JR東日本GV-E197系気動車
GV-E197系気動車(GV-E197けいきどうしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の事業用気動車。 概要JR東日本ではこれまで、在来線における砕石(バラスト)の輸送並びに散布には、国鉄から承継した機関車(DD51形・DE10形など)と事業用貨車(ホッパ車:ホキ800形)を用いていたが、いずれの車両も老朽化が進んできたことから投入が計画されたものである[1][2]。砕石輸送だけでなく、入換作業及び回送列車の牽引作業(牽引車)としての利用も想定されている[1][2]。 気動車方式を採用することにより、電化・非電化区間を問わず走行が可能になっている。また、気動車方式にすることによって、機関車・貨車特有のメンテナンス方法や運転操縦を廃し、効率的なメンテナンスが可能となるほか、編成の両端に運転台を有するため、機関車の入換作業が不要となるとしている[1]。 資材運搬を目的とした事業用車両の気動車化は、JR東日本自社開発では初となり[注 1]、鉄道ジャーナリストの松沼猛は、「旅客列車の電車化・気動車化が行われた中で、利用目的が限定的で動力車操縦免許が同一でも運転操作の異なる機関車を淘汰させる流れの一環ではないか」と推察している[3]。 主回路(主変換装置)は三菱電機が担当しているほか[4]、専用のブレーキ制御装置を同社が開発している[5]。 構造砕石輸送用の6両編成は制御機器やエンジン、主回路などを搭載した動力車GV-E197形(Mzc)を編成両端に2両連結し、中間に砕石輸送用のホッパ車GV-E196形(Tz)を4両連結する。 GV-E197形両運転台構造の動力車で、基本的な車体構造は同時期に導入が発表された片運転台構造のE493系電車と同一である。GV-E196形と連結する編成のほか、本形式のみで単車や重連、3重連の運用にも対応している。 車体GV-E197形の車体前面部分は踏切事故対策としてFRP製の衝撃吸収構造とし、警戒色をあらわす黄色にコーポレートカラーであるグリーンとブラックの帯がデザインされている。車体側面は台枠を除いて軽量ステンレス構体を採用し、量産先行車であるTS01編成のみ前面の帯を全周して装飾されているが、量産車であるTS02編成以降は車体側面の装飾が省略されている[6]。 車内に可搬式の機器などを搭載するため、車両全長を営業用車両と同等の21,600mmとし、扉は有効開口幅1,300mmの貨物用側引戸と2,500mmの機器搬入口が両側に一対ずつ、有効開口幅2,000mmの機器搬入口が片側に設けられている[7]。 灯具類はLEDとし、前照灯は上下に2灯ずつ設置され、尾灯は上部に2灯となっている[6]。なお、0番台のみ保守用車専用の列車防護装置発光機(黄色・赤色が1灯ずつ)と制動灯(黄色2灯)が屋根上に設けられている。 側窓は量産先行車では両側に開閉可能な二段窓が計5ヶ所設けられていたが、量産車では計3ヶ所に省略された。 車内に走行機器や主電動機のブロアーが搭載され、ルーバーや機器搬入用の扉が多数設けられることから、フレームや台枠などの強化を施している[6]。床下機器の塗色は灰色に統一されており、濃灰で統一されるE493系とは異なる。 機器・仕様編成単位の運用のみならず、単車や重連などのほかにも異車種との連結も考慮し、自動連結器と密着連結器の双頭型連結器を車両前面に搭載し、電車・客車などとの協調運転を可能にするためのブレーキシステム等を備えている。車両情報管理装置はMON30を採用。 保守用車としての特殊機能を搭載し「保守用車モード」での起動が可能な0番台(1 - 4)、「保守用車モード」非搭載の100番台(101 - 110)、「保守用車モード」が非搭載かつ自動ブレーキ搭載車の被牽引に対応するための読替装置が搭載可能な200番台(201・202)が存在する[6]。 最高運転速度は100km/hとし、起動加速度は1.5km/h/s、最高運転速度からの常用最大ブレーキの減速度は3.6km/h/s。 GV-E196形砕石輸送用のホッパ車。TS01 - TS07編成の中間に4両が連結される。 国鉄ホキ800形貨車の構造を基本に設計されており、GV-E197形と協調運転を行うためのブレーキ制御装置や油圧発生ユニットのほか、散布口周辺にコンベヤ装置と軌間内自動散布機能を新たに搭載しているため[8]、車体長がホキ800形よりも2,400mm延長されている。積載量はホキ800形と同等の30t、18㎥とした。車体は普通鋼製で塗色は灰色、連結器は全車両が密着連結器を採用している[6]。 最高運転速度、起動加速度、減速度共にGV-E197形と同一である。
形式以下の2形式からなり、2両の動力車GV-E197形でホッパ車であるGV-E196形4両を挟んだ6両編成が組成される[1]。
運用2021年1月、量産先行車となるTS01編成が新潟トランシスから高崎車両センター(現・ぐんま車両センター)に回送された[10]。2021年2月には、高崎線の高崎駅 - 本庄駅間で試運転を行い[11]、同年4月に性能試験のため郡山総合車両センターに回送された。その後仙山線や中央本線[12]、2022年には羽越本線、東北本線でも試運転を行っている。 2023年から翌年にかけて量産車が順次投入され、ホッパ車を含む6両編成6本(TS02 - TS07編成)の他、非電化区間の車両の入換作業や回送列車の牽引への使用を目的に、ホッパ車のない牽引車2両(TS08編成)が製造された[1][13]。 2024年4月2日に水郡線西金駅の砕石積込み場から水戸・千葉支社管内への砕石輸送を[14]、同月9日から吾妻線小野上駅からの砕石輸送を開始し[15]、これまでのDE10形ディーゼル機関車およびホキ800形貨車の運用を置き換えた[16]。また2024年秋季には、ぐんま車両センター所属の電気機関車およびディーゼル機関車の引退に伴い、「SLぐんま よこかわ」「SLレトロぐんま横川」の補助動力車として営業運転に投入される予定である[17]。 編成表
GV-E197形は単独走行、重連等が可能、100番台及び200番台は保守用車モードなし、200番台は自動空気ブレーキ被牽引対応[6]。 脚注注釈出典
参考文献
関連項目
外部リンク
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