『善人長屋』(ぜんにんながや)は、西條奈加による日本の時代小説シリーズ[1][2]。2012年より刊行されており、既刊3巻。
表向きは善人だが裏稼業を持つ「善人長屋」の住人たちが、すご腕を生かして事件を解決していく様を、人情、コメディー、サスペンスを織り交ぜて描く。
尾瀬あきらの作画によるコミカライズが、『ビッグコミックオリジナル』(小学館)にて、2018年13号から2020年17号まで連載された。
NHK BSプレミアム・BS4K「BS時代劇」でテレビドラマ化され、2022年7月8日から8月26日まで放送された(後述)[3]。
2023年12月24日から2024年2月18日までNHK総合で再放送された[4]。
登場人物
主要人物
千七長屋(善人長屋)の住人。
- お縫(おぬい)
- 「善人長屋」の差配の娘。17歳。末っ子。
- 茶問屋の婿養子になっている兄と既に嫁いだ姉がいる。
- 加助(かすけ)
- 錠前屋。32歳。長屋に新しく入った店子。正真正銘の「善人」。
- お縫は儀右衛門から錠前破りの凶状持ちと聞いていたが、それは別人の間違いと判明する。
- 妻・お多津と幼い娘・おたまを火事で亡くしたと思っていたが、生きていると判明。
- 儀右衛門(ぎえもん)
- 「善人長屋」の差配。質屋「千鳥屋」も営む。裏では故買もやっている。
- 唐吉(とうきち)
- 長屋の店子。22歳。美人局で稼いでいる。
- 文吉(ぶんきち)
- 唐吉の弟。19歳。兄と一緒に仕事をし、長屋に暮らしている。「おもん」という美女に変装することができる。
- 半造(はんぞう)
- 長屋の店子。髪結い床をしている。狸顔のため、店は「狸髪結」と呼ばれている。
- 裏の稼業は情報屋。
- 安太郎(やすたろう)
- 長屋の店子。小間物のかつぎ売り。裏稼業は巾着切り(スリ)。
- お俊(おしゅん)
- お縫の母。器量が良く色気がある。
- 庄治(しょうじ)
- 長屋の店子。下駄の振り売り。耕治たちの父。裏の稼業はコソ泥。
- 耕治(こうじ)
- 庄司の息子。11歳。強情だが父と双子の妹を思いやる。2人の姉は奉公に出されている。
- 梶新九郎(かじ しんくろう)
- 28歳。上野の小藩出の侍。代書屋。裏の稼業は偽の証文や手形の作成。お縫の友人の娘たちから大人気。
お縫の関係者
- 倫之助(りんのすけ)
- 23歳。お縫の兄。母親似。日本橋本町の茶問屋「玉木屋」に養子に入り、既に主人の役目を果たしている。
その他
- 浜屋長兵衛(はまや ちょうべえ)
- 神田で小さな塩物問屋を営んでいる。安太郎とはスリ仲間だった。
- お小夜(おさよ)
- 長兵衛の娘。
- 乾物問屋「玄海屋」の若旦那との祝言間近になって、恋人との交際と既に妊娠3ヶ月を越えていることが発覚する。
書誌情報
- 善人長屋(2012年9月28日発売、新潮文庫、ISBN 978-4-10-135774-4)
- 閻魔の世直し: 善人長屋(2015年9月27日発売、新潮文庫、ISBN 978-4-10-135775-1)
- 大川契り: 善人長屋 (2018年6月28日発売、新潮文庫、ISBN 978-4-10-135777-5)
- コミカライズ
テレビドラマ
2022年7月8日から8月26日までNHK BSプレミアム・BS4K「BS時代劇」枠で放送されたテレビドラマ[3][2]。主演は連続ドラマ初主演となる中田青渚[3]。西條奈加の作品としては、初の映像化となる[2]。
2023年12月24日から2024年2月18日までNHK総合で再放送された[4]。
あらすじ
キャスト
主要人物
- お縫(おぬい)
- 演 - 中田青渚(幼少期1:西冨あさ希[5]、幼少期2:米村莉子)
- 主人公。生来の勘の鋭さで、初対面の相手が善人か悪人かを瞬時に見分けることができる。
- 思い付いたことをそのまま言ってしまうなど率直だが、困っている人を見捨てられない優しい性格。
- 加助(かすけ)
- 演 - 溝端淳平[3][2]
- 錠前職人。正真正銘の善人。「善人長屋」に人違いで入居してしまう。
- 人助けが生きがいで、街中で困っている人を見つけては連れ帰り、長屋の住人に助けを求める。
- 疑うことを知らないため、長屋の住人の裏稼業には全く気が付いていない。
- お俊(おしゅん)
- 演 - 高島礼子[3][2]
- お縫の母。きっぷのいい性格。加助の人助けを手伝うよう、長屋の住人をとりなす。
- 回りくどいことは嫌いだが、様々な立場の相手に優しく寄り添うことができる。
- 儀右衛門(ぎえもん)
- 演 - 吉田鋼太郎[3][2]
- お縫の父。長屋の差配[注 1]。質屋「千鳥屋」を営んでいる。裏稼業は盗品をさばく系図買い屋(故買屋)。
「千七長屋(善人長屋)」の店子
- 梶新九郎(かじ しんくろう)
- 演 - 上地雄輔[7]
- 代筆屋。長屋唯一の武士(浪人)。裏稼業は贋作作り。色男で、女が絶えることがない。
- 文吉(ぶんきち)
- 演 - 溝口琢矢[7](少年期〈小瓢〉:三上来輝)
- 兄・唐吉と共に季節の物の売り歩きをする。裏稼業は美人局。
- 憎まれ口をたたき、お縫とよく言い合う。「おもん」という美女になりすますことができる。
- 唐吉(とうきち)
- 演 - 蕨野友也[7](少年期:岩下零時[8])
- 文吉の兄。生意気な態度の文吉をよくたしなめるが、実は弟思い。棒術を得意とする。
- 庄治(しょうじ)
- 演 - 山崎樹範[7]
- 下駄売り。裏稼業は腕っこきの盗人。加助の人助けにも気楽に付き合う。
- 耕治(こうじ)
- 演 - 藤原颯音
- 庄治の息子。
- 安太郎(やすたろう)
- 演 - 山田純大[7]
- 小間物売り。裏稼業は掏摸(スリ)。男気のある人物。
- お竹(おたけ)
- 演 - 美保純[7]
- 菊松の妻。夫婦で煮豆を売っている。裏稼業は夫婦で騙り(詐欺)を行う。お縫のことを可愛がっている。
- 菊松(きくまつ)
- 演 - 徳井優[7]
- 妻思いの優しく小柄な男。昔、自分たち自身が騙りの被害にあった過去を持つ。
- 半造(はんぞう)
- 演 - 柳沢慎吾[7]
- 髪結い。裏社会に精通した情報屋で、情報収集能力には長屋の面々からも一目置かれている。
ゲスト
第1話
- 磯太郎(いそたろう)
- 演 - 加藤諒[7]
- 日本橋の乾物の大問屋・伊勢屋の若旦那。お小夜を見初めて、縁談を強引に迫る。
- お小夜(おさよ)
- 演 - 畑芽育[7]
- 長兵衛の娘。
- 伊勢屋との縁談が進む中、巳之助との子の妊娠が分かり、悩んで身投げをするが、加助と安太郎に助けられる。
- 浜屋長兵衛(はまや ちょうべえ)
- 演 - 宮本充
- 神田で塩物商いをしている。安太郎とは昔の仲間。
- 仕入れ先である伊勢屋から縁談を断れば、今後の取引は断ると言われ困惑している。
- 巳之助(みのすけ)
- 演 - 福本鴻介
- 仏具職人。お小夜の思い人。伊勢屋との縁談があると知り、お小夜の幸せを考え、身を引き姿を隠す。
- 安積の治五郎(あさかのじごろう)
- 演 - 藤本隆宏[7]
- 「おもん」の計略にかかるが、騙されたと知り善人長屋まで追いかけてくる。
- 治五郎の子分
- 演 - 髙頭祐樹 、ムトコウヨウ、大城麗生
第2話
- お才(おさい)
- 演 - 若村麻由美[7]
- 簪(かんざし)を盗んだ男の情婦。
- お貞(おさだ)
- 演 - 藤野涼子[7]
- 女中。奉公先のお嬢様にいびられ、腹いせに勝手に持ち出した簪を盗まれている。
- 緋鯉の伝八(ひごいのでんぱち)
- 演 - 久保田悠来[7]
- お才の夫をお才を共犯に仕立て上げ殺している。
- お律(おりつ)
- 演 - 宮下咲
- 日本橋室町の醤油問屋・廣國屋のお嬢様。
- 佐竹
- 演 - 鼓太郎[9]
- 同心。お才が名乗り出て、伝八を「履き物屋の亭主殺し」で召し捕っている。
- 質屋の主人
- 演 - 佐藤誓
- 裏稼業は系図買い屋。加助が泥棒簪を探して訪れる。
- 質屋の女主人
- 演 - 米倉紀之子[10]
- お才が盗まれた簪を誰かが売りに来ていないか尋ねて訪れる。
- 伝八の子分
- 演 - 本郷弦
第3話
- 仙場和氏(せんば かずうじ)
- 演 - 玉置玲央[7]
- 新九郎が郷里で因縁のあった男。
- おみち
- 演 - 川島鈴遥[7]
- 新九郎と逢引きしていた。何者かに殺され、新九郎に嫌疑がかかる。
- 榊
- 演 - おかやまはじめ
- 同心。
- 佐吉
- 演 - 山中聡
- 岡っ引き。
第4話
- 相屋吉右衛門(あいや きちえもん) / 三寸の又五郎(さんずんのまたごろう)
- 演 - 神保悟志[7]
- 商人。正体は極悪の詐欺師。
- 彦次(ひこじ)
- 演 - 辻本祐樹[7]
- 三寸の又五郎に騙される商人。
- お雪(おゆき)
- 演 - 今泉舞
- 彦次の妻。
- 弥助(やすけ)
- 演 - 今井隆文
第5話
- 犀香(さいか)
- 演 - 牧島輝[7] (少年期:南出凌嘉[11])
- 本名は三浦斎之介。直矩の小姓だったが、家老たちに暇をだされ、自ら陰間茶屋に行った。
- 病気でもう長くなく、お互いに思い合っている直矩に人目会いたいと願っている。
- 陰間茶屋では、働かされていた文吉(小瓢)を逃がす手助けもしている。
- お濠の方(おごうのかた)
- 演 - 臼田あさ美[7] (少女期:園田あいか[12])
- 苅田家の御台所。噂が一人歩きしていたが、実際には優しく面倒見もよい人柄。
- 犀香を直矩に会わせてくれ、間を取り持ったお縫たちにも礼を述べている。
- 直矩とは姉妹のような関係だが仲は良く、それも夫婦の一つの形だと考えている。
- 苅田直矩(かりた なおのり)
- 演 - 花戸祐介
- 苅田家の当主。体は男性だが心は女性であることをお濠には打ち明けている。
- 苅田直次(かりた なおつぐ)
- 演 - 佐野岳
- 直矩の弟。跡目争いをしており、公儀への工作のため国元から大量の小判を運び込ませている。
- 藤江(ふじえ)
- 演 - 宮地雅子
- 苅田家の中﨟󠄀(女官)。
- 加助の吹く笛に気付き、屋敷の門前までやって来た犀香(斎之介)たちを屋敷に招き入れる。
- 鶴松(つるまつ)〈9〉
- 演 - 周郷一颯[13]
- 苅田直矩の嫡男。
- 役名不詳
- 演 - 大塚航二朗、萩原護、遠藤誠、森野憲一、南武杏輔
第6話
- 沢渡重(さわたり しげ)
- 演 - 佐藤江梨子[7]
- 金貸し。雁金貸しのお重と呼ばれている。証文のトリックを使い金を騙し取る。
- お佳代(おかよ)
- 演 - 桜庭ななみ[7](少女期:新井美羽)
- お縫の姉。次吉との婚礼の後、実家には寄りついていない。お重に金を騙し取られる。
- 次吉(じきち)
- 演 - 加治将樹
- お佳代の夫。お縫の義兄。
第7話
- お多津(おたつ)
- 演 - 小林涼子(最終話)[7]
- 加助の妻。火事で亡くなったと思われていたが、代之吉との繋がりで、今は野州屋に奉公している事が判明する。
- 夜叉坊主の代之吉(やしゃぼうずのよのきち)
- 演 - 勝村政信(最終話)[7]
- 坊主の姿をした残虐非道な悪党。 覚雲(かくうん)という名で祐念寺の住職をしている。
- 昔は七天の頭の子分で、御法度の博打に手を出し、諫めた兄貴分の喜八朗の足を折っている。
- 野州屋喜八朗(やしゅうや きはちろう)
- 演 - 陣内孝則(最終話)[7]
- 昔は七天の頭の子分。代之吉に足を折られた後、頭から手切れ金をもらい一家を辞めている。
- 野州屋はその手切れ金を元手に30数年懸命に働き、築き上げたもの。
- おたま〈3〉
- 演 - 吉川さくら(最終話)[14]
- 加助とお多津の娘。
- 七天の甚兵衛(しちてんのじんべえ)
- 演 - 長江英和(最終話)
- 七天一家の頭。子分の代之吉の裏切りのため、火盗改の御用となった。
スタッフ
放送日程
話数 |
放送日 |
サブタイトル |
演出
|
BSP・BS4K |
NHK総合
|
第1話 |
2022年7月08日 |
2023年12月24日 |
錠前破りの大悪党 |
一色隆司
|
第2話 |
7月15日 |
2024年01月07日 |
泥棒簪
|
第3話 |
7月22日 |
1月14日 |
抜けずの刀 |
岡田健
|
第4話 |
7月29日 |
1月21日 |
嘘つき紅
|
第5話 |
8月05日 |
1月28日 |
犀の子守歌 |
相澤一樹
|
第6話 |
8月12日 |
2月04日 |
雁金貸し |
岡田健
|
第7話 |
8月19日 |
2月11日 |
夜叉坊主 |
一色隆司
|
最終話 |
8月26日 |
2月18日 |
野州屋の蔵
|
NHK BSプレミアム BS時代劇 |
前番組 |
番組名 |
次番組 |
|
善人長屋 (2022年7月8日 - 8月26日 )
|
選・赤ひげ3 (※アンコール放送 2022年9月9日 - 10月21日)
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2010年代前半 (2011年 - 2014年) |
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2010年代後半 (2015年 - 2019年) |
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2020年代前半 (2020年 - 2024年) |
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2020年代後半 (2025年 - ) |
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(*1) 後に地上波で放送。 (*2) アンコール放送。(*3) 一部アンコール放送 カテゴリ |
脚注
注釈
- ^ 所有者に代わって貸家を管理すること。ここでは長屋の管理人を意味する[6]。
出典
外部リンク