連携中枢都市圏構想連携中枢都市圏構想(れんけいちゅうすうとしけんこうそう)は、日本における市町村の広域連携である。 概要一定要件を満たす都市が「連携中枢都市」となり、周辺市町村と連携協約(地方自治法252条の2第1項)を締結することで、「連携中枢都市圏」を形成し、圏域の活性化を図ろうとする構想である[1]。 2014年12月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略」[2]において地域の広域連携に関し、複数存在する圏域の概念が「連携中枢都市圏」に統一されたことに伴い、「地方中枢拠点都市圏構想(地方中枢拠点都市制度)」から名称・目的等が変更された。 地域において、相当の規模と中核性を備える圏域の中心都市が近隣の市町村と連携し、コンパクト化とネットワーク化により「経済成長のけん引」、「高次都市機能の集積・強化」、「生活関連機能サービスの向上」を行うことにより、人口減少・少子高齢社会においても一定の圏域人口を有し活力ある社会経済を維持するための拠点を形成することを目的とする[1]。 連携中枢都市には、「経済成長のけん引」、「高次都市機能の集積・強化」の取組みに対して、圏域人口に応して普通交付税として措置される(例:圏域人口75万で約2億円)。また、特別交付税として「生活関連機能サービスの向上」の取組みに、1市当たり年間1.2億円程度を目安として、人口・面積を勘案して上限額が設定される。一方、連携市町村には、1市町村当たり1500万円を上限として、特別交付税が措置される[3]。 経緯2013年5月、姫路市が国に対して地方中枢拠点都市の制度創設と財政措置を提言した[4]。同年6月、国の第30次地方制度調査会の答申[5]に、地方中枢拠点都市(政令市・中核市・特例市のうち地域の中心的な役割を果たすべき都市)を核とする圏域において新たな広域連携を進める必要性が示され、「圏域における役割に応じた適切な財政措置を講じる必要」が盛り込まれた。この答申を受け同年7月に、地方中枢拠点都市に関する制度設計に取り組むための組織として、総務省に「基礎自治体による行政サービス提供に関する研究会」が設置され、地方中枢拠点都市の担うべき役割の整理、その役割に応じた適切な財政措置の検討など制度設計に関する報告書[6]がとりまとめられた。 2014年1月には、第186回国会における内閣総理大臣安倍晋三の施政方針演説[7]において、人口20万人以上の地方中枢拠点都市と周辺市町村が柔軟に連携する、新たな広域連携の制度の創設に関する基本方針が示され、同年3月に、新たな広域連携の取組を推進するための「連携協約」制度の創設等を内容とする、地方自治法の一部を改正する法律案が国会に提出され、同年5月に可決成立した(同年11月1日施行)。 2014年8月、総務省は、地方中枢拠点都市となる圏域の中心市と近隣の市町村が連携協約を締結することにより形成する地方中枢拠点都市圏について、都市圏形成に向けて市町村の行うべき手続き等を定めた「地方中枢拠点都市圏構想推進要綱」を制定した。 その後、2014年12月に閣議決定された、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」[2]において、地域の広域連携に関し、複数存在する圏域の概念が連携中枢都市圏に統一することとされたことを踏まえ、総務省は、2015年1月に「地方中枢拠点都市圏構想推進要綱」の一部改正を行い、都市圏の名称を「地方中枢拠点都市圏」から「連携中枢都市圏」に改めた。併せて、改正後の「連携中枢都市圏構想推進要綱」に基づき連携協約を締結し、連携中枢都市圏ビジョンを策定した中枢都市・連携市町村の取組に対する財政措置について、その概要[8]を公表した。 要件中枢都市は、次に掲げる要件のすべてを満たす市をいう[1]。
形成手続総務省が定める連携中枢都市圏構想推進要綱では、連携中枢都市圏形成に向けて市町村が行うべき手続きとして、連携中枢都市宣言(以下「宣言」)を行った都市が、近隣市町村と連携中枢都市圏形成に係る連携協約(以下「協定」)を締結し、連携中枢都市圏ビジョン(以下「ビジョン」)を策定するまでの手続きが定められている[1]。
広域連携促進事業2014年4月、総務省では、改正予定の地方自治法に基づく連携協約締結に向けた取組等を推進し、地方公共団体間の新たな広域連携の全国展開に向けた先行的モデルを構築するため、新たな広域連携モデル構築事業(以下「モデル事業」)の募集を行った[11]。同年6月には、全国で11件の事業が選定され、新たな広域連携モデルを構築する事業が実施された[12]。2015年度・2016年度には、それぞれ新たな広域連携促進事業を発表している。 「モデル事業」
2015年度の広域連携促進事業
2016年度の広域連携促進事業
形成を目指す動き都市圏一覧
地方自治法における主要な条文
評価2015年3月、高岡市など富山県の6市は国に対して連携中枢都市圏の要件緩和を要請した[34]。 2015年1月に日本共産党の機関誌『しんぶん赤旗』は、「周辺地域の切り捨てと住民サービスの後退が進み、地域の疲弊をさらに進める」として、連携中枢都市圏構想に反対を表明した[35]。 連携中枢都市圏構想は、連携中枢都市の経済・都市機能の便益を連携市町村民が便益を享受できるように、インフラや都市機能のネットワークを強化することで、「人口減少・少子高齢社会においても一定の圏域人口を有し活力ある社会経済を維持するための拠点」を形成する試みであると評される。中枢都市にはリーダーシップが与えられており、地方創生法関連法(2014年)で改正地域再生法に定められたワンストップ手続を利用して、連携中枢都市圏内において、企業誘致・インフラ整備・コンパクトシティ化・農業6次産業化などをまとめて推進することもできる。圏域内の自治体を合併に誘引する可能性があるため、「ステルス合併」と揶揄されることもある[36]。 関連項目
脚注
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