薬学部大学の学部のひとつ。薬学の教育、研究がなされる。本項においては、別段の記述が無い限り日本の大学における薬学部について述べるものとする。薬剤師国家試験の受験資格が与えられる6年制の薬学科と、与えられない4年制の薬科学科がある。 (やくがくぶ)は、薬学部を有する大学は、薬用植物園(薬草園)を附属させることを必要とされ(大学設置基準第39条)、6年制課程を有する薬学部をもつ大学は、薬学実務実習に必要な施設を確保する義務を有する(大学設置基準第39条の2)。 概要薬剤師法により薬学部卒業が薬剤師国家試験の受験要件となっているため、医学部、歯学部、獣医学部などと同様、薬学部は、国家資格保有者(薬剤師)養成機関としての性格を有している。ただし、他の医療系学部と違い就職先は多様であり、性格は大学ごとに相当異なっている。東京大学をはじめとした上位国立大学では薬剤師職能教育よりも、研究者育成教育に力を入れているところがほとんどである。例えば、東京大学の場合、薬科学科の定員が72名なのに対し、薬学科の定員は8名となっている。 自然科学系学部でありながら、伝統的に女子学生が他学部に比べて多い。その理由は、日本において薬剤師は1940年代以前から女性が進出可能な職域であったため、と言われている[要出典]。 2006年以前の4年制課程では、教職課程も修めることで中学校教員免許(理科)と高等学校教員免許(理科)を取得したり、臨床検査に関わる一定の科目を履修することで臨床検査技師国家試験に合格する場合もあった。 歴史日本においては、そのルーツは旧制高等中学校医学部薬学科から旧制高等学校医学部薬学科、旧制帝国大学医学部薬学科(製薬学科)、旧制医科大学薬学科を経たものや旧製薬学専門学校にあるが、1950年代から1970年代の文部省の学校教育法改編と国立大学組織の改編などを経て、学部として設置されるようになり、今日に至る。前記以外の学校に起源をもつ薬学部としては、徳島大学薬学部(旧制徳島高等工業学校(現: 徳島大学工学部)応用化学科より)、日本大学薬学部(日本大学旧工学部(現: 理工学部)薬学科より)などがある。なお、薬剤師養成課程を最後まで医学部に置いていた大学は広島大学(旧:医学部総合薬学科)であ、6年制に移行する直前の2006年まで置かれていた。 学位の種類と変遷薬学部で授与される学位呼称は、学士(薬学)が主な例である。明治時代以降、はじめて学位制度が出来た折は学士号の一種として製薬士の学位が設けられ、その後主に薬学士などの名称になったが、平成以降、学士号が学位に編入されたことから、今日の学位名称となっている。現行の大学院薬学研究科においては、修士(薬学、医療薬学など)、博士(薬学、医療薬学など)の学位が授与される。 2006年度入学より4年間を標準修業年限とする通常の大学課程と6年間を標準修業年限とする二つの課程が設けられた。新4年制課程で得られる学位は学士(薬科学)などである。一方、6年制課程で得られる学位は学士(薬学)である。4年制課程は基礎薬学や創薬科学関連の教育研究を確保するため残された。6年制課程は薬剤師職能教育を充実させるため長期の病院薬局実務実習が導入されるなど、「薬学を履修する課程のうち臨床に係る実践的な能力を培うこと」を主たる目的とする。 薬剤師国家試験の受験資格は6年制課程を卒業または卒業見込の者に与えられ、新4年制課程の卒業または卒業見込の者には与えられない。6年制課程は通常の大学課程と異なり、博士課程に直接入学できるなど修士相当の扱いを受ける。大学院薬学研究科では、新4年制など、通常の大学課程から進学する場合、修士(薬科学)、博士(薬科学)などの学位が、6年制課程から進学する場合、博士(薬学)の学位が授与される。 6年制移行の経緯[要検証 ] 一方、旧帝国大学等一部の大学においては、博士前期課程の廃止や博士後期課程の修業年限の延長により大学院生が少なくなる、という反論がなされていたといわれ[要出典]、現にこれらの大学においては4年制課程を残置する傾向にある。現在の定員を各課程ごとに法人別に併記すると、国公立大学の6年制課程が約700名、4年制課程が約1,500名、一方、私立大学では6年制課程が約10,000名、4年制課程が約500名となっている。 入学試験2006年度の薬学部6年制課程導入以降、私立大学薬学部の入試動向は大きく変化した。その要因には、
などがあげられる。これらの影響から、6年制移行前と比べ私立大学薬学部の平均偏差値は大幅に下落した。現在、私立大学薬学部の約3割が定員割れを起こしており、受験生離れが深刻化してきている[2]。 学科薬学部には以下のような学科が存在する。ただし、大学によってその設置状況は異なっている。なお、6年制課程と4年制課程を併設する大学では入学試験の段階で一括募集する場合と別途募集する場合とがある。
大学院旧4年制課程を基礎におく大学院薬学研究科は、標準修業年限が2年の修士課程、さらに標準修業年限が3年の博士課程が存在する。新4年制課程を基礎におく場合も旧4年制課程とかわらない態様となるが、学位呼称は修士(薬科学)、また、博士(薬科学)などとなる。なお、6年制課程の薬学部においても、独立大学院として薬科学研究科修士課程が設置されている場合がある。6年制課程を基礎におく大学院薬学研究科は博士課程のみで標準修業年限は4年である。学位呼称は博士(薬学)となる。 卒業後の進路毎年薬学部卒業生の卒後動向調査が行われている。 2009年2009年の調査結果(必然的に旧4年制のみ)は次の通り[3][4]。
2010年2010年の調査結果は次の通りです[5]。 この調査の学部卒業者は新4年制課程の初めての卒業生である(2006年4月入学者)。卒業者総数は972名(国立14校、公立3校、私立12校)で、そのうち大学院進学者は895人 (92%) に達しました。 薬学部を持つ日本の大学2021年4月現在、国立14大学14学部、公立大学5大学5学部、私立大学58大学60学部(国際医療福祉大学と徳島文理大学は各2つの薬学部を持つ)の合計77大学79学部設置されている。 (†は6年制課程と4年制課程を併設する大学。無印は6年制課程のみの大学。)
国立(14大学14学部)公立(5大学5学部)私立(58大学61学部)
近年、薬学部を新設した大学2018年度開設
2020年度開設 2021年度開設 2022年度開設 2024年度開設 脚注
関連項目外部リンク |