中華人民共和国の鉄道中華人民共和国の鉄道(ちゅうかじんみんきょうわこくのてつどう)では中華人民共和国(中国)における鉄道について記す。 中国の都市間を結んでいる鉄道は、大部分が中国国家鉄路集団(中国鉄路)によって運営されている。この他に市営の地下鉄や新交通システムなどの都市内交通機関や、産業目的の鉄道などが存在している。 国鉄中華人民共和国では、長距離輸送・移動において最も多く用いられるのが鉄道である。都市内以外のほとんどの路線が中国国家鉄路集団によって運営されており、事実上の国鉄である。長らく国務院の鉄道部によって運営されてきたが、2013年3月14日、全国人民代表大会での承認を経て設立された中国鉄路総公司に移管された。その後2019年6月18日に中国鉄路総公司が中国国家鉄路集団へ移行している[1]。 中国の鉄道総延長は2021年末時点で150,000kmを超え[2]、アメリカに次ぎ世界第2位である。鉄道の電化率は約7割で、アメリカの約1割を大きく上回る。鉄道網は八縦八横とも呼ばれる幹線をはじめとして、国内縦横に張り巡らされており、マカオの新交通システム澳門軽軌鉄路の開業を以て、現在では、すべての省や特別行政区に広がっている。2009年の時点で、国鉄は貨車603,082両、客車49,355両、機関車18,922両を保有している[3]。また、1日当たり38,000本の列車が運転されていて、その内の3,500本は旅客列車である[3]。 2008年10月に発表された中長期鉄道網計画による政府の2020年までの鉄道投資は総額2兆元になるといわれていた[4]。この計画は、2006 - 2010年に総額1.25兆元を投資するという第11次五か年計画をさらに発展させたものであった。中国の鉄道網は2007年末には78,000kmであったが、2010年末には91,000kmへと拡張され、さらに、2012年末までには110,000kmに達すると予測された。鉄道の重要性が増している理由の一つに貨物輸送需要の増加があり、国鉄は需要に合致した輸送力を確保する必要に迫られている[5]。 歴史中国の鉄道(中国鉄路)は、清朝時代の1876年(光緒2年)にイギリスによって敷設された呉淞鉄道(上海 - 呉淞間14.5 km)が始まりであるが、これは無許可で作ったものなので数年で撤去された。本格的なものは1881年(光緒7年)に李鴻章の命によって敷設され、ラバが引く車両を用いた唐胥鉄道(河北省・唐山 - 胥各荘間9.2 km)である。1882年(光緒8年)には蒸気機関車の使用も開始された。 以後、中国の鉄道の多くは外国資本によって敷設されたため中国を搾取する道具と見られ、1899年(光緒25年)に起こった義和団の乱では攻撃対象にされた。1911年(宣統3年)には民間資本で作られていた粤漢鉄道(広州 - 武昌)・川漢鉄道(漢口 - 成都)を国有化して列強の抵当に入れることに反対した四川省の資本家・民衆運動がきっかけで辛亥革命が起こるなど、時代に翻弄される格好となった。 また日露戦争の結果、満洲南部地方(現東北地区の遼寧省)にロシアが建設した東清鉄道南部が日本に譲渡され、南満洲鉄道(満鉄)となった。その利権を保護するために日本は1931年に満洲事変を起こし、翌1932年に満洲国を建国、一部の路線は国有となった。満鉄ではあじあ号など保守的な日本内地の鉄道省とは一線を画した先進的な試みを早くから行った。続く1937年 - 1945年の日中戦争では、日本軍が占領した華北地域の鉄道は満鉄系列の華北交通、華中地域の鉄道は日本と同盟関係にあった中華民国汪兆銘政権の国策会社華中鉄道によって運営され、日本と同盟関係にあったドイツまで中央アジア経由で結ぶ大東亜縦貫鉄道も計画された。 日中戦争後、国共内戦によって1949年に中華人民共和国が成立すると、鉄道は国の重要な産業とみなされるようになり、原則として国有鉄道の運営とされるようになった。そして国の成立当時総延長21,810kmに過ぎなかった鉄道は、国家指導下で急速に建設が進められ、文化大革命後の1978年には43,000km超に、1985年には52,000km超、そして2009年には86,000km超の路線を有するまでになり、インドの62,000kmを抜いてアジア最大、世界でもアメリカについで第2位の路線網を誇っている。現在も、各地で新線の建設が進められており、2006年10月に鉄道部が発表した計画では、第11次五か年計画後の2010年には、総延長を90,000km超にすることを目標にしている。 また、電化区間は中華人民共和国成立当時はゼロであり、複線区間も866kmであったが、2010年末現在ではそれぞれ42,000km超・37,000km超となり、電化区間距離についてもロシアに次ぎ世界第2位となっている。2010年末に電化率と複線化率はそれぞれ46%と41%になった。 2008年の世界金融危機の際の中国政府による4兆元の公共投資策(内需拡大十項措置)の一環で2010年代に入ると、都市間高速鉄道が北京 - 天津・鄭州 - 西安・武漢 - 広州・深圳 - 香港などの区間に導入済みとなり、2018年には世界の高速鉄道の距離の3分の2も占める世界最長の高速鉄道網を有するまでになった[6]。また、貨物鉄道輸送では中国政府が国策に掲げた一帯一路構想に後押しされ、中国大陸とヨーロッパをシベリア、モンゴル、中央アジア経由で結ぶ中欧班列(渝新欧鉄道、義烏・ロンドン路線、義烏・マドリード路線)の運行本数は2013年の80本から2018年には1万本を超えるまでになった[7][8]。 現状→「中華人民共和国の高速鉄道」も参照
中国の鉄道の特徴として、同じ路線に高効率で貨物輸送と旅客輸送と兼ねて行うことが挙げられる。 2009年現在、トンベースの年間貨物輸送量はアメリカを上回り、約33.3億トンで世界一である(ただし、トンキロベースでは2兆5239億トンキロ、わずかの差でアメリカに次ぎ世界第2位である)。 一方、旅客輸送は、2009年の年間輸送量は約15.2億人(都市間のみ、北京や上海などの大都市都市鉄道の輸送量を含まないので、日本の約6分の1程度)、7878億人キロ(日本の約3倍で世界一)である。このことは、長距離の利用客が非常に多いことを意味する。実際、旅客輸送は、長距離輸送が中心であり、2 - 3日をかけて走る列車も少なくない。直通を原則としたダイヤ構成で、一部のローカル線を除き、乗り継ぎでの利用は考慮されていない。 中国の鉄道で最も利用客が多くなるのは、毎年1 - 2月の春節(旧正月)の前後における帰省客輸送「春運」である。この時期には列車が全国で大増発されるなど、当局では延べ約2億人とも言われる利用客数を捌くために、40 - 45日程度の特別体制が組まれる。近年は都市部への出稼ぎが多くなったこともあって、輸送力は絶対的に不足しており、切符の購入は困難を極めるほか、切符が高額で取引されることもあった。そのため、現在は後述する「実名制」が取り入れられている。 2008年の春節輸送では、同時期に襲った大寒波の影響で、全国的に運休や立ち往生が続出するなど、ダイヤが大幅に乱れ、主要な駅には数十万人とも言われる利用客が数日間も滞留して、一部では不穏な状況になるなど、全国で大混乱に陥った。 欧米諸国や東南アジア、オーストラリア、日本、韓国などの大都市圏では、都市近郊鉄道が発達しているが、中国では、地下鉄や路面電車、モノレール、トロリーバスが存在する都市は多いが、日本の国電や、ドイツのSバーンのような、都市近郊電車網は、中国では皆無であった。しかし、近年は上海や北京などで全区間高架または地上を走る軽軌と呼ばれる都市近郊鉄道も開通しており、蘇州などでも建設が始まっている。 運行概要列車種別中国の列車種別は下記の通りである。(停車駅が少なく、速度の速い順) 【列車番号の頭文字のアルファベットは中国語の列車種別のピンインの頭文字から取っている】
括弧内は列車番号につくアルファベット、または列車番号
長距離列車4000km以上運行される定期列車を以下の表に示す。モスクワ行き列車と臨時列車を除いた最長距離列車は、広州~ラサ間約4,980kmを54時間かけて走るZ264/265・Z266/263次列車である。なお、運行時間最長はチチハル~ウルムチ間で運行されるK1082/1083、K1084/1081次列車で、その運行時間は68時間19分に及ぶ[9]。
国際列車国際列車も運行されており、その一覧を以下に示す。北京・上海・広州などから香港へ向かう列車は、返還後も今に至るまで起終点の駅での出入国審査が存在する。香港行きは「国際列車」ではなくなったが、国内列車とは異なる運行システムとなっており「越境列車」に相当する。 2014年12月10日より、北京西駅からベトナムのドンダン駅まで直通していたT8705/8706次列車が運休となった。(2015年10月)現在も北京西~ハノイ(ザーラム)間の切符は通しで販売されるが、北京からハノイに行く乗客は、南寧でZ5/6次列車からT8701/8702次列車に乗り換えなければならなくなった[13][14]。
料金切符購入現在ではオンラインによる座席指定予約制度が導入されている。新システム導入により確実に切符が手に入るようになったかといえば、一方で旅客需要は依然として増加しているため、混雑期は長距離列車などでは切符の売り出し日(一般の列車は発車の4・5日前、直達は20日前)早々に売り切れになることも珍しくない。また中国に市場経済が導入されたとはいえ、鉄道はいまだ計画経済を前提とした国家の所有であるため、駅の切符の販売員(售票員)の販売意欲は日本と比較すると高いとはいえない。以前と比べれば少なくなったが、空席があったとしても「没有」(メイヨウ・座席無し)と窓口でいわれるような場面に、言葉が不自由な外国人相手の場合などで現在でも遭遇することがある。 かつては外国人は専用窓口でしか購入できなかったが、現在は中国人も外国人も同じ窓口である。中国語の会話ができなくても中国字体の筆談で日付・列車番号・区間を書けば入手可能であり、パスポートとメモを一緒に窓口に出すと最も手っ取り早く購入出来る。切符の購入は駅のみならず、街中にある售票処でもできるが、1枚あたり5元の手数料が必要。大きなホテルのフロントで発売できるところもあるが、手数料はもっと高いこともある。ただし、街中にある售票処は手数料がかかるため利用客が少なく、かつ民間委託のため売れば売るほど手数料収入が増えることもあり、外国人にも比較的親切で利用がたやすい。最近では、一部の駅で自動券売機も導入されており、一部の券売機では銀聯カードや支付宝での支払いにも対応している。ただ、自動販売機は切符の売り出し日直後の切符は購入できず、かつ自動販売機の操作を敬遠する人も多いため、窓口の利用者はあまり減っていない。 2011年6月1日より、高速鉄道の乗車券購入時、氏名や身分証番号を登録する「実名制」が導入された。これは、ダフ屋行為を取り締まるためといわれている。そのため、乗車券購入時に身分証の提示が必須となっているため、外国人が購入する場合、事前に旅行会社にパスポートのコピーを送付したり、従来は可能だった自動券売機での購入が一切できなくなり(中国国民の場合、身分証を読み取るための機械が設置されたため購入可能)、窓口に購入が限定されたため不便が生じている。なお、広州(東)-深圳間の広深鉄路においては、動車組列車の自動券売機にパスポート用のスキャナーが増設され、パスポートをスキャンさせることにより、外国人でも自動券売機での乗車券の購入が可能となった。 また、外国人でもユーザー登録することにより中国鉄路のサイト(www.12306.cn)でのネット購入も可能であるが、中国で有効な携帯電話番号、決済口座が必要である。 一方多少の手数料は必要であるが、海外のクレジットカードでも決済できる民間のオンライン予約サイトも登場し、外国人旅行客でも、国外から容易に購入が可能となった。 乗車前までに駅窓口に予約番号と身分証を見せることで切符を発行してもらい乗車することが可能であり、 大きな駅ではネット購入の受取り専用の窓口がある場合もある。 (中国人は新型身分証(二代身分証)を使用して専用の機械で切符を受け取ることも可能) (中国鉄路での購入の場合、切符の発売開始日が駅窓口での発売開始日より2日早く設定されている) ただし、その際の支払いは中国の銀行からのネット決済または 支付宝での支払いのみであるため、中国の銀行に口座があり、かつネットバンクが使用可能、もしくはな 支付宝が使える環境でないと購入できない。(乗車本人の口座でなくても支払いは可能) さらに中国人向けのサービスとして、高速鉄道の一部では新型身分証を使用したチケットレスサービスも導入されている。 車両中国の鉄道車両は、1980年代までは、主要幹線でも蒸気機関車が大々的に使用されていたが、ディーゼル機関車の量産化も中国初の国産ディーゼル機関車である巨龍型から始まり[22][23]、1990年代に入り、電気機関車の大量導入も行われ、21世紀始めには、主要幹線においては蒸気機関車は過去のものとなった。広大な中国の鉄道は長距離列車、非電化区間が多く地下鉄を除く大都市の普通列車でさえもほとんどが客車であり、広大な国でも電化率が高く動力分散型が多いロシアの鉄道とは対照的であった。しかし一部の幹線は電車と気動車を用いて、2007年4月第6回鉄道高速化後、高速動力分散型電車を使うことを始めている。 車両は自国生産のものも多いが、機関車は日本・アメリカ・ヨーロッパなど西側諸国からの輸入も少なくない。モンゴル、ロシア、カザフスタンへ行く国際列車には東ドイツDWAに発注した18系客車及び19系客車が使用されている。これらの客車は、他国の車両と直通運転の際に連結されるため、モンゴルや旧ソ連構成国、東ヨーロッパなど東側諸国の車両と類似または同じデザインの車両が使用されている。モンゴル、アルバニア、北朝鮮のような東側諸国やアジア(インド[24]、タイ、シンガポール、マレーシア、イラク、イラン、サウジアラビア、イスラエルなど)・アフリカ(エチオピア、ナイジェリア、ケニア、スーダンなど)・ラテンアメリカ(ブラジル、アルゼンチンなど)といった第三世界諸国だけでなく、アメリカやオーストラリアなど西側諸国にも鉄道車両を輸出している。 車両等級寝台車夜行列車には一部のローカル線を除き、寝台車が連結されている。夜行動車組列車も寝台車がある。 在来線の場合は:
また、昆明〜麗江のK9682/K9684、K9686/K9688観光列車と、北京~杭州のT32/T31列車は、一人軟包と言うの個室がある。昆明〜麗江の列車の一人軟包の中に、線路向きのダブルベッドと、枕木方向の二段1人用寝台一つがある。実は最大三人用個室が、切符は1個室1枚で発売する。北京~杭州の列車の一人軟包の中に、枕木方向の1人用寝台一つがあり、椅子と洗面所もある。しかしトイレがない。 動車組列車の場合は:
寝台には下鋪、中鋪、上鋪(下段、中段、上段)があり、下鋪の運賃が若干高い。乗車後に身分証明書を提示して、氏名などの記録が行われる。 高級軟臥(普段は高包と呼ぶ)や軟臥には部屋に扉がついており、内側から鍵がかかる。席単位も部屋単位も購入は可能。定員丁度のグループで使用する時は事実上の個室となるが、定員以下で使用する時は、相部屋となることがある。室内の全員が食堂車などに行く時に係員に申告すれば外側から鍵を掛けてもらうことができる。高包や一部の1等寝台の場合は車掌の他に女性アテンダントがおり、乗車直後に部屋に挨拶にやって来る。 すべての高包や一部の軟臥、硬臥にはコンセントが付いているため、電気機器の充電に利用できる。 切符は各車両に乗務する乗務員が各乗客の下車駅を把握して案内し、乗客の寝過ごしを防止するため、係員が下車直前まで預かり乗客が下車する駅が近くなると返却される。乗車中は代わりに座席・寝台番号が書かれた預り証を渡されるので、各乗客はそれを切符の代わりとして携帯する。食堂車を越えて座席車側に入り、再び寝台車側に戻ろうとする時に預り証がないと、食堂車の係員に制止されることがある。 硬臥以外は、枕、シーツ、毛布が備え付けられている。コンパートメントごとに熱湯の入ったポットが置いてある。硬臥は消灯時間が決められている。 座席車在来線の場合は:
元の北京-天津、上海-南京などの都市間列車は、特等軟座・一等軟座・二等軟座の3等級制の車両がある。都市連絡の任務を動車組列車に譲りの後に、一部は他の線区に転出した。場合により、全て軟座に統一、二等は硬座に格下、または一等・二等のまま使用のケースがある。 動車組列車の場合は:
他に空調設備の有無で料金に格差がある。これは、空調の使用の有無に関係がない。空調車は座席などの設備も良いための運賃差とされているため、春秋などの空調不使用時でも新空調車料金と称する運賃となる。一例をあげると、北京 - 上海間であれば、特快の高級軟臥と普快の硬座では10倍以上もの運賃・料金格差を生じる。 食堂車現在でも多くの長距離列車に食堂車が連結されている。料理の量が少ない割に価格設定が高いため、硬座や硬臥の乗客はほとんど使用しないが、食堂車の料理人が調製する弁当の人気は高い。そのため利用客は少ないが、それでもほとんどの長距離列車に連結されているのは、弁当調製所と乗務員の食事場所の意味合いもあるためである。時間帯によっては乗客よりも乗務員の利用の方が多いこともある。ほとんどの長距離列車には1両だけの連結であるが、比較的豊かな都市部からの観光客や外国人利用者が多い蘭州と敦煌を結ぶ旅游列車「敦煌号」のように3両の食堂車(高級食堂車、普通食堂車、喫茶・バー車)が連結されている列車もある。 主な路線一覧八縦八横(重点路線)重点的に国家が整備を行う「八つの縦断と八つの横断」鉄道である。 八縦(中国大陸の南北を結ぶ主な線)
八横(中国大陸の東西を結ぶ主な線)
その他の国鉄路線地方鉄路・産業鉄道地下鉄・軌道交通など中華人民共和国では国鉄以外にも、地下鉄・路面電車・モノレールなどがいくつかの大都市で運営されており、また高速鉄道に関しても2003年12月には上海に磁気浮上式鉄道のトランスラピッドが開通している。 1969年に北京で地下鉄が開業した。しかし地下鉄の整備は1978年の改革開放政策まで十分には行われなかった。1980年代以降、外資の導入による近代化政策のもと都市部において地下鉄の建設が行われた。上海では1990年代以降の相次ぐオフィスビルの建設により地下鉄の路線網の拡充が急務となっていた。このような経緯があり、中国の地下鉄は、国産技術を主体とした北京地下鉄などの北方グループと外国技術を主体とした上海地下鉄などの南方グループに大別される。 営業路線長を2020年に2007年比約8倍の4200kmとする計画がある[25][26]。2020年に北京では1050km、上海では980km、広州では600kmの都市鉄道が開業し、先進国に近い鉄道整備になる。しかし、今も建設中の路線は全国において多数に存在しており、まだ建設すら進められておらず、1路線も開通していない大都市も多く存在している。北京、上海、成都など巨大路線網を持つ大都市でも平均的な駅間距離は2kmに近いため、全体的に比較的長めの平均距離になっている。 2000年段階では地下鉄を有する都市は北京、天津、上海、広州、香港の5都市のみであった。しかし、21世紀に入ってから大半の省都において地下鉄の建設が始まり、2021年現在開業路線が存在しない、もしくは建設工事も行われていない省級行政区は西蔵自治区のみであるが、省都ならびに自治区の首府において地下鉄ならびに軌道交通が開通していないのは西蔵自治区・拉薩市、海南省・海口市、青海省・西寧市の3都市が開通がまだである[27]。 地下鉄の始発においては概ねどこの都市でも6時前後であるが、終電は都市によってもかなり差はあり、早い路線だと20時台、遅い路線でも22時~23時辺りには大半は終電になるため、日本や台湾などのように日付を跨いでもまだ電車があるという状態は中国にはほとんどないので注意が必要。 路線数・距離について
地域別北京市・天津市・河北省
北京市・廊坊市北京市では、1969年に中国初の地下鉄路線である北京地下鉄が開通したが、先述の通り整備は1978年の改革開放政策まで十分には行われず、一般人には開放されなかった。2008年の北京オリンピックのころから、開通路線が急激に増え、現在も建設中の路線が多数ある。 北京地下鉄のほかにも、国鉄の路線の線路を使用する北京市郊鉄路が3路線開業し、いくつか整備中である。 北京市計画委員会は、2020年までに北京市郊外鉄道1000km、都市鉄道1000kmを整備する計画を制定している[28]。中国国鉄の新線建設や駅調整に伴い、北京市域内の約1000kmの国鉄線路や中心市街地に位置する6つの貨物ターミナルを、郊外通勤鉄道と旅客駅に改造することが可能だとしている。最初の工事である現在の貨物用の北京東駅を10面18線の旅客駅に改造する計画が間もなく始まる予定である。 また北京大興国際空港に直結している大興機場駅は河北省・廊坊市に位置している。 北京地下鉄
北京市郊鉄路 天津市天津市には天津地下鉄と天津開発区導軌電車の2つの鉄道事業者がある。北京市に続いて大陸内では11年後の1980年に初めて開通している。4つの直轄市の地下鉄では最も規模が小さい。 石家荘市石家荘市では、石家荘地下鉄が運行している。現時点では廊坊市に乗り入れている北京地下鉄の大興機場駅を除き唯一の河北省の地下鉄となる。2017年に運営開始。 山西省太原市太原市では、太原地下鉄が運行している。2020年に開通。山西省初の地下鉄。
河南省鄭州市鄭州市では、鄭州軌道交通が運行している。2013年に開通。将来的に建設中の新路線が許昌市への乗り入れも計画されている。 洛陽市洛陽市では、洛陽地下鉄が運行している。2021年に開通で、河南省では2番目の開通都市となる。 遼寧省
瀋陽市瀋陽市では、瀋陽地下鉄が地下鉄を運行している。路面電車は1974年に一度全線撤去されたが、2013年に新設され、瀋陽有軌電車が運行している。地下鉄は2010年から開通。 大連市大連市では、満洲時代に路面電車網が構築されたが、中華人民共和国建国後に大幅に整理された。現在は大連地下鉄のほか、大連公交客運集団により大連有軌電車が運行されている。地下鉄は2003年に初めて開通しており、省都の瀋陽市よりも7年も前に開通している。 なお、■13号線においては■3号線九里支線と直通運転を実施している。 吉林省
長春市長春市では、満洲時代に敷設された路面電車は1路線を残し撤去されたが、2015年に新たに1路線が建設された。長春軌道交通と長春有軌電車が運営している。他にも地下鉄北湖線が建設中である。2002年に開通しており、中国の地下鉄では比較的歴史が古い。 黒龍江省
ハルビン市ハルビン市では、ハルビン地下鉄が運行している。現在は3路線が運行、3号線は環状線として開通を予定している。 内モンゴル自治区
フフホト市フフホト市では、フフホト地下鉄が運行している。2019年に開通で、内モンゴル自治区では初の地下鉄開通。 上海市・江蘇省(滬蘇地区)
上海市・蘇州市(昆山市)上海市では、上海軌道交通(上海地下鉄)、上海トランスラピッド(上海リニア)、張江有軌電車の3事業者が運行しているほか、国鉄も金山鉄路という通勤路線を運行している。上海地下鉄は1995年に1号線が開通してから次々と新たな路線を開通させて急速に総延長を伸ばし、2009年12月には東京都市圏を抜いてアジアで最も総延長の長い地下鉄路線となった。なお11号線の一部は江蘇省・蘇州市(昆山市)に乗り入れている。現在は路線数こそ北京地下鉄の23路線には及ばぬ20路線ではあるものの、近年の新規路線の追加により、総駅数508駅と総距離831kmは首都である北京地下鉄をも大きく上回っており、全世界でもトップクラスの地下鉄となっている。
南京市・鎮江市(句容市)南京市では、南京地下鉄および南京有軌電車が運行している。2005年から開通。一部路線が句容市(鎮江市)へも乗り入れを開始した。
無錫市徐州市常州市常州市では、常州地下鉄が運行している。徐州市と同じく2019年に開通。 蘇州市(昆山市を除く)蘇州市では、蘇州軌道交通および蘇州高新区有軌電車が運行している。昆山市(蘇州市)を走行する上海地下鉄11号線を除く。2012年に開通、省都の南京市を除き江蘇省の各都市では最も先に開通している。江蘇省の各都市では上海市に最も近い。 南通市南通市では、南通軌道交通が運行が予定されている。上海市の北側に位置し、上海市の西側に位置する蘇州市とともに上海市に非常に近い位置となる。 淮安市淮安市では、淮安市現代有軌電車経営有限公司が運行している。2015年に開通。
山東省済南市済南市では、済南地下鉄が運行している。2019年に開通。当初は1号線、次に3号線の開通と続いたため、2号線が開通するまでは飛び地開通となっていた。 青島市青島市では、青島地下鉄と青島有軌電車が運行している。2015年に開通。山東省の初の地下鉄となり、省都の済南市よりも4年前に開通している。なお13号線は膠州湾を経た先の路線になっており、13号線以外の5路線には接続していない飛び地の地下鉄となっていたが、1号線が海峡を経て開通したため、飛び地開通は解消した。 安徽省合肥市合肥市では、合肥軌道交通が運行している。2016年に開通。安徽省初の地下鉄。2016年12月26に1号線、以降はちょうど1年後に2号線、2年後に3号線、1年後に5号線、さらに1年後に4号線の順に開通しており、全ての路線が12月26日に初期開通となっている。 蕪湖市蕪湖市では、蕪湖軌道交通が運行している。安徽省では合肥市に次ぐ2番目の開通都市。 浙江省
杭州市・紹興市・海寧市(嘉興市)杭州市では、杭州地下鉄が運行している。2012年に浙江省初の地下鉄として開通。また、同省の紹興市ならびに海寧市(嘉興市)にも杭州市からの地下鉄が乗り入れを開始している。また杭海城際線は1駅の平均キロ数が4kmもあり、地下鉄の平均的な駅間としては最も長い。 寧波市温州市温州市では、温州軌道交通が運行している。2019年に浙江省3番目の地下鉄として開通。地下鉄の駅間の平均距離は3kmで、全国の地下鉄でかなり長い。
金華市金華市では、金華軌道交通が運行している。2022年8月に開通、現時点では最新となる新規開通の都市となる。
台州市福建省福州市福州市では、福州地下鉄が運行している。2016年に福建省初の地下鉄として開通。 廈門市廈門市では、廈門軌道交通が運行している。2017年に開通。2021年6月25日に3号線も開通した模様。 湖北省
武漢市・鄂州市武漢市では、武漢地下鉄および武漢有軌電車が運行している。2004年に開通。現時点では武漢市以外の湖北省では地下鉄の開通はなしになるが、11号線が2021年1月に鄂州市の葛店南站駅まで1駅のみだが、延伸している。
湖南省
長沙市長沙市では、長沙地下鉄と湖南磁浮交通発展股份有限公司によるリニアモーターカーが運行している。2014年に開通。湖南省唯一の地下鉄の所有都市。既存の路線から湘潭市への延伸も予定されている。 広東省・香港・マカオ(粤港澳地区)
広州市・仏山市広州市内で完結する広州地下鉄および広州海珠環島新型有軌電車に加え、隣接する仏山市とを結ぶ仏山地下鉄が2010年に開通した。なお仏山地下鉄は中国で初となる都市間を結ぶ地下鉄である。広州市では1999年に初めて開通。仏山地下鉄は広州地下鉄と一体運用しており、実質的には広州地下鉄の一部でもある。
深圳市深圳市では、深圳地下鉄、深圳有軌電車が運行している。なお、深圳地下鉄のうち、4号線は港鐵(香港MTR)によって運営されている。2004年に初めて開通。以降は深圳市は急成長を遂げており、省都の広州市よりも駅数がわずかに逆転して多くなっている。現時点は厳密には12路線だが、8号線は2号線と直通による一体運用しているため、実質は11路線となる。また新規開通した20号線は将来的に東莞市域への乗り入れも予定されている。
珠海市珠海市では、珠海城市建設集団が運行している。2017年に開通。マカオへの拱北口岸への重要な路線にもなっていく見込み。
東莞市東莞市では、東莞地下鉄が運行している。2016年に開通。広東省第3の地下鉄開通都市。
香港特別行政区→詳細は「香港の鉄道」を参照
マカオ特別行政区→詳細は「マカオの交通 § 鉄道」を参照 マカオでは、香港港鉄 (MTR) による運行の澳門軽軌鉄路が運行している。2019年に開通しているが、南側のタイパ半島側のみで、市街地側に当たる北側のマカオ半島側にはまだ開通していない。
広西チワン族自治区
南寧市南寧市では、南寧軌道交通が運行している。2016年に開通。自治区に当たる都市では初の地下鉄。 江西省南昌市南昌市では、南昌地下鉄が運行している。2015年に開通。現時点では唯一の江西省の地下鉄。 重慶市・四川省(渝川地区)
重慶市重慶市では、重慶軌道交通によって地下鉄とモノレールが、重慶索道交通によってロープウェイが営業している。また、起伏が激しいため、この他に有料エレベーターも運行されている。2004年に開通。4つの直轄市では最も遅い開通。
成都市成都市では、成都軌道交通が成都地下鉄、成都市域鉄路(都市鉄道)および成都有軌電車(路面電車)を運営している。また、2016年までに、環状3号線以内の国鉄路線に、市が平均2~3kmの駅間距離で新駅を建設し、通勤鉄道に改造することが発表されている[29]。2010年に開通の現時点では四川省唯一の地下鉄。この10年ほどで急速に路線を増やし続けており、上海地下鉄、北京地下鉄に次ぐ3位の駅数まで伸ばし続けている。 宜賓市宜賓市では、宜賓軌道交通が運行している。2019年に開通。省都成都市に次ぐ2番目の四川省の都市交通となり、ライトレール形式の路面電車にて運行している。 貴州省貴陽市貴陽市では、貴陽軌道交通が運行している。2017年に貴州省初の地下鉄として開通。2021年4月28日に2号線も開通している。 雲南省
昆明市昆明市では、昆明地下鉄が運行している。2012年に開通。現時点では雲南省唯一の地下鉄。■1号線と■2号線は直通運転しており、実質的には現時点では5路線となる。 蒙自市(紅河ハニ族イ族自治州)蒙自市では、蒙自紅河有軌電車が運行している。2020年に開通し、自治州の県級市で初の都市交通運行となる。
丘北県(文山チワン族ミャオ族自治州)丘北県では、文山有軌電車が運行している。2021年4月1日に新規開通。
チベット自治区
海南省
三亜市三亜市では、三亜有軌電車が運行している。2020年に海南省で省都の海口市よりも一足先に開通の都市交通。
陝西省
西安市・咸陽市西安市・咸陽市では、西安地下鉄が運行している。1号線・5号線ならびに14号線の一部が咸陽市に差しかかっている。2011年に開通。現時点では陝西省唯一の地下鉄。 甘粛省
蘭州市蘭州市では、蘭州軌道交通が運行している。2019年に開通の甘粛省唯一の地下鉄。
天水市天水市では、天水有軌電車が運行している。2020年に開通の甘粛省第2の都市交通。
寧夏回族自治区
銀川市銀川市では、銀川軌道交通が運行している。2017年に花博園雲軌として仮開通、2018年にさらに延伸して1号線として開通。寧夏回族自治区唯一の都市交通。
青海省
デリンハ市(海西モンゴル族チベット族自治州)デリンハ市では、海西州軌道交通が運行している。2021年4月に正式運行開始。青海省初の都市交通となり、省都・西寧市よりも一足先の開通。 新疆ウイグル自治区
ウルムチ市ウルムチ市では、ウルムチ地下鉄が運行している。2018年に新疆ウイグル自治区で初の地下鉄開通。
空港とのアクセス
ICカード関連
建設中・計画中の都市
脚注注釈出典
関連項目外部リンク |