下町ロケット
『下町ロケット』(したまちロケット)は、池井戸潤による小説およびシリーズ。これを原作にテレビドラマ化・ラジオドラマ化された。 宇宙科学開発機構の研究員だった佃航平が、死んだ父の経営していた中小企業「佃製作所」の社長となり、社員たちと共に奮闘する姿を描く。 概要シリーズ第1作『下町ロケット』は、『週刊ポスト』(小学館)に2008年4月18日号から2009年5月22日号まで連載され、加筆・訂正の後、2010年11月24日に単行本が小学館より刊行された。2013年12月21日には小学館文庫版が刊行された。第145回(2011年上半期)直木三十五賞受賞作品、および、第24回(2011年)山本周五郎賞候補作品。ロケットエンジンのキーパーツであるバルブシステムの開発に賭ける佃製作所の奮闘が描かれる。 2015年10月3日から、シリーズ第2作が『下町ロケット2 ガウディ計画』として朝日新聞に連載され[1][注 1]、2015年11月5日に書き下ろし単行本が刊行された[2]。心臓手術に使用する人工弁「ガウディ」開発に取り組む様子が描かれる。後に、2018年7月に刊行された小学館文庫版では『2』が削除され、『下町ロケット ガウディ計画』と改題された。 2018年7月に、シリーズ第3作となる『下町ロケット ゴースト』が刊行された[3]。2021年9月7日には小学館文庫版が刊行された。 2018年9月に、シリーズ第4作となる『下町ロケット ヤタガラス』が刊行された[4]。2021年9月7日にはゴーストと同じく小学館文庫版が刊行された。 ドラマ化テレビドラマ化→詳細は「下町ロケット (WOWOWのテレビドラマ)」を参照
2011年に、第1作『下町ロケット』がWOWOWの連続ドラマWでテレビドラマ化された。 →詳細は「下町ロケット (TBSのテレビドラマ)」を参照
2015年10月18日からTBSテレビ系の日曜劇場で、第1作と第2作『下町ロケット2 ガウディ計画』がテレビドラマ化された。テレビドラマ放送開始直前の10月3日から朝日新聞に連載された『下町ロケット2』が、6話からの「ガウディ編」として映像化され、新聞連載とテレビドラマの同時進行で描かれた[1]。 また、2018年10月14日から前作と同じくTBSテレビ系の日曜劇場で、第3作の『下町ロケット ゴースト』と第4作の『下町ロケット ヤタガラス』が続編としてテレビドラマ化された[5][6]。 ラジオドラマ化2012年3月20日には、TBSラジオで第1作がドラマスペシャルとしてラジオドラマ化された。 2020年10月5日から2024年9月23日まで九州朝日放送(KBCラジオ)で第1作から第4作がラジオドラマが放送された[7]。 あらすじ
下町ロケット精密機械製造業の中小企業である佃製作所の社長・佃航平は、主要取引先の京浜マシナリーから突然に取引終了の通知を受ける。資金繰りに困り、メインバンクの白水銀行に3億円の融資を申し込むが渋られる。追い打ちをかけるように、今度はライバル会社のナカシマ工業から特許侵害で訴えられて、白水銀行からは融資を断られてしまう。法廷戦略の得意なナカシマ工業が相手では、たとえ勝訴は濃厚でも結局は裁判の長期化だけで資金不足による倒産は避けられそうもない。 そんな時、大企業の帝国重工の宇宙航空部長・財前の訪問を受け、佃製作所が持っている特許を20億円で譲ってくれと持ちかけられる。帝国重工は巨額の資金を投じて新型水素エンジンを開発したが、特許は佃製作所に先を越されていたのだ。航平は元妻・沙耶との会話で、特許譲渡や使用許可ではなく、帝国重工が飛ばすロケットに佃製作所で作った部品を搭載する道もあると思い当たる。しかし、それでは特許使用料が入らないどころかリスクが高過ぎると、特に若手社員の反応は最悪で、特許使用許可か部品搭載の夢か、航平は思い悩む。 一方、部品供給を断るつもりで佃製作所を訪れた財前は、航平に案内されるままに工場を見学し、その技術の高さに部品受け入れもありうると考えるようになる。そんな財前を出し抜きたい富山は水原本部長に取り入り、財前に変わって部品供給のテスト担当者になる。「たかが町工場の部品搭載など」と見下す富山が率いる帝国重工と、部品搭載よりも特許使用料による給与への還元を願う佃製作所の社員との、部品テストが始まった。 下町ロケット ガウディ計画前作から数年後。佃製作所は、また経営の危機に陥っていた。量産を約束したはずの人工心臓用のバルブの取引は試作品段階で打ち切られ、NASA出身の社長・椎名が率いるサヤマ製作所に取引を奪われる。帝国重工とのロケットエンジンの開発でも、サヤマ製作所とのコンペを余儀なくされ、性能では優ったものの、かけひきに敗れ帝国重工との取引ができなくなる危機に直面する。 そんな時、かつての部下の真野から、「ガウディ」という心臓に埋め込む人工弁の開発依頼が持ち込まれる。これが完成すれば、多くの心臓病患者を救うことができるという。しかし、開発に携わる大学教授・一村は、人工心臓開発の中心人物・貴船の弟子で、その妨害によって、開発に必要な実験開始の認可がおりず、資金も尽きて開発中止の窮地においこまれる。 しかし、人工心臓の臨床試験の被験者の急死という事故が、サヤマ製作所がデータ偽装をしたバルブを使っていたからだということが発覚し、サヤマ製作所に警察の捜査が入る。佃製作所の人工弁は、実用化に向けてスタートを切ることができたのだった。 下町ロケット ゴースト前作からまたさらに数年後。佃製作所は三度の危機に直面していた。エンジンを大手農業機器メーカーのヤマタニに納入していたが、この取引が白紙になる。また、主要取引先の帝国重工はアメリカ子会社の3千億円の不正会計による損失によって経営が悪化し、任期満了とこの損失による責任追及も重なり、ロケット打ち上げを推進していた社長の藤間の引退が囁れ、帝国重工との取引がなくなるのも時間の問題となった。また、立て続けに不幸は重なり、今度は経理部長であり実家が農家の殿村の父が心筋梗塞で倒れ、佃製作所と父の農作業を掛け持ちという事態に陥る。 佃は経営難を乗り切る方法を考えている最中、殿村の実家にお見舞いに行った時にこの経営難を乗り切るための秘策として農業への参入を決意。トラクターに使用するトランスミッション製造を目標に掲げ、ノウハウがまだゼロであるため、まずはトランスミッションのバルブ開発へと乗り出すことになる。 ヤマタニから農機具のトランスミッションの開発を受注しているのが元帝国重工社員の伊丹(社長)と島津(副社長)が設立したベンチャー企業、ギアゴーストであることを聞き、同社の受注コンペの参加を表明。軽部、立花、加納によってバルブが開発され、バルブ開発の大手である大森バルブとのコンペに勝利して採用が決定するも、今度はギアゴーストが同業のケーマシナリーから特許侵害で訴えられる。 その後、佃と佃製作所の顧問弁護士・神谷の協力でギアゴーストは裁判に勝利するものの、伊丹の帝国重工への恨みを煽ったダイダロスの社長重田による介入で帝国重工への復讐の鬼と化した伊丹は、佃や島津の承認を得ず、佃製作所のライバル企業である重田のダイダロスと業務提携を結ぶ。伊丹についていけなくなった島津はギアゴーストを退職し、農機具のトランスミッション開発を目指していた佃製作所はギアゴーストに裏切られるという形でまたも窮地に陥ることになる。 帝国重工は最後のロケット打ち上げを終え、財前は宇宙航空部部長から宇宙航空企画推進グループ部長と部署を変え、打ち上げたロケットを利用した農業への参入を宣言。殿村も農家を継ぐため佃製作所に辞表を提出したのだった。 下町ロケット ヤタガラスギアゴーストを退社した島津は佃製作所へ謝罪に訪れており、佃製作所の開発メンバーから慕われた後、その場を去っていった。 佃達は真相を確認するためギアゴーストを訪れるも、とりつく島もなく、伊丹から当初ヤマタニに納めるはずだったトランスミッションについては棚上げされ、別の形でヤマタニの開発に関わると告げられ、決別を言い渡されるのだった。 そんな中、農業参入を宣言した財前から佃に無人農業用ロボットの開発とその開発に必要な技術者であり、佃の大学の同期でもある野木の参加説得に力を貸してほしいと要請が入り、参加を渋る野木を説得して帝国重工、佃、野木は無人農業用ロボットの開発をしていくことになる。しかし、そのプロジェクトを嗅ぎつけた反藤間の筆頭である機会事業部出身の取締役である的場によってプロジェクトが的場直轄のものとなり、エンジンとトランスミッションが佃製作所への外注から内製化へと方針変更となってしまう。 時を同じくして、業務提携を結んだダイダロスとギアゴーストは過去に野木から技術を盗んだキーシンと手を組み、無人農業用ロボットプロジェクト(通称「ダーウィンプロジェクト」)を立ち上げ、マスコミを通じて間接的に帝国重工と的場へ宣戦布告するのだった。的場の重田への過去の仕打ちを暴いた報道で次期社長と見られていた的場の社長就任は延期、藤間が続投することになった。また、ダーウィンプロジェクトと帝国重工のプロジェクトの実質対決の場となったデモンストレーションで完敗した帝国重工は藤間の鶴の一声でエンジンとトランスミッションは当初の予定どおり佃製作所へ外注と再度方針が変更となり、佃製作所は改めて開発を請け負うこととなる。 佃はトランスミッションのスキルが自社にはないことを自覚している為、必死の説得で大学講師のアルバイトをしていた島津を役員待遇で呼び寄せ、トランスミッションとエンジンの開発を進め、ダーウィン以上の性能を持つエンジンとトランスミッションを完成させる。 伊丹、重田は帝国重工の的場への復讐心、佃、島津、財前は日本の農業のため、的場は帝国重工の威厳のため、各思惑が入り乱れる中、帝国重工の無人農業用ロボット(ランドクロウ)とダーウィンプロジェクトの無人農業用ロボット(ダーウィン)は市場に発売された。ランドクロウの売上は芳しくなかったが、ダーウィンの不具合が多数報告されるようになっていき.... 登場人物佃製作所および協力者
帝国重工
対立する弁護士
その他
下町ロケット白水銀行
その他
下町ロケット ガウディ計画医科大学
桜田経編
サヤマ製作所
日本クライン
独立行政法人医薬品医療器具総合機構(Pmea)
下町ロケット ゴーストギアゴースト
ダイダロス
書籍情報
オーディオブックAudibleでオーディオブック化されている。1〜2巻を平川正三[9][10]、3〜4巻を谷田歩が朗読している[11][12]。2018年より順次配信。1巻はAudibleの「2020年オーディオブックランキング」の全体で4位、小説カテゴリで1位にランクインした[13]。 テレビドラマ→三上博史主演作は「下町ロケット (WOWOWのテレビドラマ)」を、阿部寛主演作は「下町ロケット (TBSのテレビドラマ)」を参照
ラジオドラマラジオドラマ(2012年)
2012年3月20日にTBS開局60周年記念ドラマスペシャルとしてTBSラジオで放送された。 キャスト(ラジオドラマ2012年)
スタッフ(ラジオドラマ2012年)ラジオドラマ(2020年)
2020年10月5日から2024年9月23日まで九州朝日放送(KBCラジオ)をキーステーションに全国ネットで放送された。下町ロケット、ガウディ計画編、ゴースト編、ヤタガラス編の各シリーズを1年ずつ、足掛け4年かけて放送された[7]。 2022年6月に主人公・佃航平役の黒木啓司が同年10月末での芸能界引退を発表したため、同年10月開始のゴースト編以降は航平役が岸谷五朗に交代した[14]。 キャスト(ラジオドラマ2020年)
スタッフ(ラジオドラマ2020年)
ネット局(ラジオドラマ2020年)
脚注注釈
出典
外部リンク
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