本格ミステリ大賞(ほんかくみすてりたいしょう、2001年 - )は、本格ミステリ作家クラブが主催する推理小説の賞[1]。本格ミステリというジャンルの発展のため、年間の最優秀作品(小説部門、評論・研究部門)を表彰している。候補作を全て読んだ本格ミステリ作家クラブ会員の投票によって決まり、選評はすべて公開される[2]。正賞として京極夏彦がデザインしたトロフィーが授与される。
概要
毎年1月末に本格ミステリ作家クラブ会員のアンケートを集計し、予選委員が候補作5作を選定(例年2月に発表)。5月までに会員は候補作を全て読んだ上で、選評を付けて投票し、5月中旬の公開開票式で大賞が決定する。授賞式は6月中旬に行われる。会員の選評は2020年までは雑誌『ジャーロ』(光文社)、2021年からは『紙魚の手帖』(東京創元社)に掲載される。
選考対象は単行本化された作品に限り(評論・研究部門では雑誌などに発表されたものも含む)、短編の優秀作品については、講談社ノベルスから刊行されるアンソロジー「本格ミステリ○○ 20○○年本格短編ベスト・セレクション」の収録作として選出される。
受賞作一覧
小説部門
評論・研究部門
回(年) |
|
タイトル |
作者 |
票数
|
第1回(2001年)
|
受賞
|
『日本ミステリー事典』
|
権田萬治、新保博久
|
10
|
候補
|
『POSシステム上に出現した『J』』
|
円堂都司昭
|
08
|
『ミステリ評論革命』
|
佳多山大地、鷹城宏
|
07
|
『推理作家の出来るまで』
|
都筑道夫
|
04
|
第2回(2002年)
|
受賞
|
『乱視読者の帰還』
|
若島正
|
13
|
候補
|
『ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか?』
|
笠井潔
|
06
|
『『妾の罪』における叙述トリックの位相』
|
小森健太朗
|
04
|
『中国の箱の謎』
|
鷹城宏
|
02
|
『論理の蜘蛛の巣の中で』
|
巽昌章
|
02
|
第3回(2003年)
|
受賞
|
『探偵小説論序説』
|
笠井潔
|
12
|
候補
|
『殺す・集める・読む 推理小説特殊講義』
|
高山宏
|
10
|
『怪奇幻想ミステリ150選』
|
千街晶之
|
06
|
『迷宮逍遙』
|
有栖川有栖
|
03
|
第4回(2004年)
|
受賞
|
『水面の星座 水底の宝石』
|
千街晶之
|
18
|
候補
|
『中国ミステリー探訪』
|
井波律子
|
08
|
『世界の果てのカレイドスコープ』
|
野崎六助
|
02
|
『越境する本格ミステリ』
|
小山正、日下三蔵
|
00
|
『ミステリイは誘う』
|
春日直樹
|
00
|
第5回(2005年)
|
受賞
|
『天城一の密室犯罪学教程』
|
天城一(著)、日下三蔵(編)
|
16
|
候補
|
『子不語の夢』
|
浜田雄介
|
13
|
『探偵小説と日本近代』
|
吉田司雄
|
02
|
『名探偵ベスト101』
|
村上貴史
|
02
|
第6回(2006年)
|
受賞
|
『ニッポン硬貨の謎』
|
北村薫
|
14
|
候補
|
『探偵小説と二〇世紀精神』
|
笠井潔
|
11
|
『ヒッチコック「裏窓」ミステリの映画学』
|
加藤幹郎
|
09
|
『ミステリー映画を観よう』
|
山口雅也
|
01
|
第7回(2007年)
|
受賞
|
『論理の蜘蛛の巣の中で』
|
巽昌章
|
16
|
候補
|
『探偵小説と記号的人物』
|
笠井潔
|
06
|
『刑事コロンボ完全捜査記録』
|
町田暁雄(監修)
|
05
|
『戦後創成期ミステリ日記』
|
紀田順一郎
|
04
|
第8回(2008年)
|
受賞
|
『探偵小説の論理学』
|
小森健太朗
|
10
|
候補
|
『法月綸太郎ミステリー塾 日本編 / 海外編』
|
法月綸太郎
|
09
|
『名探偵たちのユートピア』
|
石上三登志
|
09
|
第9回(2009年)
|
受賞
|
『「謎」の解像度』
|
円堂都司昭
|
13
|
候補
|
『幻影城の時代 完全版』
|
本多正一
|
07
|
『本格ミステリ・フラッシュバック』
|
千街晶之、市川尚吾、大川正人、戸田和光、葉山響、真中耕平、横井司
|
03
|
『探偵小説のクリティカル・ターン』
|
限界小説研究会(編)
|
02
|
『密室入門!』
|
有栖川有栖、安井俊夫
|
02
|
第10回(2010年)
|
受賞
|
『戦前戦後異端文学論』
|
谷口基
|
11
|
候補
|
『英文学の地下水脈』
|
小森健太朗
|
10
|
『アジア本格リーグ』
|
島田荘司(選)【出版企画に対して】
|
03
|
『ミステリ・ジョッキー2』
|
綾辻行人、有栖川有栖
|
03
|
『都筑道夫ポケミス全解説』
|
小森収(編)
|
01
|
第11回(2011年)
|
受賞
|
『エラリー・クイーン論』
|
飯城勇三
|
14
|
候補
|
『現代本格ミステリの研究』
|
諸岡卓真
|
07
|
『物語日本推理小説史』
|
郷原宏
|
04
|
『図説 密室ミステリの研究』
|
有栖川有栖(監修)
|
02
|
『日本探偵小説論』
|
野崎六助
|
01
|
第12回(2012年)
|
受賞
|
『探偵小説と叙述トリック ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか?』
|
笠井潔
|
10
|
候補
|
『謎解き名作ミステリ講座』
|
佳多山大地
|
08
|
『少年少女 昭和ミステリ美術館』
|
森英俊、野村宏平
|
06
|
『乱歩彷徨』
|
紀田順一郎
|
05
|
『ミステリで読む現代日本』
|
野崎六助
|
02
|
第13回(2013年)
|
受賞
|
『本格ミステリ鑑賞術』
|
福井健太
|
12
|
候補
|
『21世紀探偵小説 ポスト新本格と論理の崩壊』
|
限界研(編)
|
05
|
『インド・ミステリ通史の試み』
|
波多野健
|
03
|
『『黄色い部屋はいかに改装されたか 補版』解説』
|
法月綸太郎
|
01
|
『本格ミステリディケイド300』
|
探偵小説研究会(編)
|
01
|
第14回(2014年)
|
受賞
|
『ロジャー・アクロイドはなぜ殺される?』
|
内田隆三
|
11
|
候補
|
『日本推理小説論争史』
|
郷原宏
|
04
|
『エラリー・クイーンの騎士たち 横溝正史から新本格作家まで』
|
飯城勇三
|
03
|
『日本探偵小説を読む 偏光と挑発のミステリ史』
|
押野武志、諸岡卓真
|
02
|
『変格探偵小説入門』
|
谷口基
|
00
|
第15回(2015年)
|
受賞
|
『アガサ・クリスティー完全攻略』
|
霜月蒼
|
21
|
候補
|
『路地裏の迷宮踏査』
|
杉江松恋
|
06
|
『大癋見警部の事件簿』
|
深水黎一郎
|
03
|
「情報化するミステリと映像」
|
渡邉大輔
|
01
|
「ループものミステリと、後期クイーン的問題の所在について」
|
小森健太朗
|
01
|
第16回(2016年)
|
受賞
|
『ミステリ読者のための連城三紀彦全作品ガイド 増補改訂版』
|
浅木原忍
|
09
|
候補
|
『サイバーミステリ宣言!』
|
一田和樹、遊井かなめ、七瀬晶、藤田直哉、千澤のり子
|
04
|
『本の窓から』
|
小森収
|
04
|
『謎と恐怖の楽園で』
|
権田萬治
|
03
|
『乱歩ワールド大全』
|
野村宏平
|
03
|
第17回(2017年)
|
受賞
|
『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』
|
喜国雅彦、国樹由香
|
11
|
候補
|
『現代華文推理系列』全三集
|
稲村文吾(訳)
|
05
|
『ぼくのミステリ・クロニクル』
|
戸川安宣(著)、空犬太郎(編)
|
02
|
『顔の剥奪 文学から〈他者のあやうさ〉を読む』
|
鈴木智之
|
01
|
『鉄道ミステリーの系譜 シャーロック・ホームズから十津川警部まで』
|
原口隆行
|
00
|
第18回(2018年)
|
受賞
|
『本格ミステリ戯作三昧 贋作と評論で描く本格ミステリ十五の魅力』
|
飯城勇三
|
13
|
候補
|
『【「新青年」版】黒死館殺人事件』
|
小栗虫太郎(著)、山口雄也(註・校異・解題)
|
08
|
『江戸川乱歩と横溝正史』
|
中川右介
|
03
|
『乱歩と正史 人はなぜ死の夢を見るのか』
|
内田隆三
|
02
|
『ミステリ国の人々』
|
有栖川有栖
|
01
|
第19回(2019年)
|
受賞
|
『乱歩謎解きクロニクル』
|
中相作
|
09
|
候補
|
『娯楽としての炎上』
|
藤田直哉
|
07
|
『刑事コロンボ読本』
|
町田暁雄
|
03
|
『21世紀本格ミステリ映像大全』
|
千街晶之(編著)
|
03
|
『本格ミステリ漫画ゼミ』
|
福井健太
|
00
|
第20回(2020年)
|
受賞
|
『モダニズム・ミステリの時代 探偵小説が新感覚だった頃』
|
長山靖生
|
10
|
候補
|
『シャーロック・ホームズ語辞典』
|
北原尚彦(文)、えのころ工房(絵)
|
07
|
『探偵が推理を殺す』
|
小田牧央
|
03
|
『短編ミステリーの二百年 1』
|
小森収
|
03
|
『江戸川乱歩新世紀 越境する探偵小説』
|
石川巧、落合教幸、金子明雄、川崎賢子(編)
|
00
|
第21回(2021年)
|
受賞
|
『数学者と哲学者の密室 天城一と笠井潔、そして探偵と密室と社会』
|
飯城勇三
|
09
|
候補
|
『本格ミステリの本流 本格ミステリ大賞20年を読み解く』
|
南雲堂(編)
|
06
|
『シンポ教授の生活とミステリー』
|
新保博久
|
05
|
『書きたい人のためのミステリ入門』
|
新井久幸
|
03
|
『真田啓介ミステリ論集 古典探偵小説の愉しみ I・II』
|
真田啓介
|
[注 1]
|
第22回(2022年)
|
受賞
|
『短編ミステリの二百年1〜6』
|
小森収(編)
|
11
|
候補
|
『犬神家の戸籍 「血」と「家」の近代日本』
|
遠藤正敬
|
05
|
『新世代ミステリ作家探訪』
|
若林踏
|
03
|
『法月綸太郎ミステリー塾 怒濤編 フェアプレイの向こう側』
|
法月綸太郎
|
03
|
『米澤屋書店』
|
米澤穂信
|
00
|
第23回(2023年)
|
受賞
|
『阿津川辰海 読書日記 かくしてミステリー作家は語る〈新鋭奮闘編〉』
|
阿津川辰海
|
09
|
候補
|
『円居挽のミステリ塾』
|
円居挽、青崎有吾、斜線堂有紀、日向夏、相沢沙呼、麻耶雄嵩
|
06
|
『怪異猟奇ミステリー全史』
|
風間賢二
|
05
|
『松本清張推理評論集 1957-1988』
|
松本清張
|
04
|
『シャーロック・ホームズの建築』
|
北原尚彦(文)、村山隆司(絵・図)
|
03
|
第24回(2024年)
|
受賞
|
『ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション 戦後翻訳ミステリ叢書探訪』
|
川出正樹
|
09
|
候補
|
『密室ミステリガイド』
|
飯城勇三
|
05
|
『ミステリ映像の最前線 原作と映像の交叉光線』
|
千街晶之
|
04
|
『現代ミステリとは何か 二〇一〇年代の探偵作家たち』
|
限界研(編)
|
03
|
『妄想アンソロジー式ミステリガイド』
|
探偵小説研究会(編)
|
01
|
特別賞
関連書籍
- 本格ミステリ作家クラブ 編『本格ミステリ大賞全選評 2001―2010』(2010年9月 光文社)
- 南雲堂 編『本格ミステリの本流 本格ミステリ大賞20年を読み解く』(2020年12月 南雲堂)
- 第20回までの本格ミステリ大賞小説部門受賞作・受賞作家についての評論集。本格ミステリ作家クラブ協賛。
注釈
- ^ 品切れ・増刷未定となり会員が候補作を全て読み投票するという賞の方式が困難となったため候補作取り消し[3]。
出典
関連項目
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