あいの風とやま鉄道
あいの風とやま鉄道株式会社(あいのかぜとやまてつどう、英: Ainokaze Toyama Railway Co., Ltd.)は、富山県富山市に本社を置く、第三セクター方式の鉄道事業者(第三セクター鉄道)である。 概要北陸新幹線の長野駅 - 金沢駅間が延伸開業する際、西日本旅客鉄道(JR西日本)から並行在来線として経営分離される北陸本線の富山県内区間にあたる倶利伽羅駅 - 市振駅間において運営を担う鉄道事業者として[4]、富山県および富山市をはじめとする県内全15市町村に加え、北陸電力、北陸銀行、インテック、YKK、富山地方鉄道などの出資によって、2012年(平成24年)7月24日に「富山県並行在来線準備株式会社(とやまけんへいこうざいらいせんじゅんび)」として設立された。 社名は、一般公募によるもので、2012年12月10日から2013年(平成25年)2月15日まで公募を行った結果、応募総数5,380件の名称案が寄せられた。選考の結果、高岡市在住の主婦が応募した「あいの風とやま鉄道株式会社」を採用し、同年5月29日の取締役会で決定[5][6][7]、6月下旬の定時株主総会で定款変更を決議の上、同年7月1日付で商号を変更した[8][9][10]。 社名に冠された「あいの風」とは、日本海沿岸で春から夏にかけて沖から吹く北東の風の富山県内での呼び名で「あゆのかぜ」「あえのかぜ」とも呼ばれており[11]、古くから豊作や豊漁を運ぶ風として県民に親しまれている。この「あいの風」を県域東西を横断する路線に見立て、県民に豊かさや幸せを運び届け、かつ県民に「愛」される鉄道を目指すという経営理念を表している[12]。なお、あいの風とやま鉄道の社名およびロゴマークは、ともに登録商標となっている(社名:登録番号5669367、ロゴマーク:登録番号5706512)。 沿革→路線の沿革については「あいの風とやま鉄道線 § 歴史」を参照
路線
2015年(平成27年)3月14日の北陸新幹線の金沢延伸と同時に、並行在来線富山県内区間を継承して開業した[23]。 以前は北陸本線の一部であった区間で、北陸新幹線の延伸開業に際しJR西日本から経営分離された。営業上の境界駅となる石川県河北郡津幡町の倶利伽羅駅と、新潟県糸魚川市の市振駅は、それぞれIRいしかわ鉄道とえちごトキめき鉄道の管理駅で、両駅を除く富山県内所在の20駅(2018年3月17日現在。JR貨物管理の富山貨物駅は含まない)があいの風とやま鉄道の管理下に置かれる[39][40]。鉄道資産上の経営区間は石川県境から新潟県境までの98.7kmである。 北陸新幹線の延伸開業時には、富山駅を中心に新幹線や沿線各駅で接続する路線との連絡を考慮し、かつ通勤・通学需要に合わせたダイヤが編成され、各駅に停車する普通列車に加え、快速列車として、金沢駅 - 富山駅 - 泊駅間で「あいの風ライナー」が平日に、座席指定制(ライナー料金が別途必要)で設定された[注 1]。2016年3月26日改正時点で、平日に下り3本、上り2本が運行され、土曜・休日は全便運休となる。特急列車等の優等列車は設定されていない[22]。 IRいしかわ鉄道とは金沢駅 - 倶利伽羅駅 - 富山駅間で相互直通運転を実施するほか、平日朝に城端線から高岡駅 - 富山駅間を直通するJR西日本の列車が存在する。また、泊駅 - 市振駅間については、えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインからの列車が大半であり、泊駅で系統を分断している。ただし朝夕の1往復に限り、あいの風とやま鉄道の車両が糸魚川駅まで乗り入れる。このため、直通運転実施事業者はJR西日本、えちごトキめき鉄道、IRいしかわ鉄道の3社となっているが、JR西日本については片乗り入れとなっている。 運行管理・指令業務・乗務員・旅客案内移管3年目となる2017年3月末より、旧北陸本線で一体となっていた指令システムを自社独自のシステムへ移行し、自社で業務を行っている[41]。これに伴い、同年4月1日より新旅客案内システムを導入し、「各駅独自の接近・入線メロディ(富山駅と高岡駅については独自の発車メロディも設定)を設定・実施している[29][30][42][43][44]。 開業当初の2年間については、運行管理と指令業務はJR西日本金沢支社の金沢総合指令所において、当社が自社路線とあわせ、IRいしかわ鉄道とえちごトキめき鉄道から業務を受託し、金沢駅 - 直江津駅間にわたってIRいしかわ鉄道線・あいの風とやま鉄道線・えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインの計3路線の指令業務を行った[31][39]。 車掌、運転士等の乗務員は、全てJR西日本の旧・富山運転センターを引き継いだ「あいの風運転管理センター」に所属している。乗務範囲は、会社の管轄を越え、IRいしかわ鉄道の金沢駅 - えちごトキめき鉄道の糸魚川駅間となっている。 駅名標沿線の大部分の南側が立山連峰、北側が富山湾を望む立地にちなんで、ホーム上に設置する駅名標のデザインは、山側は富山県の豊かな自然を表現したグリーンを、海側は富山湾の神秘さを表現したブルーを、それぞれメインに使用したデザインとしている[45][46]。この山側をグリーン、海側をブルーをメインとしたデザインは、後述の521系電車のカラーリングにも反映されている。 管轄駅のうち、高岡駅の城端線ホームに設置されている駅名標については引き続きJR西日本デザインのものが使用されているが、JR西日本のロゴ、あいの風とやま鉄道のロゴどちらも当該の駅名標には使われていない。 城端線と氷見線の移管JR西日本の城端線と氷見線について、富山県や沿線自治体などで構成する「城端線・氷見線再構築検討会」が2023年10月23日に、両線の運行主体をJR西日本からあいの風とやま鉄道に移管することで正式に合意した。あいの風とやま鉄道社長(当時)の日吉敏幸は、1日フリーきっぷの対象に両線が加わる可能性を指摘した。具体的な移管時期は未定である[47]。なお、並行在来線を運営する第三セクター鉄道が並行在来線以外の路線を運行するのは初めてとなる。 運賃・料金・きっぷ旅客運賃2015年の開業時点では、開業後5年間は激変緩和処置として、普通と通勤定期はJRの1.12倍、通学定期はJRの1.03倍とし、6年目以降、普通と通勤定期はJRの1.19倍、通学定期はJRの1.05倍に設定する計画であった[39][40]。実際には、開業後8年間は普通と通勤定期はJRの1.12倍、通学定期はJRの1.03倍とし、9年目以降、普通と通勤定期はJRの1.19倍、通学定期はJRの1.05倍に設定することになった[48]。 普通旅客運賃大人普通旅客運賃(小児は半額・10円未満切り上げ)。営業キロの1km未満は切り上げ(2023年4月1日改定)[49][50]。 なお、2018年(平成30年)3月17日の高岡やぶなみ駅開業までは初乗り運賃の適用区間がなかった[51][52][注 2]。
料金なお、特急料金の設定はない。 乗車券発売範囲・連絡運輸あいの風とやま鉄道で取り扱う乗車券の発売範囲・連絡運輸については、区間・駅によって範囲が異なっている[53][40][49]。なお、普通乗車券の小児運賃は大人運賃から半額であるが、JR線が関係する場合のみ10円未満切り下げ、その他は10円未満切り上げとしている。 凡例
自社・JR西日本・IRいしかわ鉄道・えちごトキめき鉄道普通乗車券・定期乗車券については下表の通りとなっている。回数券については自社線各駅相互間のみの発売である[53]。
富山地方鉄道富山地方鉄道との連絡運輸については、下表に示す各駅相互間の普通片道乗車券のみ発売する[53]。往復乗車券は購入できない。
当社線を挟むJRの通過連絡運輸JR各社ではあいの風とやま鉄道線を通過する通過連絡運輸として、以下のものを設定している[54]。
このほか「青春18きっぷ」、訪日外国人旅行者向けの「ジャパンレールパス」については通過利用の特例が設定され、富山駅から高山本線へ、高岡駅から氷見線・城端線へ乗り継ぐ際に富山駅 - 高岡駅間、「青春18きっぷ」の場合は加えて津幡駅から七尾線へ乗り継ぐ際に高岡駅 - 倶利伽羅駅 - 津幡駅間の普通・快速列車(普通車自由席)を追加運賃なしで利用することができる。ただしあいの風とやま鉄道線で途中下車が認められるのは富山駅と高岡駅のみで、この2駅以外の途中駅で下車する場合、またはこの2駅以遠の各駅を利用する場合はあいの風とやま鉄道線またはIRいしかわ鉄道線の乗車区間の運賃が別途必要となる[55]。 乗継割引利用者の負担軽減を図るため、JR西日本、IRいしかわ鉄道、えちごトキめき鉄道との乗継割引が導入されている。 JR西日本割引対象区間は以下の通りである。割引の設定に当たっては「運賃の上昇は20%までに抑える」「同じ区間は同一の運賃にする」というルールに基づき、乗降駅ごとに最大で150円、最小で10円を割り引いている[56]。開業当初は、あいの風とやま鉄道、JR西日本両者が乗継割引を実施していたが、現在はあいの風とやま鉄道側のみが割引を実施しているため、両者にまたがる運賃は、実質的な値上げとなった。
乗継割引に伴う運賃の逆転現象2015年3月のあいの風とやま鉄道開業時点で、あいの風とやま鉄道線越中大門駅と、氷見線越中中川駅・城端線新高岡駅相互間は本来の運賃はあいの風とやま鉄道線の210円とJR線区間の140円を合算した350円であった(いずれも当時の運賃、以下同様)が、乗継割引の適用により、あいの風とやま鉄道線の区間が80円引き、JR線の区間が70円引きとなり、実際に支払う運賃は200円であった。 これは、高岡駅 - 越中大門駅相互間(3.6km)の本来の運賃210円よりも低廉となり、越中大門駅から乗車した場合、乗継割引が受けられる越中中川駅や新高岡駅の運賃よりも、その手前にある高岡駅の運賃が高くなるという逆転現象が生じていた。 同様の現象はこのほか、西高岡駅 - 越中中川駅・新高岡駅相互間と西高岡駅 - 高岡駅間相互間(5.6km)の小児運賃でも見られ、前者がJRの制度に合わせ割引後の大人運賃210円から半額・10円未満切り下げとして、100円となるのに対し、後者が110円(大人運賃210円から半額・10円未満切り上げ)となっていた。 その後、ICOCAのエリアを城端線高岡駅 - 新高岡駅間に拡大した2017年(平成29年)4月15日に、あいの風とやま鉄道が当該区間に特定運賃を設定したことで、逆転現象は解消され[32][56]、2018年(平成30年)の高岡やぶなみ駅開業時にも同様の現象が発生する区間に特定運賃を設定している[52]。 2019年10月1日改定運賃では乗継割引に伴う運賃の逆転現象が解消されたため設定がなくなり、通常の普通運賃が適用されている[49][57]。
IRいしかわ鉄道
えちごトキめき鉄道
途中下車101km以上の区間の乗車券についてはJRと同様有効期間が2日間となり、後戻りしない限り何度でも途中下車が可能である。 他社線との連絡乗車券についても他社線の距離と合算し101km以上であれば途中下車は可能である。 ICカードあいの風とやま鉄道では県外客の利便性を考慮し、開業12日後の2015年3月26日から、自社管轄となる石動駅 - 越中宮崎駅各駅間相互間で、JR西日本のICカード乗車券「ICOCA」のサービスを開始した[24]。現在は、他社も含めた利用可能エリア拡大に伴い、自社線では市振駅を除く全駅がエリアとなっている[58]。 これにより、SuicaやPASMOなど全国相互利用サービスを実施している10種類の交通系ICカードが利用可能となっている。カードは石動、高岡、小杉、富山、滑川、魚津、黒部、泊の各駅の窓口と2020年10月1日からは自動券売機でも発売している。チャージは各駅の自動券売機と西高岡、高岡やぶなみ、東滑川、生地、西入善、越中宮崎を除く各駅に設置されているチャージ機でも取り扱っているほか、SMART ICOCAのクイックチャージにも対応している(SMART ICOCAで現金でのチャージは3000円以上に限られる)[59]。 開始当初は乗車券機能のみの運用であったが、2016年(平成28年)2月27日の自社オリジナルデザインICOCA「Ainokaze ICOCA」の発売[注 4]にあわせ、サービス開始の段階では対応していなかったカードの払い戻し等の手続き、定期券、小人運賃用の「こどもICOCA」のサービスが開始された。加えて、2017年(平成29年)4月15日からは、利用可能エリアの「富山エリア」から「石川・富山エリア」への拡大に合わせ、新たにエリアとなったJR西日本およびIRいしかわ鉄道とのIC連絡定期券のサービスを開始した。 なお、IRいしかわ鉄道線と相互直通運転を行うハピラインふくい線もICOCA対応エリアであるが、ハピラインふくい管轄駅と、当社管轄駅間相互間でのICカードによる乗車はできない。
障害者割引身体障害者手帳・療育手帳または精神障害者保健福祉手帳を駅窓口で提示することで、本人(障害の程度によっては本人および介護者)の運賃が5割引となる。 特別企画乗車券あいの風とやま鉄道線内のみで利用できる特別企画乗車券として、下記の乗車券を発売している。いずれも管内の有人駅16駅で発売する。
なお、泊駅では2017年4月1日からえちごトキめき鉄道の特別企画乗車券「トキめきホリデーフリーパス」(2020年4月1日からは「トキ鉄ツアーパス」に変更)の取り扱っているが、自社線内は有効区間に含まれていない[62][63]。このほか、沿線各地の祭り・催事などに合わせた割引乗車券が発売されている。 車両開業に際し、JR西日本から営業用・除雪用として下記の車両をそれぞれ譲受した。譲受日はすべて2015年3月14日付である[注 6]。営業用車両の大半は金沢総合車両所の所属車両の一部、除雪用車両は敦賀地域鉄道部所属車両の一部を譲受したものである[39][40][65][注 7]。なお、あいの風とやま鉄道線は全線交流電化であるものの、保有する電車はすべて交直流電車である。ただし交直切換スイッチは固定されておらず、そのまま直流区間も走行できる。2024年から検査は直流区間にあるJR西日本吹田総合車両所で行われており、当社保有の521系が吹田総合車両所に自走(伴走車はJR西日本金沢車両区敦賀支所の521系)で入場している[66]。
検測車あいの風とやま鉄道は自社の検測車を保有していない。JR西日本から引き継いだ路線のため、検測車はJR時代に引き続きJR西日本のキヤ141系気動車、DEC741形気動車が入線するが、泊駅 - 市振駅間はJR東日本キヤE193系気動車も入線する。 今後の増備・改造車両
共同使用駅
駅の設備みどりの窓口は沿線市町村で各1駅ずつ存続することとなり、石動、高岡、小杉(北口のみ)、滑川、魚津、黒部、入善、泊の各駅ではJR西日本指定旅行会社の営業所扱い(富山県知事登録 2種 285号)で、あいの風とやま鉄道が引き継いで運営している[84]。一方で、同一市内に設置駅がある福岡駅、越中大門駅、呉羽駅、東富山駅については廃止された。 クレジットカードは開業当初は定期券の購入時以外使用できなかったものの、2017年4月1日よりJR線きっぷの購入にも利用できるようになった[85][注 8]。なお、e5489、えきねっとなどJRのインターネット予約サービスで予約されたきっぷ類の発券はできない。また、あいの風とやま鉄道の窓口以外で発行されたきっぷ類の変更、払い戻しもできない[注 9](現金購入のみ可能)。 JR西日本系の売店・コンビニエンスストアは2015年2月28日をもって営業を終了しており、継承されていない[86][87][注 10]。あいの風とやま鉄道では駅構内の売店を運営する企業との交渉を進めている。 出資比率富山県と県内全15市町村、民間企業25社が出資している。比率は県が全体の63%、市町村が計27%、北陸電力、北陸銀行、インテック、YKK、富山地方鉄道などの民間企業が計10%を占める[3]。 市町村別の出資比率前述した全体の27%を占める県内15市町村出資分の自治体別出資比率は下記の通りである。
マスコットキャラクターマスコットキャラクターは、「あいの助」である。 脚注注釈
出典
関連項目外部リンク
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