NHKスペシャル シリーズ 「JAPANデビュー」
NHKスペシャル シリーズ 「JAPANデビュー」(エヌエイチケイスペシャル シリーズ 「ジャパンデビュー」)は、2009年4月から6月にかけて日本放送協会 (NHK) のテレビ番組『NHKスペシャル』で放送された4回分のシリーズを括る題名で、NHKが自社の取り組む「プロジェクトJAPAN」の一環として制作した日本のドキュメンタリー番組である。 日本が西洋列強に対抗する際に命運を握った「アジア」 「天皇と憲法」 「貿易」 「軍事」に世界史上から焦点をあてた特別番組として4回がNHK総合、NHKの海外放送、子会社NHKグローバルメディアサービスが行うNHKワールドプレミアムを通じて放送された。 第1回放送をめぐっては、日本と台湾の視聴者や番組出演者を含めた約1万300人(台湾人約150人を含む[1])による集団訴訟が起こされたが、原告側の逆転敗訴で幕を閉じた。 各回の概要
第1回 「アジアの“一等国”」日本統治時代の台湾について。 第2回 「天皇と憲法」大日本帝国憲法と日本国憲法の成立過程について。大まかに3つのパートで構成される。
第3回 「通商国家の挫折」貿易によって富を得る戦略を立てたが、世界大恐慌による保護主義で挫折するまでの興亡。 第4回 「軍事同盟 国家の戦略」日露戦争から太平洋戦争までの外交交渉や国際情報を分析し、歴史学者による解説を交えつつ、同盟とは何かを問う。番組の前半を「第一部 日英同盟」として1902年から1921年までの出来事を、後半の「第二部 日独伊三国同盟」で1922年から1945年までの出来事を扱う。 現在の日本で行われる戦艦三笠の記念式典と、日露戦争の頃に日本がイギリスから輸入した測距儀を導入部として、日英同盟が締結された1902年へと遡る。そこから日露戦争・第一次世界大戦・第二次世界大戦を経て、日本が敗戦に至るまでの時局を辿る。当時の人々の記録や証言を挟みながら、Uボート・レーダーなど当時の最先端の軍事技術をめぐる日本と周辺国の駆け引きを追う。 スタッフ第1回放送をめぐる騒動・訴訟日本の台湾統治をテーマとして2009年(平成21年)4月5日に放送された第1回「アジアの“一等国”」をめぐり、放送後「日本統治時代が悪と一方的に描かれており、内容が偏向している」「日本の台湾統治を批判するため、(台湾人の)証言をねじ曲げている」「番組にはやらせや、事実の歪曲・捏造があり、放送法に違反している」[1]「台湾の人の心と日台関係を傷つけた」[2]「台湾をよく知らない人に排日的だと誤解を与える」[3]「NHKに「人間動物園」とおとしめられ、名誉を傷つけられた」[4] などとして、視聴者[5]、地方議員、自民党国会議員、産経新聞・週刊新潮・日本文化チャンネル桜などの保守系メディア、市民団体、有識者[6][7][8][9][10](産経新聞紙上に掲載された意見広告は後述[11])、更に、番組に出演した台湾人(パイワン人を含む)や台湾や日本の民間団体など日台双方から抗議や批判が続出した。さらに台湾人を含む8389名が東京地裁にNHKを提訴[1]。日本文化チャンネル桜は1万人の訴訟委任状を以て提訴した[12]。その後二次提訴がなされ、原告には番組に出演したパイワン族も加わり一次提訴と合わせた原告は1万300名以上(後述)。 一方で129件の視聴者の意見[5]、日本共産党の山下芳生、共産党の機関紙しんぶん赤旗[13][14][15][16]、市民団体の松田浩と醍醐聰らは「台湾人の複雑な感情を描いていた」などと肯定的評価を下した[17]。また政治家が番組批判をすることについて「圧力になりかねない」と批判をする者もいた[17][18][19]。 制作者であるNHKは、NHK経営委員会の小丸成洋委員長が「JAPANデビュー」について経営委員会として取扱うべき重大な疑義があるケースには当たらないとの認識を示し[20][21]、NHK福地茂雄会長は放送内容に問題はないとの考えを表明している。 NHK内部の声『正論』に掲載されたNHK現役職員の匿名証言[22] によれば、もともとNHK内部でも同番組への疑問の声が多く、放送直後から各職場で「これ、やばくない」「やりすぎだよ」との声があったという。結果としてNHKが最も力を入れるNHKスペシャルとしては前代未聞の抗議の嵐であり、このNHK職員は外部の有識者や専門家と会う際に「NHKはどうしちゃったの」と何度も聞かれたことも明かした。 批判および問題点の指摘番組で証言した柯徳三[注記 1] は、「(NHKには)八田與一のことや後藤新平のことなどもいろいろ話したのに、そこを全部カットした。同窓会の改まった席で誰かが火ぶたを切って不満を話した部分だけが放映され、あたかもあそこにいた人全員が反日的であるかのように宣伝された」と批判。又「あくまでも日本は私のお母さんで、育ててくれた恩義を感じています。あそこに出た皆が怒っているのは、日本が、養子にした台湾を終戦後にポンと捨てて蔣介石にやってしまったことです。それに対して、日本からはすまなかったの一言もない。(極論すれば、)恨み言の根底は戦後の日本の態度であって、領台時代の差別とかいうことではないのです」とコメントした[23]。また「NHKの背後に中国共産党がいる」と感じたと語った[24]。 また朝日新聞の取材によると、柯徳三が日本の台湾への貢献を語った部分はすべてカットされたと発言していることも伝えられた[25]。 金美齢は、「“日本は加害者”という自虐史観ありき」の偏向番組だと非難[26][27]。櫻井よしこは、「“人間動物園”という言葉を、当時の日本政府が使った言葉と錯覚するように使っている。全篇がそうした”歪曲報道”の連続」であると批判した[8]。日本文化チャンネル桜社長でチャンネル桜の番組出演者でもある水島総は、タイトルバックを例に挙げこの番組は印象操作や意識操作、さらには禁止されているサブリミナル効果までが駆使されている悪辣な「ドキュメンタリー」であると論じている[9]。 NHKは旧台湾総督府に保存されていた文書を交えて、柯徳三の父親が小学校を退学させられたことについて放送したが、チャンネル桜によれば、柯はこのことをNHK側から文書を見せられるまで知らなかったし、父や祖父は何も語っていない、と取材時に初めて知ってコメントしたと証言した[28]。水島総はこれを当人が知らない情報をNHK取材陣が提示し、それを証言者自身から出た言葉であるかのように撮影して編集し放送したジャーナリストがしてはならぬ「やらせ」取材で、完全な放送法違反であることが発覚したと主張した[28]。 中村粲は、欺瞞をつぶさに論証した上で意図的なつまみ喰いと作為的編集があったと主張[9]。渡部昇一は、並べ方や切り口により同じ歴史を全く逆に見せることが可能だと指摘、公平・公正であるのかと疑問を呈し内容を検証した上で同番組を占領政策に基づいて行われた占領軍(GHQ)による『真相はこうだ』に譬(たと)えた。米占領軍によって直接行われたウォー・ギルト・インフォメーション・プログラムが中国共産党によって現在間接的に行われているのではないかとも主張した[10]。台湾系評論家の黄文雄は、番組に出演した台湾人の証言などを例に挙げ検証、取るに足らない異例をさも全体像であるかのように誘導する手法を駆使した捏造と歪曲の番組であったと批判した[28]。 西村幸祐は、JAPANデビューの捏造報道、やらせ取材、サブリミナル効果の使用などがあったと主張[29]。また、2005年9月2日から北京で開催されたシンポジウムでの中国共産党中央宣伝部の責任者李長春の演説「日本が中国とアジア太平洋各国を侵略した歴史を深く研究し、日本軍国主義の残虐行為を明らかにし、右翼勢力の歴史をねじ曲げ、侵略を美化するでたらめな論調を暴かなければならない。日本による植民地支配に抵抗した台湾人民の戦いの歴史を深く研究し、「台湾独立」と日本軍国主義の歴史的根源を明らかにし、祖国の平和統一を促進しなければならない」および、2009年3月30日に日本の主要メディア幹部を集めて行われた懇談会で李長春が「友好的な」報道の要請をしたことを紹介した上で、その演説に見事なまでに追随した制作が同番組だったと主張した[29]。 日英博覧会の表現1910年に開催された日英博覧会で台湾の先住民族・パイワン族の生活を紹介した企画を番組内で、「人間動物園」と表現したことについてNHKは、取材協力者のブランシャール[30] の指摘する英国や仏国の考え方を基として野生動物商人ハーゲンベックの回想録にある独語の言葉を訳し、吉見俊哉の著書[31] を参考にしたとしている[32][33]。しかし朝日新聞は、パイワン族が住む村の村長は「先達が海外で我々の文化を広めたことは村の誇りとして語り継がれている」と話し、又そのような感情を番組で紹介されなかったと報じた[25]。産経新聞は「日本政府がパイワン族の実演を『人間動物園』と呼んだことはない」(訴状)[34][35]、「パイワン族に対する人権問題」(出演者)だとして訂正を求める声が挙った[34][35][注記 2] と報じた。 番組に出演し、「人間動物園」に関連して登場したパイワン族の女性が涙を流しながら話す場面に「悲しいね。この出来事の重さ語りきれない」との字幕が付けられて放送されたが、朝日新聞の取材によると、この女性は「涙を流したのは父親を懐かしく思ったから」「説明もなく突然(NHKが)来て、父親の写真を見せられただけ」と証言しており、番組の発言を専門家が翻訳したところ「何と言えばいいか。(父のことは)よく分からない」と語っていると伝えられた。同紙は、NHKの「発言と字幕は違っていない。見せ物になったこともディレクターが説明した」との反論も合わせて伝えた[25]。産経新聞の取材として、番組に出演したパイワン族は「番組を見るまで人間動物園の言葉を全く知らなかった。(放送された)『かなしいね』などと述べた自分のコメントは、人間動物園に対して(かなしいと)述べたものではなく、(取材者から示された写真の)亡父を見て『かなしい』と語ったものだ」と説明した、と伝えた[36]。 下関条約後の台湾『産経新聞』は、番組で使用された「日台戦争」という用語について、出演した台湾人が「初めて聞く」「思いもよらない言葉だ」と驚いた[37] と報じた。 1938年(昭和13年)に出版された『東洋歴史大辞典[38]』によれば、当該台湾の戦いのことを「台湾の役」(1874年の台湾出兵も台湾の役と表現しており2度目)と表記している。同書によれば台湾民主国は20日間で瓦解し宣戦布告もなく日清戦争の一環として行われたとしている。また日本の公文書では明治廿七八年役の延長という扱いである。なお日本で一般的な呼称は当時の公文書の表記および台湾平定宣言による台湾平定もしくは台湾征討である。 NHK経営委員会の第1095回会議では「日台戦争」について、日本と台湾の戦争という「歴史的事実」がないのなら、あったように内容を放送することは放送法に違反するのではないか、との問いが小林英明委員から出された。応じた日向英実理事(放送総局長)は「歴史的な事実」は年代ごとに様変わりするとして、日華事変が今日では日中戦争と呼ばれていることを例に挙げた。さらに小林委員が「学会で多数説でなく、少数説や異説なら、そう説明するのが正しい放送」だと意見を述べたが、これに日向理事が、一説とは考えていないと答えた[1][39][注記 3]。 日本李登輝友の会の抗議声明に対する平成21年4月14日付NHKエグゼクティブ・プロデューサー河野伸洋の名による回答では「日本の専門家が1990年代に名付け」たと説明[40]。後日、プロジェクトJAPANの公式サイトに記されたNHKの説明では、用語は「1995年、『日清戦争百年国際シンポジウム』から使われていました」とし、使用されている文献3点を示した[32][41]。また台湾平定に際して戦闘は苛烈で日本軍の死者が5000人に上った[注記 4] ことに着目している。 一方、産経新聞や「日本李登輝友の会」は、4000人以上はマラリアによる病死であり「戦死」者と言えるのか[注記 4][注記 5]、また国立国会図書館の論文検索でこの用語は見つからず学説と呼べる代物なのか[注記 6]、と指摘する[37][40]。「日本李登輝友の会」の関係者は、「日台戦争」という用語は平成に入って用いられた造語であり、「一部の大学教授が使っているが原典は戦争の定義もしておらず、治安回復のための掃討戦に過ぎない」と批判した[35]。 改姓名・日本語教育・他皇民化運動の事例として創氏改名とともにとりあげられ、改姓には独特の規制があり、役所の昇給の条件であったと紹介された改姓名について、台湾研究フォーラム会長の永山英樹は「1.6%に過ぎず強制でないことは一目瞭然だ」と主張した[8]。 同番組で「漢民族でした」というナレーションとともに紹介された台湾人は「私は漢民族ではない」と明言している[37]。 大高未貴らは、番組に出演したパイワン族の名前を間違えて放送したことを指摘した[42][43]。朝日新聞[25] や『撃論ムック』「NHKの正体」[29] では正しいとされる名前で報じられている。中村粲はこれについて、名前が誤っていても訂正に応じないのであれば、訂正放送条項は死文に等しいではないかと批判した[44]。 『正論』は、番組の「学校や新聞などで中国語を禁止とし、日本語の使用を強要します」との説明について、戦後、国民党が来るまで中国語(北京語)は話されておらず、また、日本語が定着したのは多言語社会の台湾で民族間の共通語となったからであると指摘する[45]。台湾独立建国聯盟主席の黄昭堂は、台湾人意識というものは日本統治時代の日本語教育による各種族間の共通語の確立、通信や交通、経済開発による住民同士の盛んな交流によって形成を容易とし、また台湾独立運動の中で近年生じたものであると指摘している[46]。 騒動に対する批判及び肯定的評価在台ジャーナリストの酒井亨[注記 7] は、パイワン族の出演者を映した場面で漢族風の名前が出ていたことについて、パイワン名を持つはずの住民を漢名で紹介したのだとして番組を批判した[47]。その一点を除けば、批判されているような意図は感じないと述べた。帝国主義という他国も含めた背景が説明され日本はむしろ相対化されており、また、台湾人は親日だが批判者のいうそれとは視座が違うだろうと主張した[48]。 拓殖大学客員教授の岡田充[注記 8] は、経済を中心に日中関係の構築を目指す「21世紀中国総研」[49] で「NHK叩きは台湾総統の馬英九の対中緊張緩和路線が国際社会から高く評価され、かつ日本重視路線を選択したことによって国民党を支持した台湾人を否定した金美齡のような人々とそれと結びつき台湾に単純な親日幻想をいだいる勢力の存在感が薄れてしまい、台湾・国際社会からも孤立し、馬批判ができないことによる代償行為」であると主張し[50]、また台湾においては与党・野党支持勢力も反対運動に関心を持っていないことや、李登輝政権時代にタイヤル族の武装蜂起が台湾人アイデンティティに基づいた抗日運動として評価され出したり、陳水扁政権時代にも麻生太郎が外相時代に植民地時代を正当化したことに反発した事実を伝えた上で、日本統治のプラス面を強調する番組が多い中で負の側面をきちんと取り上げたことはむしろバランスがよいと感想を述べた[50]。これについて台湾研究フォーラム会長の永山英樹は、岡田の言う「孤立」があるとすれば、台湾は馬英九政権以前から国際社会から冷淡な扱いをされてきたのであり、以前からあるものとし「問題は我々の「喪失感」ではなくNHKの歴史歪曲」であるとして「残念ながら岡田氏の想像はまったく正しくない」と反論をおこないつつ、なぜJAPANデビューを擁護する人々は中国の代弁者の類や日本共産党などの左翼の人ばかりなのだろうか、と疑問を呈した[51]。 日本共産党の山下芳生は参議院総務委員会で「非常によい番組だった。(中略)親日的といわれる台湾の人々の心の奥底にある複雑な思いが伝わった。歴史を直視し、互いに共有し、反省すべきは反省もしてこそ相互理解により深い友好関係が構築できると感じた」と感想を述べた[17]。 市民団体「開かれたNHKをめざす全国連絡会」はこの放送に対して疑問を呈した小林委員の発言を非難し、また議連の発足や訴訟、デモなどによって自主自立の姿勢が損なわれないようにと求める意見書を7月7日NHKに提出[17][18][52][53]。同日、日本ジャーナリスト会議も番組批判について「表現の自由そのものに対する恫喝と干渉に当る」などと主張した[18]。 西日本新聞の笠島は番組批判について「嫌な感じなのは元首相を含む国会議員が絡んでいること」などと批判。内容については「「台湾は親日的」との固定観念が問い直され、当時の「同化政策」がチベットやウイグルへの施策と通じる面もあるように感じられた」などと評した[19]。また神保太郎も同様の主張をしたほか、番組が政治的な偏向が理由で放送法上の問題を持つのならば、裁判や抗議運動という政治運動に積極的に関与しているチャンネル桜も同じく問題だろうと述べた[54]。 抗議発生後にNHKが台湾再訪井上和彦の取材によると、番組のチーフプロデューサーとディレクターが抗議発生後に台湾を再訪しており、番組に出演した台湾人に対しNHKへの抗議の撤回を懇願したことが伝えられた[55]。番組に出演した台湾人によると、ディレクター等は2009年6月22日密かに台湾に渡って出演した台湾人の元を訪れ、「身内が巻添えになる恐れ」もあるため抗議の撤回を哀願、更に「たいへんご迷惑をおかけして申し訳ごさいません」と謝罪してきたが、自身からは「私に謝ってもらってもしょうがない。公でちょっと謝ればそれで事態が収るじゃないか」と諭したところ、「それはできません」と返してきたという。井上はこの台湾人の証言が本当ならばNHKの行為は明らかな「隠蔽工作」ではないかと批判し、同時にNHKにこの件に関して質問をすると「放送後、出演された方々に番組の反響をお伝えし、お会いもしましたが、その他、ご指摘のようなことはありません」と回答したという[55]。 産経新聞は10月6日附1面でこのNHKによる台湾再訪、抗議者への抗議の取り下げ要請、抗議を不問に付す文書にサインするよう求めていたことをその文書の写真と共に報道した上で、NHK広報局の「台湾の方々からの抗議や疑問には誠意をもって説明、回答し、理解いただくように努めてきた。出演者にお会いし、納得いただいた場合もある。問題を不問に付すような要求や要請を行ったことはない」とのコメントを紹介している。文書には「NHKに対し『抗議と訂正を求める要望書』に署名・捺印(なついん)しましたが、これは私の意見です」「事実関係や用語に関しては、NHKの説明を聞き、納得しました」「私はNHKに対して抗議する気持ちはありません」と書かれていたと伝えている[56]。 産経新聞はこの問題について、NHKの日向英実放送総局長が10月21日の会見で「放送直後の台湾の方々のリアクションは非常によく、抗議するつもりはないと聞いていた。(後に抗議があり)それまでに聞いていた話を確認したい気持ちでサインをいただいた」と説明した、と報じている[57]。 裁判第1審第1審は3年続いたが、2012年12月14日、東京地方裁判所は原告側敗訴の判決を言い渡した。 それによると「番組の編集はNHKに委ねられており、恣意的な編集はなかった」などとし、原告側の台湾人の「NHKに取材を受けたが発言をねじ曲げられ、期待と違う内容が放送された」に対しては「番組内容への期待は法的に保護されない」としたうえ、「祖先を動物扱いされた」とする台湾人の主張に対しては「歴史的事実として紹介しただけで、原告の名誉を傷つけたとはいえない」と判断している。またNHKは公平な放送をする義務があると訴えた視聴者らの主張についても「視聴者ら個人に対する義務は負わない」としており、全面的に原告側の主張は退けられている[58]。 第2審第2審では原告のうち42人が控訴した。2013年11月28日、東京高等裁判所は1審判決を破棄し、NHKに「番組で祖先を動物扱いされた」と主張していた原告女性1名に対して100万円の損害賠償を命じる判決を言い渡した。 判決では、「人間動物園」は「当時は使われておらず、新しく使われ始めた言葉」と指摘。「被控訴人(NHK)がパイワン族の展示は『見世物』で『人間動物園』と同義と主張しているが、日本を代表する見世物である歌舞伎を『人間動物園』と表現することが出来ないことは当たり前である」「『見世物』であったと主張するならば『見世物』と表現すれば良かったものを、それでは平凡すぎて衝撃度が少ないからあえて『人間動物園』としたところに被控訴人の主張の破綻がある。」「一部の学者が唱える言葉に飛びつき、人種差別的な意味合いに配慮せずに番組で何度も言及した」と名誉毀損・民族差別であると批判した。その一方で他の原告の主張については「日本に好意的な台湾の人やパイワン族の人に不快な気持ちを生じさせたと推測できる」としながらも、視聴者らの具体的な権利を侵害したとまではいえないとして控訴を棄却した[59]。訴訟の中心人物として活動した華阿財は、高裁判決を「不満だが、受け入れる」とコメントした[60]。 上告審NHKは判決を不服として上告。2016年1月21日、最高裁判所第1小法廷はNHKの主張を認める。 「かつてそういう歴史があったと述べられただけで、原告親族への名誉毀損があったとは認められない」[61][62]として、原告逆転敗訴で幕を閉じた。 経緯
脚注注記
出典
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