CAFE JAPAN
『CAFE JAPAN』(カフェ・ジャパン)は、日本のミュージシャンである玉置浩二の5枚目のオリジナル・アルバム。 1996年9月13日にSony Recordsからリリースされた。前作『LOVE SONG BLUE』(1994年)より約1年9ヶ月ぶりとなるオリジナル・アルバムである。作詞はほぼ全曲で玉置と須藤晃が担当、作曲は全て玉置が担当、プロデューサーは玉置と須藤が担当している。 レコーディングは日本国内の様々なスタジオで多岐に亘って行われ、ほぼ全ての楽器を玉置が単独で担当している事や、前作に引き続きほぼ全曲に亘って玉置が作詞を行っている事を特徴としている。また、収録曲の内「メロディー」のみ安全地帯メンバーの矢萩渉、六土開正、田中裕二が参加している。 先行シングルとしてリリースされ、東京電力のコマーシャル「バヂャー家シリーズ」のイメージソングとして使用された「STAR」、TBS系報道番組『筑紫哲也 NEWS23』(1989年 - 2008年)のエンディングテーマとして使用された「メロディー」、フジテレビ系テレビドラマ『コーチ』(1996年)の主題歌として使用された「田園」(1996年)を収録している。 オリコンチャートでは最高位4位、売上枚数は約43万枚となり、玉置のソロアルバムの中では最大のヒット作となっている。 背景前作『LOVE SONG BLUE』(1994年)をリリース後、12月21日には玉置としては初の詩画集『星になりたい』を出版し、絵画展も開催した[2]。 1995年に入り、6月21日にシングル「STAR」をリリースした他、6月10日より「正義の また前年に引き続き俳優業も行っていた玉置は、8月13日放送の日豪合作による、柘植久慶の小説「最後の遭遇」を原作としたNHK総合テレビドラマ『最後の弾丸』に出演、同ドラマはノンブルドール賞ゴールデンレンブラント賞、ハイビジョン国際映像祭アストロラビウム賞(最優秀賞)、放送文化基金賞テレビドラマ部門優秀賞を受賞する事となった[6]。 1996年に入り、1月20日公開の出目昌伸監督による映画『霧の子午線』に出演し、玉置はテーマ曲も担当[7]、さらに5月25日公開の長崎俊一監督による映画『ロマンス』に出演し、玉置は音楽も担当した[8]。その他にも同年1月7日から12月22日の約1年に亘り放送されたNHK大河ドラマ『秀吉』に出演し、足利義昭を演じた[9]。この時の玉置の演技に関して、共演した竹中直人は「ときに奇声を発する無能な義昭を見事に演じて、感動した」と述べるなど[10]、各方面から演技力に関して高い評価を得た[11]。 5月22日にはシングル「メロディー」をリリースし、さらに7月4日から9月19日まで放送されたフジテレビ系テレビドラマ『コーチ』に出演[12]、同ドラマは最終回で視聴率が20パーセントを超えるなどヒット作品となった他、作中に登場する「サバカレー」が放送直後に発売され、売り切れ続出により一時は入手困難になるほどの人気となった[13][14]。さらに同ドラマの主題歌として使用された「田園」を7月21日にシングルとしてリリース、オリコンチャートでは最高位2位を獲得し、売り上げ枚数が92.5万枚となる大ヒット曲となった[15]。その他、9月7日放送のNHK総合土曜ドラマ『ぜいたくな家族』に出演し、フランキー堺と共演した他、玉置が音楽も担当した[16]。フランキー堺は同年6月10日に死去したため、同ドラマが遺作となった[16]。 録音レコーディングは1996年にソニー・ミュージック信濃町スタジオ、スタジオジャイヴ、ハートビートレコーディングスタジオ、スタジオTOKYO FUN、一口坂スタジオ、セディックスタジオと多岐に亘り行われた。 プロデューサーは前作に引き続き玉置と須藤晃との共同プロデュースとなっている。収録曲の内「ファミリー」は同年に死去したフランキー堺を追悼したものとなっている[17]。また、歌詞カードのスタッフクレジットの欄にもフランキー堺の名前が記載されている。 本作の演奏は、プログラミングとキーボードを安藤さと子と藤井丈司が担当している以外は、全て玉置自身が各楽器を担当、アルバム『カリント工場の煙突の上に』(1993年)にて習得した方法を発展させた形となっている[18]。 音楽性と歌詞じつは俺の中で最大のヒット曲って〈田園〉じゃない? (中略)まさにやりたかったこと、歌いたかったことだもん。世の中にはいろんなやつがいる、と。いろんなことで悲しんでる。でもなんにもできなくてもさ、生きていればそれでいいんだ、ってほんとに思った。
玉置浩二 幸せになるために生まれてきたんだから[19] 本作には大ヒット曲となった「田園」が収録されているが、同曲は玉置が人生において最も行き詰まっていた時のことを歌詞にした楽曲である[15]。そのため、同曲に関して玉置は「まさにやりたかったこと、歌いたかったこと」であったことから大ヒットしたことに感激したと述べている[15]。 音楽情報サイト『OKMusic』にてライターの帆苅智之は本作の音楽性に関して、1曲目「ファミリー」は会場にいる人々のざわめきから始まる部分がシアトリカルであると指摘し、緩やかなテンポの「全体的には落ち着いたジャジーなバラードといった印象」とした他、複数の楽器を玉置が演奏したものを多重録音しているがそれを感じさせない「グルービーなサウンド」であると表現した[17]。2曲目「CAFE JAPAN」はソウルミュージックのテイストがあるが様々な要素が混ざったロックサウンドであり、1980年代中頃の中森明菜の楽曲の雰囲気を感じさせるとした[17]。3曲目「田園」に関しては抑制が効いたAメロ、Bメロから徐々に加速しサビへと流れる作りになっていると指摘し、サビを強調する構成に関して「ポップミュージックの何たるかを理解している人の手練れた仕事っぷりと言える」と表現した[17]。4曲目「ヘイ! ヘイ!」はローリング・ストーンズへのオマージュを感じさせるロックンロールナンバーであるとし、5曲目「STAR」はサイモン&ガーファンクルを彷彿させるとした上で、囁くようなウイスパーボイスが特徴であるとした[17]。6曲目「SPECIAL」はモータウンサウンドであるとし、スプリームスの「恋はあせらず」(1966年)との類似性を指摘している[17]。7曲目「フラッグ」はマイナーながらキャッチーなサビメロが印象的であるとし、8曲目「Honeybee」はサイケデリック・ロックを意識したファンクナンバーであるとした[17]。9曲目「愛を伝えて」および10曲目「あの時代に…」は共にバラードナンバーであり、唱歌のようなシンプルなメロディーであるとした[17]。11曲目「メロディー」には安全地帯のメンバーが参加している事を指摘した上で、弾き語りで始まる前半からバンドサウンドへと変化する事やサビのリフレインによりサウンドが迫力を増す事を指摘した[17]。 リリース本作は1996年9月13日にSony RecordsよりCDとMDの2形態でリリースされた。初回限定版は3Dジャケット仕様になっている。 2018年8月15日にはBlu-spec CD2、紙ジャケット仕様で再リリースされた[20]。 プロモーション
アートワークジャケット写真は「田園」のPVで玉置が披露したコスプレ姿で、表はギターを抱えた魔法使い、白いアイマスクを付けたコートの男、中国人等のコスプレ姿、裏は麦わら帽をかぶった農夫がおにぎりを食べているコスプレ姿の玉置が写っている[22]。 このキャラクターたちには設定があり、カフェ・ジャパンの裏で農家を営んでいる農夫がカフェ・ジャパンの支配人でありオーナー、中国服の男は謎のマネージャーとなっている[22]。また、玉置は「このカフェ・ジャパンに人生で迷ったヤツが来る!」と語り、仮面の男はその中の一人であるという[22]。また本作のコンセプトとして「仮面の男はカフェ・ジャパンに来た事で救われ、『自分はこれでいいんだ』と最後に仮面を取って晴れやかな顔になる、その時空には虹がかかっている」という構想であると玉置は語っている[22]。 この頃に須藤は、安全地帯でのメイク・アップされたイメージから、麦わら帽子を着用しタオルを巻いておにぎりを持つというイメージチェンジに関して、自身の趣向には合っていたが「玉置さん、ほんとにいいんですか?」という感想を持ったと述べている[23]。 ツアーこのアルバムの発売日である1996年9月13日の和光市民文化センターサンアゼリア 大ホールから翌1997年2月3日の北海道厚生年金会館まで全国42都市45公演におよぶライブツアー「Concert Tour 1996 CAFE JAPAN」が行われた[24][25]。しかし、同ツアー中の11月29日、腹部に異常を感じた玉置はそのままライブを行ったものの、ライブ終了後に激痛を訴え入院する事となった[26]。病名は憩室炎と診断され、腸の病気のため食事が出来ず、点滴のみで10日間過ごしたために15キロも体重が減少する事態となった[26]。 批評
本作の音楽性や玉置の歌唱力に関しては肯定的な意見が挙げられており、音楽情報サイト『CDジャーナル』では、同時期の玉置がビジュアル面でも音楽面でも「かなりハジけてる」と指摘し、玉置の自然体で人間味あふれる地の部分が出た作品であると主張した上で、「彼自身が楽しんで歌っているのがわかるし、聴いてて元気になるような歌ばかり」と称賛した[27]他、ほぼ全ての演奏を玉置自身が手掛けている事に関して「文字通りのソロとなっている点も聴きどころ」であると肯定的に評価している[28]。音楽情報サイト『OKMusic』にて帆苅は、本作は玉置自らが楽しんで制作した作品であると指摘し、ほぼ全ての楽器を玉置が担当している事を指摘した上で、多重録音である事を感じさせないサウンドである事や「田園」のような力強い曲から「STAR」のようなウイスパーボイスまで使いこなす玉置の歌唱力を絶賛、また7曲目以降はミドルテンポの曲が多くファンの間でも賛否両論であるが「聴きどころは満載」であると指摘、最終曲が「メロディー」である事に関しては「アルバムのフィナーレに相応しい大団円感を生んでいると見ることもできる。個人的には巧みな締め括りだと思う」と称賛した[17]。さらに歌詞に「愛」という言葉が多用されている点にも着目し、玉置が本作に愛情を注いだ結果であると推測した[17]。 チャート成績オリコンチャートでは最高位4位、登場回数20回となり、売り上げ枚数は43.4万枚となった[29]。この売り上げ枚数は玉置のアルバム売上ランキングにおいて1位となっている[30]。2022年に実施されたねとらぼ調査隊による玉置のアルバム人気ランキングでは3位となった[31]。 収録曲
スタッフ・クレジット参加ミュージシャン
スタッフ
リリース履歴
脚注注釈
出典
参考文献
外部リンク |