陰陽師0
『陰陽師0』(おんみょうじゼロ)は、2024年4月19日に公開された日本映画。脚本・監督は佐藤嗣麻子、主演は山﨑賢人[2][3]。安倍晴明生誕1100年記念作品[4]。 夢枕獏の小説シリーズ『陰陽師』を原作としているが、本作は夢枕の全面協力の元、晴明が陰陽師となる前の青年時代を完全オリジナルストーリーとして描いている[5]。 制作背景監督の佐藤と原作者の夢枕は40年前に日本SF大会の会場で知り合い、それ以降夢枕からサークルに誘われるようになった。その後も佐藤と夢枕の交流は続き、やがて夢枕から『陰陽師』の映像化を要望されるまでになる。夢枕との口約束から約35年を経た2015年より脚本の執筆を始めたが、美術や衣装など細部に至るまでの考証には一切手を抜くことはなかった[5]。 映画制作で困難を極めたのが陰陽師が出入りする陰陽寮であったといい、平安時代の建物においては寺社仏閣以外は残されておらず、作りこむ必要があったといい、佐藤は「さらに夢の中にまで範囲が広がったため、ゼロから作り上げるのにとても苦労した」と語る[5]。 佐藤によれば、本作の主演を務めた山﨑は「とても不思議な人」であったといい、「人間離れしている人なので安倍晴明にはとても向いていると思った。夢枕さんの原作でも晴明は美形として描かれているので、そういった面でも合っていると感じた」という。さらに「撮影中でも文句ひとつ、不平不満も一切言わない。とてもストイックな人」だと感じたという。さらに源博雅を演じた染谷将太については「晴明と博雅の友情関係については原作通り丁寧に描きたかった」ので山崎のキャスティングが決まった後すぐに出演を依頼したといい、難しい注文が好きという染谷に無理難題を与えたところ「とても的確に演じてくださった」という[5]。 なお、アクションシーンについてはアクション監督を務めた園村健介がインスピレーションの題材として参考にしたのが羽生結弦であり、浮遊感のあるアクションが相応しいとのことで羽生にインスピレーションを得てアクションシーンを作っていったようだと佐藤は語っている[5]。 あらすじ平安時代中期。平安京に住まう帝と少数の貴族が世を支配していたが、その政(まつりごと)は占いに左右されていた。大内裏に属する陰陽寮では日々、博士と呼ばれる上級の陰陽師らが占いによって呪いや祟(たたり)を祓い、陰陽師を目指す学生(がくしょう)たちを教育していた。 学生の一人である安倍晴明は資質に恵まれ、呪術が使えると噂されていたが、幼い頃に両親を目の前で殺され、殺人者の顔を思い出せずに苦しんでいた。ある日、軽薄な貴族たちに絡まれ、木の葉一枚でカエルを破裂させて見せる清明。その様子を目撃した上級貴族の源博雅(みなもとのひろまさ)は、清明に皇族の徽子(よしこ)女王の身に起きた怪異の解決を依頼した。カエルは殺しておらず、殺したと貴族たちに思い込ませた。その術を呪(しゅ)と呼ぶと説明する清明。 徽子女王は博雅の従兄妹に当たり、2人はお互いに好きあっていたが、皇族の地位から降下して臣下となった博雅は「身分が違う」と遠慮し、決して気持ちを打ち明けなかった。清明と博雅に、琴が夜中に勝手に鳴り、金色の龍が見えると告白する徽子女王。夜中まで待って琴の音を聞いた清明は、弦を共鳴させている振動の正体を「龍」だと見抜き、徽子女王の前で金色の龍を小瓶に封じて怪異を鎮めた。 陰陽寮で博士の下の身分である得業生(とくごうしょう)の泰家が自宅の井戸に落ちて死んだ。家から呪いの木簡が見つかり他殺と判明したが、陰陽師が呪い殺されては沽券に関わるため、自殺と発表する博士たち。呪った犯人を突き止めるために学生たちが動員され、事件を解決した者が次の得業生に抜擢されることになった。出世には興味がないが、試験だと命令されて捜査に乗り出す清明。 死んだ泰家の家族は学生らの捜査に協力せず、家に入れようとしなかった。事件現場の井戸を見るために、身分の高い博雅を泰家の家に連れて行く清明。井戸の周囲には泰家以外の足跡があり、毒を盛られて喉が乾いた泰家が水を飲みに井戸に来て突き落とされたと推理する清明。貴族である自分を敬わない清明に、なぜか共感し、捜査に付き合う博雅。 学生の貞文は百姓の出だが、陰陽師の最高位である蔵人所(くろうどどころ)陰陽師を目指し、45才になっても陰陽寮に在席していた。蔵人所陰陽師は帝の専属の陰陽師だが、現在は空位になっていた。出世するために必死で頭をひねり、学生全員の筆跡を調べて、呪いの木簡の文字が清明のものだと言い立てる貞文。捕えられ、学生たちに尋問される清明。筆跡を真似られたと主張した清明は鐘の音を聞き、妙な違和感を覚えた。 内裏に博雅を呼び、徽子女王を後宮に迎えるための恋文を託す帝。断るわけにも行かずに恋文を届け、徽子女王の怒りを買う博雅。泣いて庭に走り出た徽子女王は、金色の龍に連れ去られた。馬で陰陽寮に清明を迎えに行き、急を報せる博雅。学生たちを振り切って博雅と共に馬で走り去る清明。 人けのない屋外に設えた舞台で「呪いの舞」を舞い、清明や学生たちが無意識の世界で欲のままに殺し合うよう呪(しゅ)をかける「謎の男」。貞文と共に清明を探していた学生たちは、得業生の地位を賭けて貞文と殺し合いを始めた。徽子女王を探すうちに博雅とはぐれ、両親が殺された現場で顔の見えない殺人者を切り殺そうとする清明。怒りの炎に焼かれれば敵に魂を奪われるところだったが、博雅が吹く笛の音を聞いて清明は正気を取り戻した。 自分たちが現実ではなく、無意識の世界に精神的に閉じ込められていることに気づく清明。徽子女王と心で繋がるために、笛を吹く博雅。精神の世界で徽子女王と会った博雅は、好きだからこそ不幸な境遇には連れて行けないと心情を吐露した。博雅の深い愛を知り、幸せだと口づけして消える徽子女王。 精神世界で清明の傍らに戻る博雅。火を吹く火龍に攻撃され、術によって無人の平安京に移動する清明。殺し合いで死んだ貞文らの化身である火龍に両手を焼かれた博雅は、楽を奏でられないとパニックに陥るが、信じろという清明の言葉を受け入れて、心穏やかに眠りについた。都の下に存在する地底湖の具象化である水龍を召喚する清明。現実世界の舞台で、架空のはずの水龍に襲われ、死ぬ「謎の男」。その正体は、陰陽寮のナンバー2であり、出世のために悪事に加担した天文博士だった。 陰陽寮で学生たちに尋問され、奇妙な鐘の音を聞いた場面に戻り、意識を取り戻す清明。学生たちも皆、気絶していた。精神世界を体験したことで、清明は両親を殺した男の顔を思い出していた。それは、現在の陰陽寮のトップである陰陽頭(おんみょうのかみ)の義輔だった。 帝専属の陰陽師の地位を狙う義輔は、占いで清明がライバルであることを知り、徽子女王を利用して清明に術をかけたのだった。清明の父も優秀な陰陽師で邪魔だったが故に殺したと告白し、清明の胸に短刀を突き立てる義輔。しかし、それは幻の清明だった。内緒だが、自分は精神世界の物体を現実世界に持ち帰ることが出来ると告げ、憤死して怨霊となった菅原道真を召喚する清明。清明こそ異能を持つ「本物」の陰陽師だと悟り、道真の放った雷(いかずち)に打たれて死ぬ義輔。 徽子女王に帝の恋文を届けた場面に戻り、目覚める博雅。精神世界で博雅との繋がりが色恋を超えた深いものであることを悟った徽子女王は、帝の後宮に上がることを承諾した。悲しいが、それが徽子女王の幸せだと納得する博雅。 陰陽頭と天文博士が亡くなり、帝の陰陽師の地位をオファーされる陰陽博士の賀茂忠行。だが、正しい人であり清明の親代わりでもある忠行は、清明を推挙した。自分が帝の陰陽師となったことも知らずに、博雅と酒を酌み交わす清明。徽子女王の前に現れた金色の龍が、彼女の恋心の化身であったことを語った清明は、博雅の笛を所望して静かに聞き入った。 登場人物
キャスト
スタッフ
興行収入2024年4月22日に発表された週末興行成績ランキングでは、動員18万7000人・興収2億5500万円を記録して初登場第3位にランクインした[7]。さらに同年5月19日には、動員74万人・興行収入が10億円を突破した[8]。 関連書籍
脚注出典
外部リンク
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