相鉄・JR直通線
相鉄・JR直通線(そうてつ・ジェイアールちょくつうせん)は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)が整備主体として建設した神奈川東部方面線のうち、相鉄本線西谷駅から東海道貨物線横浜羽沢駅付近までの区間に連絡線を建設する事業の計画名である[1][2]。通称SJ線[3]。 この区間は2019年(令和元年)11月30日に相鉄新横浜線(西谷駅 - 羽沢横浜国大駅)として開業し、同日より東日本旅客鉄道(JR東日本)は山手線(山手貨物線)・東海道本線(東海道貨物線、品鶴線)を経由して東京都新宿区の新宿駅と神奈川県横浜市神奈川区の羽沢横浜国大駅間を結ぶ相鉄線直通という系統で[4][5][6]、相模鉄道の本線・相鉄新横浜線との相互直通運転を開始した[7][8]。全列車が羽沢横浜国大駅から相鉄新横浜線を経て相鉄本線海老名駅まで乗り入れており、一部の列車は新宿駅から埼京線を経て川越線川越駅まで乗り入れている。駅ナンバリングで使われる路線記号はSO(相鉄線)・JS(湘南新宿ライン)・JA(埼京線)。 本項では、相鉄・JR直通線の整備計画についても触れる。 概要
鉄道・運輸機構を整備主体として西谷駅 - 羽沢横浜国大駅間に連絡線を整備し、相鉄とJR東日本が相互直通運転を実施するもので、相鉄では自社路線と東京都心を繋ぐ「都心直通プロジェクト」[9]の一つとして位置付けている。 相鉄とJR東日本の境界駅は羽沢横浜国大駅で、同駅は2社による共同使用駅となり、駅施設は相鉄が管理する。 運行区間は基本的に新宿駅 - 海老名駅間であるが、朝の一部時間帯は新宿駅からさらに埼京線大宮駅方面と直通し、最長で川越線川越駅まで乗り入れる。 JR東日本との直通運転開始に伴い、初めて東京都区内に相鉄の車両が乗り入れるようになった。また、JR東日本の通勤列車が、東京メトロ以外の首都圏大手私鉄の通勤列車と、他の鉄道会社の路線を介さず直通運転する事例は史上初めてとなる[注 2][注 3]。 また、新宿駅 - 海老名駅間は小田急小田原線も走っており、競合区間となる。 ATOSによる駅の案内放送においては埼京線と相鉄線の車両を使用しているものの「電車がまいります」ではなく「列車がまいります」と案内される。 列車の運行ルート新宿駅から、湘南新宿ラインと同じルートで山手貨物線を走行して、渋谷駅・大崎駅を経由し、蛇窪信号場で品鶴線に入る。武蔵小杉駅を経由し、品鶴線の複々線区間(新鶴見信号場 - 鶴見駅)の貨物線側(通称「武蔵野南線」の武蔵野線一部と共用する)に入る(線路配置の関係上、新川崎駅は通過となる)。その後、新鶴見信号場を経由し、鶴見駅(貨物線にはホームがないため通過)から東海道貨物線に入り、京急・花月総持寺駅付近で地下へ潜り、横浜羽沢駅の東京側で相鉄新横浜線に合流して羽沢横浜国大駅を経ると、西谷駅から相鉄本線に合流して海老名駅へ至る。 正式名称としては新宿駅から品川駅[注 4]までが山手線(山手貨物線)、品川駅から羽沢横浜国大駅までが東海道本線(品川駅 - 鶴見駅[注 5]間は品鶴線〈横須賀線〉、鶴見駅 - 羽沢横浜国大駅間は東海道貨物線)、羽沢横浜国大駅から西谷駅までが相鉄新横浜線、西谷駅から海老名駅までが相鉄本線となる。
ルートの都合上、武蔵小杉駅 - 羽沢横浜国大駅間には途中駅がない。新川崎駅・鶴見駅は経由するが、武蔵小杉駅 - 鶴見駅間はホームがない線路を通るためいずれも通過する。また、鶴見駅 - 羽沢横浜国大駅間ではJR東日本横浜線(大口駅の北側の真上を大口高架シェルターで跨ぐ)、東急電鉄東横線(妙蓮寺駅の南側の真下を港北トンネルで潜る)、横浜市交通局横浜市営地下鉄ブルーライン(岸根公園駅の真上を港北トンネルで跨ぐ)とそれぞれ立体交差しているが、いずれも駅は設置されていない。 品川・東京方面・上野東京ラインへの乗り入れの検討相鉄では2013年(平成25年)12月より、今回の新宿方面への乗り入れとは別に東海道線品川駅以北・上野東京ラインを介した宇都宮線・高崎線・常磐線方面への乗り入れも検討していたが[10][11]、多方面へ向かう運行本数の確保が困難であるとのJR東日本側の理由により見送られている[12]。JR東日本では、開業時点では新宿方面への運行を基本としているものの、利用動向次第で運行を検討することに含みをもたせている[13][14]。 歴史
運行形態本節では、相鉄とJR東日本を直通運転する系統のうち、JR東日本の区間について述べる。相鉄の区間については「相鉄新横浜線」、「相鉄本線」を参照。 列車種別新宿駅 - 大崎駅間では「通勤快速」「快速」「各駅停車」の3種別が運行されているが、いずれの列車も走行する線路にホームがある駅全てに停車する。 大崎駅 - 羽沢横浜国大駅間では、大崎駅以北・羽沢横浜国大駅以西で通過運転を行う列車を含む全ての列車が「各駅停車」として運行され、通過運転を行う列車は大崎駅・羽沢横浜国大駅で種別変更を行う。 運行ダイヤ新宿駅 - 羽沢横浜国大駅 - 海老名駅間の往復運行が基本で、46往復が運行される。このうち朝時間帯の平日下り7本、同上り8本、土休日上下6本ずつが埼京線の新宿駅以北に直通する列車となっており、池袋駅(平日で着のみ)・赤羽駅(平日のみ)・武蔵浦和駅(土日のみ)・大宮駅・川越線指扇駅(発のみ)・川越駅発着が設定されている。なお、埼京線内は川越駅発着の列車のみ平日は通勤快速、土休日は快速で運転される。本来は基本的に新宿駅の2番線及び17時以降は3番線で折り返すことになっているが、JR車の運用の都合や、朝時間帯は折り返し時間の確保が困難なため、埼京線新宿駅以北・川越線に直通を行っている。なお、新宿駅 - 大崎駅間は埼京線と案内されているが、列車番号については新宿駅で切り替えられる。異常時の直通運転中止時には、羽沢横浜国大駅からJR線方面へ折り返し運転を行う。 平日朝時間帯に関しては1時間に最大4本運行され、日中は1時間に2本の運行となり、相鉄線内各停として運転されている。夜間は下り終電及び平日20時台上り3本及び土休日上り1本を除き、相鉄線内は特急として運行する。 運行ルートとして山手貨物線・品鶴線・東海道貨物線を通る関係上、貨物列車を運行するJR貨物との調整が必要となり、朝時間帯はパターンダイヤとなっていない。日中については貨物列車が運行する点以外にも、武蔵小杉駅から新宿・東京方面の本数が過剰となることを考慮して、1時間に2本となった。また、前述の通り、当面の間品川・東京方面に直通しないことから、武蔵小杉駅で横須賀線・成田エクスプレスに乗り換える客が想定されるため、同駅のホームの滞留防止策としてラッシュ時は新宿方面の列車を連続させないようにダイヤを設定し、また武蔵小杉駅の混雑防止の観点から、乗り換えは西大井駅でも可能なことを案内するとされている。 この結果、現状のダイヤでは、平常運行時であれば、羽沢横浜国大・海老名方面行は、西大井駅・武蔵小杉駅で総武快速線・東京方面からの新川崎・横浜・鎌倉方面横須賀線に、大崎・新宿方面行は武蔵小杉駅・西大井駅で横浜・新川崎方面からの品川・東京・千葉方面横須賀・総武快速線に接続するダイヤとなった。 新宿駅発西大井駅・武蔵小杉駅方面への終電は、従来の湘南新宿ライン終電よりも遅くなり、大崎駅以北から横須賀線新川崎駅以南への深夜帯の利便性も改善した。 JR車は相鉄線内では相模大塚駅とかしわ台車両センターで昼間留置と夜間滞泊が行われている。一方で相鉄車でのJR線での留置は平日朝ラッシュ時に板橋駅での一時的留置がある(池袋駅より回送)ものの、それ以外の留置や夜間滞泊は設定されていない。 車両直通列車には、相鉄線および埼京線で運用される車両のうち以下の2形式のみが充当される。
車両側の路線識別相鉄線内とJR線内では、様々な装置の仕様が変わる。それに伴い、境界駅である羽沢横浜国大駅では回路切換が発生する[32]。
マスコンキーによる切換では、鉄道会社間でマスコンキーの形状が異なるという性質を利用し、挿入するキーによって加圧する線を分別し、マスコンから出力している[32]。相鉄12000系では、これらの切換が何らかの理由により正常に行われなかった時のために、路線強制選択スイッチを設けており、走行不能になる状態は回避される[32]。また、マスコンキーを抜き取り、車両の電源を落としても、路線認識の設定は保持されるようになっている[32]。 女性専用車平日の朝ラッシュ時間帯に、10両編成のうち、最も海老名寄りの1両(10号車)が女性専用車に設定されている[33]。
なお、新宿行の終電は新宿着が23時を過ぎるため埼京線内では深夜の実施時間帯に入るが、相鉄線からの直通列車に限り全区間対象外となっている。 →相鉄⇔JR直通列車以外については「埼京線#痴漢の多発及び対策」、「相鉄本線#女性専用車」を参照
運賃計算・乗車制度→「湘南新宿ライン § 運賃および料金の計算」も参照
大崎駅 - 西大井駅間は大崎支線を経由するが、大崎支線は営業路線ではないため、運賃計算上は品川駅を経由したものとして取り扱う。また、品川駅 - 鶴見駅間は経路特定区間に指定されていることから、運賃計算上では距離が短い大井町駅・川崎駅経由で計算する(旅客営業規則第69条)。これらの扱いにより、大崎駅 - 鶴見駅 - 羽沢横浜国大駅間の運賃計算は品川駅・大井町駅を経由した距離で計算することになる。 羽沢横浜国大駅発着のJR乗車券の取り扱い2019年11月30日以降に旅客営業規則等で定められる羽沢横浜国大駅発着(相鉄に直通する場合を含む)のJR乗車券の乗車制度の特例は次のものがある。これは羽沢横浜国大駅は鶴見駅から分岐する位置にあるが、運行経路の都合で武蔵小杉駅方面からしか羽沢横浜国大駅に向かうことができないため、鶴見駅 - 武蔵小杉駅間の折り返し乗車を有効とするための措置である。 横浜市内発着の乗車券に対する特例横浜市内発着の乗車券は、鶴見駅 - 武蔵小杉駅間で途中下車しない限り、同駅間を乗車できる[34]。
本特例は武蔵小杉駅を経由することを事実上「外を経て」いないものとみなすものである。なお、同様の特例は「大阪市内」にも設定されており、こちらは一筆書きとなるため単駅指定での途中下車も可能となるが、本特例は折り返し乗車となるため途中下車可能な乗車券の購入は不可となる。 特定の分岐区間に対する区間外乗車の特例以下の特例が新たに設定され、〔〕内に指定された区間の区間外乗車が可能となる[35]。
この特例の適用により、相鉄線直通列車が鶴見駅に停車しないことから実際は武蔵小杉駅や横浜駅で乗り換えることになる羽沢横浜国大駅 - 鶴見駅・国道駅間の運賃(180円)は、隣駅までの羽沢横浜国大駅 - 武蔵小杉駅間の運賃(320円)よりも安価となるという現象が発生している[36]。 連絡定期券利用時の取り扱い相鉄とJR東日本の横浜駅乗り換えの連絡定期券を所持している旅客が本路線を利用した場合は、西谷駅 - 羽沢横浜国大駅 - 鶴見駅間の運賃が必要となる。2020年春までは自動精算機または係員窓口での取り扱いとなるが、それ以降はIC定期券に限り自動改札機で自動精算される。逆に本路線経由の連絡定期券を所持している旅客が横浜駅を利用した場合は、西谷駅 - 横浜駅間もしくは横浜駅 - 鶴見駅間の運賃が必要となる。 駅一覧
開業時のトラブル2019年11月30日の開業直後より、車内モニターで表示のトラブルが発生し、相鉄がニュースリリースで謝罪する事態が発生した[37]。また、相鉄とJRの境界駅である羽沢横浜国大駅では、同駅の自動改札機を通ったJRのフリーパス(休日おでかけパスなど)が他のJRの駅の自動改札機を通らなくなるといった事態も発生した。 脚注注釈出典
参考文献
関連項目
外部リンク
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