公立大学法人公立大学法人(こうりつだいがくほうじん、英: public university corporation)は、公立大学及び公立高等専門学校とその附属学校を設置・運営する法人[注釈 1]。 地方独立行政法人のうち一般地方独立行政法人であって、学校教育法第2条第1項に定める「地方公共団体」に公立大学法人が含まれるため、同条第2項により公立大学法人が設置する学校は「公立学校」にあたる。 概要地方公共団体が直接に大学を設置することは学校教育法により認められており、公立大学を設置、運営するにあたって公立大学法人を設立することが義務づけられているわけではない。しかし、運営を効率化し、投入する税金額を減らす効果があることから、公立大学法人設立が選択される。 公立大学法人の場合、法人理事長が設置する大学の学長を兼任する場合(理事長・学長一体型)だけでなく、地方独立行政法人法第71条第1項のただし書により、法人理事長が学長を兼任せず別に学長を任命する場合(理事長・学長分離型)が認められる。これは、経営効率化のため、一つの法人が複数の大学を設置することが認められているためである[注釈 2]。理事長・学長分離型の場合、理事長は、従来の自治体直営型における首長の立場を代理するような形となることから、経営を重視する観点から、教育経験者以外(主に経営に長けた人物)から起用されることが多い。また、分離型では、学長は法人の副理事長になるものとされる(地方独立行政法人法第71条第7項による)。公立大学法人制度が設けられた初期に設立した法人には理事長・学長一体型が多くみられたが、近年は経営責任を明確化し、経営と学校実務を分離することで不正行為等を起こしにくくするため、法人の定款を変更して理事長・学長分離型に移行するすう勢にある[注釈 3]。 公立大学法人は、地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第70条により、大学又は大学及び高等専門学校の設置及び管理を行うこと(これに附帯する業務を含む)以外の業務を行ってはならないとされている。また、学校教育法(昭和22年法律第26号)附則第5条により、「当分の間、大学及び高等専門学校以外の学校を設置することができない」とされていたが、2017年4月1日施行の法改正(平成28年法律第47号)で、学校教育法附則第5条が削除されるとともに、地方独立行政法人法第77条の2が追加され、「公立大学法人が設置する大学に、当該大学の教育研究上の目的を達成するため、定款で定めるところにより、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、幼保連携型認定こども園又は専修学校を附属させて設置することができる」ようになった[注釈 4][注釈 5]。 他の一般地方独立行政法人と異なり、地方独立行政法人法第68条により公立大学法人の名称にはその名称中に、地方独立行政法人という文字に代えて、公立大学法人という文字を用いなければならない。その他の制約は特にないが、「一法人一大学」の場合は「"公立大学法人"+大学名」を、複数校を運営する法人の場合は「自治体(都道府県)名+"公立大学法人"」を使用するものが多い。 私立学校法による学校法人との関係公立大学法人が導入される以前は、地方公共団体が私立学校法による学校法人を設立して大学の設置・運営を代行させる手法が広く行われたが、そのような「公設民営」で私学として開学したいわゆる公設民営大学が公立大学法人による運営に移行するケースが相次いでいる[1]。 2009年に初めてのケースとして、高知工科大学が学校法人高知工科大学から高知県を設立団体とする公立大学法人高知工科大学へ移管された。2010年には、静岡文化芸術大学が学校法人静岡文化芸術大学から公立大学法人静岡文化芸術大学へ、名桜大学が学校法人名護総合学園から公立大学法人名桜大学へ[2]、それぞれ移管された。また、2012年4月には、鳥取環境大学が学校法人鳥取環境大学[注釈 6] から鳥取県と鳥取市を設立団体とする公立大学法人公立鳥取環境大学へ移管された[3]。2014年4月には、長岡造形大学が学校法人長岡造形大学から長岡市を設立団体とする公立大学法人長岡造形大学へ移管された。2016年4月には、長野大学が学校法人長野学園から上田市を設立団体とする公立大学法人に、山口東京理科大学が学校法人東京理科大学から山陽小野田市を設立団体とする公立大学法人にそれぞれ移管された。また、成美大学が学校法人成美学園から福知山市を設立団体とする公立大学法人に移管され、大学名を福知山公立大学に改称した。2018年4月には諏訪東京理科大学が学校法人東京理科大学から諏訪広域公立大学事務組合を設立団体とする公立大学法人に移管された。千歳科学技術大学は2019年4月に千歳市を設立団体とする公立大学法人に移行した。新潟産業大学も2014年に新潟県と柏崎市に対し公立大学法人への移行を求める要望書を提出している。 さらに、旭川大学及び旭川大学短期大学部のように、地方公共団体が大学設立に関与しておらず純然たる私立学校として設立された大学について、公立大学への移行を私立学校法人が要望する事例も出ている。旭川市により課題整理と検討が行われ、同市議会における公立大学法人設立のための手続きを経た後、旭川大学及び旭川大学短期大学部については、旭川市が2022年9月9日付けで北海道知事から、当該2学校の設置者となる公立大学法人旭川市立大学の設立が認可され、2023年4月の同法人の設立に伴いそれぞれ移管されて公立学校へ移行した[注釈 7]。上記の福知山成美大学の事例と同様に、従前からの私立学校法人(学校法人旭川大学)が公立化対象の2学校以外に高等学校・幼稚園等複数の学校を併設しているため、2023年4月1日に当該2学校を移管した後に残るそれら学校については、同私立学校法人による運営が続けられている(なお、学校法人旭川大学は学校法人旭川志峯学院に名称を変更[注釈 8])。 公立大学法人の一覧都道府県を設立団体とするもの《表の注記》
市を設立団体とするもの
《表の注記》
一部事務組合または広域連合を設立団体とするもの
《表の注記》
複数の地方公共団体を設立団体とするもの
《表の注記》 参考以下の大学については、2022年4月時点において引き続き公営である。しかしなお一部で独立法人化を検討している動きもある。配列は前各項によった。
脚注注釈
出典
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