アルミード (映画)
『アルミード』(仏語:Armide、あるいはAria : Enfin il est en ma puissance)は、1987年(昭和62年)製作・公開のイギリスのオムニバス映画『アリア』の一篇として、ジャン=リュック・ゴダールが監督した短篇映画である。 概要
作曲家ジャン=バティスト・リュリが、詩人・俳優のフィリップ・キノーとともにつくった叙情悲劇『アルミード』(1686年)をもとに、ゴダールは、ちょうど300年後の1987年当時の現代、この物語をスポーツ・センターを舞台に描いた[1]。 リュリの『アルミード』は、もともとイタリアの詩人トルクァート・タッソが1575年に書いた叙事詩『解放されたエルサレム』を下敷きにしている。タッソにおけるアルミーダは魔女で、ムスリムと闘うキリスト教徒の十字軍の騎士たちを誘惑する。タッソは、アルミーダのモデルを、古代ギリシアの詩人ホメーロスが紀元前8世紀、叙事詩『オデュッセイア』に描いた魔女キルケーに求めたとされる。 18世紀の舞踏家ジャン=ジョルジュ・ノヴェールにも、『ルノーとアルミード』(ミラノ 1775年 - ロンドン 1782年)という著作があり、作曲家クリストフ・ヴィリバルト・グルックにも『アルミード』(1777年)というオペラ作品がある。ロシアの作曲家ニコライ・チェレプニンはバレエ『アルミードの館』(1908年)を書いており、初演はアンナ・パブロワとヴァーツラフ・ニジンスキーである。ジャン・コクトーにも戯曲『ルノーとアルミード』(1943年)がある。 ゴダールによる本作は、2,800年前の魔女キルケーに始まる「アルミード」の歴史を変奏するものである。それと同時に、ジガ・ヴェルトフ集団時代の『勝利まで』(1970年)、アンヌ=マリー・ミエヴィルとの『ヒア & ゼア こことよそ』(1974年 - 1976年)、『レフューズニクたちへの祈り』(2006年)、『ゴダール・ソシアリスム』(2010年)と延々かかわりつづけるパレスチナの問題への1980年代的展開でもある。 スタッフ
キャスト
ストーリー1987年、ジャン=バティスト・リュリが叙情悲劇『アルミード』を発表した時代から、ちょうど300年が経過した現代。多くの若者たちが、スポーツ・センターで身体を鍛えている。そこに清掃作業に現れた若い女は、ボディビルダーの一群のなか、筋骨隆々、上腕にタトゥーをした1人の若者に惹かれる。若者は、女がその肉体に触れても、作業着一枚を脱いで全裸になっても、若い女に気づかないのだ。やがて女の心に怒りが沸き起こり、若者の背中にナイフをふりかざす。 関連事項註外部リンク |