『影の地帯』(かげのちたい)は、松本清張の長編推理小説。『河北新報』などに連載され(1959年5月20日 - 1960年6月1日付)、1961年3月に光文社(カッパ・ノベルス)から刊行された。フリーのカメラマンが、政治家と繋がる大掛かりな犯罪グループによる殺人事件の謎を追跡するミステリー長編。
1962年・1993年・2015年にテレビドラマ化されている。
あらすじ
カメラマンの田代利介は、撮影旅行の帰途、博多から東京に向かう飛行機の中で、小太りの男と若い女性に出会う。その後田代は、馴染みの「バー・エルム」で再び2人を見かけるが、間もなくバーのマダムの様子がおかしくなり、行方不明となってしまう。さらに、撮影旅行先の長野県で、東京から発送された不思議な木箱を、例の小太りの男が受け取っているのを目撃し、また木崎湖と青木湖では相次いで無気味な水音を耳にした田代だったが、続けて謎の狙撃や警告に遭い、犯罪の存在を確信する。マダムは死体で発見された。やがて、政治家との繋がりを持つ闇の犯罪グループの存在が浮上するが、犯人の実行した死体処理の謎が、田代の前に立ちふさがる。
主な登場人物
- 田代利介
- フリーのカメラマン。32歳。独身。
- 久野正一
- 田代の写真仲間。
- 川島英子
- 「バー・エルム」のマダム。小太りの男と接触していたのちに失踪。29歳。
- 山川亮平
- 敏腕・豪腕で有名な政界の実力者だが、突然行方不明となる。
- 小西忠太郎
- 川島英子の乗った自動車の目撃者だが、行方不明となる。
- 木南
- R新聞のベテラン記者。警視庁詰め。
- 河井文作
- 柏原に住む40歳過ぎの男。
エピソード
- 単行本刊行の2年後『宝石』に掲載された創作ノートで、著者は以下のように述べている。「死体漬けのホルマリンというのがある。死体を漬けて、ロウ漬けにするんだよ。それを切り刻む。ヒントはね、監察医務院の方で、人間の内臓をいろいろロウ漬けにして、これを機械でうすく切るんだ。本当に桜の花びらみたいにうすいんだ。そういうふうにしてから、染色して、毒物反応がないかを顕微鏡にかけてみるんだよ。臓器をパラフィンに漬けてうすく花びらのように削っているというのは、ちょっと面白かった。それで、もっと拡大して、死体にしたんだ。それからもう一つは、その操作をする工場を建てて、それを今度用事が済んだら立ち退くということになるのですけれども、これは、急に工場を建てたり、済んだらそこを退いたりするというのは、おかしく思われるから、遠いところに地主さんのいる空き地を、非合法的にそこに建てて、用の終わる頃には、誰かが密告するから立ち退きを要求される。仕方がないので、工場を崩して立ち退く。こうなると誰が見ても自然だというのでその二つを結合したわけです」[1]
作品の舞台
テレビドラマ
1962年版
1962年2月20日と2月27日、TBS系列の『日立ファミリーステージ』枠(火曜20:30-21:15)にて2回にわたり放映。
- キャスト
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- スタッフ
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TBS 日立ファミリーステージ |
前番組 |
番組名 |
次番組 |
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影の地帯 (1962年版) (1962年2月20日 - 2月27日)
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1993年版
「松本清張スペシャル・影の地帯」。1993年4月27日、日本テレビ系列の『火曜サスペンス劇場』枠(21:03-22:52)にて放送。礼子(原作では名のみ)を田代の元妻に設定し、また、舞台となる湖を猪苗代湖や霞ヶ浦としている。視聴率21.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。
- キャスト
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- ほか
- スタッフ
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2015年版
「松本清張サスペンス・影の地帯」。2015年7月6日(21:00-22:54)、TBS系列の『月曜ゴールデン』特別企画として放送。主人公は新聞記者の設定。舞台となる都道府県の設定はぼかされているが、撮影の多くは静岡県内で行われた。
- キャスト
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- スタッフ
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- 脚本:香坂隆史
- 演出:倉貫健二郎
- テーマ音楽:兼松衆
- 警察監修:尾崎祐司
- スタントコーディネート:大道寺俊典
- 蛍写真提供:西川祐介
- ロケ協力:小山町フィルムコミッション、三島市役所商工観光課、伊東市、裾野市、富士すそのフィルム・コミッション、ロケーション御殿場、フィルム・コミッション伊豆、フィルムコミッション富士 ほか
- 技術協力:東通、サウンドライズ
- 美術協力:BEENS
- プロデューサー:浅野敦也(ドリマックス・テレビジョン)、塩村香里(ドリマックス・テレビジョン)
- 編成担当:永山由紀子(TBS)
- 制作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
TBS 月曜ゴールデン |
前番組 |
番組名 |
次番組 |
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松本清張サスペンス 影の地帯 (2015年7月6日)
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脚注
外部リンク