馬具馬具(ばぐ)とは、人間がウマを効率よく制御(扶助)するためにウマに装着させる色々な道具のことをいう[1]。 馬具
馬の制御として、人間からの手綱(拳)、脚、サドル(座骨)、声で操作でき、これらを英語でNatural aidsという。補助として使う鞭や拍車などを Artificial aids という。Artificial aids を過度に使用すると、馬がパニックになったり、人間の言うことを聞かなくなったり、人間不信になる可能性があるほか、動物虐待として批難を受ける可能性もある。そのため、多くの馬術組織では使用に厳格な規則を設けている。
これらは一例であり、海外の大会に出場する騎手が知らずに罰金などを受けるケースが発生している。
また、ひき馬に用いる「引き手」や調馬索用ロープ等も馬具に含まれる。 競走馬用の馬具競馬においては、競走馬をレースに集中させたり負傷を防ぐためにさまざまな馬具が用いられる[11]。 メンコ馬の覆面のこと(※ただし、競馬における「覆面」は枠入れ時に装着する目隠しのことを指すこともある)。一般に耳おおいがついたものを使い、音に驚いたり、砂をかぶるのを嫌がる馬に使う[12]。英語ではhoodとも言う。装飾として装着されることもある。デザインは勝負服に合わせたり、厩舎オリジナルの物があったり多種多様である。また障害競走に出走する馬のメンコは、障害飛越時の衝撃でメンコがずれて前が見えなくならないように目の部分が大きくなっている。日本では目にする機会の多い馬具であるが、海外における使用頻度はそれほど高くない。 周囲の音が聞き取りづらくなるため、馬によっては却って不安を高めてしまう可能性もある。元JRA騎手の岡部幸雄は現役時代、これを理由にメンコの着用に否定的だった。反面、現役のJRA騎手である武豊はメンコの効果を認める発言をしている。 ブリンカー→詳細は「ブリンカー」を参照
ブリンカーは「遮眼革」ともいい、視界の一部を直接遮ることにより馬の意識を競走や調教に集中させ、周囲からの影響に惑わされずに走らせるために用いられる。フードの目穴部分に合成ゴムやプラスチック製のカップを取り付けたものが一般的で、カップのつくりやサイズによって遮る視界の広さを変えることができる。片側だけにカップがついているものもある[13]。なお、中央競馬において、ブリンカーを装着する馬は出馬表にBと表記される[11]。これを装着することによって前走から一変する馬も少なくない。出馬表に表記される馬具は基本的にブリンカーのみである。障害競走では、あらかじめ裁決委員の許可を受けることが必要である。[14]。 主にメンコとセットで使用するものである。 初めて装着したレースで最も大きな効果を発揮するといわれ、そのことを表す言葉として英語では「ファーストタイム・ブリンカー」、日本語では「初ブリ」がある[15]。 パシュファイアー語源は英語の"pacifier"(なだめる人、調停者の意)。ホライゾネットともいう。メンコの目穴部分をネットで覆ったもの。前を走る馬が跳ね上げる砂が眼にかかるのを嫌がる馬に用いられる。また、視野を制限するので、競走に意識を集中させる効果を期待して用いられることもある[16]。パドックなどでは装着していても、レース中に装着する馬はそこまで多くない。実際に着用した例ではメイケイエールが有名。 チークピース頭絡の頬革にボア状のものを装着したもので、左右を見えにくくして前方に意識を集中させる効果を期待して用いられる[17]。通常左右2つ付けるため複数形でチークピーシーズ(または「チークピーシズ」)と呼ぶ。オーストラリアンブリンカー、サイドバーンズ(もみあげの意)とも呼ばれる。実際に着用した例ではオジュウチョウサンが有名。 シャドーロール→詳細は「シャドーロール」を参照
頭絡の鼻革に装着し、下方の視界を遮るために使用する矯正用の馬具。実際に着用した例ではナリタブライアンが有名。 ブローバンド頭絡の額革につけるボア状の馬具。上方の視界を遮るために使用する。 バンデージ→詳細は「肢巻」を参照
日本語では肢巻き(しまき)。バンデージは英語のbandageつまり包帯のこと。運動中の肢の保護に使用するものと、運動後4肢の保温包帯に使用するものとがある[18]。競馬以外でも馬術競技(とくに総合馬術における耐久審査やエンデュランス馬術競技)においても使用する。 馬具の歴史
世界の馬具馬の家畜化が始まったのは、紀元前4000年ごろのウクライナのデレイフカ遺跡と考える説もある。このころにはリードによって役畜・食肉目的で飼われていた様子がうかがえる[19]。 日本の馬具日本列島では古墳時代の4世紀後半から5世紀にかけて家畜化された馬が伝来し、馬具も日本列島へもたらされた。古墳時代には古墳の副葬品として馬骨や馬歯とともに金属製の馬具が出土しており、中には馬具を装着したまま埋葬された馬遺体も見られる。また、埴輪(はにわ)には動物を形象したものが見られ、馬を形象した埴輪馬(馬形埴輪)も存在し、各種の馬具を装着した姿として表現されている。 中世には人が座すために置かれる鞍骨を含め、鐙や腹帯など馬具一式を総称して「鞍」と呼び、同時に狭義として鞍骨のみを指して鞍とも呼んでいた[20]。鞍は使用する馬具の組み合わせによって唐鞍・移鞍・大和鞍・水干鞍・軍陣鞍・六位鞍などに区別されている。貴族の時代には身分・官職によって使用できる馬具やその装飾(料)に規定があり、朝儀用の装飾豊かな唐鞍や移鞍は殿上人の官馬に着けられ、六位以下の官人や一般の武士が使用する地味な装飾馬具を六位鞍と呼んだ。鎌倉時代以降の武士の時代に入ると、実用的な大和鞍や軍陣鞍・水干鞍が主流となり、新たな身分秩序に応じた料の規定が設けられた。 室町以降になると貴族は権威は失墜し、半士半農民によって戦時以外の平時における農耕馬や山野路での運搬用の馬方(馬子)の需要が見出された。鼻先に付け横木に繋いでおく鼻捻(びねん・はなねじ)棒[21]やももろい(腿牢・腿篭:ももろうとも言う)という脛につけ腿を動けなくする制御用の馬具が出てきた。その他にも馬が長時間の走行で疲れ腿が鬱血した際に瀉血用の馬針(刃針:ばしん)[22]が用いられた。 2024年1月19日、北海道鷹栖町の町郷土資料館が所蔵する馬具399点が登録有形民俗文化財となった[23][24]。 その他
脚注
参考文献
関連項目
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