2024年のナショナルリーグチャンピオンシップシリーズ
2024年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)のポストシーズンは10月1日に開幕した。ナショナルリーグの第55回リーグチャンピオンシップシリーズ(英語: 55th National League Championship Series、以下「リーグ優勝決定戦」と表記)は、13日から20日にかけて計6試合が開催された。その結果、ロサンゼルス・ドジャース(西地区)がニューヨーク・メッツ(東地区)を4勝2敗で下し、4年ぶり25回目のリーグ優勝および22回目のワールドシリーズ進出を果たした。
両球団がポストシーズンで対戦するのは、2015年の地区シリーズ以来9年ぶり4度目。2022年にポストシーズン出場枠が拡大し、地区優勝を逃したワイルドカード球団の枠が1リーグあたり2→3へ増えて以来、ナショナルリーグ優勝決定戦は2年連続で第3ワイルドカード、すなわち2021年以前の形式であればポストシーズンへの出場すら叶わなかった球団が制していた。もし今シリーズをメッツが制した場合はそれが3年連続となるところだったが[3]、今回はリーグ最高勝率のドジャースがそれを阻んだ。試合内容はどちらが勝つにしろ大差の試合が多く、点差が4点以上開いた試合が5試合以上あるシリーズはポストシーズン史上3年ぶり4度目、また6点以上開いた試合が4試合以上あるシリーズは14年ぶり3度目だった[注 1][4]。シリーズMVPには、優勝を決めた第6戦の初回裏に逆転・決勝の2点二塁打を放つなど、6試合で打率.407・1本塁打・11打点・OPS 1.022を記録したドジャースのトミー・エドマンが選出された。このあとドジャースは、ワールドシリーズでもアメリカンリーグ王者ニューヨーク・ヤンキースを4勝1敗で下し、4年ぶり8度目の優勝を成し遂げた。
2021年、MLB機構が非銀行系住宅ローン会社のローンデポ(英語版)と契約を締結し、同社はその年から5年間リーグ優勝決定戦の冠スポンサーとなった[5]。これにより、大会名はナショナルリーグチャンピオンシップシリーズ presented by ローンデポ(英語: National League Championship Series presented by loanDepot)となる。また2024年、MLB機構はドイツの作業服製造販売業者エンゲルベルト・シュトラウス(ドイツ語版)とスポンサー契約を締結した。これにより2027年までの契約期間中、選手は今シリーズを含むポストシーズン全試合で同社の広告ロゴ入り打撃用ヘルメットを着用する[6]。
両チームの2024年
10月9日にまずメッツ(東地区3位=第3ワイルドカード)が、そして11日にはドジャース(西地区優勝)が、それぞれ地区シリーズ突破を決めてリーグ優勝決定戦へ駒を進めた。
メッツは2023年を75勝87敗と負け越すと、編成本部長にデビッド・スターンズを招聘して新体制を始動させた[7]。そのオフは将来の持続的成功へ向けた移行期との位置づけから、選手補強では大物FA選手との長期契約はなく、層が薄い部分へ短期契約で穴埋めを施す動きに終始した[8]。開幕前にはエースの千賀滉大が右肩を痛め、長期欠場に追い込まれた[9]。シーズン序盤は苦しみ、5月29日には22勝33敗まで成績を落とす[10]。ただその間にフランシスコ・リンドーアを1番へ置くなど打線を組み換えたことが奏功し、次第に勝率を上げていく[11]。前半戦終了時には49勝46敗と勝ち越しに転じ、地区首位フィラデルフィア・フィリーズには12.5ゲーム差をつけられたものの、ワイルドカード争いではポストシーズン進出圏内の3位にいた。後半戦も同地区のアトランタ・ブレーブスや西地区のアリゾナ・ダイヤモンドバックスらとワイルドカードを争う。9月に投打とも好調となって勝利を積み重ね[12]、同月30日のレギュラーシーズン最終日にワイルドカードを確保した[10]。平均得点4.74はリーグ5位、防御率3.96はリーグ7位。リンドーアは成績でも精神面でも中心選手としてチームを支え[13]、先発ローテーションでは千賀が1登板のみに終わったなか[9]、オフに短期契約で加入したショーン・マネイアやルイス・セベリーノが好投した[14]。ワイルドカードシリーズではミルウォーキー・ブルワーズを2勝1敗で[15]、地区シリーズではフィリーズを3勝1敗で[16]、それぞれ下した。
ドジャースは直近2年連続で100勝以上を挙げて地区優勝しながら、いずれの年も地区シリーズで同地区下位球団に敗れた。オフには打線に大谷翔平やテオスカー・ヘルナンデスを、先発ローテーションにタイラー・グラスノーや山本由伸を加えた。FAの大谷へ与えた10年契約はMLB史上最大の総額7億ドル[17]、彼を含む4人の獲得へ投じたのは合計12億3500万ドル超という大型補強だった[18]。2024年は開幕戦勝利から地区首位を譲らないまま、主力選手の負傷離脱も乗り越えてシーズンを進めていく。先発ローテーションは山本を筆頭に特に怪我人が多く、また打線もムーキー・ベッツやマックス・マンシーを欠いたが[19]、それでも前半戦終了時には56勝41敗で2位サンディエゴ・パドレスに7.0ゲーム差をつけた。後半戦に入ると、7月30日のトレード期限までに獲得した救援投手マイケル・コペックや先発投手ジャック・フレアティが好投してチームを支える[20]。パドレスには直接対決で負け越したうえ、後半戦に43勝20敗の高勝率を記録されて差を縮められたものの[21]、9月26日に最後の直接対決を制して振り切り、地区王者の座を守った[22]。平均得点5.20はリーグ2位、防御率3.90はリーグ6位。移籍1年目の大谷がMLB史上初のシーズン50本塁打・50盗塁を達成するなど打線を牽引し、投手陣では先発投手の負傷者続出を救援投手の充実ぶりが補った[23]。ワイルドカードシリーズはリーグ最高勝率のため出場を免除され、地区シリーズではパドレスを3勝2敗で下した[24]。
リーグ優勝決定戦の第1・2・6・7戦を本拠地で開催できる "ホームフィールド・アドバンテージ" は、地区優勝球団どうしやワイルドカード球団どうしの対戦の場合はレギュラーシーズンの勝率がより高いほうの球団に、地区優勝球団とワイルドカード球団が対戦する場合は地区優勝球団に与えられる。したがって今シリーズでは、ドジャースがアドバンテージを得る。この年のレギュラーシーズンでは両球団は6試合対戦し、ドジャースが4勝2敗と勝ち越していた[25]。
ロースター
両チームの出場選手登録(ロースター)は以下の通り。
- 名前の横の★はこの年のオールスターゲームに選出された選手を、#はレギュラーシーズン開幕後に入団した選手を示す。
- 年齢は今シリーズ開幕時点でのもの。
メッツは地区シリーズのロースターから投手のアダム・オッタビーノを外し、内野手のジェフ・マクニールを加えた。マクニールは二塁と外野の両翼を守ることができ、この年のレギュラーシーズンでは二塁で95試合、左翼で12試合と右翼で10試合に先発出場していた。だが9月6日の試合で右手首に死球を受けて骨折し、ワイルドカードシリーズと地区シリーズではロースターを外れた。復帰したての今シリーズでは左の代打としての起用が主になると見込まれるが[26]、内外野を守れる左打者の存在は選手起用に幅をもたらす[27]。投手陣では、右のオッタビーノと左のダニー・ヤングに今ポストシーズンでの登板機会がなかった。ただ救援左腕はヤング以外にはロングリリーフ要員のデビッド・ピーターソンしかおらず[28]、相手打線は大谷翔平やフレディ・フリーマンといった左の強打者を擁するため[26]、オッタビーノが余剰人員となった。
ドジャースは地区シリーズのロースターから投手と野手をひとりずつ入れ替え、投手は左のアレックス・ベシアから右のブレント・ハニーウェルへ、野手は内野手のミゲル・ロハスから外野手のケビン・キアマイアーへ、それぞれ変更した。ベシアとロハスが外れたのは、ともに故障のためである。ロハスは左太股に痛みを抱え、レギュラーシーズン終盤にはコルチゾン注射による治療を受けながら出場を続けていた[29]。しかし地区シリーズ第3戦の3回表、走者として三塁へ達したところで代走と交代し、それ以降は出場がなかった。ベシアは地区シリーズでは3試合3.0イニングで無失点だったが、第5戦の8回表にイニングまたぎでマウンドへ上がった際、投球練習で右脇腹を痛めて続投を断念した。ロハスが守ってきた遊撃にはトミー・エドマンを入れることで穴が埋まるが、投手陣のほうは左投手がアンソニー・バンダのみと手薄になる[30]。
開幕前の予想
MLB.comが所属記者・アナリスト45人にどちらがシリーズを制するか予想させたところ、メッツ勝利予想が26人に対しドジャース勝利予想が19人という結果となった[31]。しかし他の媒体が実施した同様の企画ではドジャース勝利予想のほうが多く『ジ・アスレチック』では記者数不明ながら全記者中の71.4%が[32]、ESPNでは14人中8人が[33]、『ニューヨーク・ポスト』では6人中4人が[34]、それぞれドジャースを支持した。CBSスポーツの企画では、記者6人の支持がメッツとドジャースで3人ずつ半々に分かれた[35]。
試合結果
2024年のナショナルリーグ優勝決定戦は10月13日に開幕し、途中に移動日を挟んで8日間で6試合が行われた。日程・結果は以下の通り。
日付 |
試合 |
ビジター球団(先攻) |
スコア |
ホーム球団(後攻) |
開催球場
|
10月13日(日) |
第1戦 |
ニューヨーク・メッツ |
0-9 |
ロサンゼルス・ドジャース |
ドジャー・スタジアム |
|
10月14日(月) |
第2戦 |
ニューヨーク・メッツ |
7-3 |
ロサンゼルス・ドジャース
|
10月15日(火) |
|
移動日 |
|
10月16日(水) |
第3戦 |
ロサンゼルス・ドジャース |
8-0 |
ニューヨーク・メッツ |
シティ・フィールド
|
10月17日(木) |
第4戦 |
ロサンゼルス・ドジャース |
10-2 |
ニューヨーク・メッツ
|
10月18日(金) |
第5戦 |
ロサンゼルス・ドジャース |
6-12 |
ニューヨーク・メッツ
|
10月19日(土) |
|
移動日 |
|
10月20日(日) |
第6戦 |
ニューヨーク・メッツ |
5-10 |
ロサンゼルス・ドジャース |
ドジャー・スタジアム
|
優勝:ロサンゼルス・ドジャース(4勝2敗 / 4年ぶり25度目)
|
第1戦 10月13日
第2戦 10月14日
第3戦 10月16日
第4戦 10月17日
第5戦 10月18日
第6戦 10月20日
脚注
注釈
出典
- ^ "Six umpires to make LCS on-field debuts, with Dan Iassogna and Bill Miller serving as crew chiefs," Associated Press News, October 13, 2024. 2024年10月14日閲覧。
- ^ Jayson Stark, "What we've learned about MLB's playoff format: Would changes make it more ‘fair’?," The Athletic, October 14, 2024. 2024年11月5日閲覧。
- ^ Jayson Stark, "The Blowout Series: Mets-Dodgers is bonkers baseball, an NLCS filled with runaway wins," The Athletic, October 19, 2024. 2024年11月5日閲覧。
- ^ "loanDepot named presenting sponsor of AMERICAN AND NATIONAL League Championship Series on FOX, FS1 and TBS," MLB.com, March 5, 2021. 2024年9月26日閲覧。
- ^ "MLB teams to have helmet ads in postseason featuring ostrich logo of German apparel company Strauss," Associated Press News, September 14, 2024. 2024年11月5日閲覧。
- ^ Mike Puma, "David Stearns ‘thrilled’ as his Mets destiny becomes reality: ‘This is my home’," New York Post, October 2, 2023. 2025年1月30日閲覧。
- ^ Bradford Doolittle, ESPN Staff Writer, "What is the Mets' plan? Inside the mind of David Stearns," ESPN, April 22, 2024. 2025年1月30日閲覧。
- ^ a b 「千賀滉大、故障明けぶっつけ本番へニヤリ『10球で終わりと言われたら10球。ただそれだけ』」 『日刊スポーツ』、2024年10月5日。2025年1月30日閲覧。
- ^ a b Paul Newberry, "Mets reach playoffs, beat Braves to cap comeback from 22-33 start," Associated Press News, October 1, 2024. 2025年1月30日閲覧。
- ^ Mike Lupica, "Mets' major resurgence comes thanks to some minor tinkering," Official New York Mets Website, July 13, 2024. 2025年1月30日閲覧。
- ^ Zach Worden, "MLB Playoff Push: Second-half run has Mets ready to crash post-season picture," Sportsnet.ca, September 23, 2024. 2025年1月30日閲覧。
- ^ Jeff Passan, "How MVP candidate Francisco Lindor has led Mets' turnaround," ESPN, October 10, 2024. 2025年1月30日閲覧。
- ^ Mark W. Sanchez, "Mets' offseason acquisitions Luis Severino, Sean Manaea have paid big dividends," New York Post, September 4, 2024. 2025年1月30日閲覧。
- ^ Steve Megargee, "Mets advance in playoffs with 4-2 win over Brewers as Alonso homers to spark 9th-inning rally," Associated Press News, October 4, 2024. 2025年1月30日閲覧。
- ^ Mike Fitzpatrick, "Francisco Lindor's grand slam sends Mets into NLCS with 4-1 win over Phillies in Game 4 of NLDS," Associated Press News, October 10, 2024. 2025年1月30日閲覧。
- ^ Alden Gonzalez, ESPN Staff Writer, "Shohei Ohtani joining Dodgers on 10-year, $700M contract," ESPN, December 9, 2023. 2025年1月30日閲覧。
- ^ Beth Harris, "Dodgers finalize $23.5M deal with Teoscar Hernández and hire former major leaguer Raúl Ibañez," Associated Press News, January 13, 2024. 2025年1月30日閲覧。
- ^ Jack Harris, "What's in store for the Dodgers in the second half? Here are 10 storylines to watch," Los Angeles Times, July 19, 2024. 2025年1月30日閲覧。
- ^ Bob Nightengale, "MLB trade deadline revisited: Dodgers pulled off heist to get new bullpen ace," USA TODAY, September 8, 2024. 2025年1月30日閲覧。
- ^ Jeff Sanders, "San Diego Padres: Baseball America's 2024 Organization Of The Year," Baseball America, December 9, 2024. 2025年1月30日閲覧。
- ^ Beth Harris, "Shohei Ohtani heads to 1st postseason after Dodgers clinch NL West title with a 7-2 win over Padres," Associated Press News, September 27, 2024. 2025年1月30日閲覧。
- ^ SLUGGER編集部 「30球団通信簿 全選手最終成績+編成トップ通信簿 ロサンゼルス・ドジャース 『チーム一丸』で困難を跳ね返して頂点へ」 『隔月刊スラッガー』2025年1月号増刊、日本スポーツ企画出版社、2024年、雑誌15510-1、84頁。
- ^ Beth Harris, "Yamamoto outduels Darvish in historic matchup as Dodgers beat Padres 2-0 to reach NLCS," Associated Press News, October 12, 2024. 2025年1月30日閲覧。
- ^ "Head-to-Head Records," Baseball-Reference.com. 2024年10月12日閲覧。
- ^ a b Anthony DiComo, "McNeil, Acuña both make Mets' NLCS roster; Ottavino off," Official New York Mets Website, October 14, 2024. 2024年10月19日閲覧。
- ^ Tim Healey, "Jeff McNeil's return to Mets for NLCS important for both him and team," Newsday, October 13, 2024. 2024年10月19日閲覧。
- ^ Mark W. Sanchez, "Mets leave Adam Ottavino off NLCS roster as Jeff McNeil returns from injury," New York Post, October 13, 2024. 2024年10月19日閲覧。
- ^ Mike DiGiovanna, "Clayton Kershaw isn’t giving up on a return, but he could still be out for weeks," Los Angeles Times, September 26, 2024. 2024年10月19日閲覧。
- ^ Juan Toribio, "Dodgers release NLCS roster: Kiermaier, Honeywell on; Rojas, Vesia off," Official Los Angeles Dodgers Website, October 14, 2024. 2024年10月19日閲覧。
- ^ Theo DeRosa, "Our expert picks for the ALCS and NLCS matchups," MLB.com, October 13, 2024. 2024年10月14日閲覧。
- ^ The Athletic MLB Staff, "National League Championship Series predictions: Our experts make their picks," The Athletic, October 12, 2024. 2024年10月14日閲覧。
- ^ ESPN, "MLB playoffs 2024: ALCS, NLCS expert predictions," ESPN, October 13, 2024. 2024年10月14日閲覧。
- ^ Dan Martin, "Mets vs. Dodgers: NLCS matchups, predictions and preview," New York Post, October 13, 2024. 2024年10月14日閲覧。
- ^ Kate Feldman, "2024 MLB playoff predictions: ALCS, NLCS expert picks as four teams vie for chance at World Series title," CBS Sports, October 12, 2024. 2024年10月14日閲覧。
外部リンク
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球団 | |
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歴代本拠地 | |
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文化 | |
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ライバル関係 | |
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永久欠番 | |
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できごと | |
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