長崎自動車道(ながさきじどうしゃどう、英語: NAGASAKI EXPWY[1])は、長崎県長崎市を起点とし、佐賀県鳥栖市に至る、延長120.2キロメートル (km) の高速道路(高速自動車国道)である。略称は長崎道(ながさきどう)。
高速道路ナンバリングによる路線番号は、大分自動車道・ながさき出島道路とともに「E34」が割り振られている[2]。
概要
長崎市から佐賀県佐賀市などを経て、九州の交通の要衝である鳥栖JCTに至る高速道路である。1990年に長崎市郊外の長崎多良見インターチェンジ (IC) から鳥栖JCTに至るルートが完成、2004年に長崎市内の起点部が開通して全線開通した。
国土開発幹線自動車道の路線名は、大分自動車道と併せて九州横断自動車道長崎大分線であり、1990年に大村IC - 武雄北方IC間が開通して鳥栖IC - 長崎多良見IC間が1本につながるまでは、長崎自動車道という道路名は長崎県側(大村IC - 長崎多良見IC間)のみで用いられ、佐賀県側の鳥栖JCT - 武雄北方IC間は国幹道名称の九州横断自動車道をそのまま道路名としていた[注釈 1]。現在でも一部で「九州横断道(経由)」の呼称が用いられているケースがある(高速バスわかくす号での車内アナウンスなど)。
法的には長崎市を起点、鳥栖市を終点とするが、前述のような事情もあり、接続する九州自動車道にあわせる形で、終点の鳥栖JCTから起点の長崎ICに向ってIC番号が振ってある(IC番号が終点から振られているのは北陸自動車道や沖縄自動車道などと同様である)。
佐賀県内の一部はコンクリート舗装となっている。
インターチェンジなど
ここではIC番号の表記に合わせて、鳥栖→長崎とする。
- IC番号欄の背景色が■である区間は既開通区間に存在する。施設欄の背景色が■である区間は未開通区間または未供用施設に該当する。未開通区間の名称は全て仮称である。
- バスストップ (BS) のうち、○は運用中、◆は休止中の施設。無印はBSなし。
- IC番号、キロポストは鳥栖JCTからになっている。
歴史
全線4車線化に向けた紆余曲折
鳥栖JCT - 長崎多良見ICまで開通した当初は、嬉野IC - 東そのぎICも暫定2車線で供用していた。後に拡幅工事が実施され、現在、当該区間については上下線とも2車線ずつ(往復4車線)での往来が可能となっている。
長崎自動車道の中で最も遅い2004年3月に開通した長崎多良見IC - 長崎IC(約11.3 km)については、自民党政権下の2009年4月27日に開催された国幹会議にて4車線化拡幅の事業化が決定した。この会議の資料では、総事業費1000億円、費用便益比(B/C)では1.4(すなわち便益>費用)と算出されていた[9]。
しかし、同年8月の第45回衆議院議員総選挙の結果民主党が政権につくと、鳩山政権の掲げる「コンクリートから人へ」の大号令の下に相次いで日本全国の大型公共事業の凍結が打ち出され、補正予算の執行が停止された長崎自動車道の拡幅事業も一転して暗礁に乗り上げた[注釈 3]。これに対し、当時の金子原二郎知事や地元建設業界のほか、身内である民主党長崎県連からも一斉に戸惑いや反対の声があがる事態となった。この拡幅問題については、同じ民主党内でも長崎1区選出の高木義明議員が「拡幅事業は必要」としているのに対し、同4区選出の宮島大典議員は「拡幅事業は不要」と主張するなど、党内での足並みの乱れも以前から指摘されていた[10]。
2012年3月23日、中村法道知事が前田武志国土交通大臣に対して拡幅事業の早期再開と財源確保を求める要望書を提出し、前田大臣も「わかりました」と応じた[11]。4月5日には国土交通省が長崎道を含む凍結6路線の拡幅事業を再開する方針を固め[12]、翌6日には同省から正式に発表された。再開事由について、長崎道以外の5区間については「渋滞解消のため」としているのに対し、長崎道は「安全性の確保」としている[13]。実際に長崎自動車道では、暫定2車線区間の死傷事故率は4車線区間の約2倍となっていた[14]。
ただし長崎道の拡幅が再開決定された区間は、事故の多い長崎芒塚IC - 長崎多良見ICの8.3 kmであり[9]、当初予定されていた全11.3 km区間での事業化には至らなかった。これを受け中村法道知事は「(残りの)3.0 km区間についても早期に事業化がなされるよう、今後とも国に対して強く要望する」と[15]、田上富久長崎市長も「(拡幅が決定された区間の)早期整備とともに、残された区間の4車線化の実現に向けて引き続き国に要望」と[16]、即日それぞれコメントを出している。
その後自民党に政権が移ってからは、知事から国会議員に身を転じた金子原二郎ら県選出の自民党所属議員と地元首長らが連携して長崎多良見IC-長崎ICの整備事業早期再開を再三に渡って陳情[17]、これに対して利便性向上や災害時の代替輸送路機能強化を重く見た国土交通省は2016年6月8日にNEXCO西日本に宛てて同区間の事業認可を行った[18]。くしくも事業認可の2週間前には同区間での正面衝突事故が発生する[19]など、対面通行道路の危険性・脆弱性が露見したばかりであった。その後同区間は2022年(令和4年)3月17日に4車線化され、全線4車線化を果たしている[7]。
路線状況
車線・最高速度
※彼杵川橋 - 東そのぎIC間の約2.6 kmは、2014年3月1日より最高速度が100 km/hに変更された[20]。
サービスエリア・パーキングエリア
- 売店は山浦パーキングエリア (PA) と小城PAを除く、すべてのサービスエリア (SA) ・PAに設置されている。このうち、金立SAと川登SA上り線、コンビニ化されている木場PAと今村PAは24時間営業。
- ガソリンスタンド・レストランは金立SAと川登SA上り線に設置されており、金立SAのガソリンスタンドを除いて24時間営業はしていない。なお、川登SA下り線のガソリンスタンドは現在休止中のため利用不可能となっている。
主なトンネルと橋
- 城原トンネル(東脊振IC - 金立SA):上り線203 m 下り線158 m
- 嘉瀬川橋(佐賀大和IC - 小城PA)
- 小城トンネル(小城PA - 多久IC):上り線435 m 下り線510 m
- 馬神トンネル(多久西PA - 武雄北方IC):上り線609 m 下り線589 m
- 杵島トンネル(武雄北方IC - 川登SA):上り線1,167 m 下り線1,195 m
- 潮見トンネル(武雄北方IC - 川登SA):上り線484 m 下り線517 m
- うれしのトンネル(嬉野IC - 東そのぎIC) : 上り線702 m 下り線683 m
- 不動山トンネル(嬉野IC - 東そのぎIC) : 上り線2,046 m 下り線2,006 m
- 俵坂トンネル(嬉野IC - 東そのぎIC) : 上り線2,656 m 下り線2,610 m
- 日岳トンネル(木場PA - 今村PA): 上り線777 m 下り線780 m
- 中里トンネル(長崎多良見IC - 長崎芒塚IC): 上り線1,474 m 下り線1,507 m
- 平間トンネル(長崎多良見IC - 長崎芒塚IC): 上り線921 m 下り線842 m
- 中尾トンネル(長崎多良見IC - 長崎芒塚IC): 上り線1,697 m 下り線1,686 m
- 日見夢大橋(長崎多良見IC - 長崎芒塚IC): 上り線365 m 下り線373.5 m
- 長崎トンネル(長崎芒塚IC - 長崎IC) : 上り線2,566 m 下り線2,641 m
トンネルの数
区間 |
上り線 |
下り線
|
鳥栖JCT - 東脊振IC |
0 |
0
|
東脊振IC - 金立SA |
1 |
1
|
金立SA - 小城PA |
0 |
0
|
小城PA - 多久IC |
1 |
1
|
多久IC - 多久西PA |
0 |
0
|
多久西PA - 武雄北方IC |
1 |
1
|
武雄北方IC - 川登SA |
2 |
2
|
川登SA - 嬉野IC |
0 |
0
|
嬉野IC - 東そのぎIC |
3 |
3
|
東そのぎIC - 木場PA |
0 |
0
|
木場PA - 今村PA |
1 |
1
|
今村PA - 長崎多良見IC |
0 |
0
|
長崎多良見IC - 長崎芒塚IC |
3 |
3
|
長崎芒塚IC - 長崎IC |
1 |
1
|
合計 |
13 |
13
|
道路管理者
- 西日本高速道路 九州支社
- 久留米高速道路事務所 : 鳥栖JCT - 東脊振IC
- 佐賀高速道路事務所 : 東脊振IC - 嬉野IC
- 長崎高速道路事務所 : 嬉野IC - 長崎IC
ハイウェイラジオ
交通量
24時間交通量(台) 道路交通センサス
区間 |
平成17(2005)年度 |
平成22(2010)年度 |
平成27(2015)年度 |
令和3(2021)年度
|
鳥栖JCT - 鳥栖IC |
47,230 |
47,968 |
51,298 |
44,952
|
鳥栖IC - 東脊振IC |
33,772 |
34,791 |
36,601 |
30,608
|
東脊振IC - 佐賀大和IC |
30,059 |
31,434 |
32,429 |
26,708
|
佐賀大和IC - 小城PASIC |
24,689 |
26,828 |
27,002 |
22,001
|
小城PASIC - 多久IC |
21,452
|
多久IC - 武雄北方IC |
22,121 |
24,397 |
24,746 |
19,110
|
武雄北方IC - 武雄JCT |
17,373 |
20,098 |
20,285 |
15,317
|
武雄JCT - 武雄南IC |
06,788 |
09,918 |
08,714 |
06,811
|
武雄JCT - 嬉野IC |
14,599 |
17,410 |
17,509 |
13,526
|
嬉野IC - 東そのぎIC |
14,635 |
17,276 |
17,460 |
13,824
|
東そのぎIC - 大村IC |
17,214 |
19,616 |
20,249 |
16,596
|
大村IC - 木場PASIC |
21,028 |
24,204 |
25,212 |
21,024
|
木場PASIC - 諌早IC |
23,775
|
諌早IC - 長崎多良見IC |
18,667 |
21,689 |
24,069 |
23,185
|
長崎多良見IC - 長崎芒塚IC |
9,796 |
10,816 |
14,219 |
13,348
|
長崎芒塚IC - 長崎IC |
08,165 |
08,976 |
12,013 |
11,229
|
(出典:「平成22年度道路交通センサス」・「平成27年度全国道路・街路交通情勢調査」・「令和3年度全国道路・街路交通情勢調査」(国土交通省ホームページ)より一部データを抜粋して作成)
2002年度
区間別日平均交通量
- 鳥栖第二IC - 長崎多良見IC(区間平均) : 23,514台(前年度比97.7%)
地理
通過する自治体
接続する高速道路
ギャラリー
脚注
注釈
- ^ 同様の呼称問題は九州新幹線 (西九州ルート)でも起こっている。
- ^ この当時鳥栖ICは九州自動車道の施設で、鳥栖IC - 鳥栖JCT間も九州道として開通した。
- ^ 同様に先の国幹会議で4車線化が決定していた上信越道(信濃町IC - 上越JCT)、館山道(木更津南JCT - 富津竹岡IC)、東海北陸道(白鳥IC - 飛騨清見IC)、阪和道(御坊IC - 南紀田辺IC)、高松道(鳴門IC - 高松市境)も一斉に事業凍結された。
出典
関連項目
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