葦の浮船
『葦の浮船』(あしのうきふね)は、松本清張の長編小説。『婦人倶楽部』に連載され(1966年1月号 - 1967年4月号、連載時の挿絵は田代光)、1967年5月に講談社から単行本が刊行された。 あらすじ東京のR大学で助教授を務める小関久雄は、金沢市での学会後、同僚の折戸二郎に不倫のアリバイを頼まれたのち、荘園に関する古文書を見る目的で飛騨高山に向かう。折戸が山中温泉で自分を尊敬する笠原幸子の陥落に成功し東尋坊に赴く一方、小関は高山の古寺で遺品を見に来た近村達子と知り合う。帰りがけ名古屋に向かう列車内で達子と再会した小関だったが、若く快活な女性との同席に窮屈を感じて席を外してしまう。 東京に戻った折戸は、幸子との密会を続けたものの、火の点いた幸子を重荷に感じるようになり、主任教授から教授昇進を示唆される中、幸子との縁切りを考え始める。小関は折戸の妻の睦子から見合いを勧められるが、達子が見合い相手の友人として付いてきたことを知ると、理由はわからないが小関はその見合いを断る気になり、また達子に目を付けて近づこうとする折戸に危険を感じる。 小関に会おうとする達子を妨害する一方、折戸は連れ込み旅館で遭遇した殺人事件で、警察の職務質問に巻き込まれる。幸子との関係の露見を恐れた折戸は、小関を使って幸子に別れを言い渡す一方、学術研究の名目で強引に達子を高山へ誘い攻略しようと企む。 折戸の下心に落ち着かない小関は、達子に同行し高山へ向かうが、ホテルに幸子の夫・敏夫から驚愕の電報が入り、緊迫の夜を迎える。 主な登場人物
エピソード評論家の野村喬は、本作で描かれる「R大学」のいびつな人間関係は、1973年に発生した大場助教授事件における、立教大学の対応を連想させる旨1974年にコメントした[1]。 関連項目
テレビドラマ
1971年版
「葦の浮舟」のタイトルで1971年4月8日(22:00-22:56)に放映。NETテレビ系列の「ナショナルゴールデン劇場」5周年記念として7週連続で放映された「レインボー・シリーズ」の第1作。
1984年版
「松本清張の葦の浮船」のタイトルで、1984年2月4日(21:02-23:21)に、テレビ朝日の開局25周年スペシャルとして「土曜ワイド劇場」枠にて放映。原作の設定は3月半ば以降だが[3]、本ドラマは真冬の設定であり、雪景色の北陸・飛騨地方でロケが行われた。視聴率24.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。
脚注 |