鉄道においては列車を高速で走行させることよりも、列車を安全に停止させることの方が技術的に困難である。日本では鉄道運転規則によって、列車に非常ブレーキがかかってから600 m 以内に停止させる必要があった(600メートル条項)ため、営業最高速度はこれによって制限されていた。また、新幹線における200 km/h を超える最高速度は、新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法によって必要な措置を講じたうえで600 m 条項の例外とすることで実現したものである。在来線、第三セクター鉄道線、私鉄線においても、高架橋上、トンネル内、踏切がないなど、線区の事情に応じ、特認により最高速度を引き上げた例が見られる。
鉄道運転規則は2002年に廃止されたが、現在この関係条文は鉄道に関する技術上の基準を定める省令第106条の解釈基準において、非常ブレーキによる制動距離は600 m 以下を標準としているものの、防護無線など迅速な列車防護の方法による場合は、その方法に応じた制動距離とすることができるとしている。
東海道・山陽新幹線の主力であった700系は、東海道区間270 km/h、山陽区間は騒音基準をクリアできないため300 km/h とはならず285 km/ hとされていた。なお同車の設計最高速度は340 km/h である。2007年からN700系が導入され、2010年3月13日ダイヤ改正以降すべての定期「のぞみ」が山陽区間でも300 km/h を出せるようになった。
民営化以降、地平路線でも各地の主要幹線で、特急列車のみならず一部の普通列車(おもに快速列車)についても120 - 130 km/h 運転が行われるようになった。これは通勤形・近郊形電車や一般形気動車の飛躍的な性能向上(後述)に負うところが大きい。首都圏の一例としては、今や元々貨物線であった品鶴線でさえも、横須賀線や湘南新宿ライン、相模鉄道直通の列車が最高速度120 km/h で走る。
近鉄は1988年に私鉄で初めて120 km/h 運転を開始、現在は大阪線・志摩線などの一部区間で130 km/h 運転を行っている。その他では1990年以降、東武(日光線)、京浜急行電鉄(本線の一部、大半が通勤形電車)、名鉄(名古屋本線・常滑線・空港線。名古屋本線のみ通勤形電車を含む)、南海電気鉄道(空港線)が120 km/h、阪急電鉄(神戸本線・京都本線)が115 km/h へと最高速度を引き上げた。
新規に開業した北越急行ほくほく線では、2002年から特急「はくたか」において最高160 km/h 運転が実施され、2010年からは京成電鉄成田空港線でも「スカイライナー」で大手私鉄で初めで160 km/h 運転が実施された。2015年現在まで160 km/h はJR在来線にも類例が無く(ただし北越急行は第三セクターでJR車両(681系・683系)が直通運転された)、新幹線以外の鉄道としては北越急行と京成の両社が国内で歴代最速となっている。北越急行の特急「はくたか」は2015年3月13日をもって廃止となり、160 km/h運転をおこなうのは京成電鉄のみとなった。また、これも第三セクターであるが、つくばエクスプレスは高規格の新線であり、路線の性格上、全車両が通勤形電車ながらも130 km/h 運転を行っている。
2024年現在、大手私鉄では西武鉄道 (105 km/h) と相模鉄道 (100 km/h) と阪神電気鉄道(106 km/h)のみ営業最高速度が110 km/h 未満である。上記以外の京王電鉄(京王線、相模原線)、京阪電気鉄道(京阪本線)、西日本鉄道(天神大牟田線)はいずれも110 km/h となっているほか、東急電鉄は田園都市線に加えかつて高速運転のイメージから程遠かった東横線、あるいは準大手私鉄の山陽電気鉄道でも最高速度110 km/h 運転が行われている。ただし、東武や小田急などでも通勤形車両による列車は100 km/h に留まっており、有料特急の格付けを尊重して序列を付けた形となっている。また、京王(井の頭線)や阪急(宝塚本線)などは主要路線でも線形が主因となって運転速度に較差があり、経営的には費用対効果も無視できず、一概にどの会社が高速化に熱心であるとは言い切れない。
認可(最高)速度
前項の私鉄における営業最高速度と同義。
区間最高速度
私鉄の認可最高速度のうち、区間・駅間における最高速度。
ダイヤ上の最高速度
実際のダイヤ(列車運行図表)作成において、運転曲線(ランカーブ)を引く過程で設定されている最高速度で走れるか否かは、運転曲線の引き方すなわち走り方による。たとえば5 km 程度の区間で1回だけ120 km/h まで上げて後は次駅まで惰行のみの走行(平坦や上り勾配の場合徐々に速度が下がる)と、110 km/h までしか出さなくても再力行を行い最高速度付近の速度を維持する走行(定速運転に近い走り方)とでは、運転時分に大差はなくなる。
複々線以上の路線のうちの緩行線で上述の自動列車制御装置 (ATC) を導入している場合は、概してその設定最高速度が線区最高速度よりも低い。たとえば山手線の環状運転は線区最高速度95 km/h に対してATCの上限は90 km/h、常磐線の電車も同130 km/h に対して90 km/hを超えている営業最高速度に達すると自動的に加速を止めるスピードリミッターやブレーキがかかる過速度検知装置を採用している鉄道事業者もある。
地下鉄は、曲線が多く、また、建築限界が狭小なトンネル内の列車走行による風圧を考慮し、都市部で駅間が短く各駅停車が主体であることから、最も高い東京メトロでも80 km/h である(同社東西線の地上区間は100 km/h)。地下鉄ではない山岳トンネルと同規格の地下線については各社の記事を参照。
路面電車は、軌道運転規則に基づいて道路との併用軌道区間では40 km/h とされている。専用軌道(新設軌道)においてはこの限りではない(阪堺電気軌道の50 km/h など)。また、路面電車の車両が鉄道線に乗り入れて、さらに高い速度で運転されるものもある(福井鉄道福武線65 km/h、広島電鉄宮島線62 km/h など)。
国鉄電車の場合はさらに15 %程度の余裕を差し引いて公称値としていた(例:国鉄485系電車は主電動機の最高回転数4320 rpm において190 km/h となるが、設計最高速度は160 km/h と公表されている。営業最高速度は海峡線における140 km/h)。実用面ではあまり意味がなく慣習的なものである。
気動車についても、1960年代にキハ181系などで高速化が試みられた後、1990年ごろから大出力エンジンを2基搭載し、直結段を複数設けて最終減速比を小さく取ることで電車並みに120 - 130 km/h の巡航速度を可能とした特急形車両が続出したほか、JR北海道キハ201系気動車のように一般形であっても電車と同等の走行性能を持たせ、電車と併結・総括制御を行う例も現れた。
車輪研削を考慮して、許容最高速度や定格速度は最小の動輪径(直径860 mm の車輪を2回研削した場合820 mm となる)を用いて算出されることが多い。
電気車の出力や速度特性は、架線など電源の電圧の変動によって高下する。特に私鉄電車には架線電圧10 % 減(直流1500 V の場合1350 V)という条件で主電動機の定格を設定しているケースが散見される。
動力装置を持たない客車や貨車の最高速度は、第一に走行装置の構造(二軸かボギーかなど)と空気ブレーキの方式・機能によって規定され、次いで牽引する機関車によって左右される。基本は国鉄の旧形客車が95 km/h、2段リンク式二軸貨車は75 km/h であり、以来速度向上が試みられて客車、ボギー貨車(JR貨物コキ100系貨車など)ともに110 km/h まで引き上げられている。
国内最速の貨物列車として、最高速度130 km/h で走行する「スーパーレールカーゴ」(JR貨物M250系電車使用)が挙げられる。