ライアン・マイケル・マドソン(Ryan Michael Madson, 1980年8月28日 - )は、アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス郡ロングビーチ出身の元プロ野球選手(投手)。右投左打。
経歴
プロ入りとフィリーズ時代
1998年のMLBドラフト9巡目(全体254位)でフィラデルフィア・フィリーズから指名され、6月10日に契約。傘下のアパラチアンリーグのルーキー級マーティンズビル・フィリーズ(英語版)でプロデビュー。12試合(先発10試合)に登板して3勝3敗、防御率4.83、52奪三振を記録した。
1999年はA-級バタビア・マックドッグス(英語版)でプレーし、15試合に先発登板して5勝5敗、防御率4.72、75奪三振を記録した。
2000年はA級ピードモント・ボールウィービルス(英語版)でプレーし、21試合に先発登板して14勝5敗、防御率2.59、123奪三振を記録した。
2001年はA+級クリアウォーター・フィリーズでプレーし、22試合に先発登板して9勝9敗、防御率3.90、101奪三振を記録した。
2002年はAA級レディング・フィリーズでプレーし、26試合に先発登板して16勝4敗、防御率3.20、132奪三振を記録した。オフの11月20日にフィリーズとメジャー契約を結び[1]、40人枠入りした。
2003年3月6日にマイナーへ異動した。開幕後はA+級クリアウォーターとAAA級スクラントン・ウィルクスバリ・レッドバロンズでプレー。AAA級スクラントン・ウィルクスバリでは26試合に先発登板して12勝8敗、防御率3.50、147奪三振を記録した。9月2日にメジャーへ昇格。昇格後は登板機会がなかなか回ってこなかったが、9月27日のアトランタ・ブレーブス戦でメジャーデビュー。3点ビハインドの6回表から登板し、2回を無安打無失点に抑えた[2]。この年はこの1試合の登板にとどまった。
2004年は開幕からメジャー入りを果たし、19試合連続で防御率0.00という素晴らしいピッチングを見せた。7月24日に右手薬指の骨折で故障者リスト入りしてしまったが、2.34という防御率を記録した。
2005年はチーム最多の78試合(リーグ4位タイ)に登板したが、防御率は4.14に終わり、期待されていたほどのピッチングは出来なかった。
2006年は開幕から先発ローテーションに加わったが、7月25日のアリゾナ・ダイヤモンドバックス戦で、メジャー記録となる1イニング4つの暴投(この時マドソンのボールを受けていたマイク・リーバーサルのキャッチングにも問題はあったが)を記録するなど精彩を欠き、8月からはリリーフに戻って投げた。
2007年はリリーフ専業で38試合に登板した。その後は、フィリーズの中継ぎエースとして安定した成績を残す。
2008年は76試合(リーグ9位タイ)に登板した。
2009年1月19日にフィリーズと総額1200万ドル[3]の3年契約を結んだ[4][5]。チーム最多の79試合(リーグ4位タイ)に登板した。
2011年はクローザーとして32セーブを記録。オフの10月30日にFAとなった。
レッズ傘下時代
2012年1月10日にシンシナティ・レッズと600万ドルの1年契約(2013年・1100万ドルのオプション付き[6])を結んだ[7]。3月26日に右肘の故障で60日間の故障者リスト入りし、4月11日にトミー・ジョン手術を受け、シーズンを全休した。オフの10月31日にレッズがオプションを破棄したため、FAとなった[8]。
エンゼルス傘下時代
2012年11月28日にロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイムと1年契約を結んだ[9]。
2013年3月30日に前年の手術の影響で15日間の故障者リスト入りし[10]、A+級インランドエンパイア・シックスティシクサーズ(英語版)で1試合に登板し、セーブを挙げたが、6月25日に60日間の故障者リストへ異動。シーズン中での復帰は難しいことから、ジェリー・ディポートGMが放出を決断し、8月5日に自由契約となった[11]。オフの10月29日にそれまで代理人を務めてきたスコット・ボラスを解雇した[12]。
2014年は古巣のフィリーズ[13]やワシントン・ナショナルズ[14]など数球団が獲得に興味を持っていたが、すべて見送られ、どの球団にも所属しないままシーズンを終えた。
ロイヤルズ時代
2015年1月4日にカンザスシティ・ロイヤルズとマイナー契約を結んだ[15]。4月5日に25人枠入りし開幕をメジャーで迎えることとなった[16]。4月6日のシカゴ・ホワイトソックスとので開幕戦で、4年ぶりにメジャーで登板した。この年は長期間のブランクを感じさせない調子を維持し、68試合に登板して通算500試合登板を達成。防御率2.13という数値は、新人で1試合しか登板しなかった2003年を除けば自己最高の数値で、WHIPも初めての0点台となる0.96を記録した。オフの11月2日にFAとなった[17]。
アスレチックス時代
2015年12月11日にオークランド・アスレチックスと3年2200万ドルの契約を結んだ[18]。
2016年はクローザーを任され、63試合に登板。好不調の波が大きく7敗を喫し防御率は3.62であったが、自身5年ぶりとなる30セーブを挙げる活躍を見せた。
2017年はサンティアゴ・カシーヤの加入に伴ってセットアッパーを務めることとなり、7月までに40試合に登板していた。
ナショナルズ時代
2017年7月16日にブレイク・トレイネン、シェルドン・ノイジー、ヘスス・ルサルドとのトレードで、ショーン・ドゥーリトルと共にナショナルズへ移籍した[19]。移籍後は20試合に登板し、3勝1セーブ・防御率1.37を記録した。2チーム合計では3年連続60試合登板をクリアし、5勝4敗2セーブ・防御率1.83・WHIP0.80と前年から大幅に投球内容を改善させた。
ドジャース時代
2018年8月31日にアンドリュー・イスラーとのトレードでロサンゼルス・ドジャースへ移籍した[20]。10月29日にFAとなった[21]。
投球スタイル
身長198cmの長身から投げ下ろされる、ほぼ真上からの極端なオーバーハンドで、平均球速152km/hのフォーシーム、平均149km/hのツーシーム、平均145km/hのカッターに、平均143km/hのスライダーと、最大の武器である平均134km/hのチェンジアップを持ち球とする。投球全体の約30~40%がフォーシーム、約30%程度をチェンジアップで占められている。特にチェンジアップの精度は高く、空振り率は、25~30%超を記録しており、被打率も圧倒的に低い[22]。
フィリーズ時代の監督だったチャーリー・マニエルは、「タフな状況でも躊躇なく使える球を持っている」と高く評価している[23]。
詳細情報
年度別投手成績
年
度 |
球
団 |
登
板 |
先
発 |
完
投 |
完
封 |
無 四 球 |
勝
利 |
敗
戦 |
セ 丨 ブ |
ホ 丨 ル ド |
勝
率 |
打
者 |
投 球 回 |
被 安 打 |
被 本 塁 打 |
与 四 球 |
敬
遠 |
与 死 球 |
奪 三 振 |
暴
投 |
ボ 丨 ク |
失
点 |
自 責 点 |
防 御 率 |
W H I P
|
2003
|
PHI
|
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
--- |
6 |
2.0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0.00 |
0.00
|
2004
|
52 |
1 |
0 |
0 |
0 |
9 |
3 |
1 |
7 |
.750 |
312 |
77.0 |
68 |
6 |
19 |
4 |
5 |
55 |
7 |
0 |
23 |
20 |
2.34 |
1.13
|
2005
|
78 |
0 |
0 |
0 |
0 |
6 |
5 |
0 |
32 |
.545 |
365 |
87.0 |
84 |
11 |
25 |
6 |
6 |
79 |
6 |
1 |
44 |
40 |
4.14 |
1.25
|
2006
|
50 |
17 |
0 |
0 |
0 |
11 |
9 |
2 |
6 |
.550 |
620 |
134.1 |
176 |
20 |
50 |
4 |
10 |
99 |
12 |
0 |
92 |
85 |
5.69 |
1.68
|
2007
|
38 |
0 |
0 |
0 |
0 |
2 |
2 |
1 |
7 |
.500 |
237 |
56.0 |
48 |
5 |
23 |
4 |
2 |
43 |
2 |
2 |
19 |
19 |
3.05 |
1.27
|
2008
|
76 |
0 |
0 |
0 |
0 |
4 |
2 |
1 |
17 |
.667 |
340 |
82.2 |
79 |
6 |
23 |
4 |
1 |
67 |
2 |
1 |
29 |
28 |
3.05 |
1.23
|
2009
|
79 |
0 |
0 |
0 |
0 |
5 |
5 |
10 |
26 |
.500 |
320 |
77.1 |
73 |
7 |
22 |
3 |
3 |
78 |
1 |
0 |
29 |
28 |
3.26 |
1.23
|
2010
|
55 |
0 |
0 |
0 |
0 |
6 |
2 |
5 |
15 |
.750 |
217 |
53.0 |
42 |
4 |
13 |
3 |
4 |
64 |
2 |
0 |
16 |
15 |
2.55 |
1.04
|
2011
|
62 |
0 |
0 |
0 |
0 |
4 |
2 |
32 |
3 |
.667 |
246 |
60.2 |
54 |
2 |
16 |
8 |
1 |
62 |
0 |
0 |
16 |
16 |
2.37 |
1.15
|
2015
|
KC
|
68 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
2 |
3 |
20 |
.333 |
248 |
63.1 |
47 |
5 |
14 |
1 |
2 |
58 |
1 |
0 |
17 |
15 |
2.13 |
0.96
|
2016
|
OAK
|
63 |
0 |
0 |
0 |
0 |
6 |
7 |
30 |
3 |
.462 |
270 |
64.2 |
63 |
7 |
20 |
3 |
2 |
49 |
4 |
1 |
27 |
26 |
3.62 |
1.28
|
2017
|
40 |
0 |
0 |
0 |
0 |
2 |
4 |
1 |
14 |
.333 |
144 |
39.1 |
25 |
2 |
6 |
2 |
2 |
39 |
0 |
0 |
9 |
9 |
2.06 |
0.79
|
WSH
|
20 |
0 |
0 |
0 |
0 |
3 |
0 |
1 |
11 |
1.000 |
28 |
19.2 |
13 |
0 |
3 |
0 |
2 |
28 |
0 |
0 |
3 |
3 |
1.37 |
0.81
|
'17計
|
60 |
0 |
0 |
0 |
0 |
5 |
4 |
2 |
25 |
.556 |
219 |
59.0 |
38 |
2 |
9 |
2 |
4 |
67 |
0 |
0 |
12 |
12 |
1.83 |
0.80
|
2018
|
49 |
0 |
0 |
0 |
0 |
2 |
5 |
4 |
14 |
.286 |
195 |
44.1 |
48 |
6 |
15 |
2 |
4 |
41 |
2 |
0 |
28 |
26 |
5.28 |
1.42
|
LAD
|
9 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
---- |
36 |
8.1 |
10 |
1 |
1 |
0 |
0 |
13 |
1 |
0 |
6 |
6 |
6.48 |
1.32
|
'18計
|
58 |
0 |
0 |
0 |
0 |
2 |
5 |
4 |
14 |
.286 |
231 |
52.2 |
58 |
7 |
16 |
2 |
4 |
54 |
3 |
0 |
34 |
32 |
5.47 |
1.41
|
MLB:13年
|
740 |
18 |
0 |
0 |
0 |
61 |
48 |
91 |
175 |
.560 |
3631 |
869.2 |
830 |
82 |
250 |
44 |
44 |
775 |
40 |
5 |
358 |
336 |
3.48 |
1.24
|
- 2018年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最高
記録
背番号
- 57(2003年)
- 63(2004年 - 2008年)
- 46(2009年 - 2011年、2015年)
- 44(2016年 - 2018年8月30日)
- 50(2018年8月30日 - 同年終了)
脚注
- ^ “Inside Pitch - 40-man roster announced”. MLB.com Phillies Press Release (November 20, 2002). January 5, 2015閲覧。
- ^ “Scores for Sep 27, 2003”. ESPN MLB (September 27, 2003). January 5, 2015閲覧。
- ^ 2009年は450万ドル、2010年と2011年はそれぞれ450万ドルで、契約金は100万ドル。クローザーとして30試合・35試合・40試合・45試合に登板するたび15万ドル、50試合・55試合に登板するたび20万ドル、60試合・65試合に登板するたび25万ドルが追加される。
- ^ “Phillies, Madson agree to three-year contract”. MLB.com Phillies Press Release (January 20, 2009). January 5, 2015閲覧。
- ^ “Phillies to sign Madson for 3 years”. ESPN MLB (January 20, 2009). January 5, 2015閲覧。
- ^ 違約金は250万ドル。
- ^ Mark Sheldon (January 10, 2012). “Madson's Reds contract pending physical”. MLB.com. January 5, 2015閲覧。
- ^ “OF Ryan Ludwick becomes free agent”. ESPN MLB (October 10, 2012). January 5, 2015閲覧。
- ^ “Angels agree to terms with RHP Ryan Madson”. MLB.com Angels Press Release (November 29, 2012). January 5, 2015閲覧。
- ^ “Angels announce 2013 Opening Day roster”. MLB.com Angels Press Release (March 31, 2013). January 5, 2015閲覧。
- ^ Alden Gonzalez (August 6, 2013). “Angels release rehabbing closer Madson”. MLB.com. January 5, 2015閲覧。
- ^ Steve Adams (October 29, 2013). “Ryan Madson Changes Agents”. MLB Trade Rumors. January 5, 2015閲覧。
- ^ Aaron Gleeman (December 24, 2013). “Phillies interested in reunion with Ryan Madson”. NBC Sports. January 5, 2015閲覧。
- ^ Drew Silva (February 11, 2014). “Nationals interested in reliever Ryan Madson”. NBC Sports. January 5, 2015閲覧。
- ^ Jerry Crasnick (January 4, 2015). “Ryan Madson, Royals agree to deal”. ESPN MLB. January 5, 2015閲覧。
- ^ Royals put their Opening Day roster in place MLB.com 英語 (2015年4月6日) 2015年5月4日閲覧
- ^ “Transactions | royals.com” (英語). MLB.com (2015年11月2日). 2015年11月4日閲覧。
- ^ “Madson agrees to 3-year deal with A's” (英語). MLB.com. 2015年12月20日閲覧。
- ^ Jane Lee (2017年7月16日). “Nats acquire Doolittle, Madson from A's” (英語). MLB.com. 2017年7月19日閲覧。
- ^ Ken Gurnick (2018年8月31日). “Dodgers acquire veterans Madson, Freese” (英語). MLB.com. 2018年9月1日閲覧。
- ^ MLB公式プロフィール参照。2018年12月30日閲覧。
- ^ “Ryan Madson Pitch Data” (英語). The Baseball Cube. 2015年12月11日閲覧。
- ^ 「2008 通信簿」『月刊スラッガー』2008年12月号 日本スポーツ企画出版社 74~81頁
- ^ “All-time and Single-Season World Series Pitching Leaders”. Baseball-Reference.com. 2018年11月13日閲覧。
- ^ “All-time and Single-Season Postseason Pitching Leaders”. Baseball-Reference.com. 2018年11月13日閲覧。
関連項目
外部リンク