次の子を妊娠していたが、富屋に入った説教強盗の人質となり早産してしまう。産まれた子、震一(しんいち)は産声も出さない弱い子であった。静子は子供の成長に悩み、照一の本妻・フサ子と暮らすことに苦しむ妾の蝶子とともに、赤ん坊の震一を連れて四国遍路にでかけ、その途中で人生の辛さや苦しさを抱えた人々と出会うことになる。 大阪に出かけた照一は帰路の尾道で、駆け落ちした幸三・おこうと遭遇する。勝二は尾道へでかけ、二人を風早町に連れて帰ろうとするが、幸三たちは帰途の船上から来島海峡に飛び込み、心中してしまう。 世界恐慌が起こり、富屋は万引きの被害が多く店を閉め、大正座も客が入らない日が続いていた。大正座の起死回生を図り、エノケン(榎本健一)を呼ぶ話が起こったが、現れたのは偽物であった。 富屋に静子の昔の恋人清沢が現れる。海軍軍人だった清沢は、濱口首相暗殺に関係し警察に追われていた。1931年(昭和6年)、満州事変が起こり、日本は戦争へと突き進んだ。 第三章(全六話)静子の子・震一は、のびやかに成長していた。その富屋の句会に種田山頭火がやって来る。山頭火は静子の着物を見て、若くして自殺した母の着物と同じ柄だと話し、持ち歩いている位牌を出す。 大正座では、もと海軍大佐で、現在は戦争反対を唱える水野廣徳の演説会が行われる。清沢は当初水野に激しく反対していたが、その戦争反対論に敬服し、今は行動を共にしていた。演説会会場の大正座の客席には、水野の命を狙う刺客が潜んでいた。 やがて山頭火は、松山の一草庵で亡くなる。日本は戦争に突入し、照一の次男照彦に召集令状が届き、急遽親戚の娘と結婚するが、照彦は数日で出征していった。 富屋勧商場は広島店を出店し、照一の妾・蝶子はその経営のため、息子の昇とともに広島に移り住む。松山中学校に進学した震一は、戦艦大和に乗りたいと海軍兵学校に入る。 やがて戦争が末期を迎える。照彦は南方のジャングルで亡くなり、遺品の眼鏡だけが還ってくる。蝶子と息子の昇は広島での原爆に遭い、昇は亡くなり、蝶子だけが重傷で風早町に戻ってくる。 終戦を迎え、震一は海軍兵学校からの帰路、広島で見た死体から発する数限りない燐光のひとつが、昇だったのかと蝶子に話す。富屋の女たちは、亡くなった人たちを弔うため、再び遍路に出るのであった。 新・花へんろ(全六話)
特別編「春子の人形」(単発)
登場人物括弧内は出演作。
スタッフ
放送日程第一章から第三章では各話にサブタイトルが存在しなかったが、「新花へんろ」には各話にサブタイトルが付けられた。
総集編
関連番組
受賞歴
関連商品
その他
舞台
東宝2月特別公演として舞台化され、1988年2月2日から2月29日まで東京宝塚劇場にて上演された。 脚注
外部リンク
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